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1巻
1-2
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若干頬が赤らんでいるように見えたが、それは気のせいだろう。美少女という表現すら生易しいこの子が、平凡を絵に描いたような風見に見向きするはずがない。危うく視線が合っただけで勘違いする男子になってしまうところだった。
「クロエは外国の人なのに日本語が上手いんだな? 俺の名前は風見心悟だ。よろしく」
「あぁ……。はいっ、風見様!」
クロエは瞳を大きくし、ぎゅっと深く風見の腕を抱きしめた。まるで憧れの人に呼びかけてもらった乙女のような反応である。
「あ、あのっ。風見様、これからどうぞ末永くよろしくおにゃっ――……う、うぅ。よろしくお願いいたします……」
「ああうん、よろしく?」
言葉の途中で噛んでしまった彼女は真っ赤になってきゅうと萎んだ。
よくわからないが魅力的で可愛い子。そう思いつつ風見は彼女とともに館に入る。
どうやらここは靴を脱がない洋式住居らしい。一歩踏み込むと厚い絨毯に出迎えられた。さらに暖炉や剥製、壺が飾ってあったり、部屋によっては豪勢な数段重ねのシャンデリアもある。しかもそれには電灯ではなく全てロウソクがセットされている。しかしそんなもの、どうやって点灯・消灯するのだろうかと彼が疑問を抱いていると応接室らしき場所に到着した。
中に入って座ると、見計らったようにメイド姿の女性二人がお茶とお菓子を置いてくれる。
「あ、どうも」
頭を下げるとメイドは何故か戸惑いを見せ、愛想笑いで応じて逃げるように帰っていった。これまた不思議な反応に風見もまた戸惑ってしまう。
「カザミ、君はきっと突然のことで困惑しているだろうね。君の今の状況は突然、異世界に召喚されたというところだ。一応僕からも説明は用意しているのだけれど、僕に説明されるのと、一つ一つを自分で問うの、どちらがいいかい?」
対面のソファーに座るユーリスが問いかけてきた。
しかしながら何がわからないのかわからない状態の風見は返答に困ってしまう。
と、そんな時だ。ばさばさと鳥の羽ばたきに似た大きな音が聞こえた。見れば、窓の向こうで羽ばたきの正体である巨大な爬虫類――否、おとぎ話に出てくるドラゴンそのものが降り立ち、その背にあの気怠そうなエルフ耳の女性を乗せ、飛び立ったではないか。
は……? えっ!? と、何度も驚きを口にした風見は「あれ、あれはっ――!?」と、たった今生まれた疑問の元を指差す。
「あれかい? そういえばマレビトの世界に飛竜や魔物はいないと聞くね。あれは飛竜という竜種だよ。それから同じくこちらにしかないものと言えば律法と亜人だったかな? そうだね、まずはそのあたりから説明するかな。クライス、ちょっとこっちに来てくれるかい」
あっさりあれが竜だと認めた彼は、部屋の隅に控えていた執事を呼んだ。
今度は一体何をする気なのかと風見が見守っていると、ユーリスは「僕は猫舌でね」と急にどうでもいいことを暴露してきた。それは風見としては興味のない話である。
まあ、確かにティーカップからは香り高い湯気がゆらゆらと上っており、すぐに飲むのは辛いだろう。風見も少々冷めるのを待っているくらいだ。
しかしそれが何の関係があるのかと見ていると、ユーリスはやってきた執事にそのお茶を渡す。まさか彼に息で冷まさせるのか? と、風見はつい眉をひそめそうになった。
そんなことを考えていた矢先――
「Eu escrevo isto Geada」
聞き慣れない響きの文言をクライスと呼ばれた執事が唱える。すると彼が手にしたティーカップの周囲に薄い青色の光が広がり、幾何学模様を描いて散った。
「――!?」
まるで魔法のようなエフェクトだ。けれどここにはそれを映し出す映写機なんてない。
「どうぞ、ユーリス様」
「ありがとう。おっと、今回はちょっと冷ましすぎだったね。中までシャーベット状だ」
「ではお取り替えを」
「頼むよ」
ユーリスがスプーンでかき混ぜるとしゃりしゃりと音が鳴る。上がっていた白い煙も湯気ではなく、冷気のそれとなっていた。
カップを傾けても水が零れないマジックは見たことがあるものの、こんなものは見たことがない。彼の知る言葉で言うならこれはまさに魔法と言うしかなかった。
「これは旧時代では魔法と呼ばれた技術だよ。今はこれを律法という。才能がある者はこの超常現象を操れるんだ。君の世界にはないのだと聞いたよ」
「手品じゃ、ないのか……?」
「もちろん違う。このクライスは氷属性。それから後ろにいる彼女らの中には土、雷、陽属性の律法を使える者がいる。何ならそちらも見るかい?」
ユーリスが目配せをすると、先程肩を貸してくれたクロエがうなずいた。何をするのかと見ていると、部屋の端に置いてある観葉植物のもとへ向かっていく。
そこで彼女は呪文のようなものを二、三言口ずさんだ。それと共にやはり不思議な光が――今度は白色の光が散る。
すると植物は見る間に枝葉を伸ばして成長し、やがてつぼみを開花させた。
こんなものを見せられると否定の材料を探す方が逆に難しい。「信じられたかい?」とユーリスに問いかけられたが、頷くことしかできなかった。
「……ならその律法っていうのはどうやって起きているんだ?」
「それは僕らにもわからない。古くからあって使用法や運用法は確立されているけれど、原理は不明。一部の血統の人間なら使える可能性があるとしかわかっていないんだ」
己の中にある魔力がどうのこうのと言われても風見としては信じ難い。むしろこれくらいの方が状況を呑み込むには楽だった。
ユーリスは「さて」と息をつくと、再び風見と向かい合う。
「竜と律法の二つは見てもらった。では次に疑問に思うのは彼女らの姿だろうね。そこの君。えーと……? 彼のところに行け」
名前を覚えていないようだが指示を出した。動いたのは褐色の肌で狼のような耳と尾を持った少女だった。翠色の瞳はどこか無機質で獣的な鋭さを感じさせる。
腰には二本のサーベル、軍服のような衣装。おまけに丈夫そうなブーツと、少女らしからぬ兵士の装いだ。
