弟妹たちよ、おれは今前世からの愛する人を手に入れて幸せに生きている〜おれに頼らないでお前たちで努力して生きてくれ〜

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第七章 双子の光と影

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 翔にも覚えのあることだ。
 
 一樹がいなくなってから、調われもない中傷を受けて、次第に無口になっていった頃がある。

 そんなころに知り合ったのだ。

 亜樹と杏樹のふたりとは。

 ふたりに救われたと思っている。なのに亜樹が一番辛い時期に、翔は傍に居て庇ってやることもできなかった!

 亜樹はなんにも変わっていないように見えるが、きっとどこか変わっている。

 でなければ髪をを伸ばしているわけがない。

「それでちょっと色々あって、最終的にお父さんまで呼ばれてね。お父さん生後間もない写真を見せて、それにもピアスがあるのを見つけて、やっと納得してくれたの。わざとしているんじゃなくて本当に外れないんだって」

「噂にならなかった?」

「なったよ、勿論。亜樹ちゃんのクラスは暫くの間見物人でごった返してたし、亜樹ちゃんはいつもピリピリしてた。そのころからかな? 亜樹ちゃんが髪を伸ばしはじめたの。校則違反にならないギリギリのラインまで伸ばして、左耳を隠すようになったの」

「そのくらいで済んでよかったよ。知らない間に亜樹がぐれていたなんて事態になったら、ぼくもショックだから」

 わざとおどけてそう言ったが、本心ではショックを受けていた。

 亜樹がそこまで傷ついていたとは思わなかったから。

「亜樹ちゃんは世を拗ねて非行に走るタイプじゃないから」

 苦笑した杏樹にそれはそうだと頷いた。

「でも、だからこそ亜樹ちゃんが、一番知りたかったことだと思う。あのピアスに秘められた謎は」

「‥‥‥」

「たぷんね、お母さんが絡んでいると思うの」

 ふたりの父親から事情を聞いていた翔ははっとした。

「あのピアスはお母さん譲りだっていうから。その証拠にあたしたちが生まれる前に、お父さんと一緒に写っている写真には、お母さんの左耳に亜樹ちゃんと同じ着海石のピアスがあったから。色も大きさもまるで違うみたいだったけど」

 写真で実物の大きさはわからない。

 ただ父と写っていることで、大きさを予測することはできる。

 父は生きているから。

 片方がこのくらいの身長で、このくらいの大きさなら、横に並んでいる女性がこの高さなら、現実にこのくらいだろう。

 そういう曖昧な予測だったけれど。

 母は小柄な女性だった。

 亜樹は母に瓜二つなのである。

 顔立ちではなく、全体的なスタイルとかが。

 亜樹は母からよい特徴をすべて受け継ぎ、それに要に磨きをかけた容姿をしていた。

 母は日本人としては色素の薄い黒髪と、すこし不思議な色の黒い瞳をしていた。

 硝子に反射して光を返すような、そんな瞳の色だ。

 抽象的だがそんな風にしか形容できない、不思議な色だったのである。

 だが、亜樹は母よりも深い漆黒の髪に、夜を映したような黒曜石の瞳をしていた。

 それが更に亜樹を神秘的に見せている。

 おまけに受け継いだピアスは、どう見ても亜樹の方が大きく、また色も深く鮮やかだ。

 それは亜樹の小さいときの写真と母の写真を見比べれば、すぐに理解できることである。

 何故なら母は二十五、六といった姿なのに、当時、八歳くらいだった亜樹のほうが、明らかにピアスが大きく色も深かったのだから。

 ふたりが同時に映っている写真はない。

 母は生まれてすぐに亡くしたから。後で見比べたのだ。
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