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2章
16話 しゅ~りょ~
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探索六日目には地下百階に辿り着いた。
階層主は、ちょっと大きめのマンションくらいのドラゴン。
勿論、瞬殺。
鳴き声が格好良かった。途中で首を落とされて途切れたけど。
獣人種には凄くうるさかったみたい。
けどね、ユリアーナ。「黙れ」って首を斬り落とすのは、どうかと思うよ。
まだ昼前だけど、今日は地下百一階に下りてから野営だ。
昼食のドラゴンステーキを食べて、午後はこの場所を拠点に地下百十階まで探索する予定だったのだけど……ドラゴンステーキが美味すぎた。
おかわりのドラゴンステーキを食べながら話し合う。
このまま探索を続けて、ドラゴンがいるフロアを探して狩りまくるか、ユニコーンと同じように、亜竜からドラゴンを養殖するかで意見が分かれた。
階層主の肉がまだ残ってるし、重要度はそんなに高くないと僕は思っていた。だから。
「まずは、百十階まで探索してからじゃね?」
と、ウカの尻尾をモフりながら呟いたんだけど、これが採用された。
再びの養殖計画で、多くの命が失われるのを防げたようだ。
その時はそう思っていた。
その後、階層主ほどではないけど、そこそこの大きさのドラゴンが、百四階であっさり発見された。
とりあえず、そのドラゴンを試食してみたら、階層主ほどではないけど美味しかったので、こいつらを狩尽くすのかと思ったら、こいつらを階層主と同等の味になるまで進化させる養殖計画がスタートしてしまった。
僕には止められなかったよ。女性の食欲に口を挟める男っている? 勇者にも無理。それは勇気じゃなくて蛮勇だよ。
夕方頃になって、立地的に不便という理由で拠点を地下百五階に移動する。
この日は、どのドラゴンを養殖するかで、晩御飯はドラゴン肉の食べ比べになった。お腹いっぱいです。苦しいです。
*
翌日。
僕は、『ドラゴン養殖計画』という名の大量虐殺により死んでいくドラゴンたちの悲鳴を、仮面の下で死んだ目をしながら聞いていた。
ただただ「ごめんなさい」と繰り返すくらいしか、僕にはできなかったよ。
*
数千のドラゴンが天に召された後、晩御飯まで中途半端な時間だったから、地下百六階以降を探索することになった。
しかし、これはすぐに打ち切られた。
結論から言うと、地下百七階にダンジョンマスターがいたからだ。
地下百七階は、これまでと打って変わって、洞窟型のような剥き出しの岩場だった。
御影さんが言うには、「丁度、成長途中なのでは?」とのこと。これから何年かしたら、剥き出しの岩が整地され、石畳に覆われるのだろうか。
剥き出しの岩場の一本道を奥に進むと、石畳が敷かれた広い空間に出る。
その中心にそれはいた。
人の形をした黒い靄。
それは黒い靄をユラユラ揺らして佇むだけで動こうとしない。
遮蔽物がないから、こちらが見えてるはずなんだけどな。
どうやらこの広い空間がダンジョンマスターの部屋になっているようで、通路にいる限り動こうとしなかった。
しかし、通路から一歩踏み入ると、ピクンと反応する。なので、通路から〈魔物鑑定〉を使ってみた。
「んー? 『影人』? が、ダンマスの名前? 種族? か?」
〈魔物鑑定〉がカンストしてるのに、スキルは見れなかった。たぶん、〈鑑定抵抗〉でレジストされたんだろう。僕のバカみたいなプラーナで押し切れば見れるんだろうけど、ユリアーナの言葉でそれは中断させられた。
「マゴイチ。身体強化3と支援マシマシで」
「ん? 今日は様子見で明日にしない?」
「うん。様子見で斬ってくる。マーヤはフォローをお願い」
様子見でダンマスに挑むなよ。
とはいえ、ユリアーナの「さっさとやれ」的な無言の圧力に押されて、二人の身体強化を三段階目まで上げて、魔法強化やスキル強化を一括りにした支援増し増し強化を使う。……最低レベルの運強化は、ちょっと強くしておこう。
「ん。じゃあ、行ってくる」
隣にいるユリアーナの姿が消える。
ダンマスに視線を移すと……もう終わっていた。
残心のままのユリアーナの視線の先で、黒い靄が拡散し魔石が落ちる。
マーヤは、僕の隣で一歩踏み出した姿勢で固まっていた。
しゅ~りょ~。
様子見でダンマスが死んじゃったよ。
戸惑い顔のユリアーナが、魔石を拾って戻ってくる。
背中を見せた途端復活、なんてことはなく、普通に歩いて戻る。
「なんか……この空気、耐えられないわ」
うん。いたたまれないね。
マーヤ以外のみんなも、なにかあった時にすぐフォローできるよう構えてたのにね。
「なんだろうな。支援、要らなかったよね?」
「まあ、無くてもいけた、かも?」
最後の「かも」に、僕への気遣いが見える。
「魔王はもっと強いんだよね?」
魔王も瞬殺しちゃったら、僕たちこそ世界の敵だよ。
「強くなったとは思ったけど、ここまでとはね。やっぱり、マゴイチの〈支援魔法〉はどっかおかしいわ」
「とりあえず、ギルマスへの報告は、"苦戦した"ってことにしておく?」
「んー、どうかしら? ギルマスには普通に報告していいんじゃないかしら? ギルマスから国に報告する時は、上手く誤魔化してもらうけど」
まあ、ギルマスはともかく、国は僕らのことを知らないんだから、本当のことを報告しても信じてもらえないだろ。
「うん。イルザお姉さんに丸投げしよう」
考えるのが面倒だし。
「奥にある、あのでっかい魔石がダンジョンコアか」
広場に入り、奥に鎮座する真球のダンジョンコアの下にみんなが集まる。
「兄さん。これ、見た目はでっかい魔石だけど、中身は別物ですね。灰色だし。中身は兄さんが〈支援魔法〉に使ってるプラーナとマナの混合物ですね」
ダンジョンコアに手を翳す縁が教えてくれる。
「普通の魔石の中身は、魔物のプラーナで、階層主の魔石には、少しだけマナが混ざってました。まあ、混ざってるだけで、兄さんのパスみたいに融合はしてないんですけどね」
マーブルな感じか?
「けど、これは別物。おそらく、プラーナとマナが半々くらいですかね。兄さんのパスみたいに、綺麗に融合しています」
僕のパスって、綺麗に融合してるんだ。初めて知った。
ちなみに、俺が普段繋いでるパスは、プラーナが一割でマナが九割だ。〈支援魔法〉を強めに使う時でも、三割くらいかな。
「もっと色々調べたいけど、持って帰っちゃダメなんですよね?」
「ベンケン王国の管理ダンジョンだからね」
持ち帰ったのがバレたら捕まっちゃう。
「欲しいなぁ」
義妹に上目遣いでそんなこと言われたら、なんでも買ってあげたくなっちゃう。けど、これはダメ。
自分ルールで"犯罪行為はできるだけしない"って決めたから、これは持って帰っちゃダメだよ。
「未管理ダンジョンがあったら、積極的に潰そう」
言ったものの、あるかな?
「国内には、管理ダンジョンなら結構あるけど、未管理のダンジョンは……うん。知らないな」
ユリアーナにやんわり否定された。
*
地下百五階の拠点に戻り、明日からの予定を話し合う。
『ドラゴン養殖計画』の継続を、食いしん坊の由香と由希が〈威圧〉付きで僕に訴えたけど、却下した。可愛く訴えたら、結果は違ったかもね。
今日は探索七日目。予定は最長で二十日間。
ここから地上まで、一番足の遅いグリフォンに合わせても、全力で一日。余裕を見て二日と考えても、十日以上の余裕がある。
僕としては太陽が恋しいから早く帰りたい。
けど、女性陣はのんびり帰りたいそうだ。
まあ、『ドラゴン養殖計画』で食料は十二分にあるから、急ぐ必要もないか。
急ぐ理由もないし、手に負えないような、危険な魔物がいるわけでもない。ダンマスを倒したし、当面の危険もない。
だから、気を抜いていたのかもしれない。
「帰りがてら、ダンジョンデートするのも面白いかもね」
だから、余計なことを言ってしまった。
そこからは大変だった。
誰がどのフロアでデートするかで揉めた。
さすがに、十六人全員とデートするとなると、一日二人としても八日間も必要になる。
これは、ちょっとしんどい。
なので、代表者三名だけデートすることになった。
頑張って値引きしたよ。
最初、「せめて十人」とか言われたけど、無理。ちょっと前まで、女の子と手も繋いだこともないような童貞野郎だよ? 無理無理。
で、三名の代表は、それぞれ一日僕と二人っきりでダンジョンの一フロアをブラつき、他の面子は、デートの邪魔にならないように魔物を狩る。
ここまでは、思ったよりすんなり決まった。
ここからが問題。どうやって三名を決める?
戦闘能力なら、ユリアーナとマーヤに決まるだろう。
次いで縁かな。
剣術勝負なら、ユリアーナとツェツィーリア、ヘンリエッテ姉妹に決まるだろう。
いや、ロジーネ姉さんもあるか?
魔法対決なら、マーヤと縁が勝つ。
いや、イレーヌ、イヴェット母娘とロクサーヌ、フルール母娘の可能性もあるか。
大穴でシュェさんもあるかも。
あと、御影さんも何気に凄い。
料理勝負なら、由香と由希に決まる。
大穴は本田さん。
幼馴染みの胃袋を掴むために、頑張ってたらしい。
ああ、でも、御影さんがたまに作る料理も美味しい。美味しいというか、落ち着く?
裁縫勝負なら、エウフェミアさんが圧勝だな。
次点は本田さんかな。
これも花嫁修行として頑張ったそうだ。
その次はシュェさんかな。
エウフェミアさんと一緒にお喋りしながら服を作ってるのをよく見る。
まあ、どの勝負でも角が立つ。それぞれ得意分野が違うからね。
だからといって、僕の一存で決めるのも角が立つ。こちらの角の尖り具合は凄そうだ。遠慮したい。
じゃんけん。
これはダメだった。動体視力が凄すぎる。
"どっちが上手く後出しするか"の勝負になった。
なので、僕が作ったアミダくじで決めた。
僕が鼻唄を歌いながら作ったアミダくじで選ばれたのは、エウフェミアさん、シュェさん、ツェツィーリア、ヘンリエッテ姉妹に決定。
四人じゃん。
なんか「双子は二人で一人です」という意見をごり押しされた。まさか当たるとは思わなかったのか、みんな了承したけど、当たった瞬間は、みんな「了承するんじゃなかった!」って顔してた。
そんなわけで、明日から三日間、それぞれ一日ずつ、一組二人で一日だけど、この四人とデートすることになった。
……そもそもの話なんだけど、ダンジョンデートって、楽しいの?
階層主は、ちょっと大きめのマンションくらいのドラゴン。
勿論、瞬殺。
鳴き声が格好良かった。途中で首を落とされて途切れたけど。
獣人種には凄くうるさかったみたい。
けどね、ユリアーナ。「黙れ」って首を斬り落とすのは、どうかと思うよ。
まだ昼前だけど、今日は地下百一階に下りてから野営だ。
昼食のドラゴンステーキを食べて、午後はこの場所を拠点に地下百十階まで探索する予定だったのだけど……ドラゴンステーキが美味すぎた。
おかわりのドラゴンステーキを食べながら話し合う。
このまま探索を続けて、ドラゴンがいるフロアを探して狩りまくるか、ユニコーンと同じように、亜竜からドラゴンを養殖するかで意見が分かれた。
階層主の肉がまだ残ってるし、重要度はそんなに高くないと僕は思っていた。だから。
「まずは、百十階まで探索してからじゃね?」
と、ウカの尻尾をモフりながら呟いたんだけど、これが採用された。
再びの養殖計画で、多くの命が失われるのを防げたようだ。
その時はそう思っていた。
その後、階層主ほどではないけど、そこそこの大きさのドラゴンが、百四階であっさり発見された。
とりあえず、そのドラゴンを試食してみたら、階層主ほどではないけど美味しかったので、こいつらを狩尽くすのかと思ったら、こいつらを階層主と同等の味になるまで進化させる養殖計画がスタートしてしまった。
僕には止められなかったよ。女性の食欲に口を挟める男っている? 勇者にも無理。それは勇気じゃなくて蛮勇だよ。
夕方頃になって、立地的に不便という理由で拠点を地下百五階に移動する。
この日は、どのドラゴンを養殖するかで、晩御飯はドラゴン肉の食べ比べになった。お腹いっぱいです。苦しいです。
*
翌日。
僕は、『ドラゴン養殖計画』という名の大量虐殺により死んでいくドラゴンたちの悲鳴を、仮面の下で死んだ目をしながら聞いていた。
ただただ「ごめんなさい」と繰り返すくらいしか、僕にはできなかったよ。
*
数千のドラゴンが天に召された後、晩御飯まで中途半端な時間だったから、地下百六階以降を探索することになった。
しかし、これはすぐに打ち切られた。
結論から言うと、地下百七階にダンジョンマスターがいたからだ。
地下百七階は、これまでと打って変わって、洞窟型のような剥き出しの岩場だった。
御影さんが言うには、「丁度、成長途中なのでは?」とのこと。これから何年かしたら、剥き出しの岩が整地され、石畳に覆われるのだろうか。
剥き出しの岩場の一本道を奥に進むと、石畳が敷かれた広い空間に出る。
その中心にそれはいた。
人の形をした黒い靄。
それは黒い靄をユラユラ揺らして佇むだけで動こうとしない。
遮蔽物がないから、こちらが見えてるはずなんだけどな。
どうやらこの広い空間がダンジョンマスターの部屋になっているようで、通路にいる限り動こうとしなかった。
しかし、通路から一歩踏み入ると、ピクンと反応する。なので、通路から〈魔物鑑定〉を使ってみた。
「んー? 『影人』? が、ダンマスの名前? 種族? か?」
〈魔物鑑定〉がカンストしてるのに、スキルは見れなかった。たぶん、〈鑑定抵抗〉でレジストされたんだろう。僕のバカみたいなプラーナで押し切れば見れるんだろうけど、ユリアーナの言葉でそれは中断させられた。
「マゴイチ。身体強化3と支援マシマシで」
「ん? 今日は様子見で明日にしない?」
「うん。様子見で斬ってくる。マーヤはフォローをお願い」
様子見でダンマスに挑むなよ。
とはいえ、ユリアーナの「さっさとやれ」的な無言の圧力に押されて、二人の身体強化を三段階目まで上げて、魔法強化やスキル強化を一括りにした支援増し増し強化を使う。……最低レベルの運強化は、ちょっと強くしておこう。
「ん。じゃあ、行ってくる」
隣にいるユリアーナの姿が消える。
ダンマスに視線を移すと……もう終わっていた。
残心のままのユリアーナの視線の先で、黒い靄が拡散し魔石が落ちる。
マーヤは、僕の隣で一歩踏み出した姿勢で固まっていた。
しゅ~りょ~。
様子見でダンマスが死んじゃったよ。
戸惑い顔のユリアーナが、魔石を拾って戻ってくる。
背中を見せた途端復活、なんてことはなく、普通に歩いて戻る。
「なんか……この空気、耐えられないわ」
うん。いたたまれないね。
マーヤ以外のみんなも、なにかあった時にすぐフォローできるよう構えてたのにね。
「なんだろうな。支援、要らなかったよね?」
「まあ、無くてもいけた、かも?」
最後の「かも」に、僕への気遣いが見える。
「魔王はもっと強いんだよね?」
魔王も瞬殺しちゃったら、僕たちこそ世界の敵だよ。
「強くなったとは思ったけど、ここまでとはね。やっぱり、マゴイチの〈支援魔法〉はどっかおかしいわ」
「とりあえず、ギルマスへの報告は、"苦戦した"ってことにしておく?」
「んー、どうかしら? ギルマスには普通に報告していいんじゃないかしら? ギルマスから国に報告する時は、上手く誤魔化してもらうけど」
まあ、ギルマスはともかく、国は僕らのことを知らないんだから、本当のことを報告しても信じてもらえないだろ。
「うん。イルザお姉さんに丸投げしよう」
考えるのが面倒だし。
「奥にある、あのでっかい魔石がダンジョンコアか」
広場に入り、奥に鎮座する真球のダンジョンコアの下にみんなが集まる。
「兄さん。これ、見た目はでっかい魔石だけど、中身は別物ですね。灰色だし。中身は兄さんが〈支援魔法〉に使ってるプラーナとマナの混合物ですね」
ダンジョンコアに手を翳す縁が教えてくれる。
「普通の魔石の中身は、魔物のプラーナで、階層主の魔石には、少しだけマナが混ざってました。まあ、混ざってるだけで、兄さんのパスみたいに融合はしてないんですけどね」
マーブルな感じか?
「けど、これは別物。おそらく、プラーナとマナが半々くらいですかね。兄さんのパスみたいに、綺麗に融合しています」
僕のパスって、綺麗に融合してるんだ。初めて知った。
ちなみに、俺が普段繋いでるパスは、プラーナが一割でマナが九割だ。〈支援魔法〉を強めに使う時でも、三割くらいかな。
「もっと色々調べたいけど、持って帰っちゃダメなんですよね?」
「ベンケン王国の管理ダンジョンだからね」
持ち帰ったのがバレたら捕まっちゃう。
「欲しいなぁ」
義妹に上目遣いでそんなこと言われたら、なんでも買ってあげたくなっちゃう。けど、これはダメ。
自分ルールで"犯罪行為はできるだけしない"って決めたから、これは持って帰っちゃダメだよ。
「未管理ダンジョンがあったら、積極的に潰そう」
言ったものの、あるかな?
「国内には、管理ダンジョンなら結構あるけど、未管理のダンジョンは……うん。知らないな」
ユリアーナにやんわり否定された。
*
地下百五階の拠点に戻り、明日からの予定を話し合う。
『ドラゴン養殖計画』の継続を、食いしん坊の由香と由希が〈威圧〉付きで僕に訴えたけど、却下した。可愛く訴えたら、結果は違ったかもね。
今日は探索七日目。予定は最長で二十日間。
ここから地上まで、一番足の遅いグリフォンに合わせても、全力で一日。余裕を見て二日と考えても、十日以上の余裕がある。
僕としては太陽が恋しいから早く帰りたい。
けど、女性陣はのんびり帰りたいそうだ。
まあ、『ドラゴン養殖計画』で食料は十二分にあるから、急ぐ必要もないか。
急ぐ理由もないし、手に負えないような、危険な魔物がいるわけでもない。ダンマスを倒したし、当面の危険もない。
だから、気を抜いていたのかもしれない。
「帰りがてら、ダンジョンデートするのも面白いかもね」
だから、余計なことを言ってしまった。
そこからは大変だった。
誰がどのフロアでデートするかで揉めた。
さすがに、十六人全員とデートするとなると、一日二人としても八日間も必要になる。
これは、ちょっとしんどい。
なので、代表者三名だけデートすることになった。
頑張って値引きしたよ。
最初、「せめて十人」とか言われたけど、無理。ちょっと前まで、女の子と手も繋いだこともないような童貞野郎だよ? 無理無理。
で、三名の代表は、それぞれ一日僕と二人っきりでダンジョンの一フロアをブラつき、他の面子は、デートの邪魔にならないように魔物を狩る。
ここまでは、思ったよりすんなり決まった。
ここからが問題。どうやって三名を決める?
戦闘能力なら、ユリアーナとマーヤに決まるだろう。
次いで縁かな。
剣術勝負なら、ユリアーナとツェツィーリア、ヘンリエッテ姉妹に決まるだろう。
いや、ロジーネ姉さんもあるか?
魔法対決なら、マーヤと縁が勝つ。
いや、イレーヌ、イヴェット母娘とロクサーヌ、フルール母娘の可能性もあるか。
大穴でシュェさんもあるかも。
あと、御影さんも何気に凄い。
料理勝負なら、由香と由希に決まる。
大穴は本田さん。
幼馴染みの胃袋を掴むために、頑張ってたらしい。
ああ、でも、御影さんがたまに作る料理も美味しい。美味しいというか、落ち着く?
裁縫勝負なら、エウフェミアさんが圧勝だな。
次点は本田さんかな。
これも花嫁修行として頑張ったそうだ。
その次はシュェさんかな。
エウフェミアさんと一緒にお喋りしながら服を作ってるのをよく見る。
まあ、どの勝負でも角が立つ。それぞれ得意分野が違うからね。
だからといって、僕の一存で決めるのも角が立つ。こちらの角の尖り具合は凄そうだ。遠慮したい。
じゃんけん。
これはダメだった。動体視力が凄すぎる。
"どっちが上手く後出しするか"の勝負になった。
なので、僕が作ったアミダくじで決めた。
僕が鼻唄を歌いながら作ったアミダくじで選ばれたのは、エウフェミアさん、シュェさん、ツェツィーリア、ヘンリエッテ姉妹に決定。
四人じゃん。
なんか「双子は二人で一人です」という意見をごり押しされた。まさか当たるとは思わなかったのか、みんな了承したけど、当たった瞬間は、みんな「了承するんじゃなかった!」って顔してた。
そんなわけで、明日から三日間、それぞれ一日ずつ、一組二人で一日だけど、この四人とデートすることになった。
……そもそもの話なんだけど、ダンジョンデートって、楽しいの?
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