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第十一章 四精霊の愛し子
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ルパートたちに刺激されたせいで、暴走化していてレスターが四精霊に頼んでそれを静めても、また狂乱状態に陥るのである。
最近ではレスターは力の出し惜しみをせずに、視察に出向いた先の混乱は必ず静めているが、それでは追いつかないというのが実情だった。
気を最大限に放出するということを繰り返しているレスターは、ここ最近の激務でちょっと
奴れてきている。
そんな彼を見ていた綾都が不安そうに瀬希に話しかけた。
「瀬希皇子。なんとかできないかな?」
「とは言われても、わたしには専門外だしな。朝斗に訊ければいいが、その朝斗も怪我人の治療に追われている状態だし」
朝斗自身も力の出し惜しみをせずに、ユニコーンを大量召選しては動かしている。
疲労度はレスターより上のはずだが、やはり人間ではないからか、朝斗はあまり疲労を訴えない。
憔悴している素振りすらもみせないのである。
そのことから瀬希はやはり朝斗が四聖獣らしいと判断した。
でなければ現状を説明できない。
同じ最上級の精査使いで不老不死のレスターが疲労を感じているのに、朝斗だけが疲労を訴えないことが。
レスターと同じことしかしないことから、匹聖獣として本格的に力を使えるほど覚醒してもいないらしいと判断しているが。
今の瀬希に言える助言といえばこの程度である。
「現状を打破する方法を知りたければ、いっそのこと当事者である四情霊に訊いてみればどうだ?」
この言葉にはレスターも顔を上げた。
混乱を静めることしか頭になくて、その考えを忘れていたようである。
「四精霊に調ねる。そうだね。その手が残っていたね。無駄に力を放出させていても意味はない。根本からどうにかしないと」
「だったら兄さんに頼んでルパートたちを呼ばない?」
「「綾?」」
ふたりの驚く声に綾都ははっきりと吉げた。
「四精霊たちもかなり疲れてると思うんだよね。いくらレスターから気を分けられていてそれを超えるほどの力を使ってるんだもん。いざなんとかしようとしても力が及ばない可能性だってあるよ。兄さんの話が本当なら、ルパートたちは精霊に力を与えることのできるなんだ。今
レスターのおかげで正気を保っている四精霊になら、ふたりが力を与えても問題ないんじゃないかな」
「そうなのかな? ボクもそれは考えた。でも、四精霊が正気を保っていたのは、ボクに付き従っていたから。そのポクは力を放出しすぎていて疲れている。その状態であのふたりに力を増強させてもらったら、もしかしたらに四精霊まで暴走するんじゃないか。そんな危惧が消えないんだよ」
レスターの危惧も大もだった。
だが、それについても瀬希は答えを用意していた。
「その危惧があるかないか。それも四精選に調けばいいんじゃないか?」
「そうだね。訊ねれば本当のことは言ってくれるとは思う。ボクを気遣って無理をしなければね」
四精霊は自分たちの愛し子であるレスターをとても愛してくれている。
そのために彼のためなら無理をしがちなのだ。
現実に無理だとわかっていることでもなんとかしようとする。
それは綾都たちがルパートたちと逢ったときの場面を思い出しても証明されている。
あのときだって四精霊にはわかっていたはずなのだ。
あの場をなんとかできても、自分たちは消滅する、と。
それでもレスターが望んだから、そして綾都たちを放っておけないから、四精霊は無理をし
て結果として消滅した。
朝斗がルパートたちに頼み、綾都の助力があったおかげで事なきを得たが。
あのときと同じことにならないか。
そんな危惧がレスターから消えない。
物心つく前から傍にいて愛してくれる四精霊は、彼にとって親も同然。
今では大事な友なので。
「その辺はルパートたちに任せれば平気だろう」
「瀬希?」
「ふたりには朝斗と違って、自分たちが存在する意味も、それによって与える影響力も把握している感じがある。だったら今自分たちが力を与えたら、四精霊が暴走するかどうか、彼らにならわかるはずだ」
「綾はどう思う? あのふたりなら四精霊の現状を正確に把握できると思う?」
「うーん。なんとなくだけどね? できる気がするよ。ふたりの発する気が精霊たちに近いからかな?」
綾都の小首を傾げた言葉にレスターは意外そうな顔をした。
彼はそんなふうに感じたことがなかったので。
やはり綾都は特別らしい。
レスターは綾都、朝斗、ルパート、ルノエの発する気は独持だとしか感じられない。
なにに踏似しているかなんて判断できないのだ。
それを見抜くあたり、綾都の潜在能力の強大さが証明されている。
「だったら善は急げだね。ルパートたちを呼んでくれるように朝斗に弱まないと」
レスターが立ち上がろうとすると、そんな彼を気遣って綾都が声を投けた。
「ぼくが頼みに行ってくるから、レスターは休んでて」
「でも」
「最近、全然休んでないでしょ? 少しの間でもいいから休休めてほしいんだ。ぼくなら平気だから」
「レスター。わたしが綾都に付き合うから心配はしなくていい。異常事態には対応できなくても、綾都を護ることくらいは、わたしにだってできるから」
「ありがとう、綾、潮希」
感謝を告げて頭を下げるレスターをおいてふたりは部屋をあとにした。
最近ではレスターは力の出し惜しみをせずに、視察に出向いた先の混乱は必ず静めているが、それでは追いつかないというのが実情だった。
気を最大限に放出するということを繰り返しているレスターは、ここ最近の激務でちょっと
奴れてきている。
そんな彼を見ていた綾都が不安そうに瀬希に話しかけた。
「瀬希皇子。なんとかできないかな?」
「とは言われても、わたしには専門外だしな。朝斗に訊ければいいが、その朝斗も怪我人の治療に追われている状態だし」
朝斗自身も力の出し惜しみをせずに、ユニコーンを大量召選しては動かしている。
疲労度はレスターより上のはずだが、やはり人間ではないからか、朝斗はあまり疲労を訴えない。
憔悴している素振りすらもみせないのである。
そのことから瀬希はやはり朝斗が四聖獣らしいと判断した。
でなければ現状を説明できない。
同じ最上級の精査使いで不老不死のレスターが疲労を感じているのに、朝斗だけが疲労を訴えないことが。
レスターと同じことしかしないことから、匹聖獣として本格的に力を使えるほど覚醒してもいないらしいと判断しているが。
今の瀬希に言える助言といえばこの程度である。
「現状を打破する方法を知りたければ、いっそのこと当事者である四情霊に訊いてみればどうだ?」
この言葉にはレスターも顔を上げた。
混乱を静めることしか頭になくて、その考えを忘れていたようである。
「四精霊に調ねる。そうだね。その手が残っていたね。無駄に力を放出させていても意味はない。根本からどうにかしないと」
「だったら兄さんに頼んでルパートたちを呼ばない?」
「「綾?」」
ふたりの驚く声に綾都ははっきりと吉げた。
「四精霊たちもかなり疲れてると思うんだよね。いくらレスターから気を分けられていてそれを超えるほどの力を使ってるんだもん。いざなんとかしようとしても力が及ばない可能性だってあるよ。兄さんの話が本当なら、ルパートたちは精霊に力を与えることのできるなんだ。今
レスターのおかげで正気を保っている四精霊になら、ふたりが力を与えても問題ないんじゃないかな」
「そうなのかな? ボクもそれは考えた。でも、四精霊が正気を保っていたのは、ボクに付き従っていたから。そのポクは力を放出しすぎていて疲れている。その状態であのふたりに力を増強させてもらったら、もしかしたらに四精霊まで暴走するんじゃないか。そんな危惧が消えないんだよ」
レスターの危惧も大もだった。
だが、それについても瀬希は答えを用意していた。
「その危惧があるかないか。それも四精選に調けばいいんじゃないか?」
「そうだね。訊ねれば本当のことは言ってくれるとは思う。ボクを気遣って無理をしなければね」
四精霊は自分たちの愛し子であるレスターをとても愛してくれている。
そのために彼のためなら無理をしがちなのだ。
現実に無理だとわかっていることでもなんとかしようとする。
それは綾都たちがルパートたちと逢ったときの場面を思い出しても証明されている。
あのときだって四精霊にはわかっていたはずなのだ。
あの場をなんとかできても、自分たちは消滅する、と。
それでもレスターが望んだから、そして綾都たちを放っておけないから、四精霊は無理をし
て結果として消滅した。
朝斗がルパートたちに頼み、綾都の助力があったおかげで事なきを得たが。
あのときと同じことにならないか。
そんな危惧がレスターから消えない。
物心つく前から傍にいて愛してくれる四精霊は、彼にとって親も同然。
今では大事な友なので。
「その辺はルパートたちに任せれば平気だろう」
「瀬希?」
「ふたりには朝斗と違って、自分たちが存在する意味も、それによって与える影響力も把握している感じがある。だったら今自分たちが力を与えたら、四精霊が暴走するかどうか、彼らにならわかるはずだ」
「綾はどう思う? あのふたりなら四精霊の現状を正確に把握できると思う?」
「うーん。なんとなくだけどね? できる気がするよ。ふたりの発する気が精霊たちに近いからかな?」
綾都の小首を傾げた言葉にレスターは意外そうな顔をした。
彼はそんなふうに感じたことがなかったので。
やはり綾都は特別らしい。
レスターは綾都、朝斗、ルパート、ルノエの発する気は独持だとしか感じられない。
なにに踏似しているかなんて判断できないのだ。
それを見抜くあたり、綾都の潜在能力の強大さが証明されている。
「だったら善は急げだね。ルパートたちを呼んでくれるように朝斗に弱まないと」
レスターが立ち上がろうとすると、そんな彼を気遣って綾都が声を投けた。
「ぼくが頼みに行ってくるから、レスターは休んでて」
「でも」
「最近、全然休んでないでしょ? 少しの間でもいいから休休めてほしいんだ。ぼくなら平気だから」
「レスター。わたしが綾都に付き合うから心配はしなくていい。異常事態には対応できなくても、綾都を護ることくらいは、わたしにだってできるから」
「ありがとう、綾、潮希」
感謝を告げて頭を下げるレスターをおいてふたりは部屋をあとにした。
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