134 / 135
第3章 新しい魔法
アリーシャの過去4
しおりを挟む
――アリーシャがライラと出会い、半年の月日が流れていた。
その間アリーシャは毎日ライラへと立ち合いを申し込んでいた。だがその悉くで敗北を喫する結果となっしまっていたのだ。
やはり一年という短期間で副団長まで登り詰めたライラのその実力は本物。
彼女の剣には隙が無い。それでいて流麗で、まさしく柔の剣であった。
だがアリーシャもただ負けているわけではない。
日々の立ち合いの中で、ライラの太刀筋や間合いを見切り、予測し、少しずつではあるが彼女の剣に届き始めていると言ってもいい程の成長を見せていた。
その証拠に、以前まで騎士団のメンバーには全く太刀打ち出来なかったというのに、ここ最近では彼らとの立ち合いに於いて互角以上の戦いを見せ始め、次第に頭角を現してきていたのである。
「ふふ……たった半年で私にここまで肉薄するなんて、やっぱり王家の血筋なのね」
ライラはある日の立ち合いの後、不意にそんな事を言ってきた。
その表情は何故か嬉しそうで、それがアリーシャにはどうにも気に食わない。
胸がざわめくのだ。
「ふんっ。いつかその表情に張りついた忌々しい笑みと余裕を消し去ってやるっ」
アリーシャはいつも涼しい顔をしているライラに、皮肉めいてそう告げる。
だが当のライラはそんな事気にも留めない。
「ふふ……。ええ、楽しみにしているわ」
彼女はそんなアリーシャの言葉を受け流すように、嬉しそうに笑みを浮かべながら帰っていくのだった。
アリーシャの心は彼女のそんな態度にいつも苛立ってしまう。
「ちっ……! やはり私は……お前が嫌いだっ!」
口をついて出る罵りの言葉。
去り行く彼女の背中に浴びせるそれは正直ただの負け惜しみでしかない。
自分でも分かってはいるが言わずにはおれない。
アリーシャはまだ子供なのだ。
当のライラはやはり全く動じない。その言葉に振り向く事すらせず、ただにこやかに手を振る。
「別に好きになってほしいなんて思っていないわ。アリーシャ、じゃあまたね」
それだけ告げて、ライラは訓練場を去っていった。
「――くそっ!」
悔しくて八つ当たりのように地面に剣を突き刺すアリーシャ。
どうやっても勝てない。
この半年で二人の力の差は埋まってきたと言ってもいい。
だがそれでもまだまだライラとアリーシャとの間には大きな差が生じている。
その事実にアリーシャは歯噛みし、顔に悔しさを滲ませる。
正直な所、アリーシャはライラの力を認めていた。
それこそ彼女の剣に見惚れてしまう程に。
いつしか自分もその境地に到達してみたいと思える程に。
だがどうしても意地を張ってしまう。
そもそもアリーシャはベルクートの事を尊敬しているのだから。
ライラを負かしてベルクートに認めてもらいたいという気持ちの方が今でも勝っているのだ。
どうにかしてベルクートに私の事を認めてもらいたい。
その事だけを考えてこの半年間、ずっと勝負を挑んできた。
確かにここまで負け続けてきてしまったが、アリーシャ自身もそれなりに力をつけたという自負もあったのだから。
「くそっ、くそっ、くそっ、くそっ……!!」
悔しさが言葉となり口から漏れ出た。
「――せめて……どうにかベルクートに認めてもらえるような……」
歯噛みしながらそう呟くアリーシャ。
ベルクートに認めてもらいたいという気持ちと、自分自身それねりに力をつけたという自負がアリーシャに邪念を呼び寄せる結果となってしまうのだ。
その間アリーシャは毎日ライラへと立ち合いを申し込んでいた。だがその悉くで敗北を喫する結果となっしまっていたのだ。
やはり一年という短期間で副団長まで登り詰めたライラのその実力は本物。
彼女の剣には隙が無い。それでいて流麗で、まさしく柔の剣であった。
だがアリーシャもただ負けているわけではない。
日々の立ち合いの中で、ライラの太刀筋や間合いを見切り、予測し、少しずつではあるが彼女の剣に届き始めていると言ってもいい程の成長を見せていた。
その証拠に、以前まで騎士団のメンバーには全く太刀打ち出来なかったというのに、ここ最近では彼らとの立ち合いに於いて互角以上の戦いを見せ始め、次第に頭角を現してきていたのである。
「ふふ……たった半年で私にここまで肉薄するなんて、やっぱり王家の血筋なのね」
ライラはある日の立ち合いの後、不意にそんな事を言ってきた。
その表情は何故か嬉しそうで、それがアリーシャにはどうにも気に食わない。
胸がざわめくのだ。
「ふんっ。いつかその表情に張りついた忌々しい笑みと余裕を消し去ってやるっ」
アリーシャはいつも涼しい顔をしているライラに、皮肉めいてそう告げる。
だが当のライラはそんな事気にも留めない。
「ふふ……。ええ、楽しみにしているわ」
彼女はそんなアリーシャの言葉を受け流すように、嬉しそうに笑みを浮かべながら帰っていくのだった。
アリーシャの心は彼女のそんな態度にいつも苛立ってしまう。
「ちっ……! やはり私は……お前が嫌いだっ!」
口をついて出る罵りの言葉。
去り行く彼女の背中に浴びせるそれは正直ただの負け惜しみでしかない。
自分でも分かってはいるが言わずにはおれない。
アリーシャはまだ子供なのだ。
当のライラはやはり全く動じない。その言葉に振り向く事すらせず、ただにこやかに手を振る。
「別に好きになってほしいなんて思っていないわ。アリーシャ、じゃあまたね」
それだけ告げて、ライラは訓練場を去っていった。
「――くそっ!」
悔しくて八つ当たりのように地面に剣を突き刺すアリーシャ。
どうやっても勝てない。
この半年で二人の力の差は埋まってきたと言ってもいい。
だがそれでもまだまだライラとアリーシャとの間には大きな差が生じている。
その事実にアリーシャは歯噛みし、顔に悔しさを滲ませる。
正直な所、アリーシャはライラの力を認めていた。
それこそ彼女の剣に見惚れてしまう程に。
いつしか自分もその境地に到達してみたいと思える程に。
だがどうしても意地を張ってしまう。
そもそもアリーシャはベルクートの事を尊敬しているのだから。
ライラを負かしてベルクートに認めてもらいたいという気持ちの方が今でも勝っているのだ。
どうにかしてベルクートに私の事を認めてもらいたい。
その事だけを考えてこの半年間、ずっと勝負を挑んできた。
確かにここまで負け続けてきてしまったが、アリーシャ自身もそれなりに力をつけたという自負もあったのだから。
「くそっ、くそっ、くそっ、くそっ……!!」
悔しさが言葉となり口から漏れ出た。
「――せめて……どうにかベルクートに認めてもらえるような……」
歯噛みしながらそう呟くアリーシャ。
ベルクートに認めてもらいたいという気持ちと、自分自身それねりに力をつけたという自負がアリーシャに邪念を呼び寄せる結果となってしまうのだ。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
異世界起動兵器ゴーレム
ヒカリ
ファンタジー
高校生鬼島良太郎はある日トラックに
撥ねられてしまった。そして良太郎
が目覚めると、そこは異世界だった。
さらに良太郎の肉体は鋼の兵器、
ゴーレムと化していたのだ。良太郎が
目覚めた時、彼の目の前にいたのは
魔術師で2級冒険者のマリーネ。彼女は
未知の世界で右も左も分からない状態
の良太郎と共に冒険者生活を営んで
いく事を決めた。だがこの世界の裏
では凶悪な影が……良太郎の異世界
でのゴーレムライフが始まる……。
ファンタジーバトル作品、開幕!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
素材採取家の異世界旅行記
木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。
可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。
個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。
このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。
この度アルファポリスより書籍化致しました。
書籍化部分はレンタルしております。

~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女
にせぽに~
ファンタジー
何処にでもいそう………でいない女子高校生「公塚 蓮」《きみづか れん》
家族を亡くし、唯一の肉親のお爺ちゃんに育てられた私は、ある日突然剣と魔法が支配する異世界
【エルシェーダ】に飛ばされる。
そこで出会った少女に何とプロポーズされ!?
しかもレベル?ステータス?………だけど私はレベル・ステータスALLゼロ《システムエラー》!?
前途多難な旅立ちの私に、濃いめのキャラをした女の子達が集まって………
小説家になろうで先行連載中です
https://ncode.syosetu.com/n1658gu/

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる