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第2章 ピスタ襲来、限界を越えたその先に
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「……ッ!」
――私の頭の中で声がする。
「……ッ!!」
目を閉じて横たわる私に何度も何度も呼びかけてくる。
誰かは分からない。ここは、どこなんだろう。
ふと記憶を呼び起こす。ついさっきまでの私の記憶。
私は魔族との戦いに身を投じ、その先に力を使い果たした。
最後に覚えている景色。それは狼の魔族が自分に向けて拳を繰り出してきたというもの。それが私の体に撃ちすえられたという記憶はないけれど。
朧気な記憶をたぐり寄せながら、そこで私は一つの結論へとたどり着いた。
――そうか。
――私、死んじゃったんだ。
魔族にめった撃ちにされて。殺されちゃったんだ。
あっけないものだ。
人間てこんな簡単に死ねちゃうんだ。
いざ死んでみると思いの外苦しみはなかったように思う。
痛かった記憶はあるけれど、死ぬくらいの苦しみだったのかと言われると正直よく分からない。
それとも打ち所が悪かったのだろうか。
あ、殴られて死んだから殴られ所か。ってそんなの別にどうでもいいのだけれど。
「シーナッ!」
頭の中の声が突然鮮明に聞こえた。
その声に私は目を開いた。
起き上がって立ち上がり、身構えながら辺りを見回す。次に自分自身にも目を向ける。
どういう事かはさっぱり分からないけれど、もしかして私、いやもしかしなくても。
「……生きてるの?」
そこは色のない世界だった。
全てがモノクロで、それは私自身もそうだ。靄(もや)のようなものが回りを覆い尽くしていて、けれど視界ははっきりとしている。
すごく不思議な空間だった。
先ほどまであったはずの体の怪我も消えている。
それを確認してやっぱり私は死んでいるんじゃないかと再び思い直した。
けれどそれを自覚した途端、体がどうしようもないくらいの倦怠感に襲われ、今さらながらに強い疲労感を覚えた。
逆にその感覚が、自分がまだ生きているんだ、死んでないんだと思わせた。
まあ実際死んだ経験がないので人が死ねばこういうものなのかもしれないけれど。
「シーナってばっ!」
「!!?」
私の耳にはっきりと飛び込んできた声。
確かに今私の名前を呼んだ。
慌てて振り向いて、視線を向けるけれど、そこには灰色の空間が広がっているだけだった。
「……何なの?」
「違う違う! こっち! もっと下だよっ!」
声は下の方から聞こえていたみたいだ。
今度は視線を足元へと向ける。すると――――。
「えっ!? な、何この変な生き物!?」
「変な生き物で悪かったね……」
ようやく存在に気づいて驚く私にジト目を向けるその生き物。それは体調30センチくらいの人型をしていた。
緑のポンチョのような服を着てとんがり帽子を被り、さらには背中から小さな羽が生えてふわふわと浮遊しているのだ。
まるでおとぎ話に出てくる妖精みたいだ。ちょっとかわいい。
「――あなたは、誰?」
「ボクはシルフ、精霊だよ」
「精霊?」
シルフと名乗る精霊は、満足そうに腕を組み、上目遣いで私を見上げる。
ふわふわと揺れる様がやっぱりかわいい。
「そう、風の精霊。君がこの世界に来て、今の能力が使えるようになったのも、実際のところはボクの力のお陰ってわけさ」
得意気に、いたずらっ子のように鼻を擦り答えるシルフ。
要するに私が風を操れるようになったのは、このシルフお陰なのだ。
でも、だったらどうして――。
私の頭の中に次なる疑問が浮かんだ。
「どうして今まで姿を現さなかったの?」
私の問いに今度は彼は少し困ったような顔をした。
「うーん。まあ現さなかったというか、現すことが出来なかったんだよね」
「???」
そこから淡々とシルフは語り始めた。
彼の話をまとめるとこうだ。
まず精霊というのは精神世界に生きる者たちで、基本的に私たちがいる世界に顕現する力を有していないらしい。
けれどその方法が1つある。
それは精霊魔法の使い手によって現実世界に召喚してもらうこと。
シルフはある日突然、私の力によって召喚された。
おそらく私が覚醒した時のことだと思うんだけど、その時何故か私の内に閉じ込められて、私の中から出られなかったらしい。
私に呼び掛けても声は届かないし、勝手に力は使われるし、散々な目に合っていたのだが、今回あることがきっかけで、外に出られたのだ。
そのあることとは、私のマインドが枯渇したこと。
それにより今まで檻のように存在していた私の内なる壁が崩壊し、外に出ることが出来た。
そしてその瞬間こちらの世界に私とシルフ二人して移動したと、そんな感じだ。
シルフも人とこういう関係性になるのは初めてのことらしく、細かい勝手は分からないらしい。
私はとりあえず一通りのいきさつを聞いてふんふんと頷いた。
「なるほど、大体のことは分かったわ。とにかく助かった、ありがと」
「うん。ボクも外に出られたと思ったらいきなり君が死んだりしたら寝覚めが悪いからね。偶然とはいえこうして魔族の手から逃れられて良かったよ」
そのシルフの言葉で私は不意に現実に引き戻される。
「あ、魔族! そうだ! 魔族はどうなったの!?」
何を悠長に話し込んでしまっていたのか。正直のんびりしている暇なんてないのだ。
あのまま戦いが続いていれば結果は目に見えている。
残された三人が今どうなっているのか。正直最悪の状況も考えられるのだ。
「ん? まだ戦っているはずだよ?」
そんな私の焦りを何ら気にとめることなく、平然とした様子でシルフは答える。
「はずって……そんな悠長なっ! シルフ、私ってけっこう気絶したりしてたのかなあ!? 場合によっては手遅れになっちゃうかも!」
「ああ、そこは安心して? 精神世界と現実世界では時間の流れが違うからね。こっちで数分いたとしても向こうでは数秒しか経っていないはずさ。今から戻っても充分間に合うはずだよ」
「え? そうなの?」
何かのマスコットキャラみたいにこくんと頷くシルフ。
彼の言葉を聞いて、私はホッと胸を撫で下ろす。
そんな不思議な現象が起こり得るのかと半信半疑な気持ちもなくはないけれど、とりあえずまだ最悪の事態にはなっていないみたいだ。
――私の頭の中で声がする。
「……ッ!!」
目を閉じて横たわる私に何度も何度も呼びかけてくる。
誰かは分からない。ここは、どこなんだろう。
ふと記憶を呼び起こす。ついさっきまでの私の記憶。
私は魔族との戦いに身を投じ、その先に力を使い果たした。
最後に覚えている景色。それは狼の魔族が自分に向けて拳を繰り出してきたというもの。それが私の体に撃ちすえられたという記憶はないけれど。
朧気な記憶をたぐり寄せながら、そこで私は一つの結論へとたどり着いた。
――そうか。
――私、死んじゃったんだ。
魔族にめった撃ちにされて。殺されちゃったんだ。
あっけないものだ。
人間てこんな簡単に死ねちゃうんだ。
いざ死んでみると思いの外苦しみはなかったように思う。
痛かった記憶はあるけれど、死ぬくらいの苦しみだったのかと言われると正直よく分からない。
それとも打ち所が悪かったのだろうか。
あ、殴られて死んだから殴られ所か。ってそんなの別にどうでもいいのだけれど。
「シーナッ!」
頭の中の声が突然鮮明に聞こえた。
その声に私は目を開いた。
起き上がって立ち上がり、身構えながら辺りを見回す。次に自分自身にも目を向ける。
どういう事かはさっぱり分からないけれど、もしかして私、いやもしかしなくても。
「……生きてるの?」
そこは色のない世界だった。
全てがモノクロで、それは私自身もそうだ。靄(もや)のようなものが回りを覆い尽くしていて、けれど視界ははっきりとしている。
すごく不思議な空間だった。
先ほどまであったはずの体の怪我も消えている。
それを確認してやっぱり私は死んでいるんじゃないかと再び思い直した。
けれどそれを自覚した途端、体がどうしようもないくらいの倦怠感に襲われ、今さらながらに強い疲労感を覚えた。
逆にその感覚が、自分がまだ生きているんだ、死んでないんだと思わせた。
まあ実際死んだ経験がないので人が死ねばこういうものなのかもしれないけれど。
「シーナってばっ!」
「!!?」
私の耳にはっきりと飛び込んできた声。
確かに今私の名前を呼んだ。
慌てて振り向いて、視線を向けるけれど、そこには灰色の空間が広がっているだけだった。
「……何なの?」
「違う違う! こっち! もっと下だよっ!」
声は下の方から聞こえていたみたいだ。
今度は視線を足元へと向ける。すると――――。
「えっ!? な、何この変な生き物!?」
「変な生き物で悪かったね……」
ようやく存在に気づいて驚く私にジト目を向けるその生き物。それは体調30センチくらいの人型をしていた。
緑のポンチョのような服を着てとんがり帽子を被り、さらには背中から小さな羽が生えてふわふわと浮遊しているのだ。
まるでおとぎ話に出てくる妖精みたいだ。ちょっとかわいい。
「――あなたは、誰?」
「ボクはシルフ、精霊だよ」
「精霊?」
シルフと名乗る精霊は、満足そうに腕を組み、上目遣いで私を見上げる。
ふわふわと揺れる様がやっぱりかわいい。
「そう、風の精霊。君がこの世界に来て、今の能力が使えるようになったのも、実際のところはボクの力のお陰ってわけさ」
得意気に、いたずらっ子のように鼻を擦り答えるシルフ。
要するに私が風を操れるようになったのは、このシルフお陰なのだ。
でも、だったらどうして――。
私の頭の中に次なる疑問が浮かんだ。
「どうして今まで姿を現さなかったの?」
私の問いに今度は彼は少し困ったような顔をした。
「うーん。まあ現さなかったというか、現すことが出来なかったんだよね」
「???」
そこから淡々とシルフは語り始めた。
彼の話をまとめるとこうだ。
まず精霊というのは精神世界に生きる者たちで、基本的に私たちがいる世界に顕現する力を有していないらしい。
けれどその方法が1つある。
それは精霊魔法の使い手によって現実世界に召喚してもらうこと。
シルフはある日突然、私の力によって召喚された。
おそらく私が覚醒した時のことだと思うんだけど、その時何故か私の内に閉じ込められて、私の中から出られなかったらしい。
私に呼び掛けても声は届かないし、勝手に力は使われるし、散々な目に合っていたのだが、今回あることがきっかけで、外に出られたのだ。
そのあることとは、私のマインドが枯渇したこと。
それにより今まで檻のように存在していた私の内なる壁が崩壊し、外に出ることが出来た。
そしてその瞬間こちらの世界に私とシルフ二人して移動したと、そんな感じだ。
シルフも人とこういう関係性になるのは初めてのことらしく、細かい勝手は分からないらしい。
私はとりあえず一通りのいきさつを聞いてふんふんと頷いた。
「なるほど、大体のことは分かったわ。とにかく助かった、ありがと」
「うん。ボクも外に出られたと思ったらいきなり君が死んだりしたら寝覚めが悪いからね。偶然とはいえこうして魔族の手から逃れられて良かったよ」
そのシルフの言葉で私は不意に現実に引き戻される。
「あ、魔族! そうだ! 魔族はどうなったの!?」
何を悠長に話し込んでしまっていたのか。正直のんびりしている暇なんてないのだ。
あのまま戦いが続いていれば結果は目に見えている。
残された三人が今どうなっているのか。正直最悪の状況も考えられるのだ。
「ん? まだ戦っているはずだよ?」
そんな私の焦りを何ら気にとめることなく、平然とした様子でシルフは答える。
「はずって……そんな悠長なっ! シルフ、私ってけっこう気絶したりしてたのかなあ!? 場合によっては手遅れになっちゃうかも!」
「ああ、そこは安心して? 精神世界と現実世界では時間の流れが違うからね。こっちで数分いたとしても向こうでは数秒しか経っていないはずさ。今から戻っても充分間に合うはずだよ」
「え? そうなの?」
何かのマスコットキャラみたいにこくんと頷くシルフ。
彼の言葉を聞いて、私はホッと胸を撫で下ろす。
そんな不思議な現象が起こり得るのかと半信半疑な気持ちもなくはないけれど、とりあえずまだ最悪の事態にはなっていないみたいだ。
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