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第1章 人と魔族と精霊と
3ー11
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「シーナが覚醒したタイミングでボクがシーナの中に召喚されたことはさっきも話したと思うけど、シーナのマインドが枯渇して、シーナの中から出られた瞬間、ボクは一度精神世界に戻ったようになった。ボクは自分だけの力ではこっちの世界で具現化できないからね。繋がりが切れてるわけじゃないんだけどね。この状態だと釣り糸のようなか細い繋がり、とでも言っておこうか」
美奈は恐る恐る目をキラキラさせた状態でシルフの頭を撫でた。
多分あれは話が全く頭に入っていないだろう。
というかそこまで聞いてシルフが美奈の方へ移動した意味はあったのだろうかと思った。
「そしてその直後、精神世界からシーナがピンチだと悟ったボクは、逆にシーナを精神世界に引きずり込んだ。まさにシーナを一本釣りしたような感じだね! そこで初めてボクたちは顔を合わせたのさ」
シルフは竿を引くような仕草をし、そのまま美奈の胸にぽすんと倒れ込む。
更に頭を撫でられながら気持ちよさそうに目を細めた。
むむむ……。
何だか無性に腹が立った。
「精神世界でいくらかの会話の後、ボクとシーナは触れ合って、一つになった。そのタイミングで、またこっちの世界に戻って来た。本来主導権は召喚者の方にあるからね。本来いるべき世界に戻るのは道理だ。まあ、そんな感じがボクとシーナが契約するに至った流れだったんだけど、この話で言うところの、ボクが精神世界に戻った時、というのがハヤトと精霊が今置かれている状況なんだと思うんだよ」
「――なるほど。では私が精神世界にいる精霊に会わなければ話はできない。そのためにはあちら側にいる精霊の力が必要、とそんな感じだろうか」
「ご名答。うん、君も頭の回転が早いねっ。すごくいい」
そう言いつつ美奈と視線を合わせ、示し合わせたようにハイタッチを決める。
いや、その行動必要?
「そもそも精霊というのは精神世界の住人。本来こちら側の世界に来る事は基本的に自分の意思ではできない。少なくともボクは。今回椎名と契約したことで来られたんだよ。そして今は逆に精神世界へと戻ることはできない。その時は召喚した人との繋がりが切れた時なっちゃうんだ」
「ふむ……中々難儀な話だな。それにシルフ。今回はだいぶおもいきった決断をしたものだ」
今まで自身がいた世界を離れ、こちら側に留まるというのには相応の覚悟が必要なのではないか。
まるで元の世界には到底戻り得ない私たちのようだなと思う。
だがシルフはそれを自分の意思でやった。それが私にとってはとてもすごいことのように感じるのだ。
「――どうなんだろうね。この行動はボクに取っては生きるための本能のようなものなのかもしれない。確かに大変なことをした気持ちは無くはないけど、決して後悔はしていないよ」
「――まあそう言ってもらえると、恩人だし、ありがとって言っておくわよ……一応」
珍しく椎名がしおらしい言葉で感謝を述べた。
それを見たシルフは嬉しそうに笑う。
するとぱたぱたと羽をはためかせ、美奈の元から契約者である椎名の元へと移動して、彼女の健康的な太ももの辺りに着地した。
この精霊、わざとやっているのではないかという感想は今は言わないでおく。
ふと私は、精霊という存在はまるで人の対極に位置する存在のようであると感じていた。
更に言うと、魔族とは精神世界と現実世界、そのどちらにも属せる中間の存在なのだという所感を抱く。
――人間、精霊、魔族。
異なる種族だが、全く繋がりがないというわけでもないような気がする。
この関係性には何か意味があるのだろうか。
そういうもの、として理解してしまえばそれまでだが、そこには何かしらの意味があるのではと、ふとそんな事を私は一人、頭の中で考えていたのだ。
美奈は恐る恐る目をキラキラさせた状態でシルフの頭を撫でた。
多分あれは話が全く頭に入っていないだろう。
というかそこまで聞いてシルフが美奈の方へ移動した意味はあったのだろうかと思った。
「そしてその直後、精神世界からシーナがピンチだと悟ったボクは、逆にシーナを精神世界に引きずり込んだ。まさにシーナを一本釣りしたような感じだね! そこで初めてボクたちは顔を合わせたのさ」
シルフは竿を引くような仕草をし、そのまま美奈の胸にぽすんと倒れ込む。
更に頭を撫でられながら気持ちよさそうに目を細めた。
むむむ……。
何だか無性に腹が立った。
「精神世界でいくらかの会話の後、ボクとシーナは触れ合って、一つになった。そのタイミングで、またこっちの世界に戻って来た。本来主導権は召喚者の方にあるからね。本来いるべき世界に戻るのは道理だ。まあ、そんな感じがボクとシーナが契約するに至った流れだったんだけど、この話で言うところの、ボクが精神世界に戻った時、というのがハヤトと精霊が今置かれている状況なんだと思うんだよ」
「――なるほど。では私が精神世界にいる精霊に会わなければ話はできない。そのためにはあちら側にいる精霊の力が必要、とそんな感じだろうか」
「ご名答。うん、君も頭の回転が早いねっ。すごくいい」
そう言いつつ美奈と視線を合わせ、示し合わせたようにハイタッチを決める。
いや、その行動必要?
「そもそも精霊というのは精神世界の住人。本来こちら側の世界に来る事は基本的に自分の意思ではできない。少なくともボクは。今回椎名と契約したことで来られたんだよ。そして今は逆に精神世界へと戻ることはできない。その時は召喚した人との繋がりが切れた時なっちゃうんだ」
「ふむ……中々難儀な話だな。それにシルフ。今回はだいぶおもいきった決断をしたものだ」
今まで自身がいた世界を離れ、こちら側に留まるというのには相応の覚悟が必要なのではないか。
まるで元の世界には到底戻り得ない私たちのようだなと思う。
だがシルフはそれを自分の意思でやった。それが私にとってはとてもすごいことのように感じるのだ。
「――どうなんだろうね。この行動はボクに取っては生きるための本能のようなものなのかもしれない。確かに大変なことをした気持ちは無くはないけど、決して後悔はしていないよ」
「――まあそう言ってもらえると、恩人だし、ありがとって言っておくわよ……一応」
珍しく椎名がしおらしい言葉で感謝を述べた。
それを見たシルフは嬉しそうに笑う。
するとぱたぱたと羽をはためかせ、美奈の元から契約者である椎名の元へと移動して、彼女の健康的な太ももの辺りに着地した。
この精霊、わざとやっているのではないかという感想は今は言わないでおく。
ふと私は、精霊という存在はまるで人の対極に位置する存在のようであると感じていた。
更に言うと、魔族とは精神世界と現実世界、そのどちらにも属せる中間の存在なのだという所感を抱く。
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異なる種族だが、全く繋がりがないというわけでもないような気がする。
この関係性には何か意味があるのだろうか。
そういうもの、として理解してしまえばそれまでだが、そこには何かしらの意味があるのではと、ふとそんな事を私は一人、頭の中で考えていたのだ。
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小説家になろうにて4年以上連載中の作品です。https://ncode.syosetu.com/n2034ey/続きが気になる方はこちらでも読めますのでどうぞ。ブクマや感想などしていただけるととても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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