「彼女の耳や尾は本物だよ。触って確かめてみるといい」
「い、いや、それはさすがに本人の了承とかそういうのが……」
「……」
ユーリスの言い回しやこれまで見たことだけでも、風見は薄々この状況を理解し始めていた。まだ若干信じ難い部分もあるが、彼女の尾もきっとまやかしではない。
動物のような身体的特徴を持った亜人――。生物学者の端くれとしては並々ならぬ興味をそそられる。
誘惑に負けてつい犬耳へ手を伸ばそうとすると、彼女の尾が急にぴんと立った。いかにも文句がありそうな様子で、耳は手を避けるようにぱたぱたと動く。
オーケー。そのじとーっとした視線がなくても言いたいことはわかった。
風見は目力に負け、ゆるゆると腕を下ろすと、そんな意味を込めた頷きを返した。
とりあえずあの動きなら間違いない。耳も尾も本物なのだろう。他の猫耳やウサギ耳のように見えるものがある彼女らも同様だ。声にピクリと反応する耳も、そわそわと揺れる尾も作り物には見えない。
「えーと、名前は?」
目の前の彼女に尋ねる。
「……」
「答えろ。君の新たな主だ。それから周囲の者も同じだ。契約の更新はしないが、僕経由でそう命じる。彼の命令は僕の命令と同義だ」
今まで緩かったユーリスの声だが、軍服の姿をした彼女らに対しては圧力を感じさせる物言いだ。
しかし彼女は反応しない。故意に無視しているのではなく本当に無反応である。
「ん? ああ、そうか。君たちはこの言語を知らないんだったね。つい忘れていたよ」
苦笑した彼は、風見の知るどの言語とも違う語調で話し始めた。そういえば先程メイドに礼を言った時もどこか伝わっていない感じがあった。
あんな竜に、亜人に、知らない言語。おまけにこの場所に至った経緯。それらを思えば風見も頷かざるを得ない。
召喚と言っていたがここは本当に――異世界なのだろう。
「……Liz=Vert Servy」
リズ=ヴァート・サーヴィ。
ユーリスに促されてから言っていたので、これが彼女の名前なのだろう。
すっと形式上は整った礼をした彼女は風見の返答を待つことなく壁際に戻り、警備の銅像と化してしまった。彼女は随分と愛想がないらしい。風見が残念に思っていると、ユーリスが代わりに「悪いね」と詫びを入れてくる。
「彼女は隷属騎士――騎士の職務をさせている奴隷でね。だから命令すれば彼女の愛想も改善すると思う」
「ど、奴隷って……」
「道具として売り買いされる人間のことだよ。その反応だと君の世界では珍しいのかもしれないが、こちらには存在している。奴隷は、律法でルールを課せられるから下手な人間より信頼できるんだ。だが悪い制度と誤解しないでほしい。奴隷契約は双方の合意の下でしか成り立たないし、食や寝床の保証もされる、公平なものだよ」
紙の上でおこなう契約に呪いか何かで強制力を働かせたものと風見は解釈した。
「じゃあ、そろそろここが君のいた世界とは全く違う世界だと理解してもらえたかな?」
「理解はできるけど……なんというか呑み込み辛いな」
「ハハハハ。さすがに数分で順応してくれとは言わない。これは嘘や悪戯ではないと冷静に理解してくれただけで十分だよ」
ユーリスはわざと間をおくようにティーカップに砂糖とミルクを入れ、「そちらは?」と問いかけたり、ゆったりと掻き混ぜて口をつけたりする。
話が再開されたのはお互いに一口飲み、カップを置いたときだった。
「ではここからが本題だ。僕たちの世界では異世界の存在――君のようなマレビトを招き、その知識で政を助けてもらうことがある。召喚の例は過去にもいくつかあり、僕やクロエ、クライスが日本語を知っているのもそれが理由だ。他にも英語などは伝わっているよ」
ありがちな話だとは思う。風見だって何度となく物語として読んだ覚えがあった。
そういう時に主人公が気にするのは、じゃあ何故喚ぶ必要が? 何故自分が? そんなところだ。彼もご多分に漏れず、それを問いかけた。
「理由は単純に困っているからだよ。村や街では毎年のように餓死者が出るし、疫病が流行る。さらにこの国の土地を求めて他国が攻めてくる。そうやって疲弊したところを狙って今度は別の国が――と、そんな状況を打破するためだね。ついでに言えば僕自身が父から皇位を継ぐための功績作りでもある。それが一つ目の理由だ」
「……この国っていうのは?」
「トランジア大陸を四分する国のうち、南に位置するアウストラ帝国」
まだ疑いの心が残っている風見はボロが出るかと問いかけてみたが、ユーリスは淀みなく答えた。
そしてまた一拍置くと、彼は二つ目の理由について説明を始める。
「カザミを選んだのは僕ではなく、飛竜に乗って帰った彼女の判断だよ。さきほども言ったように君みたいなマレビトは過去に幾人か召喚されている。その誰もが伝説とも言える功績を残したけれど彼らの活躍の裏には争いもあったし、多くの人死にもあった。だからこそ君のような人を選んだんだ――君には多くの命を救いたいという希望があるらしいね」
「俺のことを知っているのか?」
「僕は知らない。だけど彼女はいくらか下調べをしたそうだよ」
下調べと聞いて風見は表情を曇らせた。
風見は獣医だ。確かにたくさんの命を救いたいというのはいつだって胸に抱いている希望であったし、それを人一倍願う理由となる事件も経験した。
だが知らない間に調べられていたかと思うと良い気分ではない。
「だからどうかこの国のために力を尽くしてもらえないだろうか?」
「そんなこと、突然言われても困る。俺にだって家族はいるし、生活や職もある。国のためって言われても俺はただの獣医だし……。それに国が関わるような大仕事じゃあ、片手間でやるわけにもいかないだろ?」
「そうだね。けれどそれに応える十分な対価と衣食住は保障しよう。国を預る宰相の権力でできる範囲で希望も聞こう。人の欲を満たす力なら持っているつもりだ。だからカザミにはそこも踏まえて検討してもらいたい」
彼の言うことが全て本当だとして、宰相――つまりは皇帝の次に偉い立場ならそれこそ何でも叶うだろう。
