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第八章 伝説の彼方に
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人々の希望となれるカリスマはひとりしかいない。
一樹だって本当はわかっているのだ。
亜樹がエルシアたちと出逢ったのは運命に導かれたからで、それに逆らってみせることの無意味さには。
でも、運命がすべてを左右するわけじゃない。
一樹こそ自分の運命に逆らって生きた証人なのだから。
亜樹は暫く悩んでいたようだが、やがて振り切ったのか、一樹を見上げてニコッと笑った。
「わかった。一樹を信じることにするよ。オレが嫌がったら助けてくれるんだろ?」
「当たり前じゃねえか。それに安心してろ。いくら神族とはいえ、同意なしに既成事実を作ることだけはできねえから」
「既成事実って。一樹っ!!」
顔を真っ赤に染めて怒鳴る亜樹に、一樹は可愛いなぁと感慨に耽っていた。
「でも、亜樹が抵抗してみせないとおれには割り込めないんだぜ? 助けてほしかったら、それなりの意思表示はしろよ? でないとエルシアたちに撃沈されるからな」
交わされる会話の意味は、傍観に徹している杏樹と翔にはわからなかったのだが、翔は杏樹が言っていたように、亜樹がかなり一樹を信頼していることがわかって、複雑な気分だった。
確かに翔には一樹のような特別な力はないし、エルシアたちを相手に歯向かってみせる度胸もない。
これで頼って貰おうとするのは傲慢なのか。
考えると暗くなりそうで、ため息が止まらなかった。
「うんっ。もうアレスのばかあ。いったいどこ行っちゃったのよぉ」
情けない声をあげているのは身長10センチほどの人形を思わせる端正な顔立ちの少女だ。
旅をしている間目立たないように、わざと身長を変えてあるのだが、そのせいでどうやらアレスを見失ったようだった。
身長が短くなっている間は、大抵アレスが運んでくれているので、ファラは安心しきっていたのだ。
だが、アレスは時々、予測不可能な行動をとることがある。
普段の彼なら絶対にファラをひとりにしたりしないと断言できるが、特殊な心理状態のときはわざと置いていくことも十分に考えられた。
それにアレスはちょっと普通じゃない。
どこか天然ボケみたいなところがあって、後先考えずに行動を起こすこともあった。
なにかに気を取られると、他のことは放り出して突然、行動に出てしまう。
そういう状況のときは、連れているファラのことなどきれいさっぱり忘れてくれるのだ。
有難いことに。
歩く天災。
とは、彼と旅を始めてから、ファラが付けたあだ名だった。
ファラの髪は炎のような赤。
瞳も灼熱の色。
肌は小麦色で何処から見ても異端だった。
目立ちすぎるのだ。
だから、わざと身長を変えて、人の目につかないように移動する癖がついていた。
普段のアレスなら、それでも十分にファラの身を気遣ってくれるので、安心していたという事情もあるのだが。
「ふう。これは地道に自分の足で探せってことかしら」
呟きながらファラは本来の姿に戻った。
小柄だが強烈な印象を放つ美女がそこにいる。
炎の髪と灼熱色の瞳。そして焼けた小麦色の肌。
人々は言うだろう。
炎の精霊だと。
そう。
ファラは炎の精霊なのだ。
今では絶滅寸前になっている。
だから、身長を自在に変化させることもできるのである。
そんな真似は神族にさえできない。
精霊は実体があってないようなものだから可能なのだ。
一樹だって本当はわかっているのだ。
亜樹がエルシアたちと出逢ったのは運命に導かれたからで、それに逆らってみせることの無意味さには。
でも、運命がすべてを左右するわけじゃない。
一樹こそ自分の運命に逆らって生きた証人なのだから。
亜樹は暫く悩んでいたようだが、やがて振り切ったのか、一樹を見上げてニコッと笑った。
「わかった。一樹を信じることにするよ。オレが嫌がったら助けてくれるんだろ?」
「当たり前じゃねえか。それに安心してろ。いくら神族とはいえ、同意なしに既成事実を作ることだけはできねえから」
「既成事実って。一樹っ!!」
顔を真っ赤に染めて怒鳴る亜樹に、一樹は可愛いなぁと感慨に耽っていた。
「でも、亜樹が抵抗してみせないとおれには割り込めないんだぜ? 助けてほしかったら、それなりの意思表示はしろよ? でないとエルシアたちに撃沈されるからな」
交わされる会話の意味は、傍観に徹している杏樹と翔にはわからなかったのだが、翔は杏樹が言っていたように、亜樹がかなり一樹を信頼していることがわかって、複雑な気分だった。
確かに翔には一樹のような特別な力はないし、エルシアたちを相手に歯向かってみせる度胸もない。
これで頼って貰おうとするのは傲慢なのか。
考えると暗くなりそうで、ため息が止まらなかった。
「うんっ。もうアレスのばかあ。いったいどこ行っちゃったのよぉ」
情けない声をあげているのは身長10センチほどの人形を思わせる端正な顔立ちの少女だ。
旅をしている間目立たないように、わざと身長を変えてあるのだが、そのせいでどうやらアレスを見失ったようだった。
身長が短くなっている間は、大抵アレスが運んでくれているので、ファラは安心しきっていたのだ。
だが、アレスは時々、予測不可能な行動をとることがある。
普段の彼なら絶対にファラをひとりにしたりしないと断言できるが、特殊な心理状態のときはわざと置いていくことも十分に考えられた。
それにアレスはちょっと普通じゃない。
どこか天然ボケみたいなところがあって、後先考えずに行動を起こすこともあった。
なにかに気を取られると、他のことは放り出して突然、行動に出てしまう。
そういう状況のときは、連れているファラのことなどきれいさっぱり忘れてくれるのだ。
有難いことに。
歩く天災。
とは、彼と旅を始めてから、ファラが付けたあだ名だった。
ファラの髪は炎のような赤。
瞳も灼熱の色。
肌は小麦色で何処から見ても異端だった。
目立ちすぎるのだ。
だから、わざと身長を変えて、人の目につかないように移動する癖がついていた。
普段のアレスなら、それでも十分にファラの身を気遣ってくれるので、安心していたという事情もあるのだが。
「ふう。これは地道に自分の足で探せってことかしら」
呟きながらファラは本来の姿に戻った。
小柄だが強烈な印象を放つ美女がそこにいる。
炎の髪と灼熱色の瞳。そして焼けた小麦色の肌。
人々は言うだろう。
炎の精霊だと。
そう。
ファラは炎の精霊なのだ。
今では絶滅寸前になっている。
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そんな真似は神族にさえできない。
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