20 / 101
2章 進化する中年レーサー
第20話 初参戦! エンデューロレース
しおりを挟む
今日はエンデューロに参加する日だ。
今回のコースレイアウトは長辺2km、短辺50mの長方形で一周約5kmになる。
コースが長方形なのはレース会場が道路が碁盤目状の工業地帯だからだ。
会場に着き、受付を済ませて仲間達との待ち合わせ場所に向かった。
レースは初めてではないが、いつも以上に緊張している。
何故なら今回参加するエンデューロはクラス分けはあるが、全部のクラスが同時に走行するからだ。
実力が遥かに上の東尾師匠達と同時に走行するのはどうしても緊張する。
待ち合わせ場所で西野を見つけて安心する。
40才の私が28才の知り合い女性を見つけて安心するというのも恥ずかしい話だが。
今回一緒に参加する知り合いは西野と東尾師匠と南原さん、そして初対面の北見さんだ。
「おはようノノ。南原さんもお久しぶりです」
「おはよう猛士」
「おはようございます中杉さん」
東尾師匠は他のチームの知り合いと話しているので、私は西野と南原さんの二人と挨拶を交わした。
そしてーー
「君が中杉君かい。私が北見だ」
北見さんは私より年上に見える。年齢は50才近いだろうか。
「初めまして中杉猛士です」
「協力して優勝目指さないか?」
いきなりではあるが、協力を要求されるのは頼りにされている様で嬉しい。
だが、優勝は流石に無理だろう。本当は自分も協力して走行出来れば良いのだが、実力がかけ離れているから仕方がない。
「猛士は私と走る予定だから御免なさいね。始めたばかりで完走がやっとだと思うから」
返答を迷っている私の代わりに西野が返答した。
少し恥ずかしさを感じるが事実だからな。
「残念ながら協力するだけの実力がないです」
「そうかい、40才なりたてなら40才オーバークラスで優勝の可能性が高いと思ったのだがな」
「それなら自分がサポートしますよ。優勝は難しいので」
「宜しく頼むよ南原君」
私の代わりに南原さんがサポートを申し出た。
耐久レースだからタイムトライアルスペシャリストの南原さんも優勝の可能性があると思ったのだけど。
「何故南原さんの優勝は難しいのですか? 高速巡行で勝てそうに思えるのですが」
「高速巡行で逃げようとしても、後ろに付かれたら逃げ切れない。スプリントが苦手だからゴール前で負けると思うよ」
「その点、私は南原君と一緒に先頭集団にいるだけで優勝出来るからな。他の40才オーバークラスの参加者より前にいれば良いだけなのでね」
北見さんは先頭集団で走行する予定なのか……私よりだいぶ年上なのに先頭でレースする仲間がいると元気が出る。まだまだ自分も成長を続けられるのだと。
コースインの時間となり、選手達がスタート地点で続々と整列を始める。
今日のレースは3時間走行して、どれだけ周回出来るかを競うルールだ。
優勝を狙う東尾師匠、北見さん、南原さんは先頭に並びに行ったが、完走目的の私と西野は邪魔にならないように先頭集団を避けて後ろの方に並んだ。
初めて参加するレースであり、同時に200人以上も走るから気をつけなければ。
落車して他の参加者を巻き込んだら大変だからな。
参加人数が多いから、いつものクリテリウム以上に密集して走行する事になるし、レベルが違う相手が同時に走行するからより気を付ける必要がある。
いよいよレース開始時間になり一斉にスタートした。
「走行ラインを変えると後続の選手と接触するから。走行ラインを維持して真っすぐ走って」
「分かったよ。他に注意点あるか?」
「遅い選手は左側キープ。追い抜きする時は右側ね。後は声出しが重要ね」
「声出し? 何を言うのか?」
西野が答える前に前方から声が聞こえた。
「「「「ブレーキ!」」」」
コーナーに差し掛かった所で、前を走っている選手達が次々に「ブレーキ」と注意喚起する。私と西野も続いて「ブレーキ」と言った。
そういう事か……先が見通せない程に選手が密集しているから、事前に声をかけて後続の選手にブレーキを促さないと、ブレーキが間に合わないで追突する可能性があるのだな。
落下物や路面状態が悪いところを通過する度に次々声が上がる。
ガシャン! 前方で大きな音がした。
「「「「落車!」」」」
4列で走っていた前の選手達が左に寄り2列になっていく。
「落車! 減速してゆっくり左に寄って」
西野に言われた通り、速度を落としながら左に寄った。
走行ラインを維持するのが基本だが落車した選手を避ける時は別なのか。
大事なのはハンドサインでは無く、声で直接後続の選手に伝える事か。
ハンドサインで手放しをしたら危険だから当然の事だがな。
2列になり30m程走行すると、落車して絡まったロードバイクを立て直す選手達が見えた。
20人程いたから最初に落車した人が、他の選手を巻き込んでしまったのだろう。
大きなケガは無いようだが少し心配だな。
「助けなくて大丈夫なのか?」
「下手に止まると後続の走行妨害になるから通過して。それにスタッフがいるから大丈夫よ」
「分かった」
3時間のレースなのに、開始10分でいきなり大規模な落車が起きたので面食らってしまった。
上りもヘアピンコーナーも無い簡単なコースレイアウトでも落車は起きるのか。
完走目的で3時間走行するだけでも気を緩めると危険だな。
今回のコースレイアウトは長辺2km、短辺50mの長方形で一周約5kmになる。
コースが長方形なのはレース会場が道路が碁盤目状の工業地帯だからだ。
会場に着き、受付を済ませて仲間達との待ち合わせ場所に向かった。
レースは初めてではないが、いつも以上に緊張している。
何故なら今回参加するエンデューロはクラス分けはあるが、全部のクラスが同時に走行するからだ。
実力が遥かに上の東尾師匠達と同時に走行するのはどうしても緊張する。
待ち合わせ場所で西野を見つけて安心する。
40才の私が28才の知り合い女性を見つけて安心するというのも恥ずかしい話だが。
今回一緒に参加する知り合いは西野と東尾師匠と南原さん、そして初対面の北見さんだ。
「おはようノノ。南原さんもお久しぶりです」
「おはよう猛士」
「おはようございます中杉さん」
東尾師匠は他のチームの知り合いと話しているので、私は西野と南原さんの二人と挨拶を交わした。
そしてーー
「君が中杉君かい。私が北見だ」
北見さんは私より年上に見える。年齢は50才近いだろうか。
「初めまして中杉猛士です」
「協力して優勝目指さないか?」
いきなりではあるが、協力を要求されるのは頼りにされている様で嬉しい。
だが、優勝は流石に無理だろう。本当は自分も協力して走行出来れば良いのだが、実力がかけ離れているから仕方がない。
「猛士は私と走る予定だから御免なさいね。始めたばかりで完走がやっとだと思うから」
返答を迷っている私の代わりに西野が返答した。
少し恥ずかしさを感じるが事実だからな。
「残念ながら協力するだけの実力がないです」
「そうかい、40才なりたてなら40才オーバークラスで優勝の可能性が高いと思ったのだがな」
「それなら自分がサポートしますよ。優勝は難しいので」
「宜しく頼むよ南原君」
私の代わりに南原さんがサポートを申し出た。
耐久レースだからタイムトライアルスペシャリストの南原さんも優勝の可能性があると思ったのだけど。
「何故南原さんの優勝は難しいのですか? 高速巡行で勝てそうに思えるのですが」
「高速巡行で逃げようとしても、後ろに付かれたら逃げ切れない。スプリントが苦手だからゴール前で負けると思うよ」
「その点、私は南原君と一緒に先頭集団にいるだけで優勝出来るからな。他の40才オーバークラスの参加者より前にいれば良いだけなのでね」
北見さんは先頭集団で走行する予定なのか……私よりだいぶ年上なのに先頭でレースする仲間がいると元気が出る。まだまだ自分も成長を続けられるのだと。
コースインの時間となり、選手達がスタート地点で続々と整列を始める。
今日のレースは3時間走行して、どれだけ周回出来るかを競うルールだ。
優勝を狙う東尾師匠、北見さん、南原さんは先頭に並びに行ったが、完走目的の私と西野は邪魔にならないように先頭集団を避けて後ろの方に並んだ。
初めて参加するレースであり、同時に200人以上も走るから気をつけなければ。
落車して他の参加者を巻き込んだら大変だからな。
参加人数が多いから、いつものクリテリウム以上に密集して走行する事になるし、レベルが違う相手が同時に走行するからより気を付ける必要がある。
いよいよレース開始時間になり一斉にスタートした。
「走行ラインを変えると後続の選手と接触するから。走行ラインを維持して真っすぐ走って」
「分かったよ。他に注意点あるか?」
「遅い選手は左側キープ。追い抜きする時は右側ね。後は声出しが重要ね」
「声出し? 何を言うのか?」
西野が答える前に前方から声が聞こえた。
「「「「ブレーキ!」」」」
コーナーに差し掛かった所で、前を走っている選手達が次々に「ブレーキ」と注意喚起する。私と西野も続いて「ブレーキ」と言った。
そういう事か……先が見通せない程に選手が密集しているから、事前に声をかけて後続の選手にブレーキを促さないと、ブレーキが間に合わないで追突する可能性があるのだな。
落下物や路面状態が悪いところを通過する度に次々声が上がる。
ガシャン! 前方で大きな音がした。
「「「「落車!」」」」
4列で走っていた前の選手達が左に寄り2列になっていく。
「落車! 減速してゆっくり左に寄って」
西野に言われた通り、速度を落としながら左に寄った。
走行ラインを維持するのが基本だが落車した選手を避ける時は別なのか。
大事なのはハンドサインでは無く、声で直接後続の選手に伝える事か。
ハンドサインで手放しをしたら危険だから当然の事だがな。
2列になり30m程走行すると、落車して絡まったロードバイクを立て直す選手達が見えた。
20人程いたから最初に落車した人が、他の選手を巻き込んでしまったのだろう。
大きなケガは無いようだが少し心配だな。
「助けなくて大丈夫なのか?」
「下手に止まると後続の走行妨害になるから通過して。それにスタッフがいるから大丈夫よ」
「分かった」
3時間のレースなのに、開始10分でいきなり大規模な落車が起きたので面食らってしまった。
上りもヘアピンコーナーも無い簡単なコースレイアウトでも落車は起きるのか。
完走目的で3時間走行するだけでも気を緩めると危険だな。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる