弟妹たちよ、おれは今前世からの愛する人を手に入れて幸せに生きている〜おれに頼らないでお前たちで努力して生きてくれ〜

文字の大きさ
上 下
58 / 140
第九章 邂逅のとき

(8)

しおりを挟む
「炎の女神、レダを母に海神、レオニスを父に持つ、わたしがアレス。エルダ伯父上から子供たちの話は聞いていて、一度逢いたいと思っていたんだ」

「「「子供たち•・・.」」」

 三人がぽかんと呟いて、この疑問には精霊が答えた。

「レダさまから聞いただけですけれど、エルダさまは地上に残された神族のことを、特に長の家系の人々のことは、ご自分の子供だとおっしゃっているそうです」

「風神エルダが?」

「ふうん。ボクらのことも忘れたわけじゃなかったんだね。これだけ血が離れると身内だと認めていないんじゃないかって思っていたけど」

 呆気らかんと口にするリオネスを見て、アレスが小さく笑った。

「なに? ボクの顔になにかついてる?」

「いや。エルダ伯父上に似ているなと思って」

「へえ。意外。ボクが一番似てるんだ?」

 そこまで言ってからリオネスも笑った。

 ぶっきまでの険悪なムードはどこへやらという雰囲気だったが、それでも忘れたわけではいらしい。

 エルシアが改めてアレスに声を投げた。

「ところでアレス?」

 神族としては直接、女神と海神を両親に持つアレスの方が血は濃いし、立場だって上なのだが、エルシアも歴史あるエルダ神族の長として譲るつもりはなかった。

 対等に話しかけられて、アレスが彼を見る。

 だが、怒っているようには見えない。

 意味を掴みかねるような、不思議そうな顔だった。

「今までに力を使った経験は?」

 唐突な問いに驚いた顔をしてから、アレスはちょっと首を傾げた。

 なにか悩んでいるようである。

 アレスの子供みたいな一面を知っているだけに、亜樹は気が気じゃなかった。

「三回、いや。四回だったかな。いや。五回のような気も」

「どっちなの? それ?」

 さすがにリオネスも呆れている。

 自分のことなのにあやふやなアレスに。

「どう…...だっただろう? ファラ?」

 何故そこで精霊に確認を取るかと、亜樹も怒鳴りそうになった。

 自分のことだろうと。

 すべての者の感想だったらしく、神族絡みなら無関係とばかりに、無視していた一樹まで呆れたような顔をしていた。

 本当は食始の神々が絡んでいるなら、一樹も無関係ではないのだが、それを明らかにできない以上、今は知らないフリをするしかなかったから。

「今のを計算に入れると七回よ。この半年で。覚えてよ、お願いだから」

 なんだか精霊まで情けなさそうである。

 これで歳相応の格好をしていたら、亜樹も子供のことだからと庇えるのだが、なまじ姿だけは一人前だから困る。

 亜樹よりデカイくせして、なんだ?

 この頼りなさは。

 それからアレスの立場を自分に置き換えてみて、初めて亜樹は理解した。

 エルシアたちが力のコントロールに重きを置く意味を。

 確かに無意識とはいえ、さっきみたいな事態を何度も起こしたら、それはもうすでに立派な武器だ。

 亜樹にもあんな力があるのなら、コントロールはできた方がいい。

 でなければアレスの二の舞である。

 今はエルシアたちが相手だったから、アレスの攻撃もなんとか凌いだが、普通はそうはいかないだろうから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】

まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

処理中です...