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第六章 異邦人
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それでも諦めないというのなら、自分もそれなりの行動に出ろと。
でなければ邪魔をすることは認めない。
リオネスははっきりとそう言っていた。
遊びではないとその銀の瞳が言っていた。
外見年齢でうっかり騙されそうになるが、リオネスだって一樹とは比較にならない時を生きてきているんだ。
初恋のひとつやふたつ。
経験していたって全然変じゃない。
寧ろ当然すぎるくらいだが、一樹が知っている限りでは、リオネスには浮いた話のひとつもなかった。
女の影すら感じたことがない。
その点ではいつも付き合う相手に不自由しなかったアストルとも、自分からは誘わないが来るものは拒まずなエルシアとも違う。
リオネスは明らかに伴侶と定めた相手しか意識も向けなかった。
三兄弟の中で本当に純情なのはリオネスなのかもしれない。
だからこそ、一度決めたことは揺らがない。
選んだ相手を譲ることもない。
はっきりと余計な手出しはするなと言われて、一樹は暫く息を呑んでいた。
リオネスにとっては本当に一生の問題なのだ。
神族は確かに長寿で、もし亜樹がリオネスを選んだら、かなり長い時をふたりで生きていくことになるだろう。
その際にリオネスは絶対に亜樹を泣かさないと自信が持てる。
そこは悔しいが認めるしかなかった。
それでも認めたくなければ、手に入れる努力をしてからにしろ。
邪魔をするなら手に入れて権利を得てから。
リオネスは亜樹を護るべき立場にいる一樹に、はっきりとそう宣戦布告したのだった。
言い換えればリオネスは、口説くのは個人の自由だから、当事者の亜樹が拒むのならともかく、一樹が口出しするなと言いたいのだ。
その気持ちがただの守護者であるならば。
恋愛は第三者に口出しできるものではないからと。
強く拳を握り締めて一樹は黙っていたが、ややあってリオネスの戦線布告に応えた。
「そこまで言うなら好きにすればいい。だけどな。亜樹が嫌がったときはおれは邪魔をするし、万が一亜樹が誰かを選んだら、それが誰であれ、潔く諦めろよ、リオン」
もしそれが一樹だったとしても、他の誰かだったとしても。
口には出さなかったその一言に、リオネスは敏感に気付いた。
一樹は受けて立ったのだ。
守護者としてではなく、ひとりの男として対峙している。
それこそ望むところだった。
「残念だけどボクが諦める事態にはならないよ。必ず手に入れてみせるから」
「凄い自信家」
それまで交わされる会話の意味がわからなくて、黙って成り行きを見守ってあた亜樹がポツリとそう言った。
振り向いてリオネスが笑う。
やっぱり邪気の欠片もない無垢な笑顔で。
どうやったらあんな風に無邪気に笑えるのか。
亜樹も不思議だった。
リオネスの計算高い一面からは、想像できない笑みである。
それが彼の本質だとしたら、まるで二重人格者だ。
それともこの世界は純粋なままでは、生きられない世界なのか。
神族という神の末裔が実在し、魔法が存在する世界。
亜樹は今初めてこの世界に興味を抱いた。
深く知りたいと思う。
おそらくこれから一年か二年を暮らすことになる世界のことを。
でなければ邪魔をすることは認めない。
リオネスははっきりとそう言っていた。
遊びではないとその銀の瞳が言っていた。
外見年齢でうっかり騙されそうになるが、リオネスだって一樹とは比較にならない時を生きてきているんだ。
初恋のひとつやふたつ。
経験していたって全然変じゃない。
寧ろ当然すぎるくらいだが、一樹が知っている限りでは、リオネスには浮いた話のひとつもなかった。
女の影すら感じたことがない。
その点ではいつも付き合う相手に不自由しなかったアストルとも、自分からは誘わないが来るものは拒まずなエルシアとも違う。
リオネスは明らかに伴侶と定めた相手しか意識も向けなかった。
三兄弟の中で本当に純情なのはリオネスなのかもしれない。
だからこそ、一度決めたことは揺らがない。
選んだ相手を譲ることもない。
はっきりと余計な手出しはするなと言われて、一樹は暫く息を呑んでいた。
リオネスにとっては本当に一生の問題なのだ。
神族は確かに長寿で、もし亜樹がリオネスを選んだら、かなり長い時をふたりで生きていくことになるだろう。
その際にリオネスは絶対に亜樹を泣かさないと自信が持てる。
そこは悔しいが認めるしかなかった。
それでも認めたくなければ、手に入れる努力をしてからにしろ。
邪魔をするなら手に入れて権利を得てから。
リオネスは亜樹を護るべき立場にいる一樹に、はっきりとそう宣戦布告したのだった。
言い換えればリオネスは、口説くのは個人の自由だから、当事者の亜樹が拒むのならともかく、一樹が口出しするなと言いたいのだ。
その気持ちがただの守護者であるならば。
恋愛は第三者に口出しできるものではないからと。
強く拳を握り締めて一樹は黙っていたが、ややあってリオネスの戦線布告に応えた。
「そこまで言うなら好きにすればいい。だけどな。亜樹が嫌がったときはおれは邪魔をするし、万が一亜樹が誰かを選んだら、それが誰であれ、潔く諦めろよ、リオン」
もしそれが一樹だったとしても、他の誰かだったとしても。
口には出さなかったその一言に、リオネスは敏感に気付いた。
一樹は受けて立ったのだ。
守護者としてではなく、ひとりの男として対峙している。
それこそ望むところだった。
「残念だけどボクが諦める事態にはならないよ。必ず手に入れてみせるから」
「凄い自信家」
それまで交わされる会話の意味がわからなくて、黙って成り行きを見守ってあた亜樹がポツリとそう言った。
振り向いてリオネスが笑う。
やっぱり邪気の欠片もない無垢な笑顔で。
どうやったらあんな風に無邪気に笑えるのか。
亜樹も不思議だった。
リオネスの計算高い一面からは、想像できない笑みである。
それが彼の本質だとしたら、まるで二重人格者だ。
それともこの世界は純粋なままでは、生きられない世界なのか。
神族という神の末裔が実在し、魔法が存在する世界。
亜樹は今初めてこの世界に興味を抱いた。
深く知りたいと思う。
おそらくこれから一年か二年を暮らすことになる世界のことを。
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