弟妹たちよ、おれは今前世からの愛する人を手に入れて幸せに生きている〜おれに頼らないでお前たちで努力して生きてくれ〜

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第七章 双子の光と影

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「なにも。ただ暫くは放っておいてくれってそう言われたけど」

「そっか・・・・」

「あのときの亜樹ちゃんはちょっと怖かったかな? 近づこうとしても近づけないバリアーみたいなものがあってね、人を寄せつけなかったから。後にも先にも亜樹ちゃんが素っ気なかったのはあのころだけかなあ?」

 それだけショックだったのだろう。

 亜樹が生まれながらにあのピアスをしていたことは知っている。

 だが、それが周囲の子供には嘘をついているように見られて、随分虐められていたものだ。

 嘘つきだと言われても、亜樹はそれだけは事実だと言い張って譲らなかった。

 母さんの形見を侮辱するなと、逆に喧嘩を売ったほどだった。

 儚げで華奢なイメージの強い亜樹だが、その芯はしっかりしているし、絶対にその意思を曲げると言うことがなかった。

 それだけあのころの亜樹にとって、母と唯一繋がっているピアスが大事だったのだろう。

 それが地球には存在しない宝石だったと知って、どれほどショックを受けただろう?

 ピアスを身につけて生まれてくるということ自体、普通ならありえないことだから、今更と言えば今更だが、当人は案外そういうことを意識していないものだ。

 何故ならあって当たり前のものだから。

 違うと言われて初めて気づく異質感。

 自分だけ周囲とは違うと突きつけられた現実。

 亜樹が傷付くのも無理はない。

 それに翔が覚えているかぎりでも、亜樹のピアスはかなり特殊だったと思う。

 確か亜樹の成長に合わせて、ピアスも変わっていったはずだ。

 亜樹が大きくなればピアスも大きくなり形を変える。

 色も大きさも形も。

 小さい頃は髪は短かったから、それは周囲にいれば自然とわかる事実だった。

 それゆえに気味悪がられていた時期があったことを翔は知っている。

 小学生時代というのは身体の成長が一番著しい時期だ。

 こんなことを言えばエルタ神族の長たちは、やはり亜樹は神族だと言い張るだろうが、亜樹は成長が遅かったが、それでも翔が引っ越しするまでの五年間に、随分背も伸びたし、身体つきもしっかりしてきた。
 
 それは同時に亜樹がピアスを隠すことをしなかったために、成長するほど形を変えてピアスが大きくなっていく現象を、周囲の者が目の当たりにする結果を招いた。

 当時を思い出せば亜樹が成長すればするほど、気味悪がっていた者は、多くなっていった気がする。

 そういえは再会したとき、亜樹は髪が長かった。
 
 不自然なほどでもないし、長髪と言われるほどでもないが、ちょうどそう。

 左耳を隠すように横髪を長く伸ばしていた。

 髪形だけを意識してみれば、今の亜樹はちょっと変わったヘアスタルをしている。

 あれは自分の成長に合わせて変わるピアスを憶すため?

「亜樹が髪を伸ばしはじめたのはいつなんだ? 確か小さい頃はごく普通の髪形だったと思うんだけど?」

「中学に入ってすぐかな?  小学校のときはお父さんが話をつけてくれたし、亜樹ちゃんのピアスが外れないことは暗黙の了解みたいになっていたから、あんまり言われなかったけど、中学に入ってすぐね? 校長先生に呼び出されて、ピアスのこと違反だから外しなさいって。言われることはわかっていたし、その覚悟もできていたけど、できないことを言われてもできないよね」

「そうだね」

 他に相槌の打ちようがなかった。
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