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第八章 伝説の彼方に

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 会議と称して出掛けていった一樹が戻ってきたのは、それから二時間ほどが過ぎてからだった。

 はっきりニ時間とわかるわけではないのだが、最近になって亜樹たちは、太陽の位置で時間を測れるようになっていた。

 こちらに移動する際に亜樹や杏樹が身につけていた時計やスマホは、川に流され異世界に飛ばされたときに壊れてしまっていたし、翔や一樹がしていた時計やスマホも、同じ未路を辿っていた。

 一樹の設明によると世界が異なるため、その理の影響を受けたのだろうという話だったが。

 戻ってきた一樹から、明日からエルシアたちの本拠地であるエルダ山の彼らの屋敷に住むことになったと知らされた亜樹は、彼に喰ってかかっていた。

「どういうことだよ、一樹! オレがあいつらを苦手だと思っていることくらい知ってるはずだろっ!?」

「そう怒るなよ、亜樹」

 うんざりしたように言い返す一横は、いいかげんリーンとの押し間容で疲れていたのに、亜樹まで強情を張り出したので、本心から疲れていた。

「友達甲斐のない奴だなっ!! オレがどうなってもいいのかっ!? あんな初対面で襲ってくるような奴ら同居しろなんて!」

 「バカなこと言うんじゃねえっ!!」

 頭から怒鳴られて雨樹はビクッとして身を引いた。

「亜樹が本心から嫌がっていたら、エルシアたちを敵に回しでも護ってやるさ。当然だろ? ただ現状ではエルシアたらの下に行くのが、一番亜樹のためになるんだから、仕方ないじゃないか」

「オレのためになるってどういう意味だよ?」

 憮然とした抗議に一樹は言える範囲のことは打ち明けようと、亜樹に初めてピアスの謎について説明しはじめた。

「そのピアスが特別だってことはもう亜樹だって知ってるよな?」

 仏頂面で頷かれ、一樹は読明を重ねていった。

「蒼海石っていうのは一種の魔石なんだ」

「魔石?」

「言葉どおり魔力を秘めた石って意味だ。それも桁外れな魔力をな。蒼海石は持ち主を選ぶから、よほどのことでないと、それを所持している奴はいないけどな。もし居たらそいつの持つ力というのは、計り知れないほど強大なものだということになるんだ」

「それって神族のピアスではないと仮定した場合か?」

「そういうことだ。これに神族としての神力が関わってきたら、発揮される力は相乗効果で予測不可能になる!」

 そこまでとは思ったこともない亜樹が絶句している。

 傍らで控えていた妹の杏樹と、杏樹から調明を受けた翔は知っていたので、気の毒そうに亜樹を見守っていたが。

「亜樹が持つピアスが蒼海石であることは、エルシアたちが確認済だ。おまけに亜樹から神力の匂いがすることもな。この場合、亜樹にはなんの責任もないし、言いがかりだとも思うけど亜樹が、自分の力に対して無防備でコントロールすることも知らなかったら、最悪、力が暴走してこの宮殿なんて、簡単に消滅させかねないんだ」

「まさか。オレにそんな力なんて」

「あるんだよ。あるから力のコントロールを覚えるために、エルシアたちの下に行くことが決定したんだから」

 なにも言い返せなくなる説明だった。

 亜樹はただただ空然とするしか方法がなかった。

「安心しろよ。亜樹ひとりで行かせやしない。おれも翔も同行するし、杏樹だって連れて行くから。ただかなり厳しい訓練をすることになるから、亜樹は辛い想いをするかもしれないけどな」

 この言葉でふと気になった。
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