弟妹たちよ、おれは今前世からの愛する人を手に入れて幸せに生きている〜おれに頼らないでお前たちで努力して生きてくれ〜

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第十三章 禁断の果実

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 身軽だからそういうのは得意なのだがどういうわけかばれた。

 それも思いっきり。

 しかもの夜は眠らせてもらえなかった。

 その一度の失敗で懲りて一樹から逃げようという意思は捨てた。

 さすがに二度も三度もそんな災難には遭いたくなかったので。

 なんとなく受難の日々である。

 たださりげなーくだが、一樹に慣らされている気がしないでもない。

 その証拠に最近は軽く触れられるだけでも耐えられない。

 勝手に声が出る。

 そんなときの一樹はすごく優しい眼をしているが。

 なんか思い返していると恥ずかしい。

 もうやめよう。

「妥協案とか浮かばないのかい? 君ほどの者が」

「色々考えてはみてるんだけど、頭の中で想像しただけで認めないことがわかるからなあ」

「一樹も大変だ。わたしとしては憧れの方の実力のほどを見せてほしいところだが」

「やめろよ、アレス」

 ムッとしたらしい一樹にアレスが笑う。

 なんだか変だ。

 アレスまで一樹が特別だみたいな言い方をしている。

 そのアレスこそ炎と海の申し子だろうに。

「本心なのに。一樹には是非師事を仰ぎたいところだ」

「お断りだ。自分で覚えろ」

「冷たいな。憧れているのに」

「おまえが勝手に憧れてるだけだろうが」

 あれえ?

 頭が混乱してきた。

 みんなの言い方を信じると一樹って実はすごく特別って気がするんだけど?

 あれぇ?

 なんか目が回る。

「亜様? おいっ。亜封っ!」

 それが食事の席で聞いた最後の声だった。




「亜樹?」

 優しい声がして誰かの手が横髪を怖く。

 それを感じながらふと思う。

 なんか寝ても覚めても一樹のことばかり考えてるなあ。

 幻聴まで聞こえる。

「しっかりしろよ、亜樹っ!」

「え? 本物?」

「本物ってなんだよ、それ?」

 寝台に横たわった亜樹の髪を梳きながら顔を覗き込んでいた一樹が、呆れたような顔をいる。

 慣れたもので自分のベッドのように腰掛けていた。

 まあほとんど毎晩この裏台で寝ているのだから当然かもしれないが。

「あれ? ここ、オレの部屋?」

「覚えてないのか? 食事の最中に倒れたんだ、お前」

「ああ。そういえばなんか目が回ったような気はする」

「おまえらょっと最近ちょくちょく倒れすぎたぞ? 大丈夫か? 身体が変化してからなんか、様子がおかしいぞ?」

「それ、自分のせいだって自覚ないのか?」

「あるわけないだろ。おれは倒れさせるほどの無茶はしてない」

「どんな判断基準だよ」

「でも、ほんとだからな。おまえが倒れるほど酷い真似はしてないんだ。ほんとに平気か?」

「なんか貸血みたいな感じはする。体からすっと力が抜けるっていうか。確かに一樹とは関係なさそうだけど」

 だったら夜に気を失ってもよさそうだから。

 あんまりにも行為が激しくて気を失うことはあるが、昼に倒れるときみたいに、ふうっと意識が遠のくような感じはない。

 ほんとにどうしたんだろう?

 でも、ほんとに一樹は無関係なのかな?

 実は倒れたときを振り返ると、必ず一樹のことを考えてたりするんだよな。

 さっきもそうだし。

「なに赤くなってるんだ、亜樹? 熱でもあるのか?」

「お前ってほんと鈍感」

「どういう意味だよ」

 ムッとしたらしい一樹に、報復とばかりに教えないことにした。

 倒れたときに考えているのは一樹のことだなんて。

「一樹は女の子と付き合ったこともなければ、多分好きになったこともない。違うか?」

「そうだよ。悪いか?」

「だから、鈍感だっていうんだよ」

「?」

 わからないらしい一樹にクスッと笑った。

「とにかくすこし眠って安静にしてろ。お前がこんな調子だと、おれはよけいに困るんだ」

「一樹?」

「いいから眠れ。ついていてやるから」

 なんだかごまかされた気はするけど仕方がないから目を閉じた。

「おやすみ」

 軽く触れるだけのキスをした一樹に、気づかなかった振りをした。




「これはひとつの賭だけれどね、一樹」

 夜にエルシアたちに呼ばれた一樹は、三人を前にして腕を組んでんでいた。

 ここはエアの部屋である。

 長の部屋だけあって一番立派だ。

 小さいころはよく泊めてもらったが。

「亜樹に賭けてみるというのはどうだるう?」

「どういう意味だよ?」

「これはわたしの推測だけれどね。きみ亜樹に手を出しているだろう?」

 なんでわかるんだと言いたげに一樹が引きつった顔になる。

「育ての親を舐めてはいけないよ、一樹。そのくらいすぐにわかる」

「この狸っ!」

「なんだいくたぬきって?」

「わからなかったらいいよっ!」

 ぶつぶつ文句を言っている一樹に、エルシアが苦笑する。

「気づいたときはショックだったんだからね、これでも」

 リオネスが怒っている。

 いやな奴を敵に回したと一樹の顔には書いていた。

「それを現実として認めた上で、最近のね、亜樹の変調。あの理由を推測してみたわけだ
ど」

「?」
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