61 / 101
5章 2年目の終わり。それは夢の終わり。
第61話 最後尾に並ぶ
しおりを挟む
東尾師匠直伝のスプリント練習を教えた木野さんが、パワーアップしたスプリントを試したいと言い出したのでレースに参加する事になった。
みんなで相談した結果、利男お勧めのクリテリウムに参加する事に決定した。
教えてもらったレースは、一辺が2kmの四角形をしたコースレイアウトだった。
一周で4回立ち上がりのアタックがかかるから、パワーアップしたスプリントを実践で使うのに適している。
しかも、立ち上がりの後に2kmの直線があるから激しいインターバルもかからない。
木野さんの実力なら、直線部分で休みながら先頭集団に残れるだろうとの理由だ。
ギタリストでポニーテールなのにホビーレースに参加している色物キャラなのに、真面目な意見だったから皆で驚いたな。
参加するのは私と木野さんと利男の3人。
珍しくみんな予定があったから応援メンバーも無しだ。
会場は県外だったので、私のミニバンに3人分のロードバイクを積み込みレース会場に向かった。
*
会場内は結構な人数がいるな。今日の参加は何人だったかな。
参加人数を確かめる為にスマホで検索する。
大会の公式ホームページからスタートリストをダウンロードして確認したら、約100名の名前が載っていた。
予想より多いな。
いつものクリテリウムはクラス分けしているから、1クラス20~30人で出走しているからな。
普段の5倍近い人数……人数だけならエンデューロレースに近いな。
集団の位置取りでレース展開が変りそうだな。
受付と検車を済ませてレース開始を待つ。
「レース前はワクワクしますね」
「おう、レースはパッションだよな」
「楽しみ過ぎて予定より早起きしちゃいましたよ」
「シッカリ目覚めてるじゃないか。今日は行けそうだな正!」
「いけますよ! 猛士さんに教えて頂いたスプリントがありますから」
改めて思うけど、木野さんと利男は何故か気が合うな。
おっとりした木野さんと派手な性格の利男だから、見た感じ違和感が凄いのだがな。
会話も噛み合っていない様に聞こえるけど、何故か通じ合うものがあるのだろう。
「猛士はオールレディか?」
利男に急に話を振られて焦る。
「あっ、ああ。大丈夫だ。二人は今日はどう走る予定だ?」
「俺は先頭を突っ切るぜ。目指せ優勝だ!」
「僕は先頭集団に残れれば良いかな。スプリントがパワーアップしたけど、ゴールスプリントで勝てる程のパワーはでないですから」
二人は先頭付近で頑張る様だな。
でも、私はーー
「私は最後尾を走る予定だ」
私の発言に二人が驚く。
「おいおい、それはないだろ! 折角参加するんだぜ。少しでも上の順位を目指そうぜ!」
「そうですよ。最近実力が上がってきているのに前を走らないのはもったいないですよ」
「立ち上がりはついていけそうだけど、直線部分の巡行がキツそうだからね。無理をしない様にしようと思ってね」
「直線がキツイならアシストするさ。俺の後ろを走れば少しは楽になるだろ?」
「そうですよ。巡行なら任せて下さいよ。チームで走りましょう!」
二人の申し出は有り難いな。
でも、今日は木野さんのスプリントを実践で試す為に参加しているのだ。
それに今日の3人だけでは、優勝狙いのチームプレイも難しいだろう。
「有り難いけど、今日は遠慮しておくよ。今日は木野さんが精一杯パワーアップしたスプリントを試すのが目的だろう? 利男も優勝目指して頑張って欲しい」
「それなら猛士さんはどうするのですか?」
「初めて走るレースだから、様子見しながら完走を目指すよ。速く走れもしないのに、自分勝手に先頭に並ぶ気にはなれなくてね。他の参加者にも迷惑かけたくないから。レース中は順位を争うライバルだけどさ、同じ趣味の仲間だからな」
実力がないのに中途半端に先頭付近を走れない。
私が遅れて中切れーー集団を二分してしまったら、後ろを走っている選手全員に迷惑をかける。
遅れた全員が先頭集団を追うのに無駄な力を使う事になるだろうし、場合によっては勝負が決してしまう可能性もある。
自分が少しでも前にいたいからって、自分勝手な走りをするのはカッコ悪い。
一緒に走るのは知り合いではないけれど、ロードレースという特殊な趣味を共有する仲間なんだからな。
「猛士の言う通りだな。ロードバイクに乗ってるだけで珍しいのに、レースに参加する人は殆どいないからな。レース会場で会うのは、毎回同じ顔触れのお仲間さんだ」
「そうですね。そう言われると、自分達の順位ばかり気にする訳にはいかないですねぇ」
「今日は後ろで走っているけど、先頭からドロップアウトしたらアシストするさ」
「それはねぇよ」
「僕はお願いしようかな」
3人で笑い合っていると、参加選手の集合時間になった。
木野さんと利男は先頭付近に並んだが、私は選手集団の最後尾にならんだ。
さて、レース開始だ!
みんなで相談した結果、利男お勧めのクリテリウムに参加する事に決定した。
教えてもらったレースは、一辺が2kmの四角形をしたコースレイアウトだった。
一周で4回立ち上がりのアタックがかかるから、パワーアップしたスプリントを実践で使うのに適している。
しかも、立ち上がりの後に2kmの直線があるから激しいインターバルもかからない。
木野さんの実力なら、直線部分で休みながら先頭集団に残れるだろうとの理由だ。
ギタリストでポニーテールなのにホビーレースに参加している色物キャラなのに、真面目な意見だったから皆で驚いたな。
参加するのは私と木野さんと利男の3人。
珍しくみんな予定があったから応援メンバーも無しだ。
会場は県外だったので、私のミニバンに3人分のロードバイクを積み込みレース会場に向かった。
*
会場内は結構な人数がいるな。今日の参加は何人だったかな。
参加人数を確かめる為にスマホで検索する。
大会の公式ホームページからスタートリストをダウンロードして確認したら、約100名の名前が載っていた。
予想より多いな。
いつものクリテリウムはクラス分けしているから、1クラス20~30人で出走しているからな。
普段の5倍近い人数……人数だけならエンデューロレースに近いな。
集団の位置取りでレース展開が変りそうだな。
受付と検車を済ませてレース開始を待つ。
「レース前はワクワクしますね」
「おう、レースはパッションだよな」
「楽しみ過ぎて予定より早起きしちゃいましたよ」
「シッカリ目覚めてるじゃないか。今日は行けそうだな正!」
「いけますよ! 猛士さんに教えて頂いたスプリントがありますから」
改めて思うけど、木野さんと利男は何故か気が合うな。
おっとりした木野さんと派手な性格の利男だから、見た感じ違和感が凄いのだがな。
会話も噛み合っていない様に聞こえるけど、何故か通じ合うものがあるのだろう。
「猛士はオールレディか?」
利男に急に話を振られて焦る。
「あっ、ああ。大丈夫だ。二人は今日はどう走る予定だ?」
「俺は先頭を突っ切るぜ。目指せ優勝だ!」
「僕は先頭集団に残れれば良いかな。スプリントがパワーアップしたけど、ゴールスプリントで勝てる程のパワーはでないですから」
二人は先頭付近で頑張る様だな。
でも、私はーー
「私は最後尾を走る予定だ」
私の発言に二人が驚く。
「おいおい、それはないだろ! 折角参加するんだぜ。少しでも上の順位を目指そうぜ!」
「そうですよ。最近実力が上がってきているのに前を走らないのはもったいないですよ」
「立ち上がりはついていけそうだけど、直線部分の巡行がキツそうだからね。無理をしない様にしようと思ってね」
「直線がキツイならアシストするさ。俺の後ろを走れば少しは楽になるだろ?」
「そうですよ。巡行なら任せて下さいよ。チームで走りましょう!」
二人の申し出は有り難いな。
でも、今日は木野さんのスプリントを実践で試す為に参加しているのだ。
それに今日の3人だけでは、優勝狙いのチームプレイも難しいだろう。
「有り難いけど、今日は遠慮しておくよ。今日は木野さんが精一杯パワーアップしたスプリントを試すのが目的だろう? 利男も優勝目指して頑張って欲しい」
「それなら猛士さんはどうするのですか?」
「初めて走るレースだから、様子見しながら完走を目指すよ。速く走れもしないのに、自分勝手に先頭に並ぶ気にはなれなくてね。他の参加者にも迷惑かけたくないから。レース中は順位を争うライバルだけどさ、同じ趣味の仲間だからな」
実力がないのに中途半端に先頭付近を走れない。
私が遅れて中切れーー集団を二分してしまったら、後ろを走っている選手全員に迷惑をかける。
遅れた全員が先頭集団を追うのに無駄な力を使う事になるだろうし、場合によっては勝負が決してしまう可能性もある。
自分が少しでも前にいたいからって、自分勝手な走りをするのはカッコ悪い。
一緒に走るのは知り合いではないけれど、ロードレースという特殊な趣味を共有する仲間なんだからな。
「猛士の言う通りだな。ロードバイクに乗ってるだけで珍しいのに、レースに参加する人は殆どいないからな。レース会場で会うのは、毎回同じ顔触れのお仲間さんだ」
「そうですね。そう言われると、自分達の順位ばかり気にする訳にはいかないですねぇ」
「今日は後ろで走っているけど、先頭からドロップアウトしたらアシストするさ」
「それはねぇよ」
「僕はお願いしようかな」
3人で笑い合っていると、参加選手の集合時間になった。
木野さんと利男は先頭付近に並んだが、私は選手集団の最後尾にならんだ。
さて、レース開始だ!
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
8年間未来人石原くん。
七部(ななべ)
青春
しがない中学2年生の石原 謙太郎(いしはら けんたろう)に、一通の手紙が机の上に届く。
「苗村と付き合ってくれ!頼む、今しかないんだ!」
と。8年後の未来の、22歳の自分が、今の、14歳の自分宛に。苗村 鈴(なえむら すず)
これは、石原の8年間の恋愛のキャンバスのごく一部分の物語。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
【完結】偽りの告白とオレとキミの十日間リフレイン
カムナ リオ
青春
八神斗哉は、友人との悪ふざけで罰ゲームを実行することになる。内容を決めるカードを二枚引くと、そこには『クラスの女子に告白する』、『キスをする』と書かれており、地味で冴えないクラスメイト・如月心乃香に嘘告白を仕掛けることが決まる。
自分より格下だから彼女には何をしても許されると八神は思っていたが、徐々に距離が縮まり……重なる事のなかった二人の運命と不思議が交差する。不器用で残酷な青春タイムリープラブ。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
僕は 彼女の彼氏のはずなんだ
すんのはじめ
青春
昔、つぶれていった父のレストランを復活させるために その娘は
僕等4人の仲好しグループは同じ小学校を出て、中学校も同じで、地域では有名な進学高校を目指していた。中でも、中道美鈴には特別な想いがあったが、中学を卒業する時、彼女の消息が突然消えてしまった。僕は、彼女のことを忘れることが出来なくて、大学3年になって、ようやく探し出せた。それからの彼女は、高校進学を犠牲にしてまでも、昔、つぶされた様な形になった父のレストランを復活させるため、その思いを秘め、色々と奮闘してゆく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる