天則(リタ)の旋律

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第七章 運命の星

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「夜叉王が天を抜けた理由が阿修羅の御子なら納得できると思わないか? 阿修羅のおふたり」

「確かに。しかしするとずっと生命を狙ってきた?」

「その可能性も捨てきれないな。夜叉王が天を抜けたのが10年前。その間なにもなかったとは思いにくい」

「10年経ってから討伐に動くなんて遅すぎますよ、夜叉の君」

「志岐。口が過ぎるぞ。仮にも相手は夜叉の君だ」

「済みません、紫瑠さま」

「どうやらそちらは主君筋らしいな。長老の子か?」

「それに答える義務はないな」

 実は王子の紫瑠はそのことだけは伏せていた。

 宿命付けられた天敵同士。

 その絆がどう動くかわからない現在、手の内は明かせなくて。

「恩を売るために教えるんだが」

「なんだ?」

「あの静羅という人間の傍には東天王と南天王がいるぞ」

「なに?」

「東天王と南天王が?」

 難しい顔になってしまうふたりである。

 それは予想外の情報だった。

「ごく親しい間柄のようだった。俺が知っているのはそれだけだが。ただ見慣れぬ名で呼んでいたから、たぶん素性は隠しているんだろう」

「そうか。教えてくれて助かった。礼を言う」

「大したことじゃないさ」

「でも、助かりました。これで対応も違ってきますから」

「静羅と出逢ったときにも思ったが、阿修羅族にはどうも惹かれてしまうな、俺は」

「……え?」

「父上が阿修羅の御子を狙っているなら止めたい。そう思っているのは本心だ。二心はない」

 笑えば晴れやかな印象になる。

 夜叉の王子に対する認識を新たにする紫瑠だった。




 その瞬間、静羅は呆気に取られてしまった。

 教壇に立つ3人を見て。

「松村柘那です。どうかよろしくお願い致します」

 ペコリと柘那がお辞儀する。

「柘那のいとこの松村志岐です。よろしく」

 柘那に小突かれて志岐もお辞儀する。

 そんなふたりを苦笑しながら眺めて、最後に夜叉の王子が名乗った。

「葛城北斗。帰国子女だから1学年遅れているがよろしく」

(なんでラーヤ・ラーシャまで。この分だと紫瑠も3年辺りに転校してきてるな。でも、これじゃあ和哉の機嫌が悪くなるだけじゃないか。
 この間の件でラーヤ・ラーシャを恨んでるだろうし。帰国子女? 胡散臭いぞ。物凄く。俺のクラスに入るための方便なんじゃないのか?
 その証拠に最近になっていきなり3人も転校していったし。あれ、変だと思ってたんだ。もしかしてあいつらの仕業か?)

 神ならそのくらい簡単だろう。

 同じ日に転校してくるなんて仲間なんだろうか。

 後で確認した方がいいかもしれない。

「静羅」

 ラーシャが手を振れば、それに負けまいとするかのように、柘那と志岐も彼の名を呼んだ。

「「静羅さん」」

「なんだ。高樹。知り合いか?」

「えっとまあなんというか、その……」

 和哉の視線を気にして静羅は曖昧な返事だ。

「まあいい。知り合いなら色々教えてやってほしい。その方が高樹のためにもなる。いつまでも殻に閉じ籠るのは良くないからな」

 この教師は静羅の事情をよく知らない。

 最近になって交通事故にあった担任の代わりとして赴任してきた教師である。

 そのせいでそんなことを言ってしまったのだ。

 お陰で和哉の機嫌がまた悪くなったが。

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