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最終章 最強部長はロードレースでも最強を目指す
第100話 「ディバイディング・スプリント・エース」
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南原さん、北見さんにブルーフリーダムの3人を加えた5人のお陰で、海斗君との距離を一気に詰められた。
「すみません。限界です。ここでお別れです。もう少し頑張れると思ったのですけど」
ブルーフリーダムのメンバーが突然脱落した。
「ありがとう、アシストしてもらえて助かったよ」
「あぁ、僕も駄目ですね。皆さんを追いかけた時に足を使いすぎたみたいですね。頑張って下さい!」
ブルーフリーダムのメンバーが更に一人脱落した。
「ありがとう、頑張って走り切るよ」
「次の右コーナーを抜けたら最後の直線です。後はお願いします」
最後にブルーフリーダムのリーダーが脱落した。
「ありがとう、必ず勝ってみせるよ」
これでアシストしてくれたブルーフリーダムのメンバー全員が脱落してしまった。
私達は第2集団の皆にアシストしてもらっていたが、彼らは3人だけで追いかけて来ていたのだ。
私達より消耗していたのだろう。
海斗君たちには、まだ少し届かない。
それでもアシストしてもらえて助かった。
後は私達チームメンバーで頑張るしかない。
「まだ俺と南原君がいるぜ!」
「自分はまだ行けます!」
北見さんと南原さんが、私を安心させようとしてくれた。
だが、その後に500m走った所で北見さんが力尽きた。
それは当然の事だ。
今まで5人で時速50kmを維持していたのに、半分以下の二人で速度を維持しなければならないのだ。
先頭を引き受ける頻度が2倍以上になったので、想像以上に体力を消耗したのだろう。
「なんでだよ! こんな所でぇ……終われねぇんだよ!」
「後は自分がやります!」
「悔しいけど任せた!」
力尽きた北見さんの代わりに南原さんが前を走り続ける。
最初は時速50kmを維持していたが、徐々に巡行速度が落ちていく。
高速巡行が得意な南原さんだが、既に約200km走っているのだ。
体力が持たなくて当然だ。
それでも最終コーナー直前までアシストしてくれた。
そして……ゴール直前ギリギリだが、海斗君と東尾師匠に追いついたのだ!
「木野さん! 出番です!!」
南原さんが脇に避けて、木野さんが先頭に飛び出す。
「行きますよぉ! ついて来て下さい!!」
木野さんの頼もしい言葉。
彼が最後のスプリント勝負の先陣を切ってくれるのだ。
そして辿り着いた最終コーナー。
木野さんが減速して、イン側のラインにヘルメットをねじ込んだ。
今までの直線の勢いを活かすなら、コーナリング速度が上げられるアウト側の方が有利なのではないだろうか?
わざわざ減速して、立ち上がりの負荷を上げるのは得策ではないと思ったが、コーナーを抜けて直ぐに分かった。
左からの横風が強い。
木野さんは横風を考慮して、海斗君を風よけに出来る、イン側のラインを選んだのか!
ゴール前最後の直線。
海斗君と横並びになる。
木野さん、利男、私の順で列車状に並び、スプリントトレインを形成する。
木野さんが全力で時速55kmまで上げた後、無言で脇に避けて失速する。
スプリントの持続力が短いから限界だったのだろう。
無言で後ろに消えていく……アシスト有難う木野さん。
続く利男が時速60kmまで加速する。
それと同時に、師匠が海斗君の前に出て同じく時速60kmまで上げた。
「そういう事かよ! 東尾!!」
利男も気付いたようだな。
私の勝利を万全にするなら、東尾師匠は私の後ろにつくべきだ。
そうすれば、海斗君が空気抵抗を減らす為に私達の後ろについても、彼は私と師匠の二人分後方からスプリントする事になる。
しかも師匠はスプリントしないから、間に師匠がいる見通しが悪い状況で、私がスプリントするタイミングに合わせる必要がある。
それを嫌って単独でスプリントした場合、アシストを受けた私より速度を上げるのは難しいだろう。
ライン取りの影響で横風も受けているのだから。
でも、師匠は海斗君の前を走る事を……海斗君のスプリントをアシストする事を選んだ。
最後は堂々と戦って勝てって事なのだな……師匠!!
徐々にゴールラインが近づいてくる。
残り200m。
「勝てよ! 俺達のエース!!」
利男が脇に避けたと同時に、師匠も脇に避けて私と海斗君の前が開ける。
海斗君、最後の勝負だ!
もうパワーデータも速度も見る必要はない。
全ての筋肉に意識を集中して、ただ速く走る事だけに専念するだけだ。
空に飛び立つように全力でペダルを踏み込む。
海に沈みこむ様に上体を伏せてロードバイクを抑え込む。
二つの力が拮抗して出来る水平線。
行くぞ! ホライズン!!
残りの全ての力を開放して行う最後のスプリントーー
「ディバイディング・スプリント・エース!!」
数値を見なくても分かる爆発的な加速。
後方に高速で流れゆく景色。
何もかもが背後に消えゆく高速域の世界で、隣を走る海斗君だけが姿を保っている。
だが、それも少しの時間だけだった。
私と海斗君の速度差が、彼を後方へ追いやる。
あっさり迎えたゴールライン。
これが、エースの力だ!!
「すみません。限界です。ここでお別れです。もう少し頑張れると思ったのですけど」
ブルーフリーダムのメンバーが突然脱落した。
「ありがとう、アシストしてもらえて助かったよ」
「あぁ、僕も駄目ですね。皆さんを追いかけた時に足を使いすぎたみたいですね。頑張って下さい!」
ブルーフリーダムのメンバーが更に一人脱落した。
「ありがとう、頑張って走り切るよ」
「次の右コーナーを抜けたら最後の直線です。後はお願いします」
最後にブルーフリーダムのリーダーが脱落した。
「ありがとう、必ず勝ってみせるよ」
これでアシストしてくれたブルーフリーダムのメンバー全員が脱落してしまった。
私達は第2集団の皆にアシストしてもらっていたが、彼らは3人だけで追いかけて来ていたのだ。
私達より消耗していたのだろう。
海斗君たちには、まだ少し届かない。
それでもアシストしてもらえて助かった。
後は私達チームメンバーで頑張るしかない。
「まだ俺と南原君がいるぜ!」
「自分はまだ行けます!」
北見さんと南原さんが、私を安心させようとしてくれた。
だが、その後に500m走った所で北見さんが力尽きた。
それは当然の事だ。
今まで5人で時速50kmを維持していたのに、半分以下の二人で速度を維持しなければならないのだ。
先頭を引き受ける頻度が2倍以上になったので、想像以上に体力を消耗したのだろう。
「なんでだよ! こんな所でぇ……終われねぇんだよ!」
「後は自分がやります!」
「悔しいけど任せた!」
力尽きた北見さんの代わりに南原さんが前を走り続ける。
最初は時速50kmを維持していたが、徐々に巡行速度が落ちていく。
高速巡行が得意な南原さんだが、既に約200km走っているのだ。
体力が持たなくて当然だ。
それでも最終コーナー直前までアシストしてくれた。
そして……ゴール直前ギリギリだが、海斗君と東尾師匠に追いついたのだ!
「木野さん! 出番です!!」
南原さんが脇に避けて、木野さんが先頭に飛び出す。
「行きますよぉ! ついて来て下さい!!」
木野さんの頼もしい言葉。
彼が最後のスプリント勝負の先陣を切ってくれるのだ。
そして辿り着いた最終コーナー。
木野さんが減速して、イン側のラインにヘルメットをねじ込んだ。
今までの直線の勢いを活かすなら、コーナリング速度が上げられるアウト側の方が有利なのではないだろうか?
わざわざ減速して、立ち上がりの負荷を上げるのは得策ではないと思ったが、コーナーを抜けて直ぐに分かった。
左からの横風が強い。
木野さんは横風を考慮して、海斗君を風よけに出来る、イン側のラインを選んだのか!
ゴール前最後の直線。
海斗君と横並びになる。
木野さん、利男、私の順で列車状に並び、スプリントトレインを形成する。
木野さんが全力で時速55kmまで上げた後、無言で脇に避けて失速する。
スプリントの持続力が短いから限界だったのだろう。
無言で後ろに消えていく……アシスト有難う木野さん。
続く利男が時速60kmまで加速する。
それと同時に、師匠が海斗君の前に出て同じく時速60kmまで上げた。
「そういう事かよ! 東尾!!」
利男も気付いたようだな。
私の勝利を万全にするなら、東尾師匠は私の後ろにつくべきだ。
そうすれば、海斗君が空気抵抗を減らす為に私達の後ろについても、彼は私と師匠の二人分後方からスプリントする事になる。
しかも師匠はスプリントしないから、間に師匠がいる見通しが悪い状況で、私がスプリントするタイミングに合わせる必要がある。
それを嫌って単独でスプリントした場合、アシストを受けた私より速度を上げるのは難しいだろう。
ライン取りの影響で横風も受けているのだから。
でも、師匠は海斗君の前を走る事を……海斗君のスプリントをアシストする事を選んだ。
最後は堂々と戦って勝てって事なのだな……師匠!!
徐々にゴールラインが近づいてくる。
残り200m。
「勝てよ! 俺達のエース!!」
利男が脇に避けたと同時に、師匠も脇に避けて私と海斗君の前が開ける。
海斗君、最後の勝負だ!
もうパワーデータも速度も見る必要はない。
全ての筋肉に意識を集中して、ただ速く走る事だけに専念するだけだ。
空に飛び立つように全力でペダルを踏み込む。
海に沈みこむ様に上体を伏せてロードバイクを抑え込む。
二つの力が拮抗して出来る水平線。
行くぞ! ホライズン!!
残りの全ての力を開放して行う最後のスプリントーー
「ディバイディング・スプリント・エース!!」
数値を見なくても分かる爆発的な加速。
後方に高速で流れゆく景色。
何もかもが背後に消えゆく高速域の世界で、隣を走る海斗君だけが姿を保っている。
だが、それも少しの時間だけだった。
私と海斗君の速度差が、彼を後方へ追いやる。
あっさり迎えたゴールライン。
これが、エースの力だ!!
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