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第39話 旅行②
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「1時間半と聞いていたが」
「そうですね、飛行機だけだと1時間半ほどですが、空港からの移動時間は入ってなかったですね」
俺達は今、バスに揺られている。
空港からスポーツギルドまでは送迎バスがありその車中だ。
かれこれ30分程経つが、まだ目的地に着かない。
「おっ、見えてきたで」
それから、さらに30分程走った所でナナが言う。
ナナの視線の先には巨大な濃紺のドーム状の施設が見える。
大きさ的には某都市型ドーム球場の数倍はありそうだ。
「デカいな」
「色んなスポーツがギャンブルの対象で数が多いから、あれでも足らんぐらいやねんて」
「ほぅ、あれでも足りないのか」
そのドームが近づくにつれ、飲食店や宿泊施設も増えてきた。
中にはP・Pギルドも数軒見られる。
「いつも思うねんけど、なんでこんな色のドームにしたんやろ」
「おい!」
「あっはっはっ、さすがムコウマルさん」
「紺色のドームに他意はないと思うぞ。 偶然だろ」
「偶然なぁ~」
いつもの事だが、ノアの下ネタは突然やってくる。
そして、いつものように即座に反応する俺。
タケシとマシュウは苦笑いしていて、ナナは耳を塞ぐ。
これもいつもの事だ。
「先に宿泊する所にチェックインします。 ギルドに宿泊施設からの送迎車が来る事になっていますので、申し訳ございませんがもう暫くガマンして下さい」
「お前が謝る事ないぞマシュウ。 全部任せたのは俺だしな。 逆に感謝している」
「サトシさん……」
移動も旅行の内だ。
それに、バスの中で退屈していた訳でもない。
空港から少し走ると海沿いの道に出たのだが、その景色は中々良かった。
元居た世界では、ゆっくり景色を楽しむなんて事は無かったからな。
程なくしてスポーツギルドへ到着。
同乗していた多くの人は、皆ギルドの中へと向かって行く。
ノアとナナも同じく中へ向かって行こうとしたのだが、俺とマシュウが引き止め宿泊施設から来た送迎車に乗った。
「いい部屋じゃないか」
「本当ですね」
案内された部屋は、広々としたリビングにローテーブルとソファ。
寝室にはベッドが二つといかにも二人部屋だ。
同様の部屋をあと二部屋マシュウは手配したと言う。
部屋分けは俺とマシュウ、ノアナナ姉妹にタケシ夫妻。
全室オーシャンビューだ。
「 「じゃんけん、ポン」 」
「っしゃぁ」
ノアナナ姉妹がなにやらやっている。
勝ったのはノアらしい。
「ほんなら、ナナはあっちな」
「オッケー」
ノアは俺達の部屋へ入ってきて自分の荷物を降ろす。
ナナはマシュウの荷物を持ち、マシュウの手を引っ張って部屋を出て行こうとする。
あっ、これはアレか。
以前、俺とマシュウの部屋に無理矢理入ろうとした時と同じか。
あの時はタケシがいたからなんとかなった。
だが、今タケシはいない。
かと思えば、出入口にタケシが仁王立ちしていた。
「だろうと思った。 ホレ、お前らちゃんと自分達の部屋へ行け」
「うん、せやからちゃんと自分達の部屋へ行く所やで」
「なら、なぜサトシとベップ君の部屋にノアの荷物が置いてあって、ナナはベップ君を連れ出そうとしているのだ?」
「 「 うっ 」 」
ノアナナはバツの悪そうな顔をしている。
タケシは呆れた顔を俺に向ける。
なんで俺に。
「サトシが毅然とした態度で二人に臨めば、二人は言う事を聞くのだからちゃんと言え」
「そ、そうなのか?」
「ああ、俺が言うより効果がある」
タケシはそう言うがそんな事はないだろう。
ノアとナナはタケシの身内で二人は長い間世話になっている。
対する俺は、二人と出会ってまだ数ヶ月だ。
そんな俺の言う事をタケシより聞くとは思えないが、まぁ、タケシなりに俺と二人がコミュニケーションをとりやすいようにと気を使ってくれたのだろう。
そんな事をしてもらわなくても、二人は気軽に接してくれるからコミュニケーションはとりやすい。
だが、そこまでしてくれたんだ。
ここは素直に従おう。
「そう言う事だから、お前らはちゃんと二人揃って自分達の部屋へ行け!」
「 「 は~い 」 」
そう言うと、二人は素直に自分達の部屋へ向かって行った。
アレっ!?
本当に言う事を聞いてくれたぞ。
まぁ、移動で疲れたのもあるのだろう。
そう言う俺も少し疲れた。
この施設には温泉もあるらしいので入りに行こう。
その前に昼食だな。
「タケシ達はこれからどうする?」
「サトシは?」
「俺はゆっくり温泉にでも浸かるよ。 その後は観光でもするつもりだ」
「スポーツギルドへは行かないのか?」
「あー、そうだな、明日の午後6時までに行けばいいと思っていたがバタバタするのも嫌だしな。 温泉に浸かった後にでも行くか」
昼食を終えた俺は、タケシにこの後の事を聞いた。
タケシ達のゴルフは翌日からなので、今日はこの後どうするか気になっていたからだ。
ちなみに、ノアナナ姉妹は昼食を食べた後すぐにスポーツギルドへ行った。
「それなら、俺達も観光に付き合うか」
「そうねぇ~。 私は食べ歩きがしたいかなぁ~」
タケシ達は俺達と一緒に観光に付き合うと言う。
食べ歩きは俺もしたい。
俺は普段、昼から酒を飲まないが今日は例外だ。
酒を片手に食べ歩きだな。
「サトシはゴルフが好きだそうだが、自分でプレイはしないのか?」
温泉に浸かりながらタケシが聞いてくる。
「若い頃はそれこそ年に数回はプレイしていたが、年齢と共にどんどん減って行ったよ。 時間が無くなってきたのもあるな」
「それでも、なんとか時間を作ってはプレイしていましたよね」
「そうだな、その都度お前がバッグを担いでくれていたなマシュウ、いや、当時はミヅノか」
ミヅノは仕事以外でも非常に役に立ってくれた。
特にキャディーに関しては、プレイするコースを完璧に調べ、俺の各クラブの飛距離や球筋も全て把握しているので常に最適な選択をしてくれていた。
おかげで非常に快適にプレイできた。
スコアは…… 練習に行く時間が無かったからな。
「そうか、なら明日は一緒にプレイしないか? 俺達は二人だから今から予約すれば大丈夫なはずだ」
「う~ん。 魅力的な提案だが遠慮しとくよ。 クラブも無いしな」
「クラブならゴルフ場でレンタルできるぞ」
「俺は左利きだから、レンタルクラブは無いんじゃないか?」
「そう言えばサトシは食事も左だな。 クラブは問い合わせてみるが……」
「いや、やっぱり遠慮するよ。 数年前に右手の手のひらをケガしてからクラブは一切握っていないしな。 夫婦水入らずで楽しんできてくれ」
最後の俺の言葉に鋭く反応したのはマシュウだった。
すぐさま俺の右手を取りジッと見る。
温泉に浸かっているから、傷跡がほんのり浮かんできている。
「……これは?」
「ああ、俺の不注意でな」
マシュウが鋭い眼で俺に尋ねる。
あっ、コレ怒ってるヤツや。
しかし、この傷は誰かにやられた訳ではない。
俺の不注意でナイフで切ってしまったのだ。
血はすぐに止まったが、思ったより傷は深かったらしい。
神経を切断していた。
手術が必要だったが、その手術もごく簡単だったらしく一時間ほどで手術は成功した。
入院も一泊二日のみとあっけなかったが、しばらく通院は続いた。
今では何の違和感もなく生活が出来ているが、それ以降クラブは握っていない。
怪我うんぬんではなく、時間が無かったのだ。
その事をマシュウに告げると「気を付けて下さいね」と言いマシュウの鋭かった眼は穏やかになった。
温泉から出てからは食べ歩きだ。
天気も良く気温は少々高いが、湿度が低めだから過ごしやすい。
街を歩くと満面の笑みの者と、暗い雰囲気の者が多くいた。
恐らくスポーツギルドで儲けた者と、そうでない者達だろう。
前者はほぼ例外なく街を楽しく回っているようだが、後者は色んな者がいた。
暗い雰囲気ながら目をギラつかせている者や、この世の終わりかとでも思わせるように肩を落とした者達。
タチが悪い者では他人に絡んでいる者までいる。
治安は決して良いとは言えないが、悪い訳でもなさそうだ。
悪ければ、スポーツギルドで儲けた者はそんな顔で歩くまい。
ギャンブルで儲けたから襲って下さいと言っているようなものだからな。
この辺りもなんとなく「南国」に似ている。
んん?
あの他人に絡んでいるヤツをどこかで見たような……
俺はこの世界に来てからそれほど多くの人間と知り合っていない。
そりゃぁ、通りすがりですれ違った人間とかを入れると数えられないほどだが、そう言った人間は覚えている訳がない。
だから、見覚えがある者はどこかで絡んだ事があるハズだが、アイツにそんな覚えはない。
元いた世界にも似たヤツがいた記憶がない。
しかし、間違いなくどこかで見た記憶がある。
「どうかしましたか?」
「あの男に見覚えがあるのだが、どこで見たのかと、な」
尋ねてきたマシュウに、例の男に視線を向けて答える。
男はフンッと鼻を鳴らし他人に絡むのをやめ、P・Pギルドへ入って行った。
「こっちに来てからですか?」
「恐らくそうだと思うのだが、俺がこっちに来て知り合った人数はそう多くはないから覚えているはずなんだが、アイツは覚えがないんだ」
「そうですか、テレビでとかではないですか?」
「テレビ、か……」
テレビと言われて、なるほどと思うが思い出せない。
なら、新聞か雑誌か。
俺がこの世界に来てから多く目にしたのはテレビより新聞だ。
となると、新聞で目にし、た、の…………
ハッ。
思い出した。
いや、そうだとするとマシュウが気付かないはずがない。
なら別人か?
マシュウは気付いた素振りは見せなかったからな。
「思い出したが、マシュウお前も覚えがないか?」
「私も……ですか」
「ああ、Byte Coinの件で手配書が回っていただろ? たぶんアイツだ」
「なんですって!」
この言葉に鋭く反応したのはコフィレだった。
コフィレは1千万エソの金をだまし取られたのだから当然だろう。
手配書の件はテレビでは勿論、新聞でも取り挙げられていた。
「サトッちゃん、それホント?」
「遠目で見ただけだからなんとも言えないが確率は高いと思う。 どうだ? マシュウ」
「手配書は何度も見ていますが、サトシさんが見た人物を私は後ろ姿しか見ていませんのでなんとも……」
「なら、確認するか」
皆コクンと頷くと、連れだってP・Pギルドへ入る。
「いた」
観光地のギルドだけあって、中は賑わっていた。
その中で、ようやく見つけた件の人物はチリエージアバーを遊技していた。
「やはり、間違いないと思うがマシュウはどうだ?」
「う~ん。 体型は手配書のとおりですが、顔立ちが少し違いますね。 整形でどうにもできそうですが、それでは決め手に欠けますね」
「お前の言う通り顔は整形したのだろうな。 だが、整形していない所があってそこが一致している。 少々特徴的だったからな」
「整形していない特徴的な所ですか。 特徴的なら整形はすると思うのですが一体どこですか」
「耳だ」
手配書の写真の顔は左右で耳の大きさが違っていた。
特に特徴的だったのは、右耳はファンタジー物によく出てくるエルフとまでは行かないが横長の耳。
左耳は右耳に比べ少し小さく、耳たぶに傷か皺かは分からないが大きな筋が走っていた。
「耳ですか。 そんな所は見ていませんでしたね」
「そうねぇ~。 私も手配書は穴が開くほど見たけど耳なんて気にした事なかったわぁ~。 てか、普通、気にしなわいよねぇ~」
コフィレはよほど腹に据えかねていたのだろう。
ヒマがあれば手配書を睨みつけていたとはタケシの談だ。
「本人も耳は気にならなかったのだろう。 整形していないようだったからな」
「それはそうでしょう、左右で大きさや形が違い、傷のような筋まであるなんて、言われて初めて注視しても中々気付かない程に微妙な違いですからね。 流石です」
「どうする? 確保するか?」
俺がマシュウに尋ねるとマシュウは難しい顔をする。
ここは管轄外で今はさらに非番だ。
それに、耳が完全に一致するとは言え、それだけで確保するのには弱いとマシュウは言う。
「それなら、私がイチャモンつけるから別件逮捕でいいんじゃねぇ~のか?」
「おい、コフィー」
ヤンキーモードになったコフィレをタケシが宥める。
下手にイチャモンをつけたら、逆にコフィレが逮捕されかねないからな。
だから、イチャモンに同意はしないが別件逮捕か。
それは悪くない案だ。
だが、その別件がない。
どうしたものかと視線を例の男に向ける。
男は普通にチリエージアバーを打っていたが、軽く辺りを見渡すと盤面に手をあて押し付ける。
「???」
その行動に違和を感じ男に近づく。
すると、ビッグボーナスが始まった。
「?????!!」
この世界に来て、初めて見たチリエージアバーの筐体に驚く。
その筐体は俺が知っているチリエージアバーのそれではない。
だが、この筐体を俺は知っている。
「ノア! ――は居ないか」
ノアは最新攻略誌を常に持ち歩いているらしい。
ここにノアが居れば攻略誌でチリエージアバーの概要を確認できたのだが、今はスポーツギルドへ行っている。
「どうしましたか?」
マシュウが声を掛けてくる。
「チリエージアバーの概要を確認したくて攻略誌をノアに見せてもらおうと思ったが、ノアはここには居ないと思ってな」
「チリエージアバーの概要ですか。 それならどこかに小冊子があるはずですよ。 新内規機ですのでメーカーも力を入れているのでしょう、設置ギルドには無償で配布されているようです」
それを聞いて俺はその小冊子を探す。
小冊子が置いてある場所は、プレイヤーがすぐに見れるようにと台間に置いてある事が多いがこのギルドにはない。
ならば、カウンターに置いてある可能性が高いと思い、カウンターに向かうとそこに小冊子があった。
小冊子を手に取り確認する。
だが、小冊子にはプレイに関する事のみで、中身の仕様までは載っていなかった。
「いかがですか?」
「ああ、残念ながら俺が知りたい情報は載っていなかったよ。 だが、最低限の情報は分かったから少し例の男を観察する」
「そうですか……」
「すまないな、せっかくの旅行なのに。 観察は俺一人で十分だから、お前はタケシ達と観光に行ってくれ」
「それは出来ません。 私はサトシさんの護衛ですのでお側にいます」
そう言うと思ったよ。
まぁ、そんなに長時間観察するつもりはない。
だが、タケシ達を巻き込むのは悪いな。
俺達の事はいいから観光に行ってくれと伝えるか。
その事を伝えると、二人も残って観察すると言い出した。
特にコフィレはやる気だ。
「分かった、だが、他の客に迷惑はかけられないからそのつもりでな」
「承知した」
「おう、任せとけ」
コフィレのヤンキーモードはまだ解除されていないようだ。
本当に他の客には迷惑かけないでくれよ。
※注)パチンコ・パチスロ店は18歳未満の方は入場できません(高校生は不可)
ネットに溢れる攻略法はガセが多いと聞きますのでご注意下さい
「そうですね、飛行機だけだと1時間半ほどですが、空港からの移動時間は入ってなかったですね」
俺達は今、バスに揺られている。
空港からスポーツギルドまでは送迎バスがありその車中だ。
かれこれ30分程経つが、まだ目的地に着かない。
「おっ、見えてきたで」
それから、さらに30分程走った所でナナが言う。
ナナの視線の先には巨大な濃紺のドーム状の施設が見える。
大きさ的には某都市型ドーム球場の数倍はありそうだ。
「デカいな」
「色んなスポーツがギャンブルの対象で数が多いから、あれでも足らんぐらいやねんて」
「ほぅ、あれでも足りないのか」
そのドームが近づくにつれ、飲食店や宿泊施設も増えてきた。
中にはP・Pギルドも数軒見られる。
「いつも思うねんけど、なんでこんな色のドームにしたんやろ」
「おい!」
「あっはっはっ、さすがムコウマルさん」
「紺色のドームに他意はないと思うぞ。 偶然だろ」
「偶然なぁ~」
いつもの事だが、ノアの下ネタは突然やってくる。
そして、いつものように即座に反応する俺。
タケシとマシュウは苦笑いしていて、ナナは耳を塞ぐ。
これもいつもの事だ。
「先に宿泊する所にチェックインします。 ギルドに宿泊施設からの送迎車が来る事になっていますので、申し訳ございませんがもう暫くガマンして下さい」
「お前が謝る事ないぞマシュウ。 全部任せたのは俺だしな。 逆に感謝している」
「サトシさん……」
移動も旅行の内だ。
それに、バスの中で退屈していた訳でもない。
空港から少し走ると海沿いの道に出たのだが、その景色は中々良かった。
元居た世界では、ゆっくり景色を楽しむなんて事は無かったからな。
程なくしてスポーツギルドへ到着。
同乗していた多くの人は、皆ギルドの中へと向かって行く。
ノアとナナも同じく中へ向かって行こうとしたのだが、俺とマシュウが引き止め宿泊施設から来た送迎車に乗った。
「いい部屋じゃないか」
「本当ですね」
案内された部屋は、広々としたリビングにローテーブルとソファ。
寝室にはベッドが二つといかにも二人部屋だ。
同様の部屋をあと二部屋マシュウは手配したと言う。
部屋分けは俺とマシュウ、ノアナナ姉妹にタケシ夫妻。
全室オーシャンビューだ。
「 「じゃんけん、ポン」 」
「っしゃぁ」
ノアナナ姉妹がなにやらやっている。
勝ったのはノアらしい。
「ほんなら、ナナはあっちな」
「オッケー」
ノアは俺達の部屋へ入ってきて自分の荷物を降ろす。
ナナはマシュウの荷物を持ち、マシュウの手を引っ張って部屋を出て行こうとする。
あっ、これはアレか。
以前、俺とマシュウの部屋に無理矢理入ろうとした時と同じか。
あの時はタケシがいたからなんとかなった。
だが、今タケシはいない。
かと思えば、出入口にタケシが仁王立ちしていた。
「だろうと思った。 ホレ、お前らちゃんと自分達の部屋へ行け」
「うん、せやからちゃんと自分達の部屋へ行く所やで」
「なら、なぜサトシとベップ君の部屋にノアの荷物が置いてあって、ナナはベップ君を連れ出そうとしているのだ?」
「 「 うっ 」 」
ノアナナはバツの悪そうな顔をしている。
タケシは呆れた顔を俺に向ける。
なんで俺に。
「サトシが毅然とした態度で二人に臨めば、二人は言う事を聞くのだからちゃんと言え」
「そ、そうなのか?」
「ああ、俺が言うより効果がある」
タケシはそう言うがそんな事はないだろう。
ノアとナナはタケシの身内で二人は長い間世話になっている。
対する俺は、二人と出会ってまだ数ヶ月だ。
そんな俺の言う事をタケシより聞くとは思えないが、まぁ、タケシなりに俺と二人がコミュニケーションをとりやすいようにと気を使ってくれたのだろう。
そんな事をしてもらわなくても、二人は気軽に接してくれるからコミュニケーションはとりやすい。
だが、そこまでしてくれたんだ。
ここは素直に従おう。
「そう言う事だから、お前らはちゃんと二人揃って自分達の部屋へ行け!」
「 「 は~い 」 」
そう言うと、二人は素直に自分達の部屋へ向かって行った。
アレっ!?
本当に言う事を聞いてくれたぞ。
まぁ、移動で疲れたのもあるのだろう。
そう言う俺も少し疲れた。
この施設には温泉もあるらしいので入りに行こう。
その前に昼食だな。
「タケシ達はこれからどうする?」
「サトシは?」
「俺はゆっくり温泉にでも浸かるよ。 その後は観光でもするつもりだ」
「スポーツギルドへは行かないのか?」
「あー、そうだな、明日の午後6時までに行けばいいと思っていたがバタバタするのも嫌だしな。 温泉に浸かった後にでも行くか」
昼食を終えた俺は、タケシにこの後の事を聞いた。
タケシ達のゴルフは翌日からなので、今日はこの後どうするか気になっていたからだ。
ちなみに、ノアナナ姉妹は昼食を食べた後すぐにスポーツギルドへ行った。
「それなら、俺達も観光に付き合うか」
「そうねぇ~。 私は食べ歩きがしたいかなぁ~」
タケシ達は俺達と一緒に観光に付き合うと言う。
食べ歩きは俺もしたい。
俺は普段、昼から酒を飲まないが今日は例外だ。
酒を片手に食べ歩きだな。
「サトシはゴルフが好きだそうだが、自分でプレイはしないのか?」
温泉に浸かりながらタケシが聞いてくる。
「若い頃はそれこそ年に数回はプレイしていたが、年齢と共にどんどん減って行ったよ。 時間が無くなってきたのもあるな」
「それでも、なんとか時間を作ってはプレイしていましたよね」
「そうだな、その都度お前がバッグを担いでくれていたなマシュウ、いや、当時はミヅノか」
ミヅノは仕事以外でも非常に役に立ってくれた。
特にキャディーに関しては、プレイするコースを完璧に調べ、俺の各クラブの飛距離や球筋も全て把握しているので常に最適な選択をしてくれていた。
おかげで非常に快適にプレイできた。
スコアは…… 練習に行く時間が無かったからな。
「そうか、なら明日は一緒にプレイしないか? 俺達は二人だから今から予約すれば大丈夫なはずだ」
「う~ん。 魅力的な提案だが遠慮しとくよ。 クラブも無いしな」
「クラブならゴルフ場でレンタルできるぞ」
「俺は左利きだから、レンタルクラブは無いんじゃないか?」
「そう言えばサトシは食事も左だな。 クラブは問い合わせてみるが……」
「いや、やっぱり遠慮するよ。 数年前に右手の手のひらをケガしてからクラブは一切握っていないしな。 夫婦水入らずで楽しんできてくれ」
最後の俺の言葉に鋭く反応したのはマシュウだった。
すぐさま俺の右手を取りジッと見る。
温泉に浸かっているから、傷跡がほんのり浮かんできている。
「……これは?」
「ああ、俺の不注意でな」
マシュウが鋭い眼で俺に尋ねる。
あっ、コレ怒ってるヤツや。
しかし、この傷は誰かにやられた訳ではない。
俺の不注意でナイフで切ってしまったのだ。
血はすぐに止まったが、思ったより傷は深かったらしい。
神経を切断していた。
手術が必要だったが、その手術もごく簡単だったらしく一時間ほどで手術は成功した。
入院も一泊二日のみとあっけなかったが、しばらく通院は続いた。
今では何の違和感もなく生活が出来ているが、それ以降クラブは握っていない。
怪我うんぬんではなく、時間が無かったのだ。
その事をマシュウに告げると「気を付けて下さいね」と言いマシュウの鋭かった眼は穏やかになった。
温泉から出てからは食べ歩きだ。
天気も良く気温は少々高いが、湿度が低めだから過ごしやすい。
街を歩くと満面の笑みの者と、暗い雰囲気の者が多くいた。
恐らくスポーツギルドで儲けた者と、そうでない者達だろう。
前者はほぼ例外なく街を楽しく回っているようだが、後者は色んな者がいた。
暗い雰囲気ながら目をギラつかせている者や、この世の終わりかとでも思わせるように肩を落とした者達。
タチが悪い者では他人に絡んでいる者までいる。
治安は決して良いとは言えないが、悪い訳でもなさそうだ。
悪ければ、スポーツギルドで儲けた者はそんな顔で歩くまい。
ギャンブルで儲けたから襲って下さいと言っているようなものだからな。
この辺りもなんとなく「南国」に似ている。
んん?
あの他人に絡んでいるヤツをどこかで見たような……
俺はこの世界に来てからそれほど多くの人間と知り合っていない。
そりゃぁ、通りすがりですれ違った人間とかを入れると数えられないほどだが、そう言った人間は覚えている訳がない。
だから、見覚えがある者はどこかで絡んだ事があるハズだが、アイツにそんな覚えはない。
元いた世界にも似たヤツがいた記憶がない。
しかし、間違いなくどこかで見た記憶がある。
「どうかしましたか?」
「あの男に見覚えがあるのだが、どこで見たのかと、な」
尋ねてきたマシュウに、例の男に視線を向けて答える。
男はフンッと鼻を鳴らし他人に絡むのをやめ、P・Pギルドへ入って行った。
「こっちに来てからですか?」
「恐らくそうだと思うのだが、俺がこっちに来て知り合った人数はそう多くはないから覚えているはずなんだが、アイツは覚えがないんだ」
「そうですか、テレビでとかではないですか?」
「テレビ、か……」
テレビと言われて、なるほどと思うが思い出せない。
なら、新聞か雑誌か。
俺がこの世界に来てから多く目にしたのはテレビより新聞だ。
となると、新聞で目にし、た、の…………
ハッ。
思い出した。
いや、そうだとするとマシュウが気付かないはずがない。
なら別人か?
マシュウは気付いた素振りは見せなかったからな。
「思い出したが、マシュウお前も覚えがないか?」
「私も……ですか」
「ああ、Byte Coinの件で手配書が回っていただろ? たぶんアイツだ」
「なんですって!」
この言葉に鋭く反応したのはコフィレだった。
コフィレは1千万エソの金をだまし取られたのだから当然だろう。
手配書の件はテレビでは勿論、新聞でも取り挙げられていた。
「サトッちゃん、それホント?」
「遠目で見ただけだからなんとも言えないが確率は高いと思う。 どうだ? マシュウ」
「手配書は何度も見ていますが、サトシさんが見た人物を私は後ろ姿しか見ていませんのでなんとも……」
「なら、確認するか」
皆コクンと頷くと、連れだってP・Pギルドへ入る。
「いた」
観光地のギルドだけあって、中は賑わっていた。
その中で、ようやく見つけた件の人物はチリエージアバーを遊技していた。
「やはり、間違いないと思うがマシュウはどうだ?」
「う~ん。 体型は手配書のとおりですが、顔立ちが少し違いますね。 整形でどうにもできそうですが、それでは決め手に欠けますね」
「お前の言う通り顔は整形したのだろうな。 だが、整形していない所があってそこが一致している。 少々特徴的だったからな」
「整形していない特徴的な所ですか。 特徴的なら整形はすると思うのですが一体どこですか」
「耳だ」
手配書の写真の顔は左右で耳の大きさが違っていた。
特に特徴的だったのは、右耳はファンタジー物によく出てくるエルフとまでは行かないが横長の耳。
左耳は右耳に比べ少し小さく、耳たぶに傷か皺かは分からないが大きな筋が走っていた。
「耳ですか。 そんな所は見ていませんでしたね」
「そうねぇ~。 私も手配書は穴が開くほど見たけど耳なんて気にした事なかったわぁ~。 てか、普通、気にしなわいよねぇ~」
コフィレはよほど腹に据えかねていたのだろう。
ヒマがあれば手配書を睨みつけていたとはタケシの談だ。
「本人も耳は気にならなかったのだろう。 整形していないようだったからな」
「それはそうでしょう、左右で大きさや形が違い、傷のような筋まであるなんて、言われて初めて注視しても中々気付かない程に微妙な違いですからね。 流石です」
「どうする? 確保するか?」
俺がマシュウに尋ねるとマシュウは難しい顔をする。
ここは管轄外で今はさらに非番だ。
それに、耳が完全に一致するとは言え、それだけで確保するのには弱いとマシュウは言う。
「それなら、私がイチャモンつけるから別件逮捕でいいんじゃねぇ~のか?」
「おい、コフィー」
ヤンキーモードになったコフィレをタケシが宥める。
下手にイチャモンをつけたら、逆にコフィレが逮捕されかねないからな。
だから、イチャモンに同意はしないが別件逮捕か。
それは悪くない案だ。
だが、その別件がない。
どうしたものかと視線を例の男に向ける。
男は普通にチリエージアバーを打っていたが、軽く辺りを見渡すと盤面に手をあて押し付ける。
「???」
その行動に違和を感じ男に近づく。
すると、ビッグボーナスが始まった。
「?????!!」
この世界に来て、初めて見たチリエージアバーの筐体に驚く。
その筐体は俺が知っているチリエージアバーのそれではない。
だが、この筐体を俺は知っている。
「ノア! ――は居ないか」
ノアは最新攻略誌を常に持ち歩いているらしい。
ここにノアが居れば攻略誌でチリエージアバーの概要を確認できたのだが、今はスポーツギルドへ行っている。
「どうしましたか?」
マシュウが声を掛けてくる。
「チリエージアバーの概要を確認したくて攻略誌をノアに見せてもらおうと思ったが、ノアはここには居ないと思ってな」
「チリエージアバーの概要ですか。 それならどこかに小冊子があるはずですよ。 新内規機ですのでメーカーも力を入れているのでしょう、設置ギルドには無償で配布されているようです」
それを聞いて俺はその小冊子を探す。
小冊子が置いてある場所は、プレイヤーがすぐに見れるようにと台間に置いてある事が多いがこのギルドにはない。
ならば、カウンターに置いてある可能性が高いと思い、カウンターに向かうとそこに小冊子があった。
小冊子を手に取り確認する。
だが、小冊子にはプレイに関する事のみで、中身の仕様までは載っていなかった。
「いかがですか?」
「ああ、残念ながら俺が知りたい情報は載っていなかったよ。 だが、最低限の情報は分かったから少し例の男を観察する」
「そうですか……」
「すまないな、せっかくの旅行なのに。 観察は俺一人で十分だから、お前はタケシ達と観光に行ってくれ」
「それは出来ません。 私はサトシさんの護衛ですのでお側にいます」
そう言うと思ったよ。
まぁ、そんなに長時間観察するつもりはない。
だが、タケシ達を巻き込むのは悪いな。
俺達の事はいいから観光に行ってくれと伝えるか。
その事を伝えると、二人も残って観察すると言い出した。
特にコフィレはやる気だ。
「分かった、だが、他の客に迷惑はかけられないからそのつもりでな」
「承知した」
「おう、任せとけ」
コフィレのヤンキーモードはまだ解除されていないようだ。
本当に他の客には迷惑かけないでくれよ。
※注)パチンコ・パチスロ店は18歳未満の方は入場できません(高校生は不可)
ネットに溢れる攻略法はガセが多いと聞きますのでご注意下さい
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そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
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修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
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しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
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ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
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この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
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鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
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かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
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2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
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スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
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小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く
burazu
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冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。
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※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。
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主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
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