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悪役を愛するのは(6)※
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「エルバート様、地上にいるシンデレラに購入品を贈ることは可能ですか?」
現在、国でソフィーは行方不明扱いだろう。期待はしていなかったが、エルバートはあっさりと頷いてくれた。
「ややこしくなるからソフィーの名前は伏せることになっちゃうけどそれでもいい?」
「構いません。食べ物でもいいですか?」
「いいよ。好きなの選んで。あとで使いの者に送らせるから」
先程の羞恥心を義妹への想いで上書きしたソフィーは、数件の洋菓子店を回り、両腕いっぱいの菓子を抱えた。
「服のせいかこうしていると本当に町娘みたいだね」
ソフィーの腕から荷物を持ち替えたエルバートが、空いた手で黒髪を撫でてから再度手を繋いだ。
甘い雰囲気が漂って先程のことをつい意識しそうになる。落ち着きたいのに落ち着かない。
そわそわと辺りを見渡していると、ピリッと身体が反応するようにある人物に視線が止まった。
ソフィーは思わず、その名が口から零れていた。
「ポール……」
その声に反応したのは百歳超えの侍従ではなく、隣でソフィーの手を握っていたエルバートだった。
人混みに紛れていくポールの後ろ姿は先日見た子どもの姿とは違う。面影はあれど大人の紳士に見える。
先日あなたのせいでひどい目にあったのです、と一言文句を言ってやりたいと思ったソフィーがその足を進めようとすると、反対方向に強く手を引かれた。
「きゃ……っ」
細い路地に引き込まれ、ソフィーを外壁とエルバートの隙間に押し込める。
繋いだ手はそのまま壁に拘束され、エルバートの膝がソフィーの脚を割って入り全く身動きが取れなくなってしまう。
「あんな遠目でもポールだって分かるんだ」
耳元で囁かれ、項がひやりと冷たくなる。彼から怒気を孕んだ声を向けられたのは初めてだ。
奪うように塞がれた唇にも抵抗できず、ただ受け入れる。
激しい口づけに生理的な涙が滲む目では彼がどんな表情をしているか分からない。
「あ……その……んンっ!」
「ほら、せっかく買ったお菓子落ちちゃうよ。ちゃんと持って」
片手は壁に縫い付けられ、空いた手に戻された荷物を潰さないよう抱きかかえる。
すると開放されたエルバートの手は当然のようにソフィーの形の良い耳に指を這わせた。
「ッ、んっ、ぅ……っ!」
耳の外側を爪先で引っかかれたり、触れるか触れないかの距離で時折内側へ入り込む指にソフィーは華奢な身体を震わせる。
「あいつにエロいこと教わったから気になるの?」
「んっ、ん……」
必死に首を振り否定するも、その顎を捕まれまた口づけられる。
「デート中に他の男の名前呼ぶなんてさ、いくら僕でも傷付くんだけど」
当然だ。ソフィーだって、エルバートがもし今日、他の女性の名前を呼ぶことがあればいい気分はしなかっただろう。
仮にも婚約者の前で失礼な態度だったのを謝りたいのに、彼はその隙を与えようとはしない。
(……私は地上の自国に帰りたいはずなのに)
まるで、乱暴に口づけるこの人に嫌われたくないとでも思っているようだ。
深く被られたフードの中でキスをしているうちに、暗闇に慣れた目が眉を寄せ悔しげな顔を捉えた。
「――余裕だね」
目がギラリと光って、口元だけが嘲笑するように釣り上がった瞬間、ソフィーは目の前で火花が散った。
「っひ、ぁ……!」
脚の間で身動きを封じていただけの膝が持ち上げられ、そのまま擦り付けるように動いたのだ。
毎日のように、好きだと囁かれ下着の上から弄られている場所に無造作な刺激が与えられ、それに反応してしまう。
意識したくないと思えば思うほど集中する感覚にソフィーはただ身を捩ることしかできない。
「あいつはシンデレラに夢中だよ」
「ちがっ、そういうのではっ……んっはっ……」
違う。ポールを男性として意識しているのではない。確かに、ソフィーは恋をしたことがないから自分でもなぜそう断言できるか分からない。けれど、なぜかエルバートにそう思われているのは嫌だ。
「ふ……っ」
そう遠くない場所から人の笑い声が聞こえて、ここが外であることを思い出し慌てて唇を噛んだ。
「だめ。傷になっちゃうよ」
「やっ……声、が」
「塞いでてあげる。だから……気持ちよくなって?」
現在、国でソフィーは行方不明扱いだろう。期待はしていなかったが、エルバートはあっさりと頷いてくれた。
「ややこしくなるからソフィーの名前は伏せることになっちゃうけどそれでもいい?」
「構いません。食べ物でもいいですか?」
「いいよ。好きなの選んで。あとで使いの者に送らせるから」
先程の羞恥心を義妹への想いで上書きしたソフィーは、数件の洋菓子店を回り、両腕いっぱいの菓子を抱えた。
「服のせいかこうしていると本当に町娘みたいだね」
ソフィーの腕から荷物を持ち替えたエルバートが、空いた手で黒髪を撫でてから再度手を繋いだ。
甘い雰囲気が漂って先程のことをつい意識しそうになる。落ち着きたいのに落ち着かない。
そわそわと辺りを見渡していると、ピリッと身体が反応するようにある人物に視線が止まった。
ソフィーは思わず、その名が口から零れていた。
「ポール……」
その声に反応したのは百歳超えの侍従ではなく、隣でソフィーの手を握っていたエルバートだった。
人混みに紛れていくポールの後ろ姿は先日見た子どもの姿とは違う。面影はあれど大人の紳士に見える。
先日あなたのせいでひどい目にあったのです、と一言文句を言ってやりたいと思ったソフィーがその足を進めようとすると、反対方向に強く手を引かれた。
「きゃ……っ」
細い路地に引き込まれ、ソフィーを外壁とエルバートの隙間に押し込める。
繋いだ手はそのまま壁に拘束され、エルバートの膝がソフィーの脚を割って入り全く身動きが取れなくなってしまう。
「あんな遠目でもポールだって分かるんだ」
耳元で囁かれ、項がひやりと冷たくなる。彼から怒気を孕んだ声を向けられたのは初めてだ。
奪うように塞がれた唇にも抵抗できず、ただ受け入れる。
激しい口づけに生理的な涙が滲む目では彼がどんな表情をしているか分からない。
「あ……その……んンっ!」
「ほら、せっかく買ったお菓子落ちちゃうよ。ちゃんと持って」
片手は壁に縫い付けられ、空いた手に戻された荷物を潰さないよう抱きかかえる。
すると開放されたエルバートの手は当然のようにソフィーの形の良い耳に指を這わせた。
「ッ、んっ、ぅ……っ!」
耳の外側を爪先で引っかかれたり、触れるか触れないかの距離で時折内側へ入り込む指にソフィーは華奢な身体を震わせる。
「あいつにエロいこと教わったから気になるの?」
「んっ、ん……」
必死に首を振り否定するも、その顎を捕まれまた口づけられる。
「デート中に他の男の名前呼ぶなんてさ、いくら僕でも傷付くんだけど」
当然だ。ソフィーだって、エルバートがもし今日、他の女性の名前を呼ぶことがあればいい気分はしなかっただろう。
仮にも婚約者の前で失礼な態度だったのを謝りたいのに、彼はその隙を与えようとはしない。
(……私は地上の自国に帰りたいはずなのに)
まるで、乱暴に口づけるこの人に嫌われたくないとでも思っているようだ。
深く被られたフードの中でキスをしているうちに、暗闇に慣れた目が眉を寄せ悔しげな顔を捉えた。
「――余裕だね」
目がギラリと光って、口元だけが嘲笑するように釣り上がった瞬間、ソフィーは目の前で火花が散った。
「っひ、ぁ……!」
脚の間で身動きを封じていただけの膝が持ち上げられ、そのまま擦り付けるように動いたのだ。
毎日のように、好きだと囁かれ下着の上から弄られている場所に無造作な刺激が与えられ、それに反応してしまう。
意識したくないと思えば思うほど集中する感覚にソフィーはただ身を捩ることしかできない。
「あいつはシンデレラに夢中だよ」
「ちがっ、そういうのではっ……んっはっ……」
違う。ポールを男性として意識しているのではない。確かに、ソフィーは恋をしたことがないから自分でもなぜそう断言できるか分からない。けれど、なぜかエルバートにそう思われているのは嫌だ。
「ふ……っ」
そう遠くない場所から人の笑い声が聞こえて、ここが外であることを思い出し慌てて唇を噛んだ。
「だめ。傷になっちゃうよ」
「やっ……声、が」
「塞いでてあげる。だから……気持ちよくなって?」
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