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最終章 最強部長はロードレースでも最強を目指す
第98話 俺達も一緒
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敗北感に打ちひしがれながらも、第2集団内で頂上に辿り着いた。
「5分遅れ!」
ひまりちゃんの声だ!
たったの一言。私達に一番必要な情報を教えてくれた。
一瞬で通過する私達にも伝わる様に配慮してくれているのは有り難い事だ。
もう5分も差をつけられてしまったのか……
単独の勝負では致命的な差だ。
だが、集団であれば追いつけない差ではない。
諦めるには早い。
少しの希望を抱いて、下り区間に突入した。
得意な下り区間で少しでもタイム差を縮めたかったが、集団内では思ったように速度を出せない。
チームメンバーだけで突出しても、この後の平地区間で無駄に消耗するだけだから、今は我慢が必要だ。
単独で自由に下っている海斗君は、私達より速く下っているだろう。
この8kmの下り区間で5分の差がどれだけ開いてしまうのだろうか。
この状況も彼の計算通りか……
次の平地区間で追いつけばいいさ。
そう思いながら第2集団内で下り区間を走り終えた。
そして、33km平坦な区間に突入した。
ここで速度を上げて追いつきたかったが……集団の速度が上がらない?!
今までの平地区間より遅い時速36km前後で巡行している。
先頭のローテーションに加わっていた北見さんと南原さんが戻って来た。
「集団の速度を上げようとしたけどさぁ、他の選手が渋って無理だった」
「少し強めの横風が吹いているので、皆が体力を温存しようとしてます」
横風か……
残り72kmあるのだから、横風が吹いている場所で無理せず、体力を温存するのは当然だ。
勝負をするなら、次の最終山岳地帯かゴール前の平地区間だろう。
「体調不良ですか?」
面識がない隣を走っていた選手に声をかけられた。
私は知らない内に、心配をされるような情けない顔をしていたのか……
「いえ、今日のレースで勝負していた相手に逃げられてしまっただけなので心配ないです」
「ライバルに負けるのは悔しいですよね。今回は残念だけど、次のレースで頑張りましょうよ」
心配してくれるのは有難いな。
そうだな、絶対に勝つと決めて、出来る事は全てやり切ったのだ。
悔しいけど気持ちを切り替えないといけないな。
「そうはいかないんだ! 今日のレースで勝ってもらわんと困る!」
北見さんが大声を出した。
「北見さんの気持ちも分かるけど、今回は完敗だよ」
「いやいや、何とかするぞ南原君!」
「自分ですか?! さすがに無理です」
「北見さん、大声を出したら他の選手の迷惑だ」
「そうだぜ、大声を出しても追いつけないって」
「落ち着くですよぉ」
「何の騒ぎだ? 何で仲間割れしてる?」
近くを走っていたベテラン選手に問われた。
これだけ大騒ぎしていれば、注意されても当然だ。
私は騒いだ事を謝り、事情を話した。
私が海斗君と勝負している事。
勝負する事になった切っ掛け。
そして、勝つために準備してきた事をーー
「面白れぇな。その勝負俺も乗っかった!」
ベテラン選手が私達の勝負に参加する事を宣言した。
全く関係ないのに私達の勝負に加わるのか?
「オッサンの意地を見せてやりますよ!」
「そういう事情なら負けちゃダメだろ!」
「まだまだ若者に負けられないな!」
気が付いたら他の中年の選手達にも、私達の話が伝わっていた。
「あんたらのチーム『いつも一緒』っていうのかい?」
「はい」
「それなら、今日は『俺達も一緒』に変更だな。集団の速度を上げるぞ! エースを横風から守れ!」
ベテラン選手の号令で、横風から私を守る様に他の選手達が隊列を組む。
更に正面の空気抵抗を下げる為に、前方も選手が私を囲っている。
分厚い空気の壁から私を守る選手の壁が出来た。
速度もみるみる上がり時速50km近くで巡行を始めた。
この風が吹いている状況で、この速度が維持出来るのだろうか?
そう思った事は間違いではない。
先頭を走っていた選手達が、次々に分厚い空気の壁によって、集団から引きはがされていく……
「振り返るな!」
「前を向け! 見るべき相手を間違えるな!」
力尽きて集団から離れていく選手に視線を移した私を他の選手が叱咤する。
そう言われても……
彼ら自身だって、このレースの為にトレーニングしてきただろう。
それなのに、見知らぬ私の為にアシストしてレースを終えているのだ。
嬉しい気持ちと、申し訳ない気持ちが交差する。
「ご武運を!」
「中年の意地を見せてくれ!」
「負けるなよ!」
「勝てよ! 俺達中年のエース!」
その後も、次々と私に声をかけながら、アシストしてくれた選手達が脱落していった……
最終的に、長い平地区間を終えた時点でチームメンバーだけとなっていた。
本当に、この区間で全ての力を出し切ってくれたのだな……
皆のお陰で海斗君との距離を縮められて、彼の背中が見えている。
終わったと思った私達の勝負は、勝負にかける想いの力で辛うじてつながった。
皆がつなげてくれた。
ここから先の山岳地帯で遅れて離される訳にはいかない。
皆の努力を無駄にはしない、それがエースの務めだからだ!
「5分遅れ!」
ひまりちゃんの声だ!
たったの一言。私達に一番必要な情報を教えてくれた。
一瞬で通過する私達にも伝わる様に配慮してくれているのは有り難い事だ。
もう5分も差をつけられてしまったのか……
単独の勝負では致命的な差だ。
だが、集団であれば追いつけない差ではない。
諦めるには早い。
少しの希望を抱いて、下り区間に突入した。
得意な下り区間で少しでもタイム差を縮めたかったが、集団内では思ったように速度を出せない。
チームメンバーだけで突出しても、この後の平地区間で無駄に消耗するだけだから、今は我慢が必要だ。
単独で自由に下っている海斗君は、私達より速く下っているだろう。
この8kmの下り区間で5分の差がどれだけ開いてしまうのだろうか。
この状況も彼の計算通りか……
次の平地区間で追いつけばいいさ。
そう思いながら第2集団内で下り区間を走り終えた。
そして、33km平坦な区間に突入した。
ここで速度を上げて追いつきたかったが……集団の速度が上がらない?!
今までの平地区間より遅い時速36km前後で巡行している。
先頭のローテーションに加わっていた北見さんと南原さんが戻って来た。
「集団の速度を上げようとしたけどさぁ、他の選手が渋って無理だった」
「少し強めの横風が吹いているので、皆が体力を温存しようとしてます」
横風か……
残り72kmあるのだから、横風が吹いている場所で無理せず、体力を温存するのは当然だ。
勝負をするなら、次の最終山岳地帯かゴール前の平地区間だろう。
「体調不良ですか?」
面識がない隣を走っていた選手に声をかけられた。
私は知らない内に、心配をされるような情けない顔をしていたのか……
「いえ、今日のレースで勝負していた相手に逃げられてしまっただけなので心配ないです」
「ライバルに負けるのは悔しいですよね。今回は残念だけど、次のレースで頑張りましょうよ」
心配してくれるのは有難いな。
そうだな、絶対に勝つと決めて、出来る事は全てやり切ったのだ。
悔しいけど気持ちを切り替えないといけないな。
「そうはいかないんだ! 今日のレースで勝ってもらわんと困る!」
北見さんが大声を出した。
「北見さんの気持ちも分かるけど、今回は完敗だよ」
「いやいや、何とかするぞ南原君!」
「自分ですか?! さすがに無理です」
「北見さん、大声を出したら他の選手の迷惑だ」
「そうだぜ、大声を出しても追いつけないって」
「落ち着くですよぉ」
「何の騒ぎだ? 何で仲間割れしてる?」
近くを走っていたベテラン選手に問われた。
これだけ大騒ぎしていれば、注意されても当然だ。
私は騒いだ事を謝り、事情を話した。
私が海斗君と勝負している事。
勝負する事になった切っ掛け。
そして、勝つために準備してきた事をーー
「面白れぇな。その勝負俺も乗っかった!」
ベテラン選手が私達の勝負に参加する事を宣言した。
全く関係ないのに私達の勝負に加わるのか?
「オッサンの意地を見せてやりますよ!」
「そういう事情なら負けちゃダメだろ!」
「まだまだ若者に負けられないな!」
気が付いたら他の中年の選手達にも、私達の話が伝わっていた。
「あんたらのチーム『いつも一緒』っていうのかい?」
「はい」
「それなら、今日は『俺達も一緒』に変更だな。集団の速度を上げるぞ! エースを横風から守れ!」
ベテラン選手の号令で、横風から私を守る様に他の選手達が隊列を組む。
更に正面の空気抵抗を下げる為に、前方も選手が私を囲っている。
分厚い空気の壁から私を守る選手の壁が出来た。
速度もみるみる上がり時速50km近くで巡行を始めた。
この風が吹いている状況で、この速度が維持出来るのだろうか?
そう思った事は間違いではない。
先頭を走っていた選手達が、次々に分厚い空気の壁によって、集団から引きはがされていく……
「振り返るな!」
「前を向け! 見るべき相手を間違えるな!」
力尽きて集団から離れていく選手に視線を移した私を他の選手が叱咤する。
そう言われても……
彼ら自身だって、このレースの為にトレーニングしてきただろう。
それなのに、見知らぬ私の為にアシストしてレースを終えているのだ。
嬉しい気持ちと、申し訳ない気持ちが交差する。
「ご武運を!」
「中年の意地を見せてくれ!」
「負けるなよ!」
「勝てよ! 俺達中年のエース!」
その後も、次々と私に声をかけながら、アシストしてくれた選手達が脱落していった……
最終的に、長い平地区間を終えた時点でチームメンバーだけとなっていた。
本当に、この区間で全ての力を出し切ってくれたのだな……
皆のお陰で海斗君との距離を縮められて、彼の背中が見えている。
終わったと思った私達の勝負は、勝負にかける想いの力で辛うじてつながった。
皆がつなげてくれた。
ここから先の山岳地帯で遅れて離される訳にはいかない。
皆の努力を無駄にはしない、それがエースの務めだからだ!
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