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幸せにしたい人(7)※
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ベッドにふたつの身体が濡れたまま崩れ落ちて、重なる。
彼の唇が、指が一瞬の躊躇いをみせてからすぐに溶け合った。
エルバートから与えられるすべてに全身が戦慄くのを感じる。自分は彼が好きなのだと一度認めてしまえば止まれない。
「……ソフィー」
アメジスト色の瞳がぬらりと光る。どうやっても誤魔化せないほど互いに熱に浮かされているというのに彼は一線を越えるのを何度も躊躇している。
それは、皇帝としてか契約者に対する魔法使いとしてか。
(我慢する気もなかった、だなんて嘘ばっかり)
どれだけ挑発的で強気な言葉で誘惑しても、このひとは自分を傷つけることを決してしない。
それが自分のためだと分かっていても、ソフィーはもどかしさに怒りに近い感情さえ湧き上がってくるような気がした。
言い訳も出来ないほど溢れた蜜はエルバートの長い指を塗らして粘着質な音を響かせている。
いつもこのベッドで交わしていたキスとは違う。
これ以上を望むことが契約違反だとしても、もう止まれなかった。止まる気もなかった。
「エルバート様……ッ」
もっと、もっと深く感じたい。
シンデレラの姉として、出来ることはもうきっと多くない。それならば、今だけは自分の欲のままに生きてもいいのではないか。
強請るように首に腕を回してそそり立つ熱を体内に誘った。
ソフィーが圧迫感を感じる直前に見たのは上下する喉と切なげに歪んだ眉。そしてなぜかこの上なく幸せそうに緩む唇だった。
「ああ……もう逃がせないや」
逃がせない?
なにを言っているのですか。そんな言葉は口から出ることなく穿たれた熱にかき消されてしまった。
「っ……ぁあ……っ」
反射的にぎゅっと彼の背中にしがみつく。指とは比べものにならない質量が押し広げ、埋まっていくのを感じて呼吸が浅くなった。
鈍痛の後を追いかけて甘い痺れがじんわりとひろがる。破瓜の痛みは想像を絶するが妻という立場と副産物を手に入れるために我慢するものだと教わっていた身としてはこんなにも胸がいっぱいになるような感覚でいいのだろうかとさえ思うほどだ。
はぁっ、と息をついたエルバートの顔があまりに綺麗で思わず見とれていたら目が合った。重なりかけた唇を反射的に顔を逸らして避ける。
「……魔法、かけようとしていますね」
「えっ、なんで分かったの? だって、ソフィー辛いでしょ? 今更感あるけど魔法で少しでも……」
「いらないです」
いつもキスを合図に魔法をかけるからすぐに分かってしまう。
こんなときでも少しでもソフィーを楽にしよう、傷つけまいと考える彼がやっぱりもどかしい。
お腹の奥がじくじくと疼く。痛みはもうとっくになくなっていて、ただ夢をみているような感覚がつま先まで甘く痺れさせた。
「もっ……いいですっ、エルバート様ッ……」
むしろ、少し痛い方がいいとさえソフィーは思った。だって、甘いだけよりも深く刻まれている気になれるから。
「いつからそんなおねだり上手になっちゃったのかなぁ」
やれやれ、とでも言いたげな口調とは裏腹に、その息づかいに余裕はなかった。
膝裏を抱えられゆっくりと熱が抽挿される。ぱちゅん、と肌のぶつかる音が響いて強く彼を感じた。
「ぁっ、あんっ、ぁあっ……ん」
ソフィーの弱いところを探し出すようにゆるゆると動いていた熱槍は、すぐにそれを見つけると震える腰を責め立てた。
悲鳴に近い声があがって、それに興奮するようにエルバートはひときわ奥を押し上げた。
ぐっ、ぐっ、と同じ部分を深く穿たれ甘い痺れが止まらなくなる。怖いのに、気持ちいい。
「はじめてなのに……ああもうっ、どれだけ僕好みになれば気が済むの?」
ふるふると首を振っても否定にならない。代わりにきゅうっと締め付けている膣内が彼の熱をさらに膨張させた。
先端まで引き抜かれた熱に息をついた瞬間、一番深いところまで一気に突き上げられた。
「んっ――~~!」
「愛してるよソフィー……ソフィーさえいればなにもいらない」
腰を掴まれて激しく身体を揺さぶられる。潰れんばかりに抱きしめられて、もうすべてが溶け合ってしまうかと錯覚したとき、エルバートが小さく呻いた。同時に膣内でなにかが弾けて、お腹の上に吐き出されたのを感じた。
ソフィーもそう言って。今は嘘でもいいから。
そんな言葉が聞こえた気がして、耐えるためにいつの間にかキツく瞑っていた瞼を開けるとキスをされた。
今までで一番熱い舌が優しく絡められている。唇越しに感じる野生の獣のような欲望にまた甘く身体を震わせた。
◇
「ソフィーが幸せにしたいのは……あの子だけ?」
もう指一本動かすことすらできないほどの倦怠感に襲われているソフィーはされるがままだった。
くったりとした身体を嬉々として清潔なタオルで丁寧に拭くエルバートはつい先ほどまで泣き出しそうな顔で「愛しているよ」を連呼していたひとと同一人物だとは思えない。
彼の唇が、指が一瞬の躊躇いをみせてからすぐに溶け合った。
エルバートから与えられるすべてに全身が戦慄くのを感じる。自分は彼が好きなのだと一度認めてしまえば止まれない。
「……ソフィー」
アメジスト色の瞳がぬらりと光る。どうやっても誤魔化せないほど互いに熱に浮かされているというのに彼は一線を越えるのを何度も躊躇している。
それは、皇帝としてか契約者に対する魔法使いとしてか。
(我慢する気もなかった、だなんて嘘ばっかり)
どれだけ挑発的で強気な言葉で誘惑しても、このひとは自分を傷つけることを決してしない。
それが自分のためだと分かっていても、ソフィーはもどかしさに怒りに近い感情さえ湧き上がってくるような気がした。
言い訳も出来ないほど溢れた蜜はエルバートの長い指を塗らして粘着質な音を響かせている。
いつもこのベッドで交わしていたキスとは違う。
これ以上を望むことが契約違反だとしても、もう止まれなかった。止まる気もなかった。
「エルバート様……ッ」
もっと、もっと深く感じたい。
シンデレラの姉として、出来ることはもうきっと多くない。それならば、今だけは自分の欲のままに生きてもいいのではないか。
強請るように首に腕を回してそそり立つ熱を体内に誘った。
ソフィーが圧迫感を感じる直前に見たのは上下する喉と切なげに歪んだ眉。そしてなぜかこの上なく幸せそうに緩む唇だった。
「ああ……もう逃がせないや」
逃がせない?
なにを言っているのですか。そんな言葉は口から出ることなく穿たれた熱にかき消されてしまった。
「っ……ぁあ……っ」
反射的にぎゅっと彼の背中にしがみつく。指とは比べものにならない質量が押し広げ、埋まっていくのを感じて呼吸が浅くなった。
鈍痛の後を追いかけて甘い痺れがじんわりとひろがる。破瓜の痛みは想像を絶するが妻という立場と副産物を手に入れるために我慢するものだと教わっていた身としてはこんなにも胸がいっぱいになるような感覚でいいのだろうかとさえ思うほどだ。
はぁっ、と息をついたエルバートの顔があまりに綺麗で思わず見とれていたら目が合った。重なりかけた唇を反射的に顔を逸らして避ける。
「……魔法、かけようとしていますね」
「えっ、なんで分かったの? だって、ソフィー辛いでしょ? 今更感あるけど魔法で少しでも……」
「いらないです」
いつもキスを合図に魔法をかけるからすぐに分かってしまう。
こんなときでも少しでもソフィーを楽にしよう、傷つけまいと考える彼がやっぱりもどかしい。
お腹の奥がじくじくと疼く。痛みはもうとっくになくなっていて、ただ夢をみているような感覚がつま先まで甘く痺れさせた。
「もっ……いいですっ、エルバート様ッ……」
むしろ、少し痛い方がいいとさえソフィーは思った。だって、甘いだけよりも深く刻まれている気になれるから。
「いつからそんなおねだり上手になっちゃったのかなぁ」
やれやれ、とでも言いたげな口調とは裏腹に、その息づかいに余裕はなかった。
膝裏を抱えられゆっくりと熱が抽挿される。ぱちゅん、と肌のぶつかる音が響いて強く彼を感じた。
「ぁっ、あんっ、ぁあっ……ん」
ソフィーの弱いところを探し出すようにゆるゆると動いていた熱槍は、すぐにそれを見つけると震える腰を責め立てた。
悲鳴に近い声があがって、それに興奮するようにエルバートはひときわ奥を押し上げた。
ぐっ、ぐっ、と同じ部分を深く穿たれ甘い痺れが止まらなくなる。怖いのに、気持ちいい。
「はじめてなのに……ああもうっ、どれだけ僕好みになれば気が済むの?」
ふるふると首を振っても否定にならない。代わりにきゅうっと締め付けている膣内が彼の熱をさらに膨張させた。
先端まで引き抜かれた熱に息をついた瞬間、一番深いところまで一気に突き上げられた。
「んっ――~~!」
「愛してるよソフィー……ソフィーさえいればなにもいらない」
腰を掴まれて激しく身体を揺さぶられる。潰れんばかりに抱きしめられて、もうすべてが溶け合ってしまうかと錯覚したとき、エルバートが小さく呻いた。同時に膣内でなにかが弾けて、お腹の上に吐き出されたのを感じた。
ソフィーもそう言って。今は嘘でもいいから。
そんな言葉が聞こえた気がして、耐えるためにいつの間にかキツく瞑っていた瞼を開けるとキスをされた。
今までで一番熱い舌が優しく絡められている。唇越しに感じる野生の獣のような欲望にまた甘く身体を震わせた。
◇
「ソフィーが幸せにしたいのは……あの子だけ?」
もう指一本動かすことすらできないほどの倦怠感に襲われているソフィーはされるがままだった。
くったりとした身体を嬉々として清潔なタオルで丁寧に拭くエルバートはつい先ほどまで泣き出しそうな顔で「愛しているよ」を連呼していたひとと同一人物だとは思えない。
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