周囲に綺麗で若い女性ばかりが控えているのは、そういう意味も込めてなのだろうか。ちらっと風見が見ると、それに気づいた白い服の神官っぽいクロエはにこりと微笑む。それだけで心臓がドキリと揺れた。
「ちょ、ちょっと待ってほしい。今の話が全部本当で召喚も事実だったとして、だったら元の世界に帰る方法はどうなるんだ?」
「喚び出せたからには帰すこともできる。ただ、マレビトの召喚には大がかりな術を用いないといけないから召喚者の負担が激しいらしくてね。召喚をしてくれた彼女はこれから一ヶ月くらい寝て過ごすし、当分は無理だと言っていたよ」
「いやいやいや、それは困る! 俺はまだ就職したばかりなんだ。無断欠勤なんてことになったらクビにされる!」
「それは悪いことをした。けれど報酬は弾むし、こちらに永住するのなら僕が全てを保障しよう。だからどうか一考してほしい」
「……いや、だから俺はただの獣医なんだって」
そんな大それたことはどこぞの勇者や英雄にでも任せるべきだ。どこまで行っても小市民な風見には荷が重い。けれどユーリスの瞳は相も変わらず真っ直ぐに風見を捉えていた。
本気の目だ。本気の瞳だ。その迫力に押され、風見はつい視線を逸らしてしまう。
「言い方が悪かった。どうか苦しむ人を、生き物を救ってほしい。僕たちはわけもわからない疫病や飢餓、害悪などで困窮している。この世界には律法はあるが、奇跡はない。神なんてものは魔法と共にいなくなったし、天は手を差し伸べてくれない。助けてと暗がりで泣いている命がいくつもあるんだ。僕は貴方ならそれが救えると聞いた。これは僕たちでは解決できなかった問題なんだ」
「……っ」
周囲を見ればわかる。ここには電気もなければ機械的なものも一切見当たらない。あるのは職人芸が光るものばかりで、近代以前の文明レベルと見て取れる。
そのレベルの科学では飢餓はともかく、病気に対する特効薬や、安全で効果のある対策はおそらく見つけられていないだろう。
「人は飢えて死ぬ。だから来年こそはそうならないように畑を広げたいと国や領主に助力を願う農民がいる。カザミ、それを実行したらどうなったと思うかい?」
「……大変だったんだろうけど、それなりの成果は出るんじゃないのか?」
「そうだね。いくらかは生活がマシになったかもしれない。けれどそれだけではないのが現実だよ」
残念そうに首を振ったユーリスは語った。
「山を拓くと、そのせいで魔物の出没が増えた。その対処で労が増し、結果は芳しくなかった。飢えが広がれば疫病も蔓延する。それで真っ先に死ぬのは子供だけど、彼らが死ねば将来が苦しくなる。身寄りがない捨て子は何とか糧を得ようと悪条件でも奴隷に志願する。僕たちの世界はそういう平行線を歩んでいるんだ。ここのメイドもそこからの拾い上げだよ」
「…………」
「飢餓や疫病をどうにかしてくれと言っているわけではないんだ。できることに協力してもらいたい。勝手に召喚したことは本当に申し訳なく思っている。文句や要求は僕にいくらでも言ってくれ。そして助けを求める人の力になってあげてほしい」
こんな風に言われ、断れる人間なんているのだろうか?
それができるのなら、少なくとも医者として失格である。風見は真剣なユーリスの目から視線を外すことすらついにできなくなった。
「僕は願う。カザミシンゴ殿、どうかこの世界の命を救ってください」
ユーリスはソファーから立ち上がると深々と頭を下げた。それはきっと国を代表して、ひいてはここにいない人全ての代役なのだろう。
全員の視線が重くぶら下がる。良心に一つ一つが巻きつき、解けないほどに絡みついていく。
もう、嫌とは言えなかった。
少なくとも今聞いたことに対して獣医ができることはたくさんある。こんな状況、こんな世界ならば確かに最も必要とする職業は獣医かもしれない。剣を手に戦う勇者とも英雄とも違う。壊す力、殺す力だけで命は守れないはずだ。
救いたかったのに救えなかった命は元の世界でもたくさんあった。だがこちらでは救おうと思えば救える命が数えきれないほどある。なら、それを守らずして何が獣医だろうか?
それを見捨ててしまえば、風見は今度こそ自分に自信を持てなくなる気がした。
いつまでも上がることのない目の前の頭に、風見は声をかける。
「……わかった。農業、自然、生き物を繋ぐ医者が獣医で、飢餓や疫病対策も俺の分野だ。元の世界に戻る準備が整うまでは、できる範囲で協力させてもらう。俺に助けられるものがあるならそれは見過ごせない」
「あぁっ、やはり猊下です! そう答えてくださると信じていましたっ!」
答えた途端、飛び込んできたのはクロエだ。風見の手を両手でひしと包んだ彼女は感激をたたえた瞳で、熱い熱い視線を向けてくる。
まるで俳優に恋した乙女のようなオーバーリアクションに風見はたじろいだ。
そんな風見の前でユーリスはやっと頭を上げ、微笑む。
「ああ、そう言ってもらえて良かった。じゃあ、僕は他の仕事があるからもうお暇させてもらうよ。何かあればハドリア教の神官である彼女に聞くといい。見目も麗しい彼女は今日から終生、君だけのお付きになるそうだ。羨ましいね。それから僕に連絡をしたい時はクライスに言ってくれれば問題ないよ。そして周囲の彼らは隷属騎士だ。小間使いから夜伽まで何でも命令すればいい。もう君の奴隷も同然だしね。それでは活躍を期待しているよ」
「え? あ……おい、ユーリスッ!?」
チャオとでも言いそうな若干イラッとする身振りを残し、彼は部屋を出てしまった。風見はすぐに追いかけようとするが、うっとりと侍っているクロエが邪魔で追えない。
あのいやらしいほど清々しかった笑顔。もしかして面倒を押しつけられた? と風見は今になって気付いた。
「……ただの獣医一人で、本当に国を救えと?」
うん、無理。絶対無理。
そう信じて疑わない彼の異世界生活は、この瞬間から始まったのだった。
†
見ためどおり神官だというクロエの説明によると、ここはアウストラ帝国の帝都近郊にある丘に建てられた別荘らしい。二階の窓からは、確かにそれらしい街が見えた。
青い空と、恐ろしいほどに澄んだ空気。穂を下げるイネ科植物の畑、緑が生い茂った山々。それに田舎の砂利道を行く馬車――と、ここまでは日本やヨーロッパの田舎と大差がないだろう。
だが。
だがしかし、である。
何やら北にある山脈からひょいと桁外れに大きな樹の頭が出ている気がするのは気のせいだろうか。例えるならば山岳にブロッコリーを突き刺しちゃった的な物体が見える気がしてならない。風見は思わず二度ほど目をこすってしまった。
続いて東。
そちらには豊かな森が広がる……かと思いきや、その中央で芋虫の怪獣か何かが自然に呑まれた遺跡のようになっていた。
そのサイズは体高だけで樹の十倍近くはある。もう生きてはいないようだが、芋虫上空にはワシにしては大きすぎる鳥が複数飛んでいた。姿的に、プテラノドン疑惑もある。
これは本格的に異世界の様相だろう。こうやって広く見渡してみれば、違う世界に来たという実感がさらに高まってきた。
けれどこれを現実として受け止めるのは、まだ少々ハードルが高い。
風見はとりあえず深く考えるのをやめ、謎のブロッコリー型大樹と巨大芋虫は見なかったことにした。
「この屋敷は風見様が自由にお使いください。それからここが風見様のお部屋となります」
そう言って案内された部屋は豪華だった。
いや、豪華すぎた。
部屋には高そうな酒の瓶がずらりと並べられた棚が一つ。窓際に丸テーブルとイスが三つ。大きなソファーが二つ。
それから二、三人はゆったりと寝られそうな天蓋付きのベッドが配されていた。
何を想定したベッドの広さなのだろう。ユーリスの夜伽発言といい、ピンク色の妄想が浮かんでしまうのは男の仕様だ。きっと普通に豪華なキングサイズなのだと自分に言い聞かせる。
他にも壺や絵画、剥製などもあったが、それらから一メートルの間合いを取って歩いても余りある広さだ。
三十畳……いや、もう少しあるだろうか。豪華な調度品が放つ黄金色のオーラに目を焼かれる。
つまるところ、庶民の風見にはかなーり居心地が悪い。彼が住んでいた1K(六畳)の公務員宿舎とはえらい違いなので、真逆の息苦しさを覚えてしまうのだ。
「あの、何かお気に障りましたか?」
窓際のテーブルセットに着き思わずため息をつくと、向かいに座ったクロエが不安げに見上げてくる。
「そうじゃないんだ。十分に良くしてもらってると思う。というか良くされすぎて、逆にな」
「なるほど。風見様が仰られるように私もこのような場所は落ち着かないですね。正直、ぼろ一枚に身を包んで寝ていた修道女時代の方が私の身の丈には合っている気がします」
深窓の令嬢みたいな容姿のくせにさらりと凄いことを言った。
話によると彼女はハドリア教とかいうものの神官だったはずだ。
シンデレラのようにこき使われ、冬は水汲みでかじかんだ指を吐息で温める――そんな感じなのかと聞いてみたら、クロエは「それは入門編です」と笑って答えた。
冗談だと信じたい。
「そのハドリア教っていうのはどんなものなんだ?」
「それぞれが自分に恥じない行動を精一杯しなさいと説く宗教です。行動の尊さを信仰しているとも言えますね。だからハドリア教には信仰すべき神はいません。神様なんて考えは魔法と一緒に滅びてしまいました」
犯罪者でもヒーローと呼ばれる人がいる。
例えば悪い権力者から金品を盗んで貧しい民衆にばら撒く義賊がいたとする。行為は犯罪だが、その一方で人を救っているわけだ。
ハドリア教はそれを否定しない。むしろそのようなこともできる人であれと説く。騎士だろうと野盗だろうと、大切な誰かを守るためにそうするしかないなら迷いなく己を貫けと教える。
自分にできることを精一杯おこない、最善を目指すことが結果的に一番多くの人を救うとし、それができる者はきっと運命が祝福してくれるというのが教えだそうだ。
「そもそもこの考えがこの地に根付いたのはマレビト様がいらっしゃったからこそなんです。簡単に言えば――」
彼女は椅子を引いて立ち上がった。
何かを示そうとして風見に微笑みかけ、一歩近寄ろうとする。が、次の瞬間、彼女は足をテーブルの脚に引っ掛けてしまった。
「あっ……」
「うおっと!?」
風見は椅子から身を乗り出し、傾いだクロエの体を慌てて抱きとめる。
漫画以外ではそうそうできる芸当ではないだろうに、彼女は両手をバンザイの形にして顔面から突っ伏すこけ方をしていた。腕の中にいる彼女に無事だったか聞こうとすると、苦笑して「こういうことなんです」とお茶目に舌を出される。
どうやら謀られたらしい。風見は「う、うん?」と目を点にした。
「神様は何もしてくれません。心が傷つこうと、怪我をしようと、財産を奪われようと、餓えようと、凌辱されようと、命を奪われようと――何もしてくれないんです。どれだけ祈りを捧げても、どれだけ手を伸ばしても、何も。助けてと泣く私たちに光をくれたのはマレビト様でした」
「それってつまり、救わぬ神より救う人って言いたいのか?」
「はい。祈って救われるのなら世界はもっと優しいです。私はあの時、命を救うためならと頷いてくださった風見様に感動しました。祈り、慕うのならむしろ猊下――風見様のようなお方に対してです。私たちの宗教はそんなマレビト様に対する思いからできたものです。この世にマレビト様が現れた時から神や魔法といったものは廃れ、この宗教と律法が取って代わりました」
「慕ってくれるのは嬉しいけど、なかなかの無茶ぶりでもあるよな。喚ばれた人が良い人とは限らないし、役に立つとも限らない。それにもし断られたらどうするつもりだったんだ?」
「人柄や能力を見て、それから召喚したそうです。けれど相手の意志とは関係なく私たちは人助けという仕事を押し付けている。憐れんで助けてくれと泣きついているだけです。それを横暴だと言われても仕方ありません……」
悪い言い方をすれば勝手に喚びつけ、重責を無理やり押し付けるのが召喚だ。彼女もそれを心苦しく思っていたらしい。眉をハの字にし、懺悔の気持ちを色濃く滲ませる。
「しかし苦しんでいる方がいるのに、今の私たちでは救いようがないのも真実なのです。私はあなたにそれを救っていただけるように導けと言いつけられました。お願いできる立場ではないですが、それでもどうかご協力くださいっ! 私などでは足りないかもしれませんが、私の全てと一生をかけてご恩をお返しします。だからどうかっ……!」
クロエは風見の手を両手で握り締め、縋り付くように言った。その真に迫った声はとても演技で出せるものではなく、心にじんと響くものがあった。
「クロエは外国の人なのに日本語が上手いんだな? 俺の名前は風見心悟だ。よろしく」
「あぁ……。はいっ、風見様!」
クロエは瞳を大きくし、ぎゅっと深く風見の腕を抱きしめた。まるで憧れの人に呼びかけてもらった乙女のような反応である。
「あ、あのっ。風見様、これからどうぞ末永くよろしくおにゃっ――……う、うぅ。よろしくお願いいたします……」
「ああうん、よろしく?」
言葉の途中で噛んでしまった彼女は真っ赤になってきゅうと萎んだ。
よくわからないが魅力的で可愛い子。そう思いつつ風見は彼女とともに館に入る。
どうやらここは靴を脱がない洋式住居らしい。一歩踏み込むと厚い絨毯に出迎えられた。さらに暖炉や剥製、壺が飾ってあったり、部屋によっては豪勢な数段重ねのシャンデリアもある。しかもそれには電灯ではなく全てロウソクがセットされている。しかしそんなもの、どうやって点灯・消灯するのだろうかと彼が疑問を抱いていると応接室らしき場所に到着した。
中に入って座ると、見計らったようにメイド姿の女性二人がお茶とお菓子を置いてくれる。
「あ、どうも」
頭を下げるとメイドは何故か戸惑いを見せ、愛想笑いで応じて逃げるように帰っていった。これまた不思議な反応に風見もまた戸惑ってしまう。
「カザミ、君はきっと突然のことで困惑しているだろうね。君の今の状況は突然、異世界に召喚されたというところだ。一応僕からも説明は用意しているのだけれど、僕に説明されるのと、一つ一つを自分で問うの、どちらがいいかい?」
対面のソファーに座るユーリスが問いかけてきた。
しかしながら何がわからないのかわからない状態の風見は返答に困ってしまう。
と、そんな時だ。ばさばさと鳥の羽ばたきに似た大きな音が聞こえた。見れば、窓の向こうで羽ばたきの正体である巨大な爬虫類――否、おとぎ話に出てくるドラゴンそのものが降り立ち、その背にあの気怠そうなエルフ耳の女性を乗せ、飛び立ったではないか。
は……? えっ!? と、何度も驚きを口にした風見は「あれ、あれはっ――!?」と、たった今生まれた疑問の元を指差す。
「あれかい? そういえばマレビトの世界に飛竜や魔物はいないと聞くね。あれは飛竜という竜種だよ。それから同じくこちらにしかないものと言えば律法と亜人だったかな? そうだね、まずはそのあたりから説明するかな。クライス、ちょっとこっちに来てくれるかい」
あっさりあれが竜だと認めた彼は、部屋の隅に控えていた執事を呼んだ。
今度は一体何をする気なのかと風見が見守っていると、ユーリスは「僕は猫舌でね」と急にどうでもいいことを暴露してきた。それは風見としては興味のない話である。
まあ、確かにティーカップからは香り高い湯気がゆらゆらと上っており、すぐに飲むのは辛いだろう。風見も少々冷めるのを待っているくらいだ。
しかしそれが何の関係があるのかと見ていると、ユーリスはやってきた執事にそのお茶を渡す。まさか彼に息で冷まさせるのか? と、風見はつい眉をひそめそうになった。
そんなことを考えていた矢先――
「Eu escrevo isto Geada」
聞き慣れない響きの文言をクライスと呼ばれた執事が唱える。すると彼が手にしたティーカップの周囲に薄い青色の光が広がり、幾何学模様を描いて散った。
「――!?」
まるで魔法のようなエフェクトだ。けれどここにはそれを映し出す映写機なんてない。
「どうぞ、ユーリス様」
「ありがとう。おっと、今回はちょっと冷ましすぎだったね。中までシャーベット状だ」
「ではお取り替えを」
「頼むよ」
ユーリスがスプーンでかき混ぜるとしゃりしゃりと音が鳴る。上がっていた白い煙も湯気ではなく、冷気のそれとなっていた。
カップを傾けても水が零れないマジックは見たことがあるものの、こんなものは見たことがない。彼の知る言葉で言うならこれはまさに魔法と言うしかなかった。
「これは旧時代では魔法と呼ばれた技術だよ。今はこれを律法という。才能がある者はこの超常現象を操れるんだ。君の世界にはないのだと聞いたよ」
「手品じゃ、ないのか……?」
「もちろん違う。このクライスは氷属性。それから後ろにいる彼女らの中には土、雷、陽属性の律法を使える者がいる。何ならそちらも見るかい?」
ユーリスが目配せをすると、先程肩を貸してくれたクロエがうなずいた。何をするのかと見ていると、部屋の端に置いてある観葉植物のもとへ向かっていく。
そこで彼女は呪文のようなものを二、三言口ずさんだ。それと共にやはり不思議な光が――今度は白色の光が散る。
すると植物は見る間に枝葉を伸ばして成長し、やがてつぼみを開花させた。
こんなものを見せられると否定の材料を探す方が逆に難しい。「信じられたかい?」とユーリスに問いかけられたが、頷くことしかできなかった。
「……ならその律法っていうのはどうやって起きているんだ?」
「それは僕らにもわからない。古くからあって使用法や運用法は確立されているけれど、原理は不明。一部の血統の人間なら使える可能性があるとしかわかっていないんだ」
己の中にある魔力がどうのこうのと言われても風見としては信じ難い。むしろこれくらいの方が状況を呑み込むには楽だった。
ユーリスは「さて」と息をつくと、再び風見と向かい合う。
「竜と律法の二つは見てもらった。では次に疑問に思うのは彼女らの姿だろうね。そこの君。えーと……? 彼のところに行け」
名前を覚えていないようだが指示を出した。動いたのは褐色の肌で狼のような耳と尾を持った少女だった。翠色の瞳はどこか無機質で獣的な鋭さを感じさせる。
腰には二本のサーベル、軍服のような衣装。おまけに丈夫そうなブーツと、少女らしからぬ兵士の装いだ。
「彼女の耳や尾は本物だよ。触って確かめてみるといい」
「い、いや、それはさすがに本人の了承とかそういうのが……」
「……」
ユーリスの言い回しやこれまで見たことだけでも、風見は薄々この状況を理解し始めていた。まだ若干信じ難い部分もあるが、彼女の尾もきっとまやかしではない。
