35 / 138
第七章 双子の光と影
(6)
しおりを挟む
逆に言うと彼らのせいで恐怖心を植えられた亜樹を相手に、仕掛けることができないという事情もあったのだが。
今告白しても亜樹はきっと受け入れてはくれない。
恋愛そのものに拒反応を見せている。
翔にはそう思えた。
今の亜樹には恋愛も、それに連なることも、すべて恐怖の対象なのだ。
口説かれでもしたら、すぐにでも逃げ出すだろうことが、容易に想像できる。
しかし呑気に構えていたら奪われるというのは、間違いなく事実だろう。
なのに動くに動けないというのが、偽りのない気持ちだった。
亜樹の気持ちを無視して決断を迫るには、翔は亜樹と親しすぎたのだ。
傷つけるくらいならと、諦めてしまう部分がある。
杏樹はきっとそんなことにも気づいているのだるうが。
「最終的には翔お兄ちゃん次第だから、あたしからなにか言うようなことでもないけど。後悔だけはしないようにしてね?」
「‥‥‥杏樹」
「亜樹ちゃんはああ見えて結構繊細だし、今すごく心細いんだと思う。あたしは妹だからきっと頼ってはくれないだろうし。でも、わかる? 翔お兄ちゃん? 亜樹ちゃんが不安がっている今だからこそ、今、亜樹らゃんの支えになれた人は、亜樹ちゃんの心の奥深くに入り込めるってことが」
「あ‥‥‥」
確かに前も後ろもわからない。
右も左も見えない状態だと不安は増すばかりだろう。
そんなときに親切にされたり、もしくは庇うような真似をされたら、その相手は否応なく亜樹の心の中に入り込むはずだ。
だが、並大抵のことでは無理だ。
今の亜樹は警戒心でガチガチになっていて、翔や一樹が俺にいても、全身から見えない拒絶のオーラを発しているくらいだから。
自分の身を守るために必死になっていて、必死になって防御壁を張っている。
今の亜樹が丁度そうだった。
その亜樹の心に入り込み、頼ってもいいのだと思わせることは、容易なことじゃない。
ましてや警戒する必要もないのだと教え込むことは、東都大学に入るより難しいのではあるまいか。
だが、それをやってのけた相手だけが亜樹を手に入れることができる。
それは事実でも本当に警戒心を解くだけで、亜樹の心が手に入るのだろうか?
安心できる存在だと思われるだけでは、そこから先へは進めない。
でも、ウカウカしていたら亜樹を奪われるのは必至。
どうしろというのだろう?
手に入れるのが、これほど難しいことだとは。
「翔お気らゃんがなにを考えているのかわかるような気もするけど、亜樹ちゃんを敢えて女の子
として例えさせてもらうけど、女の子は時には強引リードしてもらいたいときもあるんだよ?」
「は?」
答えようのない言葉である。
複雑な顔で黙り込む翔に杏樹がため息を漏らす。
「なにもね。護ることだけが亜樹ちゃんの支えになれるっでわけじゃないでしょ?
守ってくれるのは有難いけど、結局そういう関係だとそこまでで終わってしまうから。
翔お兄ちゃんがそこから先へ進みたいと思っているなら、強引になることも必要なんじゃない?」
「....なんだが知らないあいだに杏樹も大人になったね。驚いたよ」
まさか年下の女の子に恋愛論を説かれるとは思わなかった
この分だと精神年齢は亜樹より杏樹の方が上らしい。
今告白しても亜樹はきっと受け入れてはくれない。
恋愛そのものに拒反応を見せている。
翔にはそう思えた。
今の亜樹には恋愛も、それに連なることも、すべて恐怖の対象なのだ。
口説かれでもしたら、すぐにでも逃げ出すだろうことが、容易に想像できる。
しかし呑気に構えていたら奪われるというのは、間違いなく事実だろう。
なのに動くに動けないというのが、偽りのない気持ちだった。
亜樹の気持ちを無視して決断を迫るには、翔は亜樹と親しすぎたのだ。
傷つけるくらいならと、諦めてしまう部分がある。
杏樹はきっとそんなことにも気づいているのだるうが。
「最終的には翔お兄ちゃん次第だから、あたしからなにか言うようなことでもないけど。後悔だけはしないようにしてね?」
「‥‥‥杏樹」
「亜樹ちゃんはああ見えて結構繊細だし、今すごく心細いんだと思う。あたしは妹だからきっと頼ってはくれないだろうし。でも、わかる? 翔お兄ちゃん? 亜樹ちゃんが不安がっている今だからこそ、今、亜樹らゃんの支えになれた人は、亜樹ちゃんの心の奥深くに入り込めるってことが」
「あ‥‥‥」
確かに前も後ろもわからない。
右も左も見えない状態だと不安は増すばかりだろう。
そんなときに親切にされたり、もしくは庇うような真似をされたら、その相手は否応なく亜樹の心の中に入り込むはずだ。
だが、並大抵のことでは無理だ。
今の亜樹は警戒心でガチガチになっていて、翔や一樹が俺にいても、全身から見えない拒絶のオーラを発しているくらいだから。
自分の身を守るために必死になっていて、必死になって防御壁を張っている。
今の亜樹が丁度そうだった。
その亜樹の心に入り込み、頼ってもいいのだと思わせることは、容易なことじゃない。
ましてや警戒する必要もないのだと教え込むことは、東都大学に入るより難しいのではあるまいか。
だが、それをやってのけた相手だけが亜樹を手に入れることができる。
それは事実でも本当に警戒心を解くだけで、亜樹の心が手に入るのだろうか?
安心できる存在だと思われるだけでは、そこから先へは進めない。
でも、ウカウカしていたら亜樹を奪われるのは必至。
どうしろというのだろう?
手に入れるのが、これほど難しいことだとは。
「翔お気らゃんがなにを考えているのかわかるような気もするけど、亜樹ちゃんを敢えて女の子
として例えさせてもらうけど、女の子は時には強引リードしてもらいたいときもあるんだよ?」
「は?」
答えようのない言葉である。
複雑な顔で黙り込む翔に杏樹がため息を漏らす。
「なにもね。護ることだけが亜樹ちゃんの支えになれるっでわけじゃないでしょ?
守ってくれるのは有難いけど、結局そういう関係だとそこまでで終わってしまうから。
翔お兄ちゃんがそこから先へ進みたいと思っているなら、強引になることも必要なんじゃない?」
「....なんだが知らないあいだに杏樹も大人になったね。驚いたよ」
まさか年下の女の子に恋愛論を説かれるとは思わなかった
この分だと精神年齢は亜樹より杏樹の方が上らしい。
0
お気に入りに追加
240
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
【第2部開始】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~
ちくわぱん
BL
【第2部開始 更新は少々ゆっくりです】ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。
最弱伝説俺
京香
BL
元柔道家の父と元モデルの母から生まれた葵は、四兄弟の一番下。三人の兄からは「最弱」だと物理的愛のムチでしごかれる日々。その上、高校は寮に住めと一人放り込まれてしまった!
有名柔道道場の実家で鍛えられ、その辺のやんちゃな連中なんぞ片手で潰せる強さなのに、最弱だと思い込んでいる葵。兄作成のマニュアルにより高校で不良認定されるは不良のトップには求婚されるはで、はたして無事高校を卒業出来るのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる