私のわがままな異世界転移

とみQ

文字の大きさ
上 下
50 / 135
第4章 戦いを終えて

45

しおりを挟む
  若干涙目になりながら私に詰め寄り腕を掴まれる。
  美奈の接近に伴い彼女の女性らしい部分が私の胸に触れる。
  私は平静を装い頬をぽりぽりと掻く。

「えっと……何を話せばいいのだ?」

「んっと……隼人くんがどうしてあんな状態になっちゃったのかなって」

「…………」

  美奈は急に心配そうに眉根を寄せる。
  なるほど、聞きたいことはそれか。
  彼女のその発言から私を慮っていることが十分に伝わる。それが単純にすごく嬉しい。

「うむ、そうだな。――それは私の今回のグリアモールを攻撃した際の方法に起因する。要するに私の能力でやつを攻撃するに当たって、二つの選択肢があったのだ」

「選択肢?」

「うむ、精神力のプラスマイナス、どちらをぶつけるかだ」

  美奈は黙して私の顔を見つめている。
  私の腕を掴まれた手の温もりが心地よかったし、先程から彼女の柔らかい部分がぽにょんぽにょんとしていたがそれこそは間違っても言わないでおくと心に決め、私は話を続けていく。

「グリアモールに精神攻撃をするにあたって、奴に対する恨みや憎しみを形にしてぶつけても、ヤツにとっては回復魔法をかけられたようになるのではないかと思ったのだ。仮にも魔族、魔の生物にもし攻撃するなら私の皆に対する想いや、感謝、喜び、そんな前向きなプラスの気持ちをぶつけないと効果がないのではないか。そう考えた。だからプラスの想いを形にして奴にぶつけたのだ」

「……ああ……そうしたらプラスの想いがなくなって、マイナスの想いが強くなっちゃったってことかな?」

「そうだ」

  美奈はゆっくりと私の言葉を噛みしめるように咀嚼しながら、それでもきちんと理解を示してくれたようだ。  

「効果はあったが、結果として私の中にマイナスの感情だけが残り、渦巻き、溢れだし、ついにはあのような恐慌状態になってしまったというわけなのだ」

  少し体が硬直したのもあり、かなり早口で捲し立ててるようになってしまった気がするが、それでも彼女からは今度は納得したような反応を得られた。
  またその頷きのために美奈の柔らかい部分が時折――以下同文。

「心のプラスが無くなってマイナスばっかりになって心の均衡が崩壊したってワケね。それで一時気が狂っちゃったみたいになった。あ、でも待って?  精神がやられたのに美奈の能力で回復したのはなんで?」

  椎名は補填を入れながらも自身の考えの矛盾に気づく。
  確かにそれは私も思っていた所ではある。
  ただそれはちょっと言い難い部分があった。
  しかしこうなってしまっては結局言うしかないのだろう。

「あー……これは恐らくでしかないのだが」

「何よ、気づいてるんならはっきり言いなさいよ」

  歯切れの悪い私に短いため息を吐き、続きを促す椎名。
  美奈も私が話すのを待っている。
  まあそうなるだろうなと思いつつ、観念する。

「うむ。肉体と精神は常に繋がった状態であるからだと予想したのだ。病は気からとよく言うが、心の病気は肉体にも影響を及ぼす。そして身体の病気は心にも影響を及ぼす、と言った所か。要するに……」

「?  ……要するに?」

  椎名が珍しく不思議そうな顔をしている。
  察しのいい彼女だからここまで言えば分かると思ったのだが。
  私はふうと短い息を吐き、一呼吸おいた。

「やっぱり美奈だったからではないかな」

「――は?  ああ、ノロケってこと?  何よそれ、バカらしい。……バカらしい」

「二回……」

  椎名はそれを聞いた途端にうんざりとした表情を作った。
  自分で聞いておいてそれは酷くないだろうかと思わなくもないが、まあ私も自分で何を言っているのかとは思う。
  言った手前だが顔にはしっかりと熱を帯びる感覚があった。
  更に美奈の私に触れている部分も熱を帯びていくように思えた。
  そんな私の様子を見て大袈裟にため息をつく椎名。

 「美奈、良かったわね。隼人くんはあなたのことが好きで好きでしょうがないみたいよ?  良かったわね~」

「えと……うん」

  今まで黙って聞いていた美奈が、ここで口を開いた。
しおりを挟む
小説家になろうにて4年以上連載中の作品です。https://ncode.syosetu.com/n2034ey/続きが気になる方はこちらでも読めますのでどうぞ。ブクマや感想などしていただけるととても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...