19 / 74
付け続ける
しおりを挟むマクシムに貰った地図はかなり詳細に書かれており、先ほどは見つけられなかったが、坑道などがあちこちにあることがわかった。この近くの坑道はバツ印がついているので、おそらくもう使われていない古い坑道ばかりなのだろう。
そういうところこそ何か面白い出来事が待っていたりするもんだ、と少し冒険心をくすぐられるが、今は寄り道をしている場合ではない。いるかわからないが道具屋と鍛冶屋を見つけてこなければならないのだから。
それにしても本当に地図を貰いに帰って正解だったと思う。あのまま歩き続けていたら南西にあるよくわからない鉱山地帯に出ていただろう。
これからはどこか行く前に必ず地図を貰おう、と俺は固く誓った。
「まさか狩人が方向ミスるとは思わなかったが。」
「いやー、オレ絶対北に向かってる自信あったんだけどなー。真逆だったなんて思わなかったぜ。まぁ狩人っつってもいろいろ事情がある狩人だし?」
「おまえの事情はシャレにならなさそうで聞くのが憚られるよ。」
間違いねえな、と笑うルキを小突きながら俺たちは道なき道を歩いて行った。ゴツゴツした岩、常に舞う砂埃、どれもリンドブルムにはなかったもので、とても新鮮に感じる。新鮮と言っても俺がリンドブルムにいたのはたった数日だけなのだが。
それにしてもマスクとか欲しいな、と砂埃に早くもめげそうになっていると、バレッタを外そうとしているリーナと目が合った。
「あ、せっかく貰ったのに砂埃で汚しちゃうかなって思って。本当は外したくないんだけど……。」
リーナはそう言って少し困ったような顔をしながらバレッタに手を当てていた。確かに特別な加工をしたわけでもないそれは、砂埃で傷がつくことはないと思うが、多少は汚れてしまうだろう。
それでも何処かで洗えば元通り綺麗になるだろうし、あまり気にしなくてもいいと思う。というより、なんとなくそれを外して欲しくなくて、俺は外そうとしているリーナの手を取って立ち止まった。
「別に外さなくたって、後で洗えばいいだろ。」
「それはそうだけど……。なんかフィン怒ってる?」
「怒ってない。いいからそのままつけてろ。」
そんなに言うなら、とリーナは外すのを諦めた様子でこちらを見た。それに満足した俺は手を離して再び歩き出そうとした。
「はーあ、オレもイチャイチャしてーわー。ソフィアさん見ましたあ? あれ完全に俺のものって印だってやつですよ。」
「見ましたわよルキさん~。この先出会う男に牽制するから取るなってやつね~。」
「シンティアもフィンとイチャイチャするー!」
後ろで好き勝手言い出したルキたちに、イチャついてねえよとだけ言って今度こそ歩き出した。今日中に着かなくても、せめてこのゴツゴツした岩山は抜けたいものだ。
(地図的にはまだまだかかりそうなんだよなぁ……)
貰った地図をもう一度見てため息をついた。地図によると当分岩山が続きそうだ。
せめて砂埃だけでもなくなれば、ここで少し休憩しようとかできるのだが。この快晴では雨で砂埃をなくすことも望めそうにない。
「岩ばっかだからオレの足マジで鍛えられそう……。すでにパンッパンだもん。」
「私も疲れてきたわね……。リンドブルムは岩山なんてそんなにないから、ここまで体力持ってかれるなんて知らなかったわ。」
「アゲート人って体格が良い人が多いっていうけど、納得よね~……。」
確かにこんな道を毎日歩いていたら筋肉もつくだろう。シンティアみたいに女の子ならともかく、成人男性ならすぐムキムキになれそうだ。
それなのにマクシムはやけに細くてスラっとしていたな、と少し失礼かもしれないことを思ってしまった。でもアゲート人らしさが見当たらないどころか、どこか違和感を感じているのも事実だ。
それはおそらく、アゲート人は体格が良くて性格も豪快、というイメージが強いからだろう。マクシムはそれとは真逆の性格だし、見た目も当てはまらない。
まぁ別にどこ出身だろうと俺には関係ないし、どうでもいいことだ。帰っても気になっていたら雑談として聞いてみればいい。
(人の出身気にしてる暇があったら、俺自身の出身を思い出したいんだけどな)
あまり思い出せない記憶に少し悲しくなりながら俺は頭を振った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!
夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!!
国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。
幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。
彼はもう限界だったのだ。
「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」
そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。
その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。
その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。
かのように思われた。
「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」
勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。
本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!!
基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。
異世界版の光源氏のようなストーリーです!
……やっぱりちょっと違います笑
また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる