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混ぜるな危険
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苔むした石造りの城内は意外にも綺麗で、あちこちが崩れているわけでもなく瓦礫の山なども見当たらない。だがやはり使われていないものなのか、家具などはかなり古びていて今にも壊れそうな感じがする。
だが埃っぽさはなく、机の上なども掃除をしたあとのように綺麗で、少しそれが気持ち悪く感じた。窓などないし、風が入るわけでもなさそうなのに、全くもって塵や埃がない。そんなこと放棄されたであろう遺跡でありえるわけがないのに。
まさか誰かが住んでいるのか、と気配を探るがそれも当然のように感じられない。人どころか、モンスターの気配さえも。
「一体なんなんですの、ここは。」
「わからんが、普通の遺跡じゃあなさそうだな。何が起きるかわからないし、気をつけて進むぞ。そう、ああいう怪しいところは行くなよ。」
そう言って俺は目の前の扉を指差す。正確にはその前にある見るからに怪しい看板を。
「だがフィン殿、この先お宝有りと書いてあるぞ。気になるではないか。」
シスイは気になって仕方ないのかアホなのか単純なのか、少し不服そうな顔をして俺を見る。
「そんなもの絶対罠に決まってるだろ! 普通に考えてお宝隠したあとにその場所を提示するか?」
「相手が普通じゃない思考の持ち主かもしれませんよ。気になりますし行ってみるべきです。」
「……おい、アリーチェ。本当にマクシムは凄い軍師なんだよな? 軍師とは思えない発言してるんだが。」
俺の問いかけにアリーチェは顔をあからさまに逸らしながら聞こえないふりをした。その様子に俺は小さくため息をついて、扉を今にも開けようとしているマクシムたちを少し離れた場所から見つめる。
「じゃあ、開けますよ。せーの!」
どこかウキウキしながらマクシムが扉を開けると、そこには台座の上に乗っている宝箱があった。こんなわかりやすい置き方、わかりやすい看板、どう見ても鍵のかかっていない状況は明らかにおかしいのだが、そんなことはこいつらにはどうでもいいことらしい。
その証拠になんの疑いもせずマクシムは宝箱に手を伸ばし、よいしょと言いながら蓋をあけた。
「これは!」
驚いた様子のマクシムの声に、なんだかんだ俺も気になって近くに寄る。
「鉄の塊?」
宝箱に入っていた四角いグレーの塊は、持ち上げてみても特に何か罠があるわけでもなさそうだ。ただ宝箱に入っているにしては地味であり、これがお宝と言われても信じる人はいないだろう。
特に四角い以外にこれといった特徴もなく、ただ少し重いのと金属質なことが気になるくらいだ。あとは謎のボタンみたいなものも付いてはいるが、押してみても特に何か起きるわけでもない。
ゴミか何かだろ、とその鉄の塊を見ていたその時、いきなりシスイが太刀を抜きながら後ろを振り返った。
「え、いや怖、どうしたんだよ急に。」
「む……。今気配が。」
「気配?」
そう言われて気配を伺うが、俺たち以外の気配は何も感じられない。それはマクシムやアリーチェも同じようで、2人とも首を傾げてシスイを見ている。
「気のせいじゃないのか? 特に何も感じないぞ。」
「否、遠のいたがよく知っている気配がある。フィン殿、ここをワープポイントに設定できるか?」
「できるだろうが、なんて名前にすればいいんだ、ここ。」
ゲハイムニス、なのかそれとも別の場所なのか。ゲハイムニスに行きたいと言って連れて来られた場所ではあるし、近しい場所ではあると信じたい。
「それなら、とりあえずシュロスとでも名付けておきましょうか。ちょうど今あの石持ってるんで登録しておきますよ。」
マクシムがそう言うと、シュロスヲ登録シマシタ、という小さな機械音が響いた。どうやらワープポイントに設定はできたらしい。
「できたか。拠点に戻るぞ。」
「え、戻るって、なんでだよ。」
「フィン殿の拠点にはスミラ殿がいるのだろう? それならあの男もいるのではないか。」
あの男というのはアドラーのことだろうか。そうだとして、それが一体今何の関係があるのかさっぱりわからない。
「アドラーも確かにいるが、それがどうかしたのか?」
「戻ればわかる。とにかく今は再び奴が近くに来る前に急ぎ戻るぞ。このパーティでは不利だ。」
シスイがそう言うと、どこか納得した様子でマクシムがリベラシオンへワープと呟いた。俺としては何一つとして状況を理解できていないので、まだ探索も始まったばかりだし正直不完全燃焼みたいになっているが仕方ない。
「んだよ、もう戻ってきやがったのか……って、なんでテメェがいんだよあぁ!?」
「大歓迎であるな、アドラー殿。」
リベラシオンにワープしてすぐ、俺たちは食堂のソファーに座ってまったりしているアドラーに出会った。どう考えても大歓迎とは真逆の対応をされたような気がするが、シスイはズレているのかわざとなのか、相変わらずの冷静な表情でアドラーに近づいていく。
「まぁいろいろあってここにきた。これからよろしく頼む。」
「よろしくしたくなんざねーよ。」
どう見てもバチバチに険悪な仲だろこれ、と2人の様子を見ていると、その空気を壊すかのようにスミラやソフィアたちが食堂に入ってきた。
「あらあら、新しい仲間かしら~?」
「師匠! 師匠です!」
シスイに気づいたスミラはそう叫ぶと一目散にシスイに向かって走り出した。会えたのが相当嬉しいのか、スミラは今までに見たことがない笑顔をしている。
アドラーが機嫌悪いのはこういうことか、と思っていると、スミラはそのままシスイに勢いよく抱きついて顔を服に埋めた。それと同時にアドラーが大剣に手をかけたのは見なかったことにしたい。
「師匠! スーミはここでもとても良い子にしてたので褒められるべきです! さぁ、存分に褒めるがいいです!」
「よしよし、スミラ殿は良い子だ。そしてナイス巨乳であるな。」
「おいテメェ、それ以上スーミに触んじゃねぇ! 殺すぞ!」
「触れてきているのはむしろスミラ殿の方なのでな、俺に言われても困る。まぁ、俺としてはこのまま巨乳を堪能していたい気もするしな。」
「この変態クソ野郎……! 今日こそテメェの首を落としてやらぁ!」
事実ではあるが見事なまでのシスイの煽りに、アドラーは大剣を構えて完全にキレだした。いくら広いとはいえここは食堂、このまま技でも出されたものなら半壊ではすまないだろう。
だが止めようにもすでにアドラーの大剣はシスイの首スレスレを何度も斬りつけているし、話しかけて止まるような奴でもない。シスイがうまいことかわしながらもアドラーを落ち着かせてくれれば、とも思うが、シスイはシスイでわざとギリギリまで切先を引き寄せてから避けるという煽りっぷりを見せている。しかも器用にスミラをしっかりと抱き寄せながら。
「なぁ、この2人ってマジで混ぜるな危険ってヤツ? バッチバチじゃんウケる。」
「そうみたいだな。ルキなんとかできないか、あれ。」
「いやオレはちょっとまだ死にたくないからムリだわー。」
そう話してる間にもどんどん食堂の椅子や机が犠牲になっていく。誰かマジでなんとかしてくれ、俺は無理だと半ば諦めながら見ていると、爆音とともに突然目の前を凄い勢いで大きな弾丸が通り過ぎて食堂の壁に大きな穴が開いた。
「全く、2人とも落ち着いてください。次は2人に当てますよ。」
マクシムが放ったであろうバズーカに、アドラーもシスイもさすがに動きが止まる。こんな近距離で当てられたら確実に死ぬので止まらざるをえないというのが本当のところだろうが。
アドラーは大剣を渋々下ろし、シスイも名残惜しそうにスミラを解放した。食堂は穴が開いたし、こういう止め方アリかよと思うが怪我人がでなかっただけマシかもしれない。
「はぁ……。で、なんでテメェがここにいんだよ。」
「ゲハイムニスにある遺跡で、奴の気配を感じたのでな。おまえも来い。おまえの大剣はあいつの曲刀を防げるだろう?」
「曲刀って、まさか奴ってのは……!」
「ユリウスだ。確実にあそこにいる。姫殿やマクシム殿では不利なのでな、おまえを呼んだ方が良いと思ってここにきた。決して巨乳の癒し系お姉さんに会いにきたわけではないぞ。というか早く紹介してくれないか?」
シスイはそう言いながらチラチラとソフィアの方を見ている。もちろん紹介するつもりではあるが、今はそれよりもユリウスという人物が気になるところだ。
俺の記憶が戻っていないからか、会ったことがないからかユリウスという名前は思い当たる人がいない。だがシスイとアドラーがわかるということは軍関係者で恐らく厄介な奴なのだろう。
「その前に、ユリウスっていうのは一体誰なんだ?」
「ユリウス・シュタールのことだろ? 曲刀使いで女がくそほど苦手なアニキだ。オレのね。」
珍しく真面目な顔をしてそう言い放ったルキに、時が止まった気がした。
「できればアニキってのはずっと隠していたかったけど、出会っちゃったらバレるのも時間の問題だしな。まーでもオレは会いたくねーから、行くのはパスで! 適当に対処しといてくれよな!」
ルキはそう言うと食堂から出て行った。家のこととなるとやはりあまり話したいものではないらしい。
「ルキの兄貴なのに、女が苦手なんだな。」
「そういえば姫殿が部屋にいる時は極端に口数が減っていたな。だが戦うとなれば話は別だ。姫殿のナックルであの曲刀は不利だろう。ここはアドラー殿と俺とフィン殿、あと回復役として癒し系巨乳お姉さんがベストだろう。」
「絶対ソフィアと一緒に行きたいだけだろうが、まぁ回復は欲しいしな。すまない、ソフィア。来てくれるか?」
俺がそう言うとソフィアはいつも通りニコニコしながら頷いた。シスイからセクハラ発言と視線を受けているのに動じないのは凄いと思う。
「お姉さんクナイ使いだし、役に立つかわからないけれど……、ソフィアよ、よろしくね~。」
「ソフィア殿! 俺はシスイ・ツキシロと申す! 必ずやソフィア殿のことは死んでもお守りいたすゆえ、ご安心を!」
「ここまで隠さず下心見え見えの人も珍しいな。」
謎の感心をしながら俺はシスイたちの自己紹介を見ていた。
だが埃っぽさはなく、机の上なども掃除をしたあとのように綺麗で、少しそれが気持ち悪く感じた。窓などないし、風が入るわけでもなさそうなのに、全くもって塵や埃がない。そんなこと放棄されたであろう遺跡でありえるわけがないのに。
まさか誰かが住んでいるのか、と気配を探るがそれも当然のように感じられない。人どころか、モンスターの気配さえも。
「一体なんなんですの、ここは。」
「わからんが、普通の遺跡じゃあなさそうだな。何が起きるかわからないし、気をつけて進むぞ。そう、ああいう怪しいところは行くなよ。」
そう言って俺は目の前の扉を指差す。正確にはその前にある見るからに怪しい看板を。
「だがフィン殿、この先お宝有りと書いてあるぞ。気になるではないか。」
シスイは気になって仕方ないのかアホなのか単純なのか、少し不服そうな顔をして俺を見る。
「そんなもの絶対罠に決まってるだろ! 普通に考えてお宝隠したあとにその場所を提示するか?」
「相手が普通じゃない思考の持ち主かもしれませんよ。気になりますし行ってみるべきです。」
「……おい、アリーチェ。本当にマクシムは凄い軍師なんだよな? 軍師とは思えない発言してるんだが。」
俺の問いかけにアリーチェは顔をあからさまに逸らしながら聞こえないふりをした。その様子に俺は小さくため息をついて、扉を今にも開けようとしているマクシムたちを少し離れた場所から見つめる。
「じゃあ、開けますよ。せーの!」
どこかウキウキしながらマクシムが扉を開けると、そこには台座の上に乗っている宝箱があった。こんなわかりやすい置き方、わかりやすい看板、どう見ても鍵のかかっていない状況は明らかにおかしいのだが、そんなことはこいつらにはどうでもいいことらしい。
その証拠になんの疑いもせずマクシムは宝箱に手を伸ばし、よいしょと言いながら蓋をあけた。
「これは!」
驚いた様子のマクシムの声に、なんだかんだ俺も気になって近くに寄る。
「鉄の塊?」
宝箱に入っていた四角いグレーの塊は、持ち上げてみても特に何か罠があるわけでもなさそうだ。ただ宝箱に入っているにしては地味であり、これがお宝と言われても信じる人はいないだろう。
特に四角い以外にこれといった特徴もなく、ただ少し重いのと金属質なことが気になるくらいだ。あとは謎のボタンみたいなものも付いてはいるが、押してみても特に何か起きるわけでもない。
ゴミか何かだろ、とその鉄の塊を見ていたその時、いきなりシスイが太刀を抜きながら後ろを振り返った。
「え、いや怖、どうしたんだよ急に。」
「む……。今気配が。」
「気配?」
そう言われて気配を伺うが、俺たち以外の気配は何も感じられない。それはマクシムやアリーチェも同じようで、2人とも首を傾げてシスイを見ている。
「気のせいじゃないのか? 特に何も感じないぞ。」
「否、遠のいたがよく知っている気配がある。フィン殿、ここをワープポイントに設定できるか?」
「できるだろうが、なんて名前にすればいいんだ、ここ。」
ゲハイムニス、なのかそれとも別の場所なのか。ゲハイムニスに行きたいと言って連れて来られた場所ではあるし、近しい場所ではあると信じたい。
「それなら、とりあえずシュロスとでも名付けておきましょうか。ちょうど今あの石持ってるんで登録しておきますよ。」
マクシムがそう言うと、シュロスヲ登録シマシタ、という小さな機械音が響いた。どうやらワープポイントに設定はできたらしい。
「できたか。拠点に戻るぞ。」
「え、戻るって、なんでだよ。」
「フィン殿の拠点にはスミラ殿がいるのだろう? それならあの男もいるのではないか。」
あの男というのはアドラーのことだろうか。そうだとして、それが一体今何の関係があるのかさっぱりわからない。
「アドラーも確かにいるが、それがどうかしたのか?」
「戻ればわかる。とにかく今は再び奴が近くに来る前に急ぎ戻るぞ。このパーティでは不利だ。」
シスイがそう言うと、どこか納得した様子でマクシムがリベラシオンへワープと呟いた。俺としては何一つとして状況を理解できていないので、まだ探索も始まったばかりだし正直不完全燃焼みたいになっているが仕方ない。
「んだよ、もう戻ってきやがったのか……って、なんでテメェがいんだよあぁ!?」
「大歓迎であるな、アドラー殿。」
リベラシオンにワープしてすぐ、俺たちは食堂のソファーに座ってまったりしているアドラーに出会った。どう考えても大歓迎とは真逆の対応をされたような気がするが、シスイはズレているのかわざとなのか、相変わらずの冷静な表情でアドラーに近づいていく。
「まぁいろいろあってここにきた。これからよろしく頼む。」
「よろしくしたくなんざねーよ。」
どう見てもバチバチに険悪な仲だろこれ、と2人の様子を見ていると、その空気を壊すかのようにスミラやソフィアたちが食堂に入ってきた。
「あらあら、新しい仲間かしら~?」
「師匠! 師匠です!」
シスイに気づいたスミラはそう叫ぶと一目散にシスイに向かって走り出した。会えたのが相当嬉しいのか、スミラは今までに見たことがない笑顔をしている。
アドラーが機嫌悪いのはこういうことか、と思っていると、スミラはそのままシスイに勢いよく抱きついて顔を服に埋めた。それと同時にアドラーが大剣に手をかけたのは見なかったことにしたい。
「師匠! スーミはここでもとても良い子にしてたので褒められるべきです! さぁ、存分に褒めるがいいです!」
「よしよし、スミラ殿は良い子だ。そしてナイス巨乳であるな。」
「おいテメェ、それ以上スーミに触んじゃねぇ! 殺すぞ!」
「触れてきているのはむしろスミラ殿の方なのでな、俺に言われても困る。まぁ、俺としてはこのまま巨乳を堪能していたい気もするしな。」
「この変態クソ野郎……! 今日こそテメェの首を落としてやらぁ!」
事実ではあるが見事なまでのシスイの煽りに、アドラーは大剣を構えて完全にキレだした。いくら広いとはいえここは食堂、このまま技でも出されたものなら半壊ではすまないだろう。
だが止めようにもすでにアドラーの大剣はシスイの首スレスレを何度も斬りつけているし、話しかけて止まるような奴でもない。シスイがうまいことかわしながらもアドラーを落ち着かせてくれれば、とも思うが、シスイはシスイでわざとギリギリまで切先を引き寄せてから避けるという煽りっぷりを見せている。しかも器用にスミラをしっかりと抱き寄せながら。
「なぁ、この2人ってマジで混ぜるな危険ってヤツ? バッチバチじゃんウケる。」
「そうみたいだな。ルキなんとかできないか、あれ。」
「いやオレはちょっとまだ死にたくないからムリだわー。」
そう話してる間にもどんどん食堂の椅子や机が犠牲になっていく。誰かマジでなんとかしてくれ、俺は無理だと半ば諦めながら見ていると、爆音とともに突然目の前を凄い勢いで大きな弾丸が通り過ぎて食堂の壁に大きな穴が開いた。
「全く、2人とも落ち着いてください。次は2人に当てますよ。」
マクシムが放ったであろうバズーカに、アドラーもシスイもさすがに動きが止まる。こんな近距離で当てられたら確実に死ぬので止まらざるをえないというのが本当のところだろうが。
アドラーは大剣を渋々下ろし、シスイも名残惜しそうにスミラを解放した。食堂は穴が開いたし、こういう止め方アリかよと思うが怪我人がでなかっただけマシかもしれない。
「はぁ……。で、なんでテメェがここにいんだよ。」
「ゲハイムニスにある遺跡で、奴の気配を感じたのでな。おまえも来い。おまえの大剣はあいつの曲刀を防げるだろう?」
「曲刀って、まさか奴ってのは……!」
「ユリウスだ。確実にあそこにいる。姫殿やマクシム殿では不利なのでな、おまえを呼んだ方が良いと思ってここにきた。決して巨乳の癒し系お姉さんに会いにきたわけではないぞ。というか早く紹介してくれないか?」
シスイはそう言いながらチラチラとソフィアの方を見ている。もちろん紹介するつもりではあるが、今はそれよりもユリウスという人物が気になるところだ。
俺の記憶が戻っていないからか、会ったことがないからかユリウスという名前は思い当たる人がいない。だがシスイとアドラーがわかるということは軍関係者で恐らく厄介な奴なのだろう。
「その前に、ユリウスっていうのは一体誰なんだ?」
「ユリウス・シュタールのことだろ? 曲刀使いで女がくそほど苦手なアニキだ。オレのね。」
珍しく真面目な顔をしてそう言い放ったルキに、時が止まった気がした。
「できればアニキってのはずっと隠していたかったけど、出会っちゃったらバレるのも時間の問題だしな。まーでもオレは会いたくねーから、行くのはパスで! 適当に対処しといてくれよな!」
ルキはそう言うと食堂から出て行った。家のこととなるとやはりあまり話したいものではないらしい。
「ルキの兄貴なのに、女が苦手なんだな。」
「そういえば姫殿が部屋にいる時は極端に口数が減っていたな。だが戦うとなれば話は別だ。姫殿のナックルであの曲刀は不利だろう。ここはアドラー殿と俺とフィン殿、あと回復役として癒し系巨乳お姉さんがベストだろう。」
「絶対ソフィアと一緒に行きたいだけだろうが、まぁ回復は欲しいしな。すまない、ソフィア。来てくれるか?」
俺がそう言うとソフィアはいつも通りニコニコしながら頷いた。シスイからセクハラ発言と視線を受けているのに動じないのは凄いと思う。
「お姉さんクナイ使いだし、役に立つかわからないけれど……、ソフィアよ、よろしくね~。」
「ソフィア殿! 俺はシスイ・ツキシロと申す! 必ずやソフィア殿のことは死んでもお守りいたすゆえ、ご安心を!」
「ここまで隠さず下心見え見えの人も珍しいな。」
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