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第37話 光明
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「はあぁ~」
その日の夜、ナナとの約束通りマシュウを誘ってタケシの店に来た俺は大きなため息をつく。
「ど、どうしたのですかサトシさん」
心配したのか、何事かとマシュウが尋ねてくる。
近隣ではマイルドキャッツが全滅したと知った俺は、あの後コチンネタンル設置ギルドへ足を運んだ。
実は4枚掛けが通用しないギルドがあった事をすっかり忘れていた俺は、4枚掛けがまだ通用すると思い込んでいた。
なぜ思い込んでいたのかは分からない。
きっと、マイルドキャッツが外された事に動揺していたのだろう。
4枚掛けが対策されているかもと気付いた俺は、直ちに確認をしなければならないと思ったのだ。
幸いな事に尋ねたギルドではコチンネタンルはシマ封鎖などもされてはなく、ハデに出している連中も複数居た。
そして、偶然見つけたのだがそのハデに出している中の一人に4枚掛けを駆使している者が居たのだ。
それを見て、まだ通用するのだと胸を撫でおろした。
4枚掛けはどの攻略誌にもまだ載っていないと言う。
だが、いつの世も情報に聡いヤツは必ず居る。
この4枚掛けを使っている者もそう言ったヤツだろう。
いずれにせよ、こうして使っている人間がいるのだから広がるのはそう遠い未来ではない。
俺は、すぐさまコチンネタンルを打ち出したのだが、一向に4枚掛けが成功しない。
やはり対策済みか?と疑問に思うも、このギルドで4枚掛けが成功している所をこの目で見ている。
確かに、コツはある。
それと、これはオカルトだと承知しているが俺と台との相性もあると思う。
その相性が悪いから成功しないのだと思い別のコチンネタンルへ移動する。
だが、移動先でも成功する事はなかった。
この台とも相性が悪いのだと思い移動するもここでも成功せず。
そこで一つの仮説にたどり着いた。
「フリーダムベルと同じ状況では?」
そう考えると辻褄は会う。
フリーダムベルは一度姿を消したが、なぜか復活していた。
これは、対策基盤を設置する為だったと俺は予想している。
現に、復活後に通用する台としない台がはっきり分かれたからな。
ならば、コチンネタンルも対策されている台とされていない台が存在するのではないか。
コチンネタンルの対策はフリーダムベルと違い、一度外してまで対策を施さなければならない程大掛かりではない。
「DS-90」を取り外すだけで良いからな。
そう仮説を立て、通用する台を探す事にした。
この目で見た台は確定として、果たしてどれだけの台数に通用するのか。
全てを自身で検証するには投資が掛かりすぎるので、まずはハデに出している連中の様子を見てみる事にした。
だが、件のヤツを除いた他の面子は4枚掛けを使っている様子はない。
現時点ではそれほど広まってはいないのだから当然と言えば当然か。
仕方なしに自身で検証してみる事にしたのだが、1台も見つける事は出来なかった。
勿論、このギルド全台検証した訳ではない。
このギルドにはコチンネタンルは約20台設置されていて、俺自身が検証した数は全部で7台。
その7台全てに4枚掛けが通用しなかったのだ。
負債は10万エソに達した。
だが金銭的な事より、4枚掛けが通じる台を件の台以外見つけられなかった事実の方がダメージが大きい。
それ故のため息だ。
「まぁ、いつかはこうなると分かっていたんだが早すぎると思ってな」
そう前置きしてマシュウに事情を話した。
「それは…… 私もある程度は残ると言いましたが、そのある程度が問題なのですね」
「そうだな、数が少なすぎる」
「私の予想では、費用面や手間を考えると基盤の交換はそれ程多いとは思っていませんでしたが、悪い方向に外れてしまいましたね」
「それに、新内規機への移行も思ったより早いな。 補助金か何か出るのか?」
「いえ、そのような話しは聞いていませんね」
今日、ナナと会ったギルドでは全て新内規機に変わっていた。
新内規機に変える事で何か恩恵があるのかと思えば、どうやらそんな事は無いようだ。
となれば、あのギルドの独断か。
その疑問にはナナが答えてくれた。
「ギルマスが言うには先を見据えた投資みたいなモンやって」
そう言う事か。
確かに、新内規機は後に「なんでもアリだった時代」とまで謳われる程過激になった。
結果、空前のパチスロブームとなったのだが、その事をこの世界の人間は知る由もない。
そのギルマスは先見の明があるな。
今日は新台入れ替えとあってひと際特別だったが、あのギルドは普段から客の入りも良かった。
ひとえに、ギルマスの手腕のおかげか。
先見の明といい、あそこのギルマスは優秀なようだ。
などとギルマスを評価している場合ではない。
この先どうやって稼いでいくかだ。
考えを巡らせながら手に取ったジョッキを呷る。
空になったジョッキへ、おかわりを波並みと注ぐ。
そのおかわりも瞬く間に空になる。
チラリとナナを見ると、なめるようにチビチビと飲んでいる。
らしくないなと思ったが、隣にマシュウが居るからだろう。
だからと言って俺が酒を控える理由にならない。
俺は俺のペースで飲み続ける。
「ただいまぁ~」
「おっ! おかえり。 遅かったなノア」
「せやねんタケシ叔父さん。 今日はノグチさんの壮行会があってん」
「そう言えば、そうだったな」
「明日ノグチさんここに来るって言ってたで」
「そうか、忙しいだろうに」
「タケシ叔父さんの料理は絶対に食べてから行くって言ってたわ」
タケシと会話したノアは俺の横に腰かける。
ノグチと言うのが誰かは知らないが、タケシの料理が食べたいのは頷ける。
「おっと、そろそろだな」
タケシはそう言うとテレビをつける。
テレビには来週に行われる、女子ゴルフの世界メジャー大会の特集が映っている。
「この番組がウチの店に取材にきたんだ」
なんでも、この世界メジャー戦に出場する選手がタケシの店の常連だそうだ。
彼女は事ある毎にタケシの店の事を発言する為、テレビ局から取材依頼は頻繁に来ていたと言う。
「本当は取材お断りなのだが、彼女が世界メジャーに挑戦するなら応援しなければと、今回だけ特別に取材を受けたのだよ」
「ウチの会社も、ノグチさんをサポートしてるねん」
それで壮行会か。
俺はスポーツの中でもゴルフは好きな部類に入る。
世界的な大会はもちろん、なんとか時間を捻出し国内のツアーも観戦していたし若い頃は自らプレイもしていた。
だから、ゴルフに関しては少しだけ詳しい。
ん?
女子ゴルフの世界メジャーでノグチ?
まさか。
いやいや、そんなハズない。
それは俺が子供の頃の出来事だ。
だから、50年近く前になる。
この世界は、元いた世界の30年程前の出来事が起こっているから時代が違う。
『こちらが、ノグチ選手が帰国すれば必ず食べにくるレストランです』
画面にタケシの店が映り、次いで店内の様子を映した。
『ノグチさんはいつもおまかせとの事ですので、私もシェフのおまかせを頼んでみました』
そこには、料理を運んできたタケシが映っていた。
「あっはっは。 オジキガチガチやん」
「無理もないだろ? 取材なんてこれまで断ってきたんだから」
俺が観てもタケシが緊張しているのが分かる。
それを見てナナとノアは大笑いしている。
俺とマシュウは苦笑い。
タケシは恥ずかしそうに頬をかいている。
「はぁ~。 明日から一段と忙しくなるわねぇ~。 ノアちゃん手伝い大丈夫?」
「大丈夫やで、コフィレさん。 あっでも、3日間ぐらいしかアカンな」
「それで十分よぉ~。 タケさん色付けてあげてね」
「もちろんだ。 ありがとなノア」
テレビにこれだけ映ったんだ。
タケシの店には多くの人がやってくるだろう。
なら、俺はしばらく顔を出すのを辞めるとするか。
『ノグチ選手は海外ツアーの優勝経験もあります。 我が国初の世界メジャー制覇のチャンスですね』
んん?
この国初の世界メジャー制覇?
なら、世界メジャー未勝利って事か。
ノグチ・ヒサコ
彼女は4国初の海外メジャーを制覇した人物だ。
4国どころか周辺地域数カ国合わせても初の優勝を遂げた。
だが、それは先に述べたように俺が子供の頃の話しだから時代が違う。
プロゴルファーの選手生命は比較的長いとは言え、そんな高齢の選手がメジャー大会の優勝を狙える程この世界は甘くない。
なら、別人か。
いや、それにしては……
「タケシ、ノグチ選手の年齢って知っているか?」
「年齢? ああ、ちょっと待ってくれ」
タケシはそう言って厨房の方へ向かっていく。
戻ってくると、その手には雑誌が握られていた。
「そのゴルフ雑誌にプロフィールが載っているはずだ」
俺はその雑誌を受け取りパラパラとめくる。
数ページめくると、彼女のプロフィールがあった。
「32歳?」
そこには、今年で32歳と書かれていた。
「これは……」
元いた世界では、ノグチ・ヒサコと言う人物は32歳で世界メジャーを制覇した。
偶然──にしては出来過ぎている。
いや、これまで幾度となくこの世界と元いた世界の時系列が違うのは体験している。
そして時系列が違うだけで、結果はほぼ同じ。
なら、このノグチ選手は今回の海外メジャーを勝つのでは…………
『ブックメーカーの予想ではノグチ選手の倍率は5倍となっています。 これはかなり予想外ですね』
『そうですね。 尤も今回は昨年の同メジャー大会も制した世界ランク1位の選手も出場します。 ブックメーカーは彼女が優勝する確率が高いと見ているのでしょう。 確かに彼女は素晴らしい選手で、しかも今シーズンは絶好調ですからね』
ブックメーカー?
このメジャー大会はギャンブルの対象になっているのか。
確かに、元居た世界でもギャンブルの対象になっていたが。
「ノア、このブックメーカーってのは、この国では買えるのか?」
「ブックメーカー? このゴルフの海外メジャーの?」
「ああそうだ」
「うん買えるで、ギルドがあるから」
「そのギルドはどこにある?」
「このギルドは── ってまさか」
俺はニヤリと口の端を吊り上げる。
「ああ、結果を知っている」
俺のその言葉に全員が目を見開いた。
※)ムコウマルは現在52歳です
その日の夜、ナナとの約束通りマシュウを誘ってタケシの店に来た俺は大きなため息をつく。
「ど、どうしたのですかサトシさん」
心配したのか、何事かとマシュウが尋ねてくる。
近隣ではマイルドキャッツが全滅したと知った俺は、あの後コチンネタンル設置ギルドへ足を運んだ。
実は4枚掛けが通用しないギルドがあった事をすっかり忘れていた俺は、4枚掛けがまだ通用すると思い込んでいた。
なぜ思い込んでいたのかは分からない。
きっと、マイルドキャッツが外された事に動揺していたのだろう。
4枚掛けが対策されているかもと気付いた俺は、直ちに確認をしなければならないと思ったのだ。
幸いな事に尋ねたギルドではコチンネタンルはシマ封鎖などもされてはなく、ハデに出している連中も複数居た。
そして、偶然見つけたのだがそのハデに出している中の一人に4枚掛けを駆使している者が居たのだ。
それを見て、まだ通用するのだと胸を撫でおろした。
4枚掛けはどの攻略誌にもまだ載っていないと言う。
だが、いつの世も情報に聡いヤツは必ず居る。
この4枚掛けを使っている者もそう言ったヤツだろう。
いずれにせよ、こうして使っている人間がいるのだから広がるのはそう遠い未来ではない。
俺は、すぐさまコチンネタンルを打ち出したのだが、一向に4枚掛けが成功しない。
やはり対策済みか?と疑問に思うも、このギルドで4枚掛けが成功している所をこの目で見ている。
確かに、コツはある。
それと、これはオカルトだと承知しているが俺と台との相性もあると思う。
その相性が悪いから成功しないのだと思い別のコチンネタンルへ移動する。
だが、移動先でも成功する事はなかった。
この台とも相性が悪いのだと思い移動するもここでも成功せず。
そこで一つの仮説にたどり着いた。
「フリーダムベルと同じ状況では?」
そう考えると辻褄は会う。
フリーダムベルは一度姿を消したが、なぜか復活していた。
これは、対策基盤を設置する為だったと俺は予想している。
現に、復活後に通用する台としない台がはっきり分かれたからな。
ならば、コチンネタンルも対策されている台とされていない台が存在するのではないか。
コチンネタンルの対策はフリーダムベルと違い、一度外してまで対策を施さなければならない程大掛かりではない。
「DS-90」を取り外すだけで良いからな。
そう仮説を立て、通用する台を探す事にした。
この目で見た台は確定として、果たしてどれだけの台数に通用するのか。
全てを自身で検証するには投資が掛かりすぎるので、まずはハデに出している連中の様子を見てみる事にした。
だが、件のヤツを除いた他の面子は4枚掛けを使っている様子はない。
現時点ではそれほど広まってはいないのだから当然と言えば当然か。
仕方なしに自身で検証してみる事にしたのだが、1台も見つける事は出来なかった。
勿論、このギルド全台検証した訳ではない。
このギルドにはコチンネタンルは約20台設置されていて、俺自身が検証した数は全部で7台。
その7台全てに4枚掛けが通用しなかったのだ。
負債は10万エソに達した。
だが金銭的な事より、4枚掛けが通じる台を件の台以外見つけられなかった事実の方がダメージが大きい。
それ故のため息だ。
「まぁ、いつかはこうなると分かっていたんだが早すぎると思ってな」
そう前置きしてマシュウに事情を話した。
「それは…… 私もある程度は残ると言いましたが、そのある程度が問題なのですね」
「そうだな、数が少なすぎる」
「私の予想では、費用面や手間を考えると基盤の交換はそれ程多いとは思っていませんでしたが、悪い方向に外れてしまいましたね」
「それに、新内規機への移行も思ったより早いな。 補助金か何か出るのか?」
「いえ、そのような話しは聞いていませんね」
今日、ナナと会ったギルドでは全て新内規機に変わっていた。
新内規機に変える事で何か恩恵があるのかと思えば、どうやらそんな事は無いようだ。
となれば、あのギルドの独断か。
その疑問にはナナが答えてくれた。
「ギルマスが言うには先を見据えた投資みたいなモンやって」
そう言う事か。
確かに、新内規機は後に「なんでもアリだった時代」とまで謳われる程過激になった。
結果、空前のパチスロブームとなったのだが、その事をこの世界の人間は知る由もない。
そのギルマスは先見の明があるな。
今日は新台入れ替えとあってひと際特別だったが、あのギルドは普段から客の入りも良かった。
ひとえに、ギルマスの手腕のおかげか。
先見の明といい、あそこのギルマスは優秀なようだ。
などとギルマスを評価している場合ではない。
この先どうやって稼いでいくかだ。
考えを巡らせながら手に取ったジョッキを呷る。
空になったジョッキへ、おかわりを波並みと注ぐ。
そのおかわりも瞬く間に空になる。
チラリとナナを見ると、なめるようにチビチビと飲んでいる。
らしくないなと思ったが、隣にマシュウが居るからだろう。
だからと言って俺が酒を控える理由にならない。
俺は俺のペースで飲み続ける。
「ただいまぁ~」
「おっ! おかえり。 遅かったなノア」
「せやねんタケシ叔父さん。 今日はノグチさんの壮行会があってん」
「そう言えば、そうだったな」
「明日ノグチさんここに来るって言ってたで」
「そうか、忙しいだろうに」
「タケシ叔父さんの料理は絶対に食べてから行くって言ってたわ」
タケシと会話したノアは俺の横に腰かける。
ノグチと言うのが誰かは知らないが、タケシの料理が食べたいのは頷ける。
「おっと、そろそろだな」
タケシはそう言うとテレビをつける。
テレビには来週に行われる、女子ゴルフの世界メジャー大会の特集が映っている。
「この番組がウチの店に取材にきたんだ」
なんでも、この世界メジャー戦に出場する選手がタケシの店の常連だそうだ。
彼女は事ある毎にタケシの店の事を発言する為、テレビ局から取材依頼は頻繁に来ていたと言う。
「本当は取材お断りなのだが、彼女が世界メジャーに挑戦するなら応援しなければと、今回だけ特別に取材を受けたのだよ」
「ウチの会社も、ノグチさんをサポートしてるねん」
それで壮行会か。
俺はスポーツの中でもゴルフは好きな部類に入る。
世界的な大会はもちろん、なんとか時間を捻出し国内のツアーも観戦していたし若い頃は自らプレイもしていた。
だから、ゴルフに関しては少しだけ詳しい。
ん?
女子ゴルフの世界メジャーでノグチ?
まさか。
いやいや、そんなハズない。
それは俺が子供の頃の出来事だ。
だから、50年近く前になる。
この世界は、元いた世界の30年程前の出来事が起こっているから時代が違う。
『こちらが、ノグチ選手が帰国すれば必ず食べにくるレストランです』
画面にタケシの店が映り、次いで店内の様子を映した。
『ノグチさんはいつもおまかせとの事ですので、私もシェフのおまかせを頼んでみました』
そこには、料理を運んできたタケシが映っていた。
「あっはっは。 オジキガチガチやん」
「無理もないだろ? 取材なんてこれまで断ってきたんだから」
俺が観てもタケシが緊張しているのが分かる。
それを見てナナとノアは大笑いしている。
俺とマシュウは苦笑い。
タケシは恥ずかしそうに頬をかいている。
「はぁ~。 明日から一段と忙しくなるわねぇ~。 ノアちゃん手伝い大丈夫?」
「大丈夫やで、コフィレさん。 あっでも、3日間ぐらいしかアカンな」
「それで十分よぉ~。 タケさん色付けてあげてね」
「もちろんだ。 ありがとなノア」
テレビにこれだけ映ったんだ。
タケシの店には多くの人がやってくるだろう。
なら、俺はしばらく顔を出すのを辞めるとするか。
『ノグチ選手は海外ツアーの優勝経験もあります。 我が国初の世界メジャー制覇のチャンスですね』
んん?
この国初の世界メジャー制覇?
なら、世界メジャー未勝利って事か。
ノグチ・ヒサコ
彼女は4国初の海外メジャーを制覇した人物だ。
4国どころか周辺地域数カ国合わせても初の優勝を遂げた。
だが、それは先に述べたように俺が子供の頃の話しだから時代が違う。
プロゴルファーの選手生命は比較的長いとは言え、そんな高齢の選手がメジャー大会の優勝を狙える程この世界は甘くない。
なら、別人か。
いや、それにしては……
「タケシ、ノグチ選手の年齢って知っているか?」
「年齢? ああ、ちょっと待ってくれ」
タケシはそう言って厨房の方へ向かっていく。
戻ってくると、その手には雑誌が握られていた。
「そのゴルフ雑誌にプロフィールが載っているはずだ」
俺はその雑誌を受け取りパラパラとめくる。
数ページめくると、彼女のプロフィールがあった。
「32歳?」
そこには、今年で32歳と書かれていた。
「これは……」
元いた世界では、ノグチ・ヒサコと言う人物は32歳で世界メジャーを制覇した。
偶然──にしては出来過ぎている。
いや、これまで幾度となくこの世界と元いた世界の時系列が違うのは体験している。
そして時系列が違うだけで、結果はほぼ同じ。
なら、このノグチ選手は今回の海外メジャーを勝つのでは…………
『ブックメーカーの予想ではノグチ選手の倍率は5倍となっています。 これはかなり予想外ですね』
『そうですね。 尤も今回は昨年の同メジャー大会も制した世界ランク1位の選手も出場します。 ブックメーカーは彼女が優勝する確率が高いと見ているのでしょう。 確かに彼女は素晴らしい選手で、しかも今シーズンは絶好調ですからね』
ブックメーカー?
このメジャー大会はギャンブルの対象になっているのか。
確かに、元居た世界でもギャンブルの対象になっていたが。
「ノア、このブックメーカーってのは、この国では買えるのか?」
「ブックメーカー? このゴルフの海外メジャーの?」
「ああそうだ」
「うん買えるで、ギルドがあるから」
「そのギルドはどこにある?」
「このギルドは── ってまさか」
俺はニヤリと口の端を吊り上げる。
「ああ、結果を知っている」
俺のその言葉に全員が目を見開いた。
※)ムコウマルは現在52歳です
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