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第2章 ピスタ襲来、限界を越えたその先に
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――――今どのくらいの時間が経った?
一分か、五分か、実は十秒程なのか。
時間の流れの感覚すらなくなって、意識があるのかの確証すら持てなくなってくる。
視界もどんどん狭くなっていき、まるで夢の中の出来事のようにすら感じる。
先程から血も流しすぎているせいもあり、頭がクラクラしてくる。鼓動も速い。
息も絶え絶えで、周りの音も入ってこない。
もう限界なんかとっくに越えていた。
倒れてしまいたい。倒れて楽になってしまいたい。
終わりの来ない戦いに折れてしまいそうになる。
だがまだだ。まだ倒れない。
そう自分に言い聞かせ、既のところで踏みとどまる。
「――くっ……!」
レッサーデーモンの爪が腕を掠ってじわりと鮮血が流れ出す。
――もう少し、もう少しだけ時間が欲しいのだ。
動かなくなっていく体とは裏腹に、私の心には最初は朧げだった小さな希望が、少しずつ形を成して大きくなっていっていた。
今やその希望は確かなものに変わりつつあったのだ。
解る……解るぞ。
これはきっと。
――もう少しだ……もう少しで――――。
「しぶとい奴だっ!」
鷲の魔族が痺れを切らし空に飛び上がった。
数メートル舞い上がると、そこから勢いをつけて急降下してきたのだ。
私は咄嗟に身を捻るが、凄まじいスピードに対応しきれない。
上手く避わしきれず、胸部を抉り取られるような衝撃が走った。
だが、吹き飛んだのは胸当てだ。体の傷は少し。
不意にこの装備をくれたネストの村の人達に対する感謝の念が込み上げる。
それでも衝撃で数メートル吹き飛びいよいよ倒れそうになる。
私は地に手をつき、踏ん張り、足に力を込める。
最早力が入れられているのかどうかも分からない。
ただ結果的に倒れてはいないので、何とか踏ん張れているのだと理解出来るだけだ。
顔を上げると鷲の魔族は再び空に上昇し、私の体を串刺しにすべく獰猛な嘴を槍のようにして一直線に私に向かって急降下してきた。
私は避けようとするが、いよいよ体がその場を動かない。
もう自分の意思が体にうまく伝達できないほどに深刻なダメージを受けていた。
膝が震えて体が思うように動かない。
「クソッ……!」
私は今日何度目かの窮地に立たされ、せめてダメージを減らそうと急所を腕や剣で庇う。
だが攻撃が当たる、と予期していたタイミングに鷲の魔族からの攻撃は来なかった。
視界を塞いでいる腕を退けると、すぐ目の前の中空に鷲の魔族がいて留まっていたのだ。
「な……何だこれはあぁぁアア……」
目の前で細切れになって消失していく鷲の魔族。散々私を苦しめたが最期は何とも呆気なかった。
「なっ!? 何だと!? お前は消滅したはずじゃ!?」
狼の魔族の慌てふためく様子に少しだけ胸がスッとした。
遅れて一陣の風が吹き抜けてきた。
そこで私は自分が賭けに勝ったのだと理解した。
目の前に私のよく見知った人物が立っていたのだ。
「間に合った?」
彼女も決して五体満足とはいかないまでも、その横顔は笑みが浮かび、凛々しく美しく、とても頼もしいものに見えた。
私は彼女にフッと微笑みを返す。
「……ああ、何とかな」
それだけでも色々なところに激痛が走るが、今はそんな事、どうでも良かった。
再び彼女の横顔を見れて、私は心底安堵した。
「めぐみちゃんっ……!」
後ろで美奈が叫び声が聞こえた。
その声色には堪らない程の嬉しさも含まれていて、ほんの少しだけ妬けてしまう私は、本当に小さい男だ。
一分か、五分か、実は十秒程なのか。
時間の流れの感覚すらなくなって、意識があるのかの確証すら持てなくなってくる。
視界もどんどん狭くなっていき、まるで夢の中の出来事のようにすら感じる。
先程から血も流しすぎているせいもあり、頭がクラクラしてくる。鼓動も速い。
息も絶え絶えで、周りの音も入ってこない。
もう限界なんかとっくに越えていた。
倒れてしまいたい。倒れて楽になってしまいたい。
終わりの来ない戦いに折れてしまいそうになる。
だがまだだ。まだ倒れない。
そう自分に言い聞かせ、既のところで踏みとどまる。
「――くっ……!」
レッサーデーモンの爪が腕を掠ってじわりと鮮血が流れ出す。
――もう少し、もう少しだけ時間が欲しいのだ。
動かなくなっていく体とは裏腹に、私の心には最初は朧げだった小さな希望が、少しずつ形を成して大きくなっていっていた。
今やその希望は確かなものに変わりつつあったのだ。
解る……解るぞ。
これはきっと。
――もう少しだ……もう少しで――――。
「しぶとい奴だっ!」
鷲の魔族が痺れを切らし空に飛び上がった。
数メートル舞い上がると、そこから勢いをつけて急降下してきたのだ。
私は咄嗟に身を捻るが、凄まじいスピードに対応しきれない。
上手く避わしきれず、胸部を抉り取られるような衝撃が走った。
だが、吹き飛んだのは胸当てだ。体の傷は少し。
不意にこの装備をくれたネストの村の人達に対する感謝の念が込み上げる。
それでも衝撃で数メートル吹き飛びいよいよ倒れそうになる。
私は地に手をつき、踏ん張り、足に力を込める。
最早力が入れられているのかどうかも分からない。
ただ結果的に倒れてはいないので、何とか踏ん張れているのだと理解出来るだけだ。
顔を上げると鷲の魔族は再び空に上昇し、私の体を串刺しにすべく獰猛な嘴を槍のようにして一直線に私に向かって急降下してきた。
私は避けようとするが、いよいよ体がその場を動かない。
もう自分の意思が体にうまく伝達できないほどに深刻なダメージを受けていた。
膝が震えて体が思うように動かない。
「クソッ……!」
私は今日何度目かの窮地に立たされ、せめてダメージを減らそうと急所を腕や剣で庇う。
だが攻撃が当たる、と予期していたタイミングに鷲の魔族からの攻撃は来なかった。
視界を塞いでいる腕を退けると、すぐ目の前の中空に鷲の魔族がいて留まっていたのだ。
「な……何だこれはあぁぁアア……」
目の前で細切れになって消失していく鷲の魔族。散々私を苦しめたが最期は何とも呆気なかった。
「なっ!? 何だと!? お前は消滅したはずじゃ!?」
狼の魔族の慌てふためく様子に少しだけ胸がスッとした。
遅れて一陣の風が吹き抜けてきた。
そこで私は自分が賭けに勝ったのだと理解した。
目の前に私のよく見知った人物が立っていたのだ。
「間に合った?」
彼女も決して五体満足とはいかないまでも、その横顔は笑みが浮かび、凛々しく美しく、とても頼もしいものに見えた。
私は彼女にフッと微笑みを返す。
「……ああ、何とかな」
それだけでも色々なところに激痛が走るが、今はそんな事、どうでも良かった。
再び彼女の横顔を見れて、私は心底安堵した。
「めぐみちゃんっ……!」
後ろで美奈が叫び声が聞こえた。
その声色には堪らない程の嬉しさも含まれていて、ほんの少しだけ妬けてしまう私は、本当に小さい男だ。
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小説家になろうにて4年以上連載中の作品です。https://ncode.syosetu.com/n2034ey/続きが気になる方はこちらでも読めますのでどうぞ。ブクマや感想などしていただけるととても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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