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第九章 邂逅のとき
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「なんとなくだけど神族に関係あるのかな? って気はしてるけど」
「神族。伯父上たちの血族だという?」
「伝説でしか聞かないような創始の神々を伯父上だなんて呼ぶなんて、アレスはすごいよな。本当の本当に炎の女神を母に、海神を父に持ってるのか?」
「わたしは嘘はついていない」
ムッとしたらしいアレスに睨まれて、亜樹は苦笑した。
本当になんだか勝手の違う少年だ。
「でもさあ本当に疑ってるわけじゃないんだけど、炎の女神にしても海神にしても創始の祖々だろう? なのに今も生きてるのか?」
「創始の神々がすべて死んでいたら、今頃世界は滅んでいる、と母上は言っていた」
堂々と言うので一瞬信じかけたのだが、付け足された言葉にずっこけそうになった。
やっぱりどこかずれている。
神々の寵児として育でられたせいだとしたら、アレスは本当に炎の女神、レダを母に海神レオニスを父に持っているのかもしれない。
だとしたらエルシアたちよりすごい身分の御曹司ってことにならないか?
なんでこんなところにひとりでいるんだろう?
「なんか不安になってきたから訊くけどさ。アレスみたいな世間知らずが、どうしてこんなところにひとりでいるんだ?」
世間知らずと言われてムッとしたのか、アレスは不機嫌そうに亜樹を睨んだ。
どうやら反応は子供みたいでも、一人前に馬鹿にされたことはわかるらしい。
別に馬鹿にするつもりで言ったわけじゃなく、亜樹はただ事実を口にしただけなのだが。
ここまで世間知らずだと、外に出すのは勇気がいったはずだ。
異世界人の亜樹より、ずっと世間を知らない気がする。
誰にでも炎の女神が母親で、海神が父親だなんて打ち明けていたら、アレスは厄介な事態に巻き込まれていただろう。
それに気づいていないところがまた怖い。
自分がどれだけ無防備かアレスは全然気づいていない。
そのせいで放っておけなかった
もしれない。
「人間のことを学べと母上に言われて、人間界に放り出されたんだ。半年前に」
「ふうん。炎の女神レダって思い切りがいいんだなあ。オレだったらこんなに世間知らずな奴を外に出す決断なんでできないよ」
「何度も世間知らずと言うな。今、勉強中だ」
真面目な顔で言うことか?
思わず亜樹は沈没しそうになったが、同時にアレスに好意も抱きはじめていた。
ここまで真っ白だといって清々しいくらいだ。
染まっていないんだなあとそう思う。
「ところで人間学を学んでいる最中のアレスが、なにをしにリーン・フィールド公国へ?」
「ああ。忘れるところだった。この国にはエルダ個以上の血族がいると聞いて、彼らに逢いにきたんだ」
「エルシアたちに逢いにきた?」
亜樹が名前を出したことが意外だったのか、アレスがきょとんと亜樹を見た。
「知り合いなのか?」
「知り合いっていうか。う~ん。オレの保護者みたいなものかなあ? 取り敢えず身受人だし」
「なんのことだ?」
怪訝そうなアレスにどう説明すれば伝わるのかと亜樹が悩んだとき、彼の名を呼ぶ声が響いた。
「アレス! 探したわよ! なんて辺都なところにいるのよー!」
威勢のいい窓の声にアレスの背後に視線を投げると、全身で炎を形容しているような美女が立っていた。
「神族。伯父上たちの血族だという?」
「伝説でしか聞かないような創始の神々を伯父上だなんて呼ぶなんて、アレスはすごいよな。本当の本当に炎の女神を母に、海神を父に持ってるのか?」
「わたしは嘘はついていない」
ムッとしたらしいアレスに睨まれて、亜樹は苦笑した。
本当になんだか勝手の違う少年だ。
「でもさあ本当に疑ってるわけじゃないんだけど、炎の女神にしても海神にしても創始の祖々だろう? なのに今も生きてるのか?」
「創始の神々がすべて死んでいたら、今頃世界は滅んでいる、と母上は言っていた」
堂々と言うので一瞬信じかけたのだが、付け足された言葉にずっこけそうになった。
やっぱりどこかずれている。
神々の寵児として育でられたせいだとしたら、アレスは本当に炎の女神、レダを母に海神レオニスを父に持っているのかもしれない。
だとしたらエルシアたちよりすごい身分の御曹司ってことにならないか?
なんでこんなところにひとりでいるんだろう?
「なんか不安になってきたから訊くけどさ。アレスみたいな世間知らずが、どうしてこんなところにひとりでいるんだ?」
世間知らずと言われてムッとしたのか、アレスは不機嫌そうに亜樹を睨んだ。
どうやら反応は子供みたいでも、一人前に馬鹿にされたことはわかるらしい。
別に馬鹿にするつもりで言ったわけじゃなく、亜樹はただ事実を口にしただけなのだが。
ここまで世間知らずだと、外に出すのは勇気がいったはずだ。
異世界人の亜樹より、ずっと世間を知らない気がする。
誰にでも炎の女神が母親で、海神が父親だなんて打ち明けていたら、アレスは厄介な事態に巻き込まれていただろう。
それに気づいていないところがまた怖い。
自分がどれだけ無防備かアレスは全然気づいていない。
そのせいで放っておけなかった
もしれない。
「人間のことを学べと母上に言われて、人間界に放り出されたんだ。半年前に」
「ふうん。炎の女神レダって思い切りがいいんだなあ。オレだったらこんなに世間知らずな奴を外に出す決断なんでできないよ」
「何度も世間知らずと言うな。今、勉強中だ」
真面目な顔で言うことか?
思わず亜樹は沈没しそうになったが、同時にアレスに好意も抱きはじめていた。
ここまで真っ白だといって清々しいくらいだ。
染まっていないんだなあとそう思う。
「ところで人間学を学んでいる最中のアレスが、なにをしにリーン・フィールド公国へ?」
「ああ。忘れるところだった。この国にはエルダ個以上の血族がいると聞いて、彼らに逢いにきたんだ」
「エルシアたちに逢いにきた?」
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「知り合いなのか?」
「知り合いっていうか。う~ん。オレの保護者みたいなものかなあ? 取り敢えず身受人だし」
「なんのことだ?」
怪訝そうなアレスにどう説明すれば伝わるのかと亜樹が悩んだとき、彼の名を呼ぶ声が響いた。
「アレス! 探したわよ! なんて辺都なところにいるのよー!」
威勢のいい窓の声にアレスの背後に視線を投げると、全身で炎を形容しているような美女が立っていた。
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