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第27話 アマノ・ミヅノ
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「100億以上のお金が動いたのに、あの後二人で啜った1杯300デンのラーメンの味は今でも忘れられません」
「俺もだ」
残りの処理は任せてくれと言ったブロンディーに全て任せ、俺達はタークリーの賭場を後にした。
そして、腹が減ったと言った俺に、「ならばあそこの店で」と勧めたミヅノと入ったのがラーメン屋だった。
価格の割には美味かったな。
「50億が掛かった勝負だと言うのに、いつもと変わらずお酒を飲もうとするなんて、あの時は本当に呆れました」
「仕方がないだろ、そこに酒があるんだから」
呆れた顔をするベップに俺は肩を揺らす。
この事も知っているって事は、ベップは間違いなくミヅノだ。
だが、なぜ?
その事を疑問に思い尋ねる。
ベップは俺の問いに答える。
結論から言うと、転生と言うものだ。
ミヅノが事故で亡くなった瞬間、その記憶と人格はこの世界のベップ・マシュウと言う男に産まれ変わった。
いや、産まれ変わったのではなく、記憶と人格が乗り移ったと言うのだ。
ならば、転生ではなく記憶と人格のみが転移した形になるのか?
その辺りは良く分からないな。
乗り移って数日は二人の記憶・人格を問題なく共有できた。
世の二重人格者ってのは、案外こういった例なのかもな。
だが、ある日猛烈な頭痛に襲われたのだと。
そしてその頭痛の中、ある選択に迫られたのだ。
ベップ・マシュウとして生きるか、アマノ・ミヅノとして生きるか、と。
ベップ・マシュウとして生きるならアマノ・ミヅノとしてのこれまでの記憶を。
アマノ・ミヅノとして生きるなら、ベップ・マシュウの記憶は消去される。
この世界で暮らすには、アマノ・ミヅノとしては生き辛いだろう。
しかし、記憶、つまり知識はアマノ・ミヅノの方が断然ある。
そこで、考えたのが人格はベップ・マシュウ。
記憶はアマノ・ミヅノでと願ったのだ。
すると、頭痛が収まったかと思えば、人格はベップ・マシュウ。
記憶はなんと、二人分あったと言う。
だが、二人分の記憶が完全に残っている訳ではなく、ベップ・マシュウの記憶は幼少期。
アマノ・ミヅノの記憶は成人以降のみが残っていたらしい。
なんともご都合主義のようだが、代償として少年期~青年期の記憶が共に消去したらしい。
「サトシさんと初めて会ったのは成人してからですからね、全部覚えていますよ」
「そうか…… そうだったな」
ベップは瞳に涙を浮かべ言う。
ミヅノは豪快で攻撃的な性格だった。
対するベップは、穏やかな性格なのがこれまで接して来て見てとれる。
共通しているのは、計画的な所ぐらいか。
ミヅノはああ見えて、緻密な計画を立て実行するからな。
しかし、違和感が凄いな。
だが、この違和感に最も苦しめられたのは目の前に居る彼だろう。
ん?
彼……なのか?
まぁ、それはいいとして。
「大変だったな」
「そんな、サトシさんの今の状況と比べればマシですよ」
「そんな事はない!」
少年期~青年期の記憶が消去したって事は、その間学んだ事も全て消去した事になる。
少年期~青年期と言えば、多くを占めるのが学校へ通い学ぶ期間。
その記憶がないのだ。
成人してからの苦労は想像を絶する。
しかも、ベップ・マシュウは男性。
アマノ・ミヅノは女性だ。
男性の人格に成人以降の女性の記憶があるんだ。
その混乱具合は、俺なんかとは比べるまでもない。
それに、俺は細かい事はあまり考えない質だ。
現に、この世界・時代に転移し、金を得る手段を得てからは気楽なのもだ。
寝たい時に寝て、起きたい時に起き、食べたい時に食べ酒を飲む。
だから、俺に同情なんかしないで欲しい。
「今はもう慣れましたから全く問題ありません。 ちなみにですが、精神は完全に男性で、心配されていたLGBT的な事もありません」
「そ、そうか……」
なら、ギルドで助けた女の旦那への一言での目は何だったんだ?
俺の気のせいか?
「ただ、さっきは昔を思い出しました」
「さっき? 昔?」
「はい」
さっきって何だ?
それに昔?
「奥さんを大切にしてやれって」
「あー、旦那に対して言ったな。 だが、昔ってのは?」
「いえ、私も昔…… サトシさんと仕事をしていた時は大切にしてもらっていたなと思い出しまして」
それであんな目をしていたのか。
昔と言っても十数年前の話だ。
それほど昔でもない。
「とにかく、また会えて嬉しいよ」
「私もです、でも、まさかこんな再会の仕方をするなんて」
「そうだな、不思議なもんだ」
世の中には科学で解明できない事が数えきれないほどある。
俺達もその例の一つだろう。
「これからは、以前のようにサトシさんの護衛に戻ります」
「この世界と時代では護衛は要らないと思うが」
「そんな事はありません!」
「おっ、おぅ、そう……か」
護衛は必要ないと言った俺に、強く否定するミヅノ。
元いた世界と違い、俺を怨んでいる人間なんていないだろうが、この世界の先輩であるミヅノが言うなら必要なのだろう。
この世界はそんなに危険が多いのか。
郷に入っては郷に従えとも言うし、ここはミヅノの言う事に従おう。
でもなぁ~。
「護衛はありがたいが、その、なんだ、以前のように報酬が渡せないんだ」
ミヅノには少ないながらも報酬を渡していた。
彼女の所属はあくまでも自警団組織であり、そこから給与と言う形で報酬は支払われていた。
だが、彼女の仕事は護衛の範疇に収まらない。
俺が相棒と認める程に、自ら進んで仕事をこなしてくれていたので、別途報酬を渡していた。
それが、今は払えない。
この世界に来て稼げるのは、今の所自分の分だけだからな。
「報酬なんて必要ありません」
「いや、そういう訳にはいかんだろ」
「そもそも、以前もありえない額の報酬をもらっていましたからね」
「以前の金は、今は使えないから関係ないだろ?」
「関係ないなんて事はありません!」
またもや、強く言い切るミヅノ。
もう、これは言う事を聞かないな。
「分かった、分かった、なら頼む。 だが本当に報酬は払えない、それでいいんだな」
「報酬はサトシさんと過ごすだけで十分です」
「過ごすって、四六時中一緒にいるつもりか?」
「もちろんです。 それが報酬ですから」
な、なんだと。
それって付きっきりって事じゃないのか。
いや、待て。
LGBT的な事は心配ないと言っていたが本当か?
ミヅノは俺に嘘をつくような女ではなかったが、目の前に居る男の人格はベップだ。
彼も嘘をつくようには見えないが……
「ミヅノ、いや、ベップ君」
「マシュウと呼び捨てて下さい」
「……マシュウ、お前、本当にLGBT的な事は心配ないのか?」
「!!!!!」
なんだ、その反応は。
もしや……
「それは間違いなくありません。 ですが、さっきも言った通りサトシさんを見て昔を思い出したのは事実です」
「そ、そうか」
俺はホッと胸を撫でおろす。
でも、昔を思い出したってどういう事だ。
さっきは大切にしてもらった云々かんぬんだったから、話しの脈絡からして無関係だと思うのだが。
ベップを見ると恥ずかしそうにしている。
う~ん、分からん。
まぁ、間違いなく無いと言ったんだ。
なら信じよう。
「よし、分かった。 これから宜しく頼むよ」
俺は右手を出す。
すると、マシュウはため息交じりに「そう言うところも変わりませんねぇ」と言い右手を握る。
「だが、四六時中は無理だろ、お前にも仕事があるんだから」
「仕事は辞めます」
「何をバカな事を言っているんだ」
「本気です、自分が食べて行くだけの蓄えならありますし」
「そんな事は断じて許可できん!」
貯蓄を減らしてまで俺と居るなんて許可できるか。
その蓄えはお前の苦労の結晶と言っても差し支えのないものだ。
それを、俺なんかの為に消費させてたまるか。
「それに、仕事を辞めるのも許可できん! そんな事をするなら、俺はお前の前から消える」
「そ、そんな………… 分かりました」
マシュウは仕事面でも非常に優秀で、組織からも信頼されているとナナから聞いた。
並大抵の努力では、そうはならなかっただろう。
その努力の結果を、俺の為に捨てさせる訳には断じてならない。
「ならば、一つだけ許可を。 私もこのホテルに滞在…… いや待てよ」
俺に許可を乞うてきたのだが、何か思う事があったらしく言葉を止めるマシュウ。
このホテルに滞在するつもりだったのか。
今住んでいる所はどうするつもりだったんだ?
「サトシさんは許可を下さらないと思いますので妥協案を。 サトシさん、部屋を借りませんか?」
「部屋?」
「ええ、部屋です。 ホテルに泊まり続けるより、賃貸マンションなりに部屋を借りた方がリーズナブルですよ」
「おー、確かに部屋を借りた方が安上がりだな」
今泊まっているホテルは一泊1万エソ。
月にすると30万エソだ。
俺は寝泊まりするだけの部屋に豪華さなんて求めていない。
必要最低限あれば十分なので、探せば三分の一程度の金で済むだろう。
「でしょう。 本当は私もその部屋に一緒に住みたいのですが、サトシさんは許可を出さないですよね。 そこで妥協案です、隣に私も部屋を借ります」
一緒に住むって。
そりゃ、そんな事許可する訳ない。
お互いプライベートな時間は必要だからな。
それで、妥協案か。
「部屋を借りるのはいいアイデアだが、お前が隣に引っ越す事はないだろ?」
「ダメです。 そこは譲れません」
そう言うと思ったよ。
だが、まだ別の問題がある。
「あと、俺が部屋を借りられない。 この世界では俺の担保がないからな」
「それは問題ありません、私が二部屋借ります。 家賃はお願いしますが」
なるほど。
それなら、まぁ、悪くはないか。
マシュウが今住んでいる所は寮らしいので、引っ越すのは問題ないと言うし。
「よし、分かった。 それで行こう」
「ありがとうございます!」
俺が了承すると、マシュウはパァッと顔を明るくして言う。
「では、早速明日物件を探しに行きましょう」
「明日? お前、仕事は大丈夫なのか?」
「大丈夫です、明日は休みですので」
なら、いいか。
俺は了承すると、今日の所は解散しゆっくり休めとマシュウに告げる。
マシュウは頷くと、「では、明日迎えにきますので」とホテルを出て行った。
明けて翌日。
俺の部屋の電話機が、けたたましく鳴る。
モーニングコールなんて頼んでいないのになんだ?
「はい」
「申し訳ございませんお客様、お連れ様がお見えになって、どうしてもとおっしゃられて」
連れ?
誰?
「ロビーでお待ちしていますとの事です」
そう言って電話は切れた。
時間を確認すると午前8時少し前。
こっちに来てからこの時間は寝ているからまだ眠い。
昨日は色々あり、疲れてはいたが頭が混乱していたのだろう。
中々寝付けなかったのもある。
顔を洗いロビーへ向かう。
だけど、連れって誰だ?
この世界では知り合いなんて数える程だ。
タケシかノアナナ姉妹。
大穴でコフィレぐらいだが、俺を訪ねてくる理由が分からない。
……いや、一人いたな。
「おはようございます」
そこに居たのはマシュウだった。
やっぱりか。
確かに昨日約束はしたが、こんなに早い時間だとは思わなかった。
「お前なぁ~、早いよ、来るのが」
「早くサトシさんに会いたくて」
「その顔で言うな! 知らない人間が聞いたら誤解するだろ」
「いいじゃないですか、知らない人間なんですから。 仮にその人に次会ったとしても覚えてなんていませんよ、お互いに」
いや、その通りなんだがなんか釈然としない。
それにこんな時間じゃぁ。
「こんな時間じゃぁ、不動産屋も開いてないだろ」
「はい」
「それなら俺はもう少し寝る、不動産屋は午後からでいいだろ」
そう言い踵を返すがマシュウは俺の腕をとる。
「なら、私も部屋へ。 サトシさんはお休みになって下さい、適当な時間で起こしますので」
何を言っているんだコイツは。
俺が泊まっている部屋は一人部屋でそんなに広くない。
部屋に来て何をするつもりなんだ?
「なんで部屋に来るんだ?」
「仕事以外の時間はサトシさんと一緒に居たいからです。 報酬です」
うっ。
報酬と言われれば、俺は言い返す事は出来ない。
それに、問答している内に目が覚めた。
「はぁ~、もう目が覚めたから部屋へは行かない、お前朝食は?」
「まだです」
「なら、一緒に食べるか、このホテルのレストランになるが」
「はい!」
マシュウは目を輝かせている。
ミズノも俺と常に一緒に居たがっていたが、人格が変わってもその辺りは変わらないのか?
それとも、記憶に引っ張られているのか?
いずれにせよ、これは釘を刺しておかないとな。
「いいか、良く聞け、こんな時間に尋ねてくるのは今回で終わりだ、次は午後からにしろ」
「そ、そんな、何故ですか」
「俺もゆっくり休みたいし、なによりお前が休めないだろ。 昨日は長距離の運転をさせたから疲れているだろうし」
「大丈夫です」
「大丈夫かどうかは俺が決める。 とにかくお前も自身を労われ、二回もお前を失う事なんて絶対にあってはならない」
「!!!!! …………サトシさん」
ミズノが亡くなったと聞いた時は、全てがどうでもよくなった。
あんな思いをするのは二度と御免だ。
マシュウも納得したのか、それ以上この話はしなくなった。
「それはそうと、サトシさんは何故あんな遠い所のギルドへ居たのですか? 試したい事があるって言っていましたけど」
「ああー、それはなぁ」
朝食を摂りながらマシュウが訪ねてきたので俺は経緯を話す。
マシュウは「そう言う事でしたか。 私に一声掛けていただければ……」と言うが、声を掛けるのは無理だろう。
マシュウの事情を知るまで、俺は警戒して避けていたからな。
「ですが、それは大丈夫だと思います」
「大丈夫? やっぱり4枚掛けは通用するのか」
「いえ、それは分かりませんが……」
分からない?
なら、大丈夫ってのは?
マシュウが言うには、P・Pギルドの設置機種が自由化されるとの事。
こっちの世界でのP・Pは機種力によって格差が出ないよう、一部を除き組合内では設置機種を統一してきた。
格差は、あくまでもギルドのサービスによって生じると言うコンセプトだからだ。
しかし、機種力と言う物は必ず発生する。
この世界でも、製造メーカーは一社ではなく複数社ある。
複数あるメーカーが全て同じ機種を発売する訳ではなく、各メーカー独自の出玉性能や、ゲーム性の機種を発売するからだ。
そうなると、機種力が強い機種にユーザーは集まる。
ギルドは人気機種を設置したいが、規則により特定機種しか設置できない。
ギルド側が自由化を求めるのは当然だろう。
「自由化はすでに確定していて、数日後には各ギルドで入れ替え合戦が始まります」
「そうなのか?」
「入れ替えの申請は私達の組織に申し込まないといけませんからね。 私は管轄内の入れ替えの立ち合いにも行きますから間違いないですよ」
申請には、コチンネタンルの文字もあったから大丈夫だとマシュウは言う。
「サトシさんだから話しましたが、本来は外部に出して良い情報ではありませんので、この事は内密に」
「分かった」
「ですが、明日か明後日にはギルドも告知をするでしょうから、内密にとは言ってもそれまでですので」
話すとすればノアかナナだが、ナナはマシュウと同じ組織に属しているから知っているはずだ。
ノアには、近日中に会う予定もない。
後はタケシとコフィレだが、この二人はP・Pに興味がなさそうだから話題にすら上がらないだろう。
俺が込み入った話をする人物は、この世界にはその四人しかいないから情報が洩れる事はないな。
そしてその後、朝食を終えた俺達は、マシュウの車でホテルを後にした。
「俺もだ」
残りの処理は任せてくれと言ったブロンディーに全て任せ、俺達はタークリーの賭場を後にした。
そして、腹が減ったと言った俺に、「ならばあそこの店で」と勧めたミヅノと入ったのがラーメン屋だった。
価格の割には美味かったな。
「50億が掛かった勝負だと言うのに、いつもと変わらずお酒を飲もうとするなんて、あの時は本当に呆れました」
「仕方がないだろ、そこに酒があるんだから」
呆れた顔をするベップに俺は肩を揺らす。
この事も知っているって事は、ベップは間違いなくミヅノだ。
だが、なぜ?
その事を疑問に思い尋ねる。
ベップは俺の問いに答える。
結論から言うと、転生と言うものだ。
ミヅノが事故で亡くなった瞬間、その記憶と人格はこの世界のベップ・マシュウと言う男に産まれ変わった。
いや、産まれ変わったのではなく、記憶と人格が乗り移ったと言うのだ。
ならば、転生ではなく記憶と人格のみが転移した形になるのか?
その辺りは良く分からないな。
乗り移って数日は二人の記憶・人格を問題なく共有できた。
世の二重人格者ってのは、案外こういった例なのかもな。
だが、ある日猛烈な頭痛に襲われたのだと。
そしてその頭痛の中、ある選択に迫られたのだ。
ベップ・マシュウとして生きるか、アマノ・ミヅノとして生きるか、と。
ベップ・マシュウとして生きるならアマノ・ミヅノとしてのこれまでの記憶を。
アマノ・ミヅノとして生きるなら、ベップ・マシュウの記憶は消去される。
この世界で暮らすには、アマノ・ミヅノとしては生き辛いだろう。
しかし、記憶、つまり知識はアマノ・ミヅノの方が断然ある。
そこで、考えたのが人格はベップ・マシュウ。
記憶はアマノ・ミヅノでと願ったのだ。
すると、頭痛が収まったかと思えば、人格はベップ・マシュウ。
記憶はなんと、二人分あったと言う。
だが、二人分の記憶が完全に残っている訳ではなく、ベップ・マシュウの記憶は幼少期。
アマノ・ミヅノの記憶は成人以降のみが残っていたらしい。
なんともご都合主義のようだが、代償として少年期~青年期の記憶が共に消去したらしい。
「サトシさんと初めて会ったのは成人してからですからね、全部覚えていますよ」
「そうか…… そうだったな」
ベップは瞳に涙を浮かべ言う。
ミヅノは豪快で攻撃的な性格だった。
対するベップは、穏やかな性格なのがこれまで接して来て見てとれる。
共通しているのは、計画的な所ぐらいか。
ミヅノはああ見えて、緻密な計画を立て実行するからな。
しかし、違和感が凄いな。
だが、この違和感に最も苦しめられたのは目の前に居る彼だろう。
ん?
彼……なのか?
まぁ、それはいいとして。
「大変だったな」
「そんな、サトシさんの今の状況と比べればマシですよ」
「そんな事はない!」
少年期~青年期の記憶が消去したって事は、その間学んだ事も全て消去した事になる。
少年期~青年期と言えば、多くを占めるのが学校へ通い学ぶ期間。
その記憶がないのだ。
成人してからの苦労は想像を絶する。
しかも、ベップ・マシュウは男性。
アマノ・ミヅノは女性だ。
男性の人格に成人以降の女性の記憶があるんだ。
その混乱具合は、俺なんかとは比べるまでもない。
それに、俺は細かい事はあまり考えない質だ。
現に、この世界・時代に転移し、金を得る手段を得てからは気楽なのもだ。
寝たい時に寝て、起きたい時に起き、食べたい時に食べ酒を飲む。
だから、俺に同情なんかしないで欲しい。
「今はもう慣れましたから全く問題ありません。 ちなみにですが、精神は完全に男性で、心配されていたLGBT的な事もありません」
「そ、そうか……」
なら、ギルドで助けた女の旦那への一言での目は何だったんだ?
俺の気のせいか?
「ただ、さっきは昔を思い出しました」
「さっき? 昔?」
「はい」
さっきって何だ?
それに昔?
「奥さんを大切にしてやれって」
「あー、旦那に対して言ったな。 だが、昔ってのは?」
「いえ、私も昔…… サトシさんと仕事をしていた時は大切にしてもらっていたなと思い出しまして」
それであんな目をしていたのか。
昔と言っても十数年前の話だ。
それほど昔でもない。
「とにかく、また会えて嬉しいよ」
「私もです、でも、まさかこんな再会の仕方をするなんて」
「そうだな、不思議なもんだ」
世の中には科学で解明できない事が数えきれないほどある。
俺達もその例の一つだろう。
「これからは、以前のようにサトシさんの護衛に戻ります」
「この世界と時代では護衛は要らないと思うが」
「そんな事はありません!」
「おっ、おぅ、そう……か」
護衛は必要ないと言った俺に、強く否定するミヅノ。
元いた世界と違い、俺を怨んでいる人間なんていないだろうが、この世界の先輩であるミヅノが言うなら必要なのだろう。
この世界はそんなに危険が多いのか。
郷に入っては郷に従えとも言うし、ここはミヅノの言う事に従おう。
でもなぁ~。
「護衛はありがたいが、その、なんだ、以前のように報酬が渡せないんだ」
ミヅノには少ないながらも報酬を渡していた。
彼女の所属はあくまでも自警団組織であり、そこから給与と言う形で報酬は支払われていた。
だが、彼女の仕事は護衛の範疇に収まらない。
俺が相棒と認める程に、自ら進んで仕事をこなしてくれていたので、別途報酬を渡していた。
それが、今は払えない。
この世界に来て稼げるのは、今の所自分の分だけだからな。
「報酬なんて必要ありません」
「いや、そういう訳にはいかんだろ」
「そもそも、以前もありえない額の報酬をもらっていましたからね」
「以前の金は、今は使えないから関係ないだろ?」
「関係ないなんて事はありません!」
またもや、強く言い切るミヅノ。
もう、これは言う事を聞かないな。
「分かった、分かった、なら頼む。 だが本当に報酬は払えない、それでいいんだな」
「報酬はサトシさんと過ごすだけで十分です」
「過ごすって、四六時中一緒にいるつもりか?」
「もちろんです。 それが報酬ですから」
な、なんだと。
それって付きっきりって事じゃないのか。
いや、待て。
LGBT的な事は心配ないと言っていたが本当か?
ミヅノは俺に嘘をつくような女ではなかったが、目の前に居る男の人格はベップだ。
彼も嘘をつくようには見えないが……
「ミヅノ、いや、ベップ君」
「マシュウと呼び捨てて下さい」
「……マシュウ、お前、本当にLGBT的な事は心配ないのか?」
「!!!!!」
なんだ、その反応は。
もしや……
「それは間違いなくありません。 ですが、さっきも言った通りサトシさんを見て昔を思い出したのは事実です」
「そ、そうか」
俺はホッと胸を撫でおろす。
でも、昔を思い出したってどういう事だ。
さっきは大切にしてもらった云々かんぬんだったから、話しの脈絡からして無関係だと思うのだが。
ベップを見ると恥ずかしそうにしている。
う~ん、分からん。
まぁ、間違いなく無いと言ったんだ。
なら信じよう。
「よし、分かった。 これから宜しく頼むよ」
俺は右手を出す。
すると、マシュウはため息交じりに「そう言うところも変わりませんねぇ」と言い右手を握る。
「だが、四六時中は無理だろ、お前にも仕事があるんだから」
「仕事は辞めます」
「何をバカな事を言っているんだ」
「本気です、自分が食べて行くだけの蓄えならありますし」
「そんな事は断じて許可できん!」
貯蓄を減らしてまで俺と居るなんて許可できるか。
その蓄えはお前の苦労の結晶と言っても差し支えのないものだ。
それを、俺なんかの為に消費させてたまるか。
「それに、仕事を辞めるのも許可できん! そんな事をするなら、俺はお前の前から消える」
「そ、そんな………… 分かりました」
マシュウは仕事面でも非常に優秀で、組織からも信頼されているとナナから聞いた。
並大抵の努力では、そうはならなかっただろう。
その努力の結果を、俺の為に捨てさせる訳には断じてならない。
「ならば、一つだけ許可を。 私もこのホテルに滞在…… いや待てよ」
俺に許可を乞うてきたのだが、何か思う事があったらしく言葉を止めるマシュウ。
このホテルに滞在するつもりだったのか。
今住んでいる所はどうするつもりだったんだ?
「サトシさんは許可を下さらないと思いますので妥協案を。 サトシさん、部屋を借りませんか?」
「部屋?」
「ええ、部屋です。 ホテルに泊まり続けるより、賃貸マンションなりに部屋を借りた方がリーズナブルですよ」
「おー、確かに部屋を借りた方が安上がりだな」
今泊まっているホテルは一泊1万エソ。
月にすると30万エソだ。
俺は寝泊まりするだけの部屋に豪華さなんて求めていない。
必要最低限あれば十分なので、探せば三分の一程度の金で済むだろう。
「でしょう。 本当は私もその部屋に一緒に住みたいのですが、サトシさんは許可を出さないですよね。 そこで妥協案です、隣に私も部屋を借ります」
一緒に住むって。
そりゃ、そんな事許可する訳ない。
お互いプライベートな時間は必要だからな。
それで、妥協案か。
「部屋を借りるのはいいアイデアだが、お前が隣に引っ越す事はないだろ?」
「ダメです。 そこは譲れません」
そう言うと思ったよ。
だが、まだ別の問題がある。
「あと、俺が部屋を借りられない。 この世界では俺の担保がないからな」
「それは問題ありません、私が二部屋借ります。 家賃はお願いしますが」
なるほど。
それなら、まぁ、悪くはないか。
マシュウが今住んでいる所は寮らしいので、引っ越すのは問題ないと言うし。
「よし、分かった。 それで行こう」
「ありがとうございます!」
俺が了承すると、マシュウはパァッと顔を明るくして言う。
「では、早速明日物件を探しに行きましょう」
「明日? お前、仕事は大丈夫なのか?」
「大丈夫です、明日は休みですので」
なら、いいか。
俺は了承すると、今日の所は解散しゆっくり休めとマシュウに告げる。
マシュウは頷くと、「では、明日迎えにきますので」とホテルを出て行った。
明けて翌日。
俺の部屋の電話機が、けたたましく鳴る。
モーニングコールなんて頼んでいないのになんだ?
「はい」
「申し訳ございませんお客様、お連れ様がお見えになって、どうしてもとおっしゃられて」
連れ?
誰?
「ロビーでお待ちしていますとの事です」
そう言って電話は切れた。
時間を確認すると午前8時少し前。
こっちに来てからこの時間は寝ているからまだ眠い。
昨日は色々あり、疲れてはいたが頭が混乱していたのだろう。
中々寝付けなかったのもある。
顔を洗いロビーへ向かう。
だけど、連れって誰だ?
この世界では知り合いなんて数える程だ。
タケシかノアナナ姉妹。
大穴でコフィレぐらいだが、俺を訪ねてくる理由が分からない。
……いや、一人いたな。
「おはようございます」
そこに居たのはマシュウだった。
やっぱりか。
確かに昨日約束はしたが、こんなに早い時間だとは思わなかった。
「お前なぁ~、早いよ、来るのが」
「早くサトシさんに会いたくて」
「その顔で言うな! 知らない人間が聞いたら誤解するだろ」
「いいじゃないですか、知らない人間なんですから。 仮にその人に次会ったとしても覚えてなんていませんよ、お互いに」
いや、その通りなんだがなんか釈然としない。
それにこんな時間じゃぁ。
「こんな時間じゃぁ、不動産屋も開いてないだろ」
「はい」
「それなら俺はもう少し寝る、不動産屋は午後からでいいだろ」
そう言い踵を返すがマシュウは俺の腕をとる。
「なら、私も部屋へ。 サトシさんはお休みになって下さい、適当な時間で起こしますので」
何を言っているんだコイツは。
俺が泊まっている部屋は一人部屋でそんなに広くない。
部屋に来て何をするつもりなんだ?
「なんで部屋に来るんだ?」
「仕事以外の時間はサトシさんと一緒に居たいからです。 報酬です」
うっ。
報酬と言われれば、俺は言い返す事は出来ない。
それに、問答している内に目が覚めた。
「はぁ~、もう目が覚めたから部屋へは行かない、お前朝食は?」
「まだです」
「なら、一緒に食べるか、このホテルのレストランになるが」
「はい!」
マシュウは目を輝かせている。
ミズノも俺と常に一緒に居たがっていたが、人格が変わってもその辺りは変わらないのか?
それとも、記憶に引っ張られているのか?
いずれにせよ、これは釘を刺しておかないとな。
「いいか、良く聞け、こんな時間に尋ねてくるのは今回で終わりだ、次は午後からにしろ」
「そ、そんな、何故ですか」
「俺もゆっくり休みたいし、なによりお前が休めないだろ。 昨日は長距離の運転をさせたから疲れているだろうし」
「大丈夫です」
「大丈夫かどうかは俺が決める。 とにかくお前も自身を労われ、二回もお前を失う事なんて絶対にあってはならない」
「!!!!! …………サトシさん」
ミズノが亡くなったと聞いた時は、全てがどうでもよくなった。
あんな思いをするのは二度と御免だ。
マシュウも納得したのか、それ以上この話はしなくなった。
「それはそうと、サトシさんは何故あんな遠い所のギルドへ居たのですか? 試したい事があるって言っていましたけど」
「ああー、それはなぁ」
朝食を摂りながらマシュウが訪ねてきたので俺は経緯を話す。
マシュウは「そう言う事でしたか。 私に一声掛けていただければ……」と言うが、声を掛けるのは無理だろう。
マシュウの事情を知るまで、俺は警戒して避けていたからな。
「ですが、それは大丈夫だと思います」
「大丈夫? やっぱり4枚掛けは通用するのか」
「いえ、それは分かりませんが……」
分からない?
なら、大丈夫ってのは?
マシュウが言うには、P・Pギルドの設置機種が自由化されるとの事。
こっちの世界でのP・Pは機種力によって格差が出ないよう、一部を除き組合内では設置機種を統一してきた。
格差は、あくまでもギルドのサービスによって生じると言うコンセプトだからだ。
しかし、機種力と言う物は必ず発生する。
この世界でも、製造メーカーは一社ではなく複数社ある。
複数あるメーカーが全て同じ機種を発売する訳ではなく、各メーカー独自の出玉性能や、ゲーム性の機種を発売するからだ。
そうなると、機種力が強い機種にユーザーは集まる。
ギルドは人気機種を設置したいが、規則により特定機種しか設置できない。
ギルド側が自由化を求めるのは当然だろう。
「自由化はすでに確定していて、数日後には各ギルドで入れ替え合戦が始まります」
「そうなのか?」
「入れ替えの申請は私達の組織に申し込まないといけませんからね。 私は管轄内の入れ替えの立ち合いにも行きますから間違いないですよ」
申請には、コチンネタンルの文字もあったから大丈夫だとマシュウは言う。
「サトシさんだから話しましたが、本来は外部に出して良い情報ではありませんので、この事は内密に」
「分かった」
「ですが、明日か明後日にはギルドも告知をするでしょうから、内密にとは言ってもそれまでですので」
話すとすればノアかナナだが、ナナはマシュウと同じ組織に属しているから知っているはずだ。
ノアには、近日中に会う予定もない。
後はタケシとコフィレだが、この二人はP・Pに興味がなさそうだから話題にすら上がらないだろう。
俺が込み入った話をする人物は、この世界にはその四人しかいないから情報が洩れる事はないな。
そしてその後、朝食を終えた俺達は、マシュウの車でホテルを後にした。
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