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第2章 これはもしかしてデートなのでは?
3ー22
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「――いらっしゃい」
道具屋の店主は眼鏡を掛けたお婆さんであった。
しゃがれた声音は優しく、相好を崩す表情を見ていると何となく駄菓子屋のイメージと重なった。
置いている物はお菓子というわけではないが。
どちらかというと雑貨屋さんといった感じか。
大小様々な瓶に入った液体やら旅に必要となりそうなロープや鞄、テントなどといった物まで取り揃えていた。
店内はそう広くはないが、所狭しと色んなアイテムが並べられており、全てを網羅するにはそれなりの時間が掛かりそうだ。
「ハヤト、ここでは何を買うのだ?」
「ああ。回復アイテムが欲しい。どれかわかるか?」
そう。この世界には傷や体力・魔力の消耗を一瞬で治してしまう物が存在すると聞いていた。
先の戦いでもそれがあればまた違った戦い方が出来たに違いないのだ。
「ふむ。ならばまずはポーションだな。店主、ポーションを頼む」
「はいよ。一つで銅貨50枚だが、いくついるんだい?」
店主が取り出したのは大きさ二十センチ程の小瓶に入った水色掛かった液体だ。清涼飲料水を思わせる。
さて、買うは買うとして、どれくらいの本数にするか。
そんなに多くは持ち歩けなさそうだ。
それに激しい戦いの中で使用するなら常に身に付けておく必要がある。
「とりあえず八本にしておくか」
今は一人二本ずつ持つような感じでいいだろう。
それに持ち運びに便利そうな小瓶を数本差し込んで巻き付ける革製の腰巻きも近くに置いてあった。
それも一緒に購入しよう。
他にもざっと店内を見回す。店の中にはポーション以外にも様々な用途不明な道具が置いてある。
「アリーシャ、何か他にも持っておいた方がいい物はあるか?」
ここは考えるよりアリーシャに任せた方がいいだろう。
私だと知識が無さすぎるのだ。
「うーむ……。パーティーに魔力主体で戦う者がいるのならマジックポーションだが、魔法が使えるのは私とミナくらいか。別にそこまで必要性は感じないが、ハヤトに任せる」
「魔力回復か。アリーシャ、ならマインドが回復出来る物は無いか?」
体力を回復するアイテムがあることはネストの村で聞いていたが、魔力回復のものもあるとは知らなかった。
ひょっとするとマインドの回復アイテムもあるのかと思ったのだが、私の問い掛けにアリーシャはしかし眉根を寄せる。
「いや、聞いたことがないな。そもそも私達は魔法を使う際、魔力を消費することはあってもマインドを消費することはないからな。というか君達がマインドと言っているものが具体的に何なのか、正直よく解っていないのが本音だ。魔力とマインドは違うものなのか?」
「ああ、違うな。そもそも私は魔法が使えない。ネストの村で試しに使おうとしたが発動させられなかったのだ。だが、精神を操る魔法は使えていた。だから区別したのだ。私もはっきりと理解しているわけではないが、マインドを消費して精霊魔法を使う事は確かだ」
魔力でも体力でも無い何かしらの力。
一種の精神力とでも言えばいいだろうか。
そういった類いの所謂第三の力を駆使して能力を使う。
これの回復が行えるのならば私達のこれからの戦いに大いに役立つと思えた。
「マインドか……。一種の精神力のようなものなのだろうか。この理解を深めれば、私の剣術も或いは……」
アリーシャは私の言葉を聞いて何かしら呟いていた。
よくは分からないが道具の事からは思考が少し離れたように思える。
「アリーシャ、話を戻すがマジックポーションは念のため二本だけ購入しておくとする。代わりにポーションは六本にして一人二本ずつ持とうと思う」
「ああ、それでいいんじゃないか」
相変わらず先程から思案顔のアリーシャ。
彼女を横目に店主のお婆さんからポーションと腰巻きを受け取った。
後で合流して皆に配るつもりだ。
ここには他にも毒消しなどの状態異常を治す物や、聖水や爆弾といった攻撃に使用出来る物等様々ある。
だが持てる数にも限界があるのでとりあえず今は回復アイテムのみに絞り購入。店を後にした。
道具屋の店主は眼鏡を掛けたお婆さんであった。
しゃがれた声音は優しく、相好を崩す表情を見ていると何となく駄菓子屋のイメージと重なった。
置いている物はお菓子というわけではないが。
どちらかというと雑貨屋さんといった感じか。
大小様々な瓶に入った液体やら旅に必要となりそうなロープや鞄、テントなどといった物まで取り揃えていた。
店内はそう広くはないが、所狭しと色んなアイテムが並べられており、全てを網羅するにはそれなりの時間が掛かりそうだ。
「ハヤト、ここでは何を買うのだ?」
「ああ。回復アイテムが欲しい。どれかわかるか?」
そう。この世界には傷や体力・魔力の消耗を一瞬で治してしまう物が存在すると聞いていた。
先の戦いでもそれがあればまた違った戦い方が出来たに違いないのだ。
「ふむ。ならばまずはポーションだな。店主、ポーションを頼む」
「はいよ。一つで銅貨50枚だが、いくついるんだい?」
店主が取り出したのは大きさ二十センチ程の小瓶に入った水色掛かった液体だ。清涼飲料水を思わせる。
さて、買うは買うとして、どれくらいの本数にするか。
そんなに多くは持ち歩けなさそうだ。
それに激しい戦いの中で使用するなら常に身に付けておく必要がある。
「とりあえず八本にしておくか」
今は一人二本ずつ持つような感じでいいだろう。
それに持ち運びに便利そうな小瓶を数本差し込んで巻き付ける革製の腰巻きも近くに置いてあった。
それも一緒に購入しよう。
他にもざっと店内を見回す。店の中にはポーション以外にも様々な用途不明な道具が置いてある。
「アリーシャ、何か他にも持っておいた方がいい物はあるか?」
ここは考えるよりアリーシャに任せた方がいいだろう。
私だと知識が無さすぎるのだ。
「うーむ……。パーティーに魔力主体で戦う者がいるのならマジックポーションだが、魔法が使えるのは私とミナくらいか。別にそこまで必要性は感じないが、ハヤトに任せる」
「魔力回復か。アリーシャ、ならマインドが回復出来る物は無いか?」
体力を回復するアイテムがあることはネストの村で聞いていたが、魔力回復のものもあるとは知らなかった。
ひょっとするとマインドの回復アイテムもあるのかと思ったのだが、私の問い掛けにアリーシャはしかし眉根を寄せる。
「いや、聞いたことがないな。そもそも私達は魔法を使う際、魔力を消費することはあってもマインドを消費することはないからな。というか君達がマインドと言っているものが具体的に何なのか、正直よく解っていないのが本音だ。魔力とマインドは違うものなのか?」
「ああ、違うな。そもそも私は魔法が使えない。ネストの村で試しに使おうとしたが発動させられなかったのだ。だが、精神を操る魔法は使えていた。だから区別したのだ。私もはっきりと理解しているわけではないが、マインドを消費して精霊魔法を使う事は確かだ」
魔力でも体力でも無い何かしらの力。
一種の精神力とでも言えばいいだろうか。
そういった類いの所謂第三の力を駆使して能力を使う。
これの回復が行えるのならば私達のこれからの戦いに大いに役立つと思えた。
「マインドか……。一種の精神力のようなものなのだろうか。この理解を深めれば、私の剣術も或いは……」
アリーシャは私の言葉を聞いて何かしら呟いていた。
よくは分からないが道具の事からは思考が少し離れたように思える。
「アリーシャ、話を戻すがマジックポーションは念のため二本だけ購入しておくとする。代わりにポーションは六本にして一人二本ずつ持とうと思う」
「ああ、それでいいんじゃないか」
相変わらず先程から思案顔のアリーシャ。
彼女を横目に店主のお婆さんからポーションと腰巻きを受け取った。
後で合流して皆に配るつもりだ。
ここには他にも毒消しなどの状態異常を治す物や、聖水や爆弾といった攻撃に使用出来る物等様々ある。
だが持てる数にも限界があるのでとりあえず今は回復アイテムのみに絞り購入。店を後にした。
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小説家になろうにて4年以上連載中の作品です。https://ncode.syosetu.com/n2034ey/続きが気になる方はこちらでも読めますのでどうぞ。ブクマや感想などしていただけるととても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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