動物のような身体的特徴を持った亜人――。生物学者の端くれとしては並々ならぬ興味をそそられる。
誘惑に負けてつい犬耳へ手を伸ばそうとすると、彼女の尾が急にぴんと立った。いかにも文句がありそうな様子で、耳は手を避けるようにぱたぱたと動く。
オーケー。そのじとーっとした視線がなくても言いたいことはわかった。
風見は目力に負け、ゆるゆると腕を下ろすと、そんな意味を込めた頷きを返した。
とりあえずあの動きなら間違いない。耳も尾も本物なのだろう。他の猫耳やウサギ耳のように見えるものがある彼女らも同様だ。声にピクリと反応する耳も、そわそわと揺れる尾も作り物には見えない。
「えーと、名前は?」
目の前の彼女に尋ねる。
「……」
「答えろ。君の新たな主だ。それから周囲の者も同じだ。契約の更新はしないが、僕経由でそう命じる。彼の命令は僕の命令と同義だ」
今まで緩かったユーリスの声だが、軍服の姿をした彼女らに対しては圧力を感じさせる物言いだ。
しかし彼女は反応しない。故意に無視しているのではなく本当に無反応である。
「ん? ああ、そうか。君たちはこの言語を知らないんだったね。つい忘れていたよ」
苦笑した彼は、風見の知るどの言語とも違う語調で話し始めた。そういえば先程メイドに礼を言った時もどこか伝わっていない感じがあった。
あんな竜に、亜人に、知らない言語。おまけにこの場所に至った経緯。それらを思えば風見も頷かざるを得ない。
召喚と言っていたがここは本当に――異世界なのだろう。
「……Liz=Vert Servy」
リズ=ヴァート・サーヴィ。
ユーリスに促されてから言っていたので、これが彼女の名前なのだろう。
すっと形式上は整った礼をした彼女は風見の返答を待つことなく壁際に戻り、警備の銅像と化してしまった。彼女は随分と愛想がないらしい。風見が残念に思っていると、ユーリスが代わりに「悪いね」と詫びを入れてくる。
「彼女は隷属騎士――騎士の職務をさせている奴隷でね。だから命令すれば彼女の愛想も改善すると思う」
「ど、奴隷って……」
「道具として売り買いされる人間のことだよ。その反応だと君の世界では珍しいのかもしれないが、こちらには存在している。奴隷は、律法でルールを課せられるから下手な人間より信頼できるんだ。だが悪い制度と誤解しないでほしい。奴隷契約は双方の合意の下でしか成り立たないし、食や寝床の保証もされる、公平なものだよ」
紙の上でおこなう契約に呪いか何かで強制力を働かせたものと風見は解釈した。
「じゃあ、そろそろここが君のいた世界とは全く違う世界だと理解してもらえたかな?」
「理解はできるけど……なんというか呑み込み辛いな」
「ハハハハ。さすがに数分で順応してくれとは言わない。これは嘘や悪戯ではないと冷静に理解してくれただけで十分だよ」
ユーリスはわざと間をおくようにティーカップに砂糖とミルクを入れ、「そちらは?」と問いかけたり、ゆったりと掻き混ぜて口をつけたりする。
話が再開されたのはお互いに一口飲み、カップを置いたときだった。
「ではここからが本題だ。僕たちの世界では異世界の存在――君のようなマレビトを招き、その知識で政を助けてもらうことがある。召喚の例は過去にもいくつかあり、僕やクロエ、クライスが日本語を知っているのもそれが理由だ。他にも英語などは伝わっているよ」
ありがちな話だとは思う。風見だって何度となく物語として読んだ覚えがあった。
そういう時に主人公が気にするのは、じゃあ何故喚ぶ必要が? 何故自分が? そんなところだ。彼もご多分に漏れず、それを問いかけた。
「理由は単純に困っているからだよ。村や街では毎年のように餓死者が出るし、疫病が流行る。さらにこの国の土地を求めて他国が攻めてくる。そうやって疲弊したところを狙って今度は別の国が――と、そんな状況を打破するためだね。ついでに言えば僕自身が父から皇位を継ぐための功績作りでもある。それが一つ目の理由だ」
「……この国っていうのは?」
「トランジア大陸を四分する国のうち、南に位置するアウストラ帝国」
まだ疑いの心が残っている風見はボロが出るかと問いかけてみたが、ユーリスは淀みなく答えた。
そしてまた一拍置くと、彼は二つ目の理由について説明を始める。
「カザミを選んだのは僕ではなく、飛竜に乗って帰った彼女の判断だよ。さきほども言ったように君みたいなマレビトは過去に幾人か召喚されている。その誰もが伝説とも言える功績を残したけれど彼らの活躍の裏には争いもあったし、多くの人死にもあった。だからこそ君のような人を選んだんだ――君には多くの命を救いたいという希望があるらしいね」
「俺のことを知っているのか?」
「僕は知らない。だけど彼女はいくらか下調べをしたそうだよ」
下調べと聞いて風見は表情を曇らせた。
風見は獣医だ。確かにたくさんの命を救いたいというのはいつだって胸に抱いている希望であったし、それを人一倍願う理由となる事件も経験した。
だが知らない間に調べられていたかと思うと良い気分ではない。
「だからどうかこの国のために力を尽くしてもらえないだろうか?」
「そんなこと、突然言われても困る。俺にだって家族はいるし、生活や職もある。国のためって言われても俺はただの獣医だし……。それに国が関わるような大仕事じゃあ、片手間でやるわけにもいかないだろ?」
「そうだね。けれどそれに応える十分な対価と衣食住は保障しよう。国を預る宰相の権力でできる範囲で希望も聞こう。人の欲を満たす力なら持っているつもりだ。だからカザミにはそこも踏まえて検討してもらいたい」
彼の言うことが全て本当だとして、宰相――つまりは皇帝の次に偉い立場ならそれこそ何でも叶うだろう。
周囲に綺麗で若い女性ばかりが控えているのは、そういう意味も込めてなのだろうか。ちらっと風見が見ると、それに気づいた白い服の神官っぽいクロエはにこりと微笑む。それだけで心臓がドキリと揺れた。
「ちょ、ちょっと待ってほしい。今の話が全部本当で召喚も事実だったとして、だったら元の世界に帰る方法はどうなるんだ?」
「喚び出せたからには帰すこともできる。ただ、マレビトの召喚には大がかりな術を用いないといけないから召喚者の負担が激しいらしくてね。召喚をしてくれた彼女はこれから一ヶ月くらい寝て過ごすし、当分は無理だと言っていたよ」
「いやいやいや、それは困る! 俺はまだ就職したばかりなんだ。無断欠勤なんてことになったらクビにされる!」
「それは悪いことをした。けれど報酬は弾むし、こちらに永住するのなら僕が全てを保障しよう。だからどうか一考してほしい」
「……いや、だから俺はただの獣医なんだって」
そんな大それたことはどこぞの勇者や英雄にでも任せるべきだ。どこまで行っても小市民な風見には荷が重い。けれどユーリスの瞳は相も変わらず真っ直ぐに風見を捉えていた。
本気の目だ。本気の瞳だ。その迫力に押され、風見はつい視線を逸らしてしまう。
「言い方が悪かった。どうか苦しむ人を、生き物を救ってほしい。僕たちはわけもわからない疫病や飢餓、害悪などで困窮している。この世界には律法はあるが、奇跡はない。神なんてものは魔法と共にいなくなったし、天は手を差し伸べてくれない。助けてと暗がりで泣いている命がいくつもあるんだ。僕は貴方ならそれが救えると聞いた。これは僕たちでは解決できなかった問題なんだ」
「……っ」
周囲を見ればわかる。ここには電気もなければ機械的なものも一切見当たらない。あるのは職人芸が光るものばかりで、近代以前の文明レベルと見て取れる。
そのレベルの科学では飢餓はともかく、病気に対する特効薬や、安全で効果のある対策はおそらく見つけられていないだろう。
「人は飢えて死ぬ。だから来年こそはそうならないように畑を広げたいと国や領主に助力を願う農民がいる。カザミ、それを実行したらどうなったと思うかい?」
「……大変だったんだろうけど、それなりの成果は出るんじゃないのか?」
「そうだね。いくらかは生活がマシになったかもしれない。けれどそれだけではないのが現実だよ」
残念そうに首を振ったユーリスは語った。
「山を拓くと、そのせいで魔物の出没が増えた。その対処で労が増し、結果は芳しくなかった。飢えが広がれば疫病も蔓延する。それで真っ先に死ぬのは子供だけど、彼らが死ねば将来が苦しくなる。身寄りがない捨て子は何とか糧を得ようと悪条件でも奴隷に志願する。僕たちの世界はそういう平行線を歩んでいるんだ。ここのメイドもそこからの拾い上げだよ」
「…………」
「飢餓や疫病をどうにかしてくれと言っているわけではないんだ。できることに協力してもらいたい。勝手に召喚したことは本当に申し訳なく思っている。文句や要求は僕にいくらでも言ってくれ。そして助けを求める人の力になってあげてほしい」
こんな風に言われ、断れる人間なんているのだろうか?
それができるのなら、少なくとも医者として失格である。風見は真剣なユーリスの目から視線を外すことすらついにできなくなった。
「僕は願う。カザミシンゴ殿、どうかこの世界の命を救ってください」
ユーリスはソファーから立ち上がると深々と頭を下げた。それはきっと国を代表して、ひいてはここにいない人全ての代役なのだろう。
全員の視線が重くぶら下がる。良心に一つ一つが巻きつき、解けないほどに絡みついていく。
もう、嫌とは言えなかった。
少なくとも今聞いたことに対して獣医ができることはたくさんある。こんな状況、こんな世界ならば確かに最も必要とする職業は獣医かもしれない。剣を手に戦う勇者とも英雄とも違う。壊す力、殺す力だけで命は守れないはずだ。
救いたかったのに救えなかった命は元の世界でもたくさんあった。だがこちらでは救おうと思えば救える命が数えきれないほどある。なら、それを守らずして何が獣医だろうか?
それを見捨ててしまえば、風見は今度こそ自分に自信を持てなくなる気がした。
いつまでも上がることのない目の前の頭に、風見は声をかける。
「……わかった。農業、自然、生き物を繋ぐ医者が獣医で、飢餓や疫病対策も俺の分野だ。元の世界に戻る準備が整うまでは、できる範囲で協力させてもらう。俺に助けられるものがあるならそれは見過ごせない」
「あぁっ、やはり猊下です! そう答えてくださると信じていましたっ!」
答えた途端、飛び込んできたのはクロエだ。風見の手を両手でひしと包んだ彼女は感激をたたえた瞳で、熱い熱い視線を向けてくる。
まるで俳優に恋した乙女のようなオーバーリアクションに風見はたじろいだ。
そんな風見の前でユーリスはやっと頭を上げ、微笑む。
「ああ、そう言ってもらえて良かった。じゃあ、僕は他の仕事があるからもうお暇させてもらうよ。何かあればハドリア教の神官である彼女に聞くといい。見目も麗しい彼女は今日から終生、君だけのお付きになるそうだ。羨ましいね。それから僕に連絡をしたい時はクライスに言ってくれれば問題ないよ。そして周囲の彼らは隷属騎士だ。小間使いから夜伽まで何でも命令すればいい。もう君の奴隷も同然だしね。それでは活躍を期待しているよ」
「え? あ……おい、ユーリスッ!?」
チャオとでも言いそうな若干イラッとする身振りを残し、彼は部屋を出てしまった。風見はすぐに追いかけようとするが、うっとりと侍っているクロエが邪魔で追えない。
あのいやらしいほど清々しかった笑顔。もしかして面倒を押しつけられた? と風見は今になって気付いた。
「……ただの獣医一人で、本当に国を救えと?」
うん、無理。絶対無理。
そう信じて疑わない彼の異世界生活は、この瞬間から始まったのだった。
†
見ためどおり神官だというクロエの説明によると、ここはアウストラ帝国の帝都近郊にある丘に建てられた別荘らしい。二階の窓からは、確かにそれらしい街が見えた。
青い空と、恐ろしいほどに澄んだ空気。穂を下げるイネ科植物の畑、緑が生い茂った山々。それに田舎の砂利道を行く馬車――と、ここまでは日本やヨーロッパの田舎と大差がないだろう。
だが。
だがしかし、である。
何やら北にある山脈からひょいと桁外れに大きな樹の頭が出ている気がするのは気のせいだろうか。例えるならば山岳にブロッコリーを突き刺しちゃった的な物体が見える気がしてならない。風見は思わず二度ほど目をこすってしまった。
続いて東。
そちらには豊かな森が広がる……かと思いきや、その中央で芋虫の怪獣か何かが自然に呑まれた遺跡のようになっていた。
そのサイズは体高だけで樹の十倍近くはある。もう生きてはいないようだが、芋虫上空にはワシにしては大きすぎる鳥が複数飛んでいた。姿的に、プテラノドン疑惑もある。
これは本格的に異世界の様相だろう。こうやって広く見渡してみれば、違う世界に来たという実感がさらに高まってきた。
けれどこれを現実として受け止めるのは、まだ少々ハードルが高い。
風見はとりあえず深く考えるのをやめ、謎のブロッコリー型大樹と巨大芋虫は見なかったことにした。
「この屋敷は風見様が自由にお使いください。それからここが風見様のお部屋となります」
そう言って案内された部屋は豪華だった。
いや、豪華すぎた。
部屋には高そうな酒の瓶がずらりと並べられた棚が一つ。窓際に丸テーブルとイスが三つ。大きなソファーが二つ。
それから二、三人はゆったりと寝られそうな天蓋付きのベッドが配されていた。
何を想定したベッドの広さなのだろう。ユーリスの夜伽発言といい、ピンク色の妄想が浮かんでしまうのは男の仕様だ。きっと普通に豪華なキングサイズなのだと自分に言い聞かせる。
他にも壺や絵画、剥製などもあったが、それらから一メートルの間合いを取って歩いても余りある広さだ。
三十畳……いや、もう少しあるだろうか。豪華な調度品が放つ黄金色のオーラに目を焼かれる。
つまるところ、庶民の風見にはかなーり居心地が悪い。彼が住んでいた1K(六畳)の公務員宿舎とはえらい違いなので、真逆の息苦しさを覚えてしまうのだ。
「あの、何かお気に障りましたか?」
窓際のテーブルセットに着き思わずため息をつくと、向かいに座ったクロエが不安げに見上げてくる。
「そうじゃないんだ。十分に良くしてもらってると思う。というか良くされすぎて、逆にな」
「なるほど。風見様が仰られるように私もこのような場所は落ち着かないですね。正直、ぼろ一枚に身を包んで寝ていた修道女時代の方が私の身の丈には合っている気がします」
深窓の令嬢みたいな容姿のくせにさらりと凄いことを言った。
話によると彼女はハドリア教とかいうものの神官だったはずだ。
シンデレラのようにこき使われ、冬は水汲みでかじかんだ指を吐息で温める――そんな感じなのかと聞いてみたら、クロエは「それは入門編です」と笑って答えた。
冗談だと信じたい。
「そのハドリア教っていうのはどんなものなんだ?」
「それぞれが自分に恥じない行動を精一杯しなさいと説く宗教です。行動の尊さを信仰しているとも言えますね。だからハドリア教には信仰すべき神はいません。神様なんて考えは魔法と一緒に滅びてしまいました」
犯罪者でもヒーローと呼ばれる人がいる。
例えば悪い権力者から金品を盗んで貧しい民衆にばら撒く義賊がいたとする。行為は犯罪だが、その一方で人を救っているわけだ。
ハドリア教はそれを否定しない。むしろそのようなこともできる人であれと説く。騎士だろうと野盗だろうと、大切な誰かを守るためにそうするしかないなら迷いなく己を貫けと教える。
自分にできることを精一杯おこない、最善を目指すことが結果的に一番多くの人を救うとし、それができる者はきっと運命が祝福してくれるというのが教えだそうだ。
「そもそもこの考えがこの地に根付いたのはマレビト様がいらっしゃったからこそなんです。簡単に言えば――」
彼女は椅子を引いて立ち上がった。
何かを示そうとして風見に微笑みかけ、一歩近寄ろうとする。が、次の瞬間、彼女は足をテーブルの脚に引っ掛けてしまった。
「あっ……」
「うおっと!?」
風見は椅子から身を乗り出し、傾いだクロエの体を慌てて抱きとめる。
漫画以外ではそうそうできる芸当ではないだろうに、彼女は両手をバンザイの形にして顔面から突っ伏すこけ方をしていた。腕の中にいる彼女に無事だったか聞こうとすると、苦笑して「こういうことなんです」とお茶目に舌を出される。
どうやら謀られたらしい。風見は「う、うん?」と目を点にした。
「神様は何もしてくれません。心が傷つこうと、怪我をしようと、財産を奪われようと、餓えようと、凌辱されようと、命を奪われようと――何もしてくれないんです。どれだけ祈りを捧げても、どれだけ手を伸ばしても、何も。助けてと泣く私たちに光をくれたのはマレビト様でした」
「それってつまり、救わぬ神より救う人って言いたいのか?」
「はい。祈って救われるのなら世界はもっと優しいです。私はあの時、命を救うためならと頷いてくださった風見様に感動しました。祈り、慕うのならむしろ猊下――風見様のようなお方に対してです。私たちの宗教はそんなマレビト様に対する思いからできたものです。この世にマレビト様が現れた時から神や魔法といったものは廃れ、この宗教と律法が取って代わりました」
「慕ってくれるのは嬉しいけど、なかなかの無茶ぶりでもあるよな。喚ばれた人が良い人とは限らないし、役に立つとも限らない。それにもし断られたらどうするつもりだったんだ?」
「人柄や能力を見て、それから召喚したそうです。けれど相手の意志とは関係なく私たちは人助けという仕事を押し付けている。憐れんで助けてくれと泣きついているだけです。それを横暴だと言われても仕方ありません……」
悪い言い方をすれば勝手に喚びつけ、重責を無理やり押し付けるのが召喚だ。彼女もそれを心苦しく思っていたらしい。眉をハの字にし、懺悔の気持ちを色濃く滲ませる。
「しかし苦しんでいる方がいるのに、今の私たちでは救いようがないのも真実なのです。私はあなたにそれを救っていただけるように導けと言いつけられました。お願いできる立場ではないですが、それでもどうかご協力くださいっ! 私などでは足りないかもしれませんが、私の全てと一生をかけてご恩をお返しします。だからどうかっ……!」
クロエは風見の手を両手で握り締め、縋り付くように言った。その真に迫った声はとても演技で出せるものではなく、心にじんと響くものがあった。
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