2 / 5
2 『生』は隠語です!
しおりを挟む
『さあ、いらっしゃい! いい酒が入ったよ! 寄ってて!』
夕暮れの空の下、キラキラ光るランタンがふわふわ浮いて活気ある声が響いている。みんなファンタジーゲームに登場するような服を着ているし、おとぎ話みたいな光景だなぁ、なんて呑気に思う。ここから帰るための手段とか、え、もしかして私本当に死んだ?とか、今更どうしよう、なんて悩み始めちゃったわけで。
『そこのお姉さん! 今ならビール半額ですよ!』
半額……?
無意識に足が止まる。そういえばここも結構暑い。
『しかもグラスキンッキンに冷えてますよ! 今ならサービスでグリーム豆がつきます!』
グリーム? よく分からないけど豆ならさすがに喉にも詰まらないだろうし、喉がごきゅっ、と鳴った。
ようやく、ようやくありつける……!!
『1名様ッ! ご来店でーす!!!』
『らっしゃせーー!!!』
席に通されてそこからはもう、最高で。
「はーーーー!!これよ、これ!!!」
サービスのグリーム豆?は茹で具合が最高の枝豆だし、なによりビール!これがまた最高に美味しい!喉越しは芸術だし苦味も程よくて香りもいい。なによりグラスがキンッキン!それに片手じゃ持てないほどデカい!
全てが美味、全てが最高。
――でも、生って感じじゃない。どちらかというと瓶ビールに近い爽やかさというか……ラムっぽい芳醇さというか。
とにかく、私が欲しくてほしくて堪らなかったあの激安居酒屋で飲めるビールではない。欲を言うならあの空きっ腹に響く安心感がほしい。
「すみませーん! 生ってありますか?」
空になったグラスを掲げて言うと『えっ!?』とまわりがザワついた。
え? なんで? 私そんなに変なこと言った??
慌てた様子で出てきた店員さんが声を潜めて耳打ちしてきた。思わず耳を澄ませる。
なに、なんなの?
『あ、あの……本当に生でいいんですか……?』
「えっ、はい……あ、もしかしてもの凄く高い、とか?」
異世界だから有り得るかも、と今更ながらにちょっと後悔する。
『とんでもない! 聖女様がお相手だなんて……寧ろお代はこちらから払わせていただきますので!』
ええ、どういうシステム????
せいじょ……性女……あっ聖女か。聖女ってもしかしてこの国ではお得システムかなにかなのだろうか。
顔パスで飲み放題的な。神様仏様、ありがとうございます。
お得とか無料に弱い私は反射神経で「お願いします」と即答していた。
すると恭しく、そしてどこかたどたどしい店員さんに「ではご案内します」と通されたのは二階の個室だった。
広さはないけれど清潔感があってふかふかの高級ベッドみたいなソファー席を雰囲気のあるキャンドルが照らしている。
例えるならリゾートスパだ。サービスの良さに思わず緊張しかけたが、ほろ酔いの体は蕩けるようにソファーに吸い込まれた。見たとおりふわっふわ。寝ちゃいそう。
生注文しただけでこの好待遇。異世界最高。
「はぁ……最高……ここで生飲めるとか社畜の涙で泳げるって……」
『では、失礼します……!』
「え???」
部屋のドアが閉められて、なぜか彼が失礼したのは私のスカートの中だった。そんなことある???
「やっ、なにしてっ、はぁっ、んっんっ」
んっ、じゃないよ。なにやってるの私。そう思ってるのにほろ酔いの一歩手前の敏感になったところに、突然気持ちいのが与えられて、拒絶が遠のいてしまう。やわやわと下着の上から指が捏ね回すように動いて、続けていいかとお膳立てをする。
『敏感なんですね……そろそろ『生』いかせていただきますね!』
はぁ、と息がかかってびくりと腰が跳ねてしまう。拒否しないことを改めて確認するとじっとり濡れた下着に指がかけられる。
だって彼氏なんてもう何年もいないし、なんなら仕事と俺どっちが大事?とか言われて振られたし、セックスはお前感度悪すぎとか言われて散々だったし、こんなの抗えない。なんでこうなったとは思うけど、あっ、むり。きもちいい。
「やっ……だめっ、もっ……」
軽く擦られてるだけなのに、じわじわ登り詰めてイキそうになる。つま先にぎゅっ、と力を入れたその瞬間。
「こらこら。いけませんよ、他の人でイッてしまっては」
甘い声に耳を擽られたと思ったら唇を塞がれた。
スカートの中の違和感は動かないままだから、え?どういう体制?じゃなくてもう一人いる?いつの間に?
「んっ、んっ~~」
にゅるにゅる口内を動く肉厚な舌に舌の脇を擽られてお腹の奥がじわっと熱くなる。頭を後ろから支えていた手に撫でられたかと思ったら項を指先でツゥッと擽られ力が抜けたところで深くじゅうっと吸われた。
なにこのキス、頭溶けそう。
「ふへえ……????」
ようやく解放されたら涙の膜の向こうに蜂蜜色の髪がぼんやりと見えた。
え、誰。
目をぱちくりさせて涙が押し出されてクリアになった視界に飛び込んできたのはとんでもないイケメン。
長い金髪を後ろで結んだ、動物に例えるなら狐顔。なんだろう、なんか悪いことしてそう。
炎のような赤い瞳が甘く微笑んでいる。よく見ると店員さんと同じ黒シャツにパンツの格好をしているけれど全く別の服に見える。なんか分かんないけど高貴な雰囲気が全く隠せてないような。
ものすごくタイプなんだけどなにこの人。
夕暮れの空の下、キラキラ光るランタンがふわふわ浮いて活気ある声が響いている。みんなファンタジーゲームに登場するような服を着ているし、おとぎ話みたいな光景だなぁ、なんて呑気に思う。ここから帰るための手段とか、え、もしかして私本当に死んだ?とか、今更どうしよう、なんて悩み始めちゃったわけで。
『そこのお姉さん! 今ならビール半額ですよ!』
半額……?
無意識に足が止まる。そういえばここも結構暑い。
『しかもグラスキンッキンに冷えてますよ! 今ならサービスでグリーム豆がつきます!』
グリーム? よく分からないけど豆ならさすがに喉にも詰まらないだろうし、喉がごきゅっ、と鳴った。
ようやく、ようやくありつける……!!
『1名様ッ! ご来店でーす!!!』
『らっしゃせーー!!!』
席に通されてそこからはもう、最高で。
「はーーーー!!これよ、これ!!!」
サービスのグリーム豆?は茹で具合が最高の枝豆だし、なによりビール!これがまた最高に美味しい!喉越しは芸術だし苦味も程よくて香りもいい。なによりグラスがキンッキン!それに片手じゃ持てないほどデカい!
全てが美味、全てが最高。
――でも、生って感じじゃない。どちらかというと瓶ビールに近い爽やかさというか……ラムっぽい芳醇さというか。
とにかく、私が欲しくてほしくて堪らなかったあの激安居酒屋で飲めるビールではない。欲を言うならあの空きっ腹に響く安心感がほしい。
「すみませーん! 生ってありますか?」
空になったグラスを掲げて言うと『えっ!?』とまわりがザワついた。
え? なんで? 私そんなに変なこと言った??
慌てた様子で出てきた店員さんが声を潜めて耳打ちしてきた。思わず耳を澄ませる。
なに、なんなの?
『あ、あの……本当に生でいいんですか……?』
「えっ、はい……あ、もしかしてもの凄く高い、とか?」
異世界だから有り得るかも、と今更ながらにちょっと後悔する。
『とんでもない! 聖女様がお相手だなんて……寧ろお代はこちらから払わせていただきますので!』
ええ、どういうシステム????
せいじょ……性女……あっ聖女か。聖女ってもしかしてこの国ではお得システムかなにかなのだろうか。
顔パスで飲み放題的な。神様仏様、ありがとうございます。
お得とか無料に弱い私は反射神経で「お願いします」と即答していた。
すると恭しく、そしてどこかたどたどしい店員さんに「ではご案内します」と通されたのは二階の個室だった。
広さはないけれど清潔感があってふかふかの高級ベッドみたいなソファー席を雰囲気のあるキャンドルが照らしている。
例えるならリゾートスパだ。サービスの良さに思わず緊張しかけたが、ほろ酔いの体は蕩けるようにソファーに吸い込まれた。見たとおりふわっふわ。寝ちゃいそう。
生注文しただけでこの好待遇。異世界最高。
「はぁ……最高……ここで生飲めるとか社畜の涙で泳げるって……」
『では、失礼します……!』
「え???」
部屋のドアが閉められて、なぜか彼が失礼したのは私のスカートの中だった。そんなことある???
「やっ、なにしてっ、はぁっ、んっんっ」
んっ、じゃないよ。なにやってるの私。そう思ってるのにほろ酔いの一歩手前の敏感になったところに、突然気持ちいのが与えられて、拒絶が遠のいてしまう。やわやわと下着の上から指が捏ね回すように動いて、続けていいかとお膳立てをする。
『敏感なんですね……そろそろ『生』いかせていただきますね!』
はぁ、と息がかかってびくりと腰が跳ねてしまう。拒否しないことを改めて確認するとじっとり濡れた下着に指がかけられる。
だって彼氏なんてもう何年もいないし、なんなら仕事と俺どっちが大事?とか言われて振られたし、セックスはお前感度悪すぎとか言われて散々だったし、こんなの抗えない。なんでこうなったとは思うけど、あっ、むり。きもちいい。
「やっ……だめっ、もっ……」
軽く擦られてるだけなのに、じわじわ登り詰めてイキそうになる。つま先にぎゅっ、と力を入れたその瞬間。
「こらこら。いけませんよ、他の人でイッてしまっては」
甘い声に耳を擽られたと思ったら唇を塞がれた。
スカートの中の違和感は動かないままだから、え?どういう体制?じゃなくてもう一人いる?いつの間に?
「んっ、んっ~~」
にゅるにゅる口内を動く肉厚な舌に舌の脇を擽られてお腹の奥がじわっと熱くなる。頭を後ろから支えていた手に撫でられたかと思ったら項を指先でツゥッと擽られ力が抜けたところで深くじゅうっと吸われた。
なにこのキス、頭溶けそう。
「ふへえ……????」
ようやく解放されたら涙の膜の向こうに蜂蜜色の髪がぼんやりと見えた。
え、誰。
目をぱちくりさせて涙が押し出されてクリアになった視界に飛び込んできたのはとんでもないイケメン。
長い金髪を後ろで結んだ、動物に例えるなら狐顔。なんだろう、なんか悪いことしてそう。
炎のような赤い瞳が甘く微笑んでいる。よく見ると店員さんと同じ黒シャツにパンツの格好をしているけれど全く別の服に見える。なんか分かんないけど高貴な雰囲気が全く隠せてないような。
ものすごくタイプなんだけどなにこの人。
27
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
【続】18禁の乙女ゲームから現実へ~常に義兄弟にエッチな事されてる私。
KUMA
恋愛
※続けて書こうと思ったのですが、ゲームと分けた方が面白いと思って続編です。※
前回までの話
18禁の乙女エロゲームの悪役令嬢のローズマリアは知らないうち新しいルート義兄弟からの監禁調教ルートへ突入途中王子の監禁調教もあったが義兄弟の頭脳勝ちで…ローズマリアは快楽淫乱ENDにと思った。
だが事故に遭ってずっと眠っていて、それは転生ではなく夢世界だった。
ある意味良かったのか悪かったのか分からないが…
万李唖は本当の自分の体に、戻れたがローズマリアの淫乱な体の感覚が忘れられずにBLゲーム最中1人でエッチな事を…
それが元で同居中の義兄弟からエッチな事をされついに……
新婚旅行中の姉夫婦は後1週間も帰って来ない…
おまけに学校は夏休みで…ほぼ毎日攻められ万李唖は現実でも義兄弟から……
伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】
ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。
「……っ!!?」
気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
【完結】【R18】伯爵夫人の務めだと、甘い夜に堕とされています。
水樹風
恋愛
とある事情から、近衛騎士団々長レイナート・ワーリン伯爵の後妻となったエルシャ。
十六歳年上の彼とは形だけの夫婦のはずだった。それでも『家族』として大切にしてもらい、伯爵家の女主人として役目を果たしていた彼女。
だが結婚三年目。ワーリン伯爵家を揺るがす事件が起こる。そして……。
白い結婚をしたはずのエルシャは、伯爵夫人として一番大事な役目を果たさなければならなくなったのだ。
「エルシャ、いいかい?」
「はい、レイ様……」
それは堪らなく、甘い夜──。
* 世界観はあくまで創作です。
* 全12話
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
18禁の乙女ゲームの悪役令嬢~恋愛フラグより抱かれるフラグが上ってどう言うことなの?
KUMA
恋愛
※最初王子とのHAPPY ENDの予定でしたが義兄弟達との快楽ENDに変更しました。※
ある日前世の記憶があるローズマリアはここが異世界ではない姉の中毒症とも言える2次元乙女ゲームの世界だと気付く。
しかも18禁のかなり高い確率で、エッチなフラグがたつと姉から嫌って程聞かされていた。
でもローズマリアは安心していた、攻略キャラクターは皆ヒロインのマリアンヌと肉体関係になると。
ローズマリアは婚約解消しようと…だが前世のローズマリアは天然タラシ(本人知らない)
攻略キャラは婚約者の王子
宰相の息子(執事に変装)
義兄(再婚)二人の騎士
実の弟(新ルートキャラ)
姉は乙女ゲーム(18禁)そしてローズマリアはBL(18禁)が好き過ぎる腐女子の処女男の子と恋愛よりBLのエッチを見るのが好きだから。
正直あんまり覚えていない、ローズマリアは婚約者意外の攻略キャラは知らずそこまで警戒しずに接した所新ルートを発掘!(婚約の顔はかろうじて)
悪役令嬢淫乱ルートになるとは知らない…
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】婚約破棄に失敗したら王子が夜這いにやってきました
ミチル
恋愛
婚約者である第一王子ルイスとの婚約破棄に晴れて失敗してしまったリリー。しばらく王宮で過ごすことになり夜眠っているリリーは、ふと違和感を覚えた。(なにかしら……何かふわふわしてて気持ちいい……) 次第に浮上する意識に、ベッドの中に誰かがいることに気づいて叫ぼうとしたけれど、口を塞がれてしまった。
リリーのベッドに忍び込んでいたのは婚約破棄しそこなったばかりのルイスだった。そしてルイスはとんでもないこと言い出す。『夜這いに来ただけさ』
R15で連載している『婚約破棄の条件は王子付きの騎士で側から離してもらえません』の【R18】番外になります。3~5話くらいで簡潔予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる