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第四章 宿星、集う
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「壊滅状態ってどこをどうしたらそうなんだよ」
呆れ顔の東夜に和哉が笑いながら説明を渡す。
「おまえは知らないだろうけどな。静羅にはその手の才能はないんだ。小学部の5年のときだったかな? 飯盒炊飯でさ、静羅の班が作った飯なんて食えたもんじゃなかったんだぞ。しかもそれを平然と平らげるし。オレはそれくらいなら食べないほうがいいと思って、その夜はおかずだけで我慢したけど」
和哉は静羅の護衛なので、どんなときも静羅の傍にいる。
その証拠に小学1年から中学3年まで、ふたりは同じクラスだった。
これは作為の結果である。
高校では離ればなれになったが、今日、同じクラスになったので、くされ縁はまだまだ続くのである。
「ところで静羅さん。もうすぐ5月祭って実際にはなにをするんですか?」
「なにって……なんか模擬店が沢山出るって聞いてるな。翔南は関西の学校だろ? そのせいかお祭り騒ぎが大好きで、こういう催し物がよくあるんだってさ。5月祭は3日続くって聞いてる。生徒だけが楽しむ最初の2日間と、父兄も参加できる3日目と。この頃は勉強にならないらしいぜ」
「で。おまえのクラスはなにをやるんだよ、静羅?」
「メイド喫茶」
「は?」
「だから、メイド喫茶だって言ったんだよ、東夜」
「どんな高校だよ」
「俺は参加しないけど女子にメイドやらせて、男子は厨房やるらしいぜ? 女子の数が足りないとかで最初は俺にまでメイドやれとか斉藤の奴がうるさかったけど」
「「静羅がメイド」」
思わず妄想してしまう和哉と東夜である。
さぞ可愛いだろう。
フリフリレースのメイド服に身を包んだ静羅は。
但し……口を開かなければ、だが。
「メイドやるくらいならホストでもやってる方がまだマシだっての」
「ホストって、おまえ、どこで覚えてくるんだよ、そういう言葉」
「テレビでやってた。俺、あんまりテレビとか見なかったけど、見たら意外な常識教えてくれるぜ?」
「静羅さんにはメイドもホストも無理だと思いますけど」
「忍。なにもそんなホントのこといわなくても」
「だって人を楽しませるなんて、静羅さんには無理でしょう? お世辞も言えないでしょうし」
「そりゃそうだけど」
四苦八苦している東夜を尻目に、静羅はやれやれと肩を竦めた。
「とりあえず今日は仕方ないにしても明日は掃除だな。洗い物もしないといけないし、どこかでお手伝いでも雇うか」
「学校の寮でそこまでしていいのかよ、和哉」
「許可はもぎ取るさ、東夜」
あっさりと答える和哉である。
静羅のためなら多少の厄介事は片付ける覚悟の和哉だった。
「5月祭も終わってとうとう夏休みだな」
部屋でゆっくりノビをして静羅は身体を休ませる。
和哉がきてからというもの遅刻をしなくなった静羅に学校側は大変嬉しがっていた。
和哉は実家にいた頃と変わりなく、朝の5時には静羅を起こしにきていた。
通いの家政婦は昼間、だれもいない時間帯に掃除だけをやってくれる。
さすがに違反だとわかっていてキッチンを使う仕事は任せられないので。
仕方なく静羅の食事は和哉が作っていた。
最初は本を片手にやっていたのだが、何事も極めなければ気がすまない和哉である。
あっという間に料理を覚えて東夜や忍にご馳走するまでになっていた。
手伝いを申し出てくれたのが忍である。
東夜も申し出てくれたが何度か手伝ってもらった後で、和哉は苦笑してこう言った。
「東夜も静羅のお仲間だったのか。手伝いはもういいぜ。余計な手間が増える」
「酷いな」
苦笑する東夜に和哉が言い返した。
「悪いと思うなら買い出しくらいやってくれ」
「それくらいなら」
と、東夜が引き受けて4人の食事は、主に東夜が食料品や日用品の買い出し。
和哉と忍が料理関係をするという形で毎日なんとかしていた。
呆れ顔の東夜に和哉が笑いながら説明を渡す。
「おまえは知らないだろうけどな。静羅にはその手の才能はないんだ。小学部の5年のときだったかな? 飯盒炊飯でさ、静羅の班が作った飯なんて食えたもんじゃなかったんだぞ。しかもそれを平然と平らげるし。オレはそれくらいなら食べないほうがいいと思って、その夜はおかずだけで我慢したけど」
和哉は静羅の護衛なので、どんなときも静羅の傍にいる。
その証拠に小学1年から中学3年まで、ふたりは同じクラスだった。
これは作為の結果である。
高校では離ればなれになったが、今日、同じクラスになったので、くされ縁はまだまだ続くのである。
「ところで静羅さん。もうすぐ5月祭って実際にはなにをするんですか?」
「なにって……なんか模擬店が沢山出るって聞いてるな。翔南は関西の学校だろ? そのせいかお祭り騒ぎが大好きで、こういう催し物がよくあるんだってさ。5月祭は3日続くって聞いてる。生徒だけが楽しむ最初の2日間と、父兄も参加できる3日目と。この頃は勉強にならないらしいぜ」
「で。おまえのクラスはなにをやるんだよ、静羅?」
「メイド喫茶」
「は?」
「だから、メイド喫茶だって言ったんだよ、東夜」
「どんな高校だよ」
「俺は参加しないけど女子にメイドやらせて、男子は厨房やるらしいぜ? 女子の数が足りないとかで最初は俺にまでメイドやれとか斉藤の奴がうるさかったけど」
「「静羅がメイド」」
思わず妄想してしまう和哉と東夜である。
さぞ可愛いだろう。
フリフリレースのメイド服に身を包んだ静羅は。
但し……口を開かなければ、だが。
「メイドやるくらいならホストでもやってる方がまだマシだっての」
「ホストって、おまえ、どこで覚えてくるんだよ、そういう言葉」
「テレビでやってた。俺、あんまりテレビとか見なかったけど、見たら意外な常識教えてくれるぜ?」
「静羅さんにはメイドもホストも無理だと思いますけど」
「忍。なにもそんなホントのこといわなくても」
「だって人を楽しませるなんて、静羅さんには無理でしょう? お世辞も言えないでしょうし」
「そりゃそうだけど」
四苦八苦している東夜を尻目に、静羅はやれやれと肩を竦めた。
「とりあえず今日は仕方ないにしても明日は掃除だな。洗い物もしないといけないし、どこかでお手伝いでも雇うか」
「学校の寮でそこまでしていいのかよ、和哉」
「許可はもぎ取るさ、東夜」
あっさりと答える和哉である。
静羅のためなら多少の厄介事は片付ける覚悟の和哉だった。
「5月祭も終わってとうとう夏休みだな」
部屋でゆっくりノビをして静羅は身体を休ませる。
和哉がきてからというもの遅刻をしなくなった静羅に学校側は大変嬉しがっていた。
和哉は実家にいた頃と変わりなく、朝の5時には静羅を起こしにきていた。
通いの家政婦は昼間、だれもいない時間帯に掃除だけをやってくれる。
さすがに違反だとわかっていてキッチンを使う仕事は任せられないので。
仕方なく静羅の食事は和哉が作っていた。
最初は本を片手にやっていたのだが、何事も極めなければ気がすまない和哉である。
あっという間に料理を覚えて東夜や忍にご馳走するまでになっていた。
手伝いを申し出てくれたのが忍である。
東夜も申し出てくれたが何度か手伝ってもらった後で、和哉は苦笑してこう言った。
「東夜も静羅のお仲間だったのか。手伝いはもういいぜ。余計な手間が増える」
「酷いな」
苦笑する東夜に和哉が言い返した。
「悪いと思うなら買い出しくらいやってくれ」
「それくらいなら」
と、東夜が引き受けて4人の食事は、主に東夜が食料品や日用品の買い出し。
和哉と忍が料理関係をするという形で毎日なんとかしていた。
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