275 / 285
10章
10話 邪神じゃん
しおりを挟む
緩衝地帯に舞う土埃が晴れてきた。
「予想通りとはいえ、酷いな」
着弾点を中心に巨大なクレーターができている。
国境の町に被害がないのは、縁が追加した結界機能のお陰だろう。
しかし、結界で守られていないクレーター周辺の被害は酷いものだ。
死体なのか負傷者なのか、この高度ではいまいちわからないが、あちこちに人間が散らばっている。あれらが先程まで綺麗に隊列を組んでいた帝国軍人とは、知っていなければ結び付かないだろう。
公国側の混乱も酷い。
掃討戦に打って出ようと、公王に掛け合っている集団がいる。
その集団を公王が抑えているようだ。
英断だな。
今出ても、大した戦果にはならない。むしろ、窮鼠にガップリ噛まれるかもしれない。
「帝国軍が潰走し始めたな」
負傷者を引き摺って逃げる兵も、自分の足を引き摺っている。
「指揮官っぽいのは生きてる?」
「中隊長クラスはいますけど、全体を指揮できる人は中央に集まっていたようです」
開戦前の最終打ち合わせかなにかかな?
「なら、無秩序に撤退する感じかな」
「いえ。あそこをご覧ください」
ミーネの指す方を見ると、一人の青年を中心に、十人ちょっとという少数ではあるが組織的に動いていた。
「放っておいても大丈夫か……ダメっぽい」
町の方を見ると、騎兵の一部が城門を開けるよう門兵に迫っている。
公王の制止を聞いていないようだ。
「追撃しちゃうと、公王陛下の望み通りにはならない、かな?」
「そうですね。最悪、ミリタリーバランスが大きく崩れます」
王国が、公国を落とすより帝国を落とす方を優先しかねない。
そうなると、公国の価値は大暴落だ。……大暴落は大袈裟だな。血筋の価値は落ちない。
とはいえ、帝国滅亡後に公国を売り込んでも、いまいち乗り気はしないだろう。
「帝国、亡びちゃうかな?」
「下手すると」
ここで公国の追撃を許すと、本当に亡びかねない。
「干渉する気はなかったけど……ミーネ、ちょっと行って止めてきて」
「そうですね。止めた方が良さそうです」
ミーネはそう言い残して、城門から出ようとする騎兵の頭上へスレイプニルを走らせた。
ベアトもその後に続く。
「ユリアーナ、王国は帝国に攻め込むかな?」
「普通なら行かないわね。初戦は勝てるでしょうけど、その後は帝国も持ち直すだろうし、勝ったとしても犠牲が多いでしょうね。あと、占領地を維持するリソースが足りない」
「でも、この戦力差では、余程のことがない限り死傷者ゼロで勝てる」
「あそこで負傷者を纏めている兵士が、上手く指揮してくれないかしら」
「正しく『他力本願』だね」
彼の今後の活躍を期待しよう。
ミーネとベアトを見上げる騎兵たちは、今度は二人と押し問答を始めたようだ。
「ユリアーナ、国境の王国軍は動きそう?」
ユリアーナの視線が東に向く。
「斥候がこの状況を報せに戻ってるわ。指揮官によっては、戻り次第、国境の川を渡って……公国領を避けて、緩衝地帯沿いに進軍するのかしら? 普通は動かないけど」
「それも指揮官次第。誰かはわかってる?」
「たしか、宰相の派閥だったはず。名前は忘れた。実戦経験のない貴族のお坊ちゃん、って言ってたような?」
ロジーネ姉さんから聞いたんだろう。
姉さんは、報告書に書くほどではない情報は、世間話のように口頭で報告する。
反対に弟子たちは、事細かく調べて重要な情報とそれ以外を分けて報告する。
人それぞれだ。
聞く側である僕としては、後者の方がありがたい。必要かどうかはともかく、一応、全部書面にして報告してほしい。
しかし、ユリアーナは前者の方がいいと言っていた。後で読むのが面倒なんだとか。
聞く側も人それぞれだ。
「この状況を知ったら、帝国を亡ぼすチャンスだって思っちゃうよね」
「そう思わないのは、例のメーベルトだけじゃないかしら」
いっそ、王国が深入りしすぎて手痛いしっぺ返しを食らえば、公国の価値は落ちずに済む。
「例のメーベルトじゃなくても、広い帝国領を占領できるだけの人的資源がないのはわかるでしょ」
「それがわからなくて、旧日本軍は負けたんだよ」
日本人として耳がいた……くないな。生まれる前の事なんか知らん。
でもまあ、教訓として。
「自分の財布の中身は把握しよう」
財布の中身以上の額は払えない。払った振りをしても、それは自分の物になるなるわけではない。
ちなみに、僕のポケットの空間収納には、過保護な義妹と狂信者が大量の金貨を入れてくれているけど、どれくらい入っているのかは知らない。
一年くらい前に数えた時は、五百枚まで数えて面倒になった。たぶん、千枚はあったよ。
「動かないようなら、指揮官を唆しましょう」
「なんか、唆してばかりだな」
「唆す蛙、ね」
「あまり本家のお株を奪っていると、本家に丸呑みにされちゃうよ」
パクッといかれる。
「なにを知恵の実にする?」
「まあ、無難に功績じゃないかしら。でも、私たちが唆したのがバレるとメンドイから、夢に干渉するのがいいでしょうね」
「女神が夢に干渉するって、本当は吉兆なのにね」
破滅に向かって一直線だ。
「邪神かな?」
「狐部隊は大体邪神よね」
隊長は狂信者だけどね。
「一番過激なのは狐だけど、純粋な破壊力なら杖部隊でしょ」
「翼じゃないの? 空から一方的に広域殲滅魔法を連発する連中よ?」
その言い方だと虐殺者だ。
「竜もよね。二人しかいないけど殲滅力は他と大差ないし、なにより、見た目の威圧感が凄い」
「見た目なら、人馬部隊の突撃も凄いよ。あと、樹部隊もね。ヒッポグリフに乗って、空からの〈精霊魔法〉は圧巻だよ」
「どっちもマゾ豚なのに、格好いいのよね」
そうだね。
特に上位精霊による航空爆撃は美しいの一言に尽きる。あの美しい景色を作った連中が、寝室ではシャンデリアと化して悦んでいるんだ。
「猫部た」
「ちょっと待て」
気になることができたので、続けようとするユリアーナに待ったをかける。
「狼部隊が一番マシとか思ってない?」
「マシどころかまともだと思ってる」
なに言ってんだ、こいつ。
「狼部隊は、他と比べて飛び抜けたなにかはない」
「うん。ないわね」
「でも、汎用性は一番だよ」
空は、スレイプニルに乗れば飛べるし、魔法もそこそこ使える。
地上も、スレイプニルに乗れば人馬族並みの機動力がある。
あ、市街地や森などの、障害物が沢山ある地形では狼部隊が一番だった。
でもまあ。
「どの部隊を派遣するか悩んだら、とりあえず狼部隊だな」
「それで私が忙しいのか」
「割りとエルフリーデに丸投げしてるよね?」
副隊長のエルフリーデが忙しそうにしているのは、よく見かける。
「そうだ。リーゼが言ってた医療班はどうなったの?」
都合が悪くなるとすぐに話を逸らす。まあ、付き合うけど。
「ああ、ラルスの件で必要になったんだよな」
リーゼが産んだラルスは、生まれつきプラーナが多い、プラーナ過多症という病気に罹っていた。
今でこそ元気に育っているけど、一時は本当に危なかった。
リーゼはその経験から、子供たちのために医療班が必要と訴え、その設立のために動いている。
しかし、まだ設立には至っていない。
「医療は学ぶことが多いからな」
医療に必要な知識や技術や医療機器が足りない。
なにより知識が全く足りていない。
こちらの世界の医療水準は低いので、こちらの世界固有の病気の知識と、人族以外の種族の医療知識が足りない。
「縁と一緒に研究してるんだけど、縁って、人に説明するのが下手だろ? だから、リーゼも苦労してるみたい」
「ええ。私も縁の授業を受けたけど、さっぱりわからなかったわ」
僕はどうせわからないだろうから、受講すらしなかった。
眼下を見ると、公国軍が落ち着きを取り戻したようだ。ミーネとベアトがこちらに上昇してくる。
「カトリン」
明後日の方を見ていたカトリンに呼び掛けると、気を抜いていたようでビクッとなった。ユリアーナはそれにビックリしたようで、上手く表情に出さなかったけど、麗しの尻尾がピーンとなっていた。
「うちにはいくつもの選択肢がある。カトリンがなりたいものも、きっとある。……たぶん」
「断言しないのがマゴイチよね」
カトリンの返事を待つ。
待たせているのを察したカトリンが、慌てて言葉を探す。
「まだ、わかんない」
まあ、七歳で将来を決める必要はない。そうフォローする前にカトリンが続ける。
「でも、人に誉められる仕事がいい」
この世界は、職業に貴賤がある。
娼婦と奴隷商は賤に当たる。
娼婦だったカトリンが誉められる職業を望むのも理解できる。
「そっか。……そうだね。誉められる仕事をしたいよね」
傭兵は誉められる仕事なのかね?
一応、依頼人は選んでるつもりだけど、今までの依頼人って、シェーンシュテット公国とイケオジ商爵だけ。
周囲からは、町で食糧などの物資を補充しないし、雇い主もなく行商をするわけでもないのに維持費を稼げる謎の集団に見えるんだろうな。
「あれ? 俺らって誉められることした?」
「怒られることはしたわよ」
「……これからは、できるだけ誉められることをしよう」
たぶん無理だと思うけど、言葉にしておくのは大事。
緩衝地帯の北に辛うじて見える帝国の砦から援軍が出陣したようで、荒野に土煙が出ている。
「これで帝国が万全の準備をしてくれれば、王国の兵力を削げる、かな?」
「上手く唆すぞ」
やっぱ邪神じゃん。
「まあ、なんにせよ、カトリンがやりたいことを、俺たちは手伝うからさ、気長にやろうよ」
まだ七歳なんだ。ノンビリ気長にいこう。
「予想通りとはいえ、酷いな」
着弾点を中心に巨大なクレーターができている。
国境の町に被害がないのは、縁が追加した結界機能のお陰だろう。
しかし、結界で守られていないクレーター周辺の被害は酷いものだ。
死体なのか負傷者なのか、この高度ではいまいちわからないが、あちこちに人間が散らばっている。あれらが先程まで綺麗に隊列を組んでいた帝国軍人とは、知っていなければ結び付かないだろう。
公国側の混乱も酷い。
掃討戦に打って出ようと、公王に掛け合っている集団がいる。
その集団を公王が抑えているようだ。
英断だな。
今出ても、大した戦果にはならない。むしろ、窮鼠にガップリ噛まれるかもしれない。
「帝国軍が潰走し始めたな」
負傷者を引き摺って逃げる兵も、自分の足を引き摺っている。
「指揮官っぽいのは生きてる?」
「中隊長クラスはいますけど、全体を指揮できる人は中央に集まっていたようです」
開戦前の最終打ち合わせかなにかかな?
「なら、無秩序に撤退する感じかな」
「いえ。あそこをご覧ください」
ミーネの指す方を見ると、一人の青年を中心に、十人ちょっとという少数ではあるが組織的に動いていた。
「放っておいても大丈夫か……ダメっぽい」
町の方を見ると、騎兵の一部が城門を開けるよう門兵に迫っている。
公王の制止を聞いていないようだ。
「追撃しちゃうと、公王陛下の望み通りにはならない、かな?」
「そうですね。最悪、ミリタリーバランスが大きく崩れます」
王国が、公国を落とすより帝国を落とす方を優先しかねない。
そうなると、公国の価値は大暴落だ。……大暴落は大袈裟だな。血筋の価値は落ちない。
とはいえ、帝国滅亡後に公国を売り込んでも、いまいち乗り気はしないだろう。
「帝国、亡びちゃうかな?」
「下手すると」
ここで公国の追撃を許すと、本当に亡びかねない。
「干渉する気はなかったけど……ミーネ、ちょっと行って止めてきて」
「そうですね。止めた方が良さそうです」
ミーネはそう言い残して、城門から出ようとする騎兵の頭上へスレイプニルを走らせた。
ベアトもその後に続く。
「ユリアーナ、王国は帝国に攻め込むかな?」
「普通なら行かないわね。初戦は勝てるでしょうけど、その後は帝国も持ち直すだろうし、勝ったとしても犠牲が多いでしょうね。あと、占領地を維持するリソースが足りない」
「でも、この戦力差では、余程のことがない限り死傷者ゼロで勝てる」
「あそこで負傷者を纏めている兵士が、上手く指揮してくれないかしら」
「正しく『他力本願』だね」
彼の今後の活躍を期待しよう。
ミーネとベアトを見上げる騎兵たちは、今度は二人と押し問答を始めたようだ。
「ユリアーナ、国境の王国軍は動きそう?」
ユリアーナの視線が東に向く。
「斥候がこの状況を報せに戻ってるわ。指揮官によっては、戻り次第、国境の川を渡って……公国領を避けて、緩衝地帯沿いに進軍するのかしら? 普通は動かないけど」
「それも指揮官次第。誰かはわかってる?」
「たしか、宰相の派閥だったはず。名前は忘れた。実戦経験のない貴族のお坊ちゃん、って言ってたような?」
ロジーネ姉さんから聞いたんだろう。
姉さんは、報告書に書くほどではない情報は、世間話のように口頭で報告する。
反対に弟子たちは、事細かく調べて重要な情報とそれ以外を分けて報告する。
人それぞれだ。
聞く側である僕としては、後者の方がありがたい。必要かどうかはともかく、一応、全部書面にして報告してほしい。
しかし、ユリアーナは前者の方がいいと言っていた。後で読むのが面倒なんだとか。
聞く側も人それぞれだ。
「この状況を知ったら、帝国を亡ぼすチャンスだって思っちゃうよね」
「そう思わないのは、例のメーベルトだけじゃないかしら」
いっそ、王国が深入りしすぎて手痛いしっぺ返しを食らえば、公国の価値は落ちずに済む。
「例のメーベルトじゃなくても、広い帝国領を占領できるだけの人的資源がないのはわかるでしょ」
「それがわからなくて、旧日本軍は負けたんだよ」
日本人として耳がいた……くないな。生まれる前の事なんか知らん。
でもまあ、教訓として。
「自分の財布の中身は把握しよう」
財布の中身以上の額は払えない。払った振りをしても、それは自分の物になるなるわけではない。
ちなみに、僕のポケットの空間収納には、過保護な義妹と狂信者が大量の金貨を入れてくれているけど、どれくらい入っているのかは知らない。
一年くらい前に数えた時は、五百枚まで数えて面倒になった。たぶん、千枚はあったよ。
「動かないようなら、指揮官を唆しましょう」
「なんか、唆してばかりだな」
「唆す蛙、ね」
「あまり本家のお株を奪っていると、本家に丸呑みにされちゃうよ」
パクッといかれる。
「なにを知恵の実にする?」
「まあ、無難に功績じゃないかしら。でも、私たちが唆したのがバレるとメンドイから、夢に干渉するのがいいでしょうね」
「女神が夢に干渉するって、本当は吉兆なのにね」
破滅に向かって一直線だ。
「邪神かな?」
「狐部隊は大体邪神よね」
隊長は狂信者だけどね。
「一番過激なのは狐だけど、純粋な破壊力なら杖部隊でしょ」
「翼じゃないの? 空から一方的に広域殲滅魔法を連発する連中よ?」
その言い方だと虐殺者だ。
「竜もよね。二人しかいないけど殲滅力は他と大差ないし、なにより、見た目の威圧感が凄い」
「見た目なら、人馬部隊の突撃も凄いよ。あと、樹部隊もね。ヒッポグリフに乗って、空からの〈精霊魔法〉は圧巻だよ」
「どっちもマゾ豚なのに、格好いいのよね」
そうだね。
特に上位精霊による航空爆撃は美しいの一言に尽きる。あの美しい景色を作った連中が、寝室ではシャンデリアと化して悦んでいるんだ。
「猫部た」
「ちょっと待て」
気になることができたので、続けようとするユリアーナに待ったをかける。
「狼部隊が一番マシとか思ってない?」
「マシどころかまともだと思ってる」
なに言ってんだ、こいつ。
「狼部隊は、他と比べて飛び抜けたなにかはない」
「うん。ないわね」
「でも、汎用性は一番だよ」
空は、スレイプニルに乗れば飛べるし、魔法もそこそこ使える。
地上も、スレイプニルに乗れば人馬族並みの機動力がある。
あ、市街地や森などの、障害物が沢山ある地形では狼部隊が一番だった。
でもまあ。
「どの部隊を派遣するか悩んだら、とりあえず狼部隊だな」
「それで私が忙しいのか」
「割りとエルフリーデに丸投げしてるよね?」
副隊長のエルフリーデが忙しそうにしているのは、よく見かける。
「そうだ。リーゼが言ってた医療班はどうなったの?」
都合が悪くなるとすぐに話を逸らす。まあ、付き合うけど。
「ああ、ラルスの件で必要になったんだよな」
リーゼが産んだラルスは、生まれつきプラーナが多い、プラーナ過多症という病気に罹っていた。
今でこそ元気に育っているけど、一時は本当に危なかった。
リーゼはその経験から、子供たちのために医療班が必要と訴え、その設立のために動いている。
しかし、まだ設立には至っていない。
「医療は学ぶことが多いからな」
医療に必要な知識や技術や医療機器が足りない。
なにより知識が全く足りていない。
こちらの世界の医療水準は低いので、こちらの世界固有の病気の知識と、人族以外の種族の医療知識が足りない。
「縁と一緒に研究してるんだけど、縁って、人に説明するのが下手だろ? だから、リーゼも苦労してるみたい」
「ええ。私も縁の授業を受けたけど、さっぱりわからなかったわ」
僕はどうせわからないだろうから、受講すらしなかった。
眼下を見ると、公国軍が落ち着きを取り戻したようだ。ミーネとベアトがこちらに上昇してくる。
「カトリン」
明後日の方を見ていたカトリンに呼び掛けると、気を抜いていたようでビクッとなった。ユリアーナはそれにビックリしたようで、上手く表情に出さなかったけど、麗しの尻尾がピーンとなっていた。
「うちにはいくつもの選択肢がある。カトリンがなりたいものも、きっとある。……たぶん」
「断言しないのがマゴイチよね」
カトリンの返事を待つ。
待たせているのを察したカトリンが、慌てて言葉を探す。
「まだ、わかんない」
まあ、七歳で将来を決める必要はない。そうフォローする前にカトリンが続ける。
「でも、人に誉められる仕事がいい」
この世界は、職業に貴賤がある。
娼婦と奴隷商は賤に当たる。
娼婦だったカトリンが誉められる職業を望むのも理解できる。
「そっか。……そうだね。誉められる仕事をしたいよね」
傭兵は誉められる仕事なのかね?
一応、依頼人は選んでるつもりだけど、今までの依頼人って、シェーンシュテット公国とイケオジ商爵だけ。
周囲からは、町で食糧などの物資を補充しないし、雇い主もなく行商をするわけでもないのに維持費を稼げる謎の集団に見えるんだろうな。
「あれ? 俺らって誉められることした?」
「怒られることはしたわよ」
「……これからは、できるだけ誉められることをしよう」
たぶん無理だと思うけど、言葉にしておくのは大事。
緩衝地帯の北に辛うじて見える帝国の砦から援軍が出陣したようで、荒野に土煙が出ている。
「これで帝国が万全の準備をしてくれれば、王国の兵力を削げる、かな?」
「上手く唆すぞ」
やっぱ邪神じゃん。
「まあ、なんにせよ、カトリンがやりたいことを、俺たちは手伝うからさ、気長にやろうよ」
まだ七歳なんだ。ノンビリ気長にいこう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
126
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる