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プロローグ
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魔術師と竜の国。ベルス王国では齢八つになる純血の魔術師の第一王女とその側近である齢五つの竜人の婚約式が行われていた。
ベルス王国の第一王女・ティア・ベルスフォードは普段はおろしている艶やかで豊かな深紅色の髪をまとめ上げ、透き通る飴色の瞳を際立たせるよう薄く化粧を施された。
まるで公務のような雰囲気に緊張しながら、厳粛な雰囲気の宮殿で儀式用のドレスに身を包み、婚約者の登場に胸を高鳴らせる。
――王女様。どうかお受け取りください。
ティアは婚約者から恭しく差し出された漆黒のベールを受け取る。
豪奢で精密な刺繍が施されたベールは満天の星空のようにキラキラと輝く。
婚約者から贈られるベールは言わずもがな婚約の証しだ。
特に竜人からの場合、自らの鱗を特別な製法で紡ぎ一枚のレースにする。
鱗の美しさはもちろん、その竜の気持ちが表れるというベールがこれほど見事に仕上がっているのはこの婚約に真摯に向き合ってくれた証拠だ。
ティアはそれをぎゅっと抱きしめると、跪く婚約者・クロード・フォンに抱きついた。
「嬉しい! 私たち本当に夫婦になれるのね!」
ここが神聖な式場ということも、婚約儀式の最中だということもお構いなしのティアの行動に母である王妃は頭を抱え、娘に甘い父である王は目尻を下げて笑う。
婚約者とはいえ、現時点でクロードにとってティアは絶対的な主だ。それに変わりはない。
クロードはまだ小さな手をその華奢な背中にまわしたい気持ちを堪えた。
おてんばであるが、純粋で素直な婚約者を護り、支えるため理性を前面に出して一歩引き、お辞儀をする。
その行動は、ティアが『主の立場である自分の一方的な気持ちで婚約させてしまった』と認識するのに十分だった。
魔術師と竜の古くからの主従関係を理解しながらも、竜を婚約者に選んだティアにとってクロードの意思を理解するのにはまだ幼すぎたのだった。
ベルス王国の第一王女・ティア・ベルスフォードは普段はおろしている艶やかで豊かな深紅色の髪をまとめ上げ、透き通る飴色の瞳を際立たせるよう薄く化粧を施された。
まるで公務のような雰囲気に緊張しながら、厳粛な雰囲気の宮殿で儀式用のドレスに身を包み、婚約者の登場に胸を高鳴らせる。
――王女様。どうかお受け取りください。
ティアは婚約者から恭しく差し出された漆黒のベールを受け取る。
豪奢で精密な刺繍が施されたベールは満天の星空のようにキラキラと輝く。
婚約者から贈られるベールは言わずもがな婚約の証しだ。
特に竜人からの場合、自らの鱗を特別な製法で紡ぎ一枚のレースにする。
鱗の美しさはもちろん、その竜の気持ちが表れるというベールがこれほど見事に仕上がっているのはこの婚約に真摯に向き合ってくれた証拠だ。
ティアはそれをぎゅっと抱きしめると、跪く婚約者・クロード・フォンに抱きついた。
「嬉しい! 私たち本当に夫婦になれるのね!」
ここが神聖な式場ということも、婚約儀式の最中だということもお構いなしのティアの行動に母である王妃は頭を抱え、娘に甘い父である王は目尻を下げて笑う。
婚約者とはいえ、現時点でクロードにとってティアは絶対的な主だ。それに変わりはない。
クロードはまだ小さな手をその華奢な背中にまわしたい気持ちを堪えた。
おてんばであるが、純粋で素直な婚約者を護り、支えるため理性を前面に出して一歩引き、お辞儀をする。
その行動は、ティアが『主の立場である自分の一方的な気持ちで婚約させてしまった』と認識するのに十分だった。
魔術師と竜の古くからの主従関係を理解しながらも、竜を婚約者に選んだティアにとってクロードの意思を理解するのにはまだ幼すぎたのだった。
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