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4章 2年目の中年レーサー
第44話 新メンバーを任せる
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私はひまりちゃんの後に続き、最後尾で上り切った。
最後にスプリントすれば追い抜く事も可能だったが、大人げないので止めた。
峠の頂上では西野、北見さん、南原さん、木野さんの4人が談笑しながら待っていた。
「少しは速くなったかしら?」
「お陰様でな」
「誰のお陰様?」
「ノノに決まっているだろう?」
西野といつも通り言葉を交わす。
「お二人は仲が良いのですねっ。結婚されて……苗字が違うから、お付き合いされているのかなっ?」
ひまりちゃんが爆弾発言をする。
いきなり中年男性と付き合っていると言われれば、西野だって機嫌を悪くするだろう。
西野は28才の若い女性なんだ。
「付き合っているというのは誤解だよ。仲が良いのは本当だけどね。変な事を言ったらノノに迷惑がかかるだろう? 好きな人がいたらどうするのだ?」
ほら、西野の顔がみるみる不愉快な表情になっていくではないか。
「ふーん、そういう猛士は好きな人いるの?」
「いないな。私は仕事で戦うのが生きがいだったからな。今はホビーレースで戦うのが生きがいかな。人生を支えてくれる相手を恋人と呼ぶなら、愛車が今の私の恋人って事になるかな」
そういって愛車を眺めた。
惚れ惚れする程に深い深海の様な青色。
圧倒的な空力性能で私のスプリントを支えるディープリムホイール。
ホビーレースを主戦場とする私にとって、これ以上の相棒はいないだろう。
「分かりますよ。その気持ち! 僕も愛車を大切にしていますからねぇ」
「だろう? 乗り込めば乗り込む程、フレームの特性を理解出来て、速く走れるペダリングが身につくんだ」
「そうそう、乗り込むと足に馴染んでくるんですよねぇ」
「それだよ。サイコンに表示されているパワーは変わらないのに、何故か速く進む感覚があるんだ」
「パワーを測定しているのはクランク部だから同じパワーが表示されるけど、実際に駆動部に伝わる力が変わっているのかもしれないですねぇ」
「考えると沼に嵌って時間が足りなくなるのだよ」
「うん、時間が溶けるような感じですよねぇ。でも理論より感覚を重視したい気持ちがあるんだよねぇ」
「分かる! スプリント程じゃないけど体を動かすのは心! 気持ち良く体を動かす感覚は大切だよな」
話が逸れてしまったが、木野さんと熱く語ってしまったな。
私の主戦場である、平地のレースに参戦していて、実力が近い木野さんとは気が合うのだ。
西野とひまりちゃんと南原さんは冷めた目で見ている……北見さんまで飽きれた顔をしているではないか。
「お前らなぁ、こんな若い子目の前にして、何で二人で盛り上がっているんだよ」
私は木野さんと顔を合わせた後、二人で北見さんに向かって言った。
「「ロードバイクの話です」」
北見さんが頭を抱えた。
「あぁーっ。分かったそれで今後の活動の事だけど、どうするよ。新メンバーも増えた事だし考えようや」
北見さんに問われる迄もなく、既に活動は決まっている。
先ずは私と木野さんのクリテリウムを主戦場とした平地のレースへの参戦。
次に去年は参加しなかった西野、木野さんのヒルクライムレースの応援。
そして、ひまりちゃんの事なら最初から決まっている。
「自己紹介の時も言ったけど、ひまりちゃんの事は南原さんに任せるよ」
「猛士さん、私を避けてますか?」
ひたすら南原さんに任せると言い続けたから、ひまりちゃんに誤解をさせてしまったか。
別にひまりちゃんを南原さんに押し付けたい訳ではない。
「そうではないよ。南原さんはひまりちゃんと同じ大学生だから予定が合いやすいと思ったからだよ。参加したいレースがあれば応援するし、私達のレースの応援に来てくれても嬉しいと思っている」
半分本当の事だから、こう言えばひまりちゃんも納得するだろうか。
実際は南原さんに任せた本当の理由は他にあるけど、ここでわざわざ言う必要もないだろう。
趣味に没頭していると忘れかけるが、部下を何人も管理している部長という立場なのだ。
ひまりちゃんの様な女性の部下だっている。だから……
「そうですかぁ。それじゃ、堅司さん宜しくね」
挨拶されてデレデレしている南原さん。
南原さんの緩んだ態度で少し不安を感じたが、彼ならひまりちゃんの問題を解決出来るだろう。
一安心して西野の方を見ると、真剣な目で私を見つめ返された。
「ノノ?」
「今度は何を背負ったのよ?」
何を背負ったか……西野には感づかれたかな。
だが、他のメンバーに知られたくないので誤魔化す。
「まだ減り切らない体脂肪かな。後でダイエットに付き合ってもらえるかな?」
「シッカリ痩せるまで峠を周回させるわよ」
「それはキツイ。甘いものが食べたくなる」
「甘えては駄目よ!」
いつもの西野との漫才で笑った後、皆で下山して別れた。
帰宅後、西野と連絡を取った。
そして、ひまりちゃんについて思っている事を全て打ち明けた。
最終的に西野も私を応援してくれる事になった。
『猛士はお節介ね』の一言と共にーー
最後にスプリントすれば追い抜く事も可能だったが、大人げないので止めた。
峠の頂上では西野、北見さん、南原さん、木野さんの4人が談笑しながら待っていた。
「少しは速くなったかしら?」
「お陰様でな」
「誰のお陰様?」
「ノノに決まっているだろう?」
西野といつも通り言葉を交わす。
「お二人は仲が良いのですねっ。結婚されて……苗字が違うから、お付き合いされているのかなっ?」
ひまりちゃんが爆弾発言をする。
いきなり中年男性と付き合っていると言われれば、西野だって機嫌を悪くするだろう。
西野は28才の若い女性なんだ。
「付き合っているというのは誤解だよ。仲が良いのは本当だけどね。変な事を言ったらノノに迷惑がかかるだろう? 好きな人がいたらどうするのだ?」
ほら、西野の顔がみるみる不愉快な表情になっていくではないか。
「ふーん、そういう猛士は好きな人いるの?」
「いないな。私は仕事で戦うのが生きがいだったからな。今はホビーレースで戦うのが生きがいかな。人生を支えてくれる相手を恋人と呼ぶなら、愛車が今の私の恋人って事になるかな」
そういって愛車を眺めた。
惚れ惚れする程に深い深海の様な青色。
圧倒的な空力性能で私のスプリントを支えるディープリムホイール。
ホビーレースを主戦場とする私にとって、これ以上の相棒はいないだろう。
「分かりますよ。その気持ち! 僕も愛車を大切にしていますからねぇ」
「だろう? 乗り込めば乗り込む程、フレームの特性を理解出来て、速く走れるペダリングが身につくんだ」
「そうそう、乗り込むと足に馴染んでくるんですよねぇ」
「それだよ。サイコンに表示されているパワーは変わらないのに、何故か速く進む感覚があるんだ」
「パワーを測定しているのはクランク部だから同じパワーが表示されるけど、実際に駆動部に伝わる力が変わっているのかもしれないですねぇ」
「考えると沼に嵌って時間が足りなくなるのだよ」
「うん、時間が溶けるような感じですよねぇ。でも理論より感覚を重視したい気持ちがあるんだよねぇ」
「分かる! スプリント程じゃないけど体を動かすのは心! 気持ち良く体を動かす感覚は大切だよな」
話が逸れてしまったが、木野さんと熱く語ってしまったな。
私の主戦場である、平地のレースに参戦していて、実力が近い木野さんとは気が合うのだ。
西野とひまりちゃんと南原さんは冷めた目で見ている……北見さんまで飽きれた顔をしているではないか。
「お前らなぁ、こんな若い子目の前にして、何で二人で盛り上がっているんだよ」
私は木野さんと顔を合わせた後、二人で北見さんに向かって言った。
「「ロードバイクの話です」」
北見さんが頭を抱えた。
「あぁーっ。分かったそれで今後の活動の事だけど、どうするよ。新メンバーも増えた事だし考えようや」
北見さんに問われる迄もなく、既に活動は決まっている。
先ずは私と木野さんのクリテリウムを主戦場とした平地のレースへの参戦。
次に去年は参加しなかった西野、木野さんのヒルクライムレースの応援。
そして、ひまりちゃんの事なら最初から決まっている。
「自己紹介の時も言ったけど、ひまりちゃんの事は南原さんに任せるよ」
「猛士さん、私を避けてますか?」
ひたすら南原さんに任せると言い続けたから、ひまりちゃんに誤解をさせてしまったか。
別にひまりちゃんを南原さんに押し付けたい訳ではない。
「そうではないよ。南原さんはひまりちゃんと同じ大学生だから予定が合いやすいと思ったからだよ。参加したいレースがあれば応援するし、私達のレースの応援に来てくれても嬉しいと思っている」
半分本当の事だから、こう言えばひまりちゃんも納得するだろうか。
実際は南原さんに任せた本当の理由は他にあるけど、ここでわざわざ言う必要もないだろう。
趣味に没頭していると忘れかけるが、部下を何人も管理している部長という立場なのだ。
ひまりちゃんの様な女性の部下だっている。だから……
「そうですかぁ。それじゃ、堅司さん宜しくね」
挨拶されてデレデレしている南原さん。
南原さんの緩んだ態度で少し不安を感じたが、彼ならひまりちゃんの問題を解決出来るだろう。
一安心して西野の方を見ると、真剣な目で私を見つめ返された。
「ノノ?」
「今度は何を背負ったのよ?」
何を背負ったか……西野には感づかれたかな。
だが、他のメンバーに知られたくないので誤魔化す。
「まだ減り切らない体脂肪かな。後でダイエットに付き合ってもらえるかな?」
「シッカリ痩せるまで峠を周回させるわよ」
「それはキツイ。甘いものが食べたくなる」
「甘えては駄目よ!」
いつもの西野との漫才で笑った後、皆で下山して別れた。
帰宅後、西野と連絡を取った。
そして、ひまりちゃんについて思っている事を全て打ち明けた。
最終的に西野も私を応援してくれる事になった。
『猛士はお節介ね』の一言と共にーー
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