7 / 51
キスはルールに含まれます(2)
しおりを挟む
話が飛躍しすぎていて、どういう意味か分からずエルバートの顔を見上げた。
するとエルバートは鏡の隣に置かれた天秤を手に取った。天秤は繊細な細工が施されており、皿の上にはそれぞれ球体が乗っている。
「これは心臓の天秤って言って、皇族の結婚式に使われてるんだ。月と太陽を模したもので――説明するより見たほうが早いか」
「んっ」
エルバートはそういうと、ソフィーの唇に月を触れさせ、自分も太陽に口づけた。
そして天秤の皿の上に戻すと、先程まで確かに中立だったはずなのにガチャン! と音を立てて完全に太陽側へと傾いた。
あまりの勢いに月が飛んでいってしまうかと思ったほどだ。
「これは口づけた者の愛の重さを測れるんだ。太陽側ってことは悲しいけど今は圧倒的に僕がソフィーを好きってこと」
「そ、それで……!」
この天秤と三ヶ月間の婚約となんの関係があるのか。
前のめりになるソフィーに、エルバートは天秤を指で傾けて太陽と月を平行にした。
「これが三ヶ月後、中立になったら僕の妻になって。もし、結果が今と同じだったら諦めて国へ返すよ。結果がどちらにせよ結界は修復する。どう?」
つまり、この国でエルバートの婚約者として三ヶ月間過ごせば結界は修復してもらえるし、国に帰ることもできる。
天秤がつり合えば妻にならなければいけないが、エルバートへの感情を今のまま保てばいいだけだという。
あまりに破格の条件だ。
「――お願いします!」
「これは契約だよ? 途中で条件は変えられないし、中立になると心臓のリンクがされて、死ぬ瞬間まで同じになる。人間のソフィーが魔法使いの僕と同じ時間を生きることになるから……二百歳くらいかな? 三十くらいから外見はほとんど変わらなくなっちゃうんだけど」
「構いません」
何百歳まで生きるとか、死ぬまで一緒だとか、前提であるエルバートはを好きになる事自体がありえないのだからどんな条件があろうと構わない。
「分かった。契約成立だね」
エルバートが目を細めると、天秤がぱあっと光を放った。そして、月に『ソフィー』太陽に『エルバート』の名が刻まれる。
――始まったのだ、と改めて覚悟する。ありえないと思っていても油断ならない。キッとエルバートを見上げると、なぜか彼は満面の笑みでソフィーを軽々と抱き上げた。
「さあ、可愛い婚約者様っ。なにする? とりあえずベッドにいこうか?」
「やっ、ベッドってなんですかっ、おろしてくださいっ!」
「ソフィーまさかここがいいの……? 意外と大胆だね僕は大歓迎だけど」
するとエルバートは鏡の隣に置かれた天秤を手に取った。天秤は繊細な細工が施されており、皿の上にはそれぞれ球体が乗っている。
「これは心臓の天秤って言って、皇族の結婚式に使われてるんだ。月と太陽を模したもので――説明するより見たほうが早いか」
「んっ」
エルバートはそういうと、ソフィーの唇に月を触れさせ、自分も太陽に口づけた。
そして天秤の皿の上に戻すと、先程まで確かに中立だったはずなのにガチャン! と音を立てて完全に太陽側へと傾いた。
あまりの勢いに月が飛んでいってしまうかと思ったほどだ。
「これは口づけた者の愛の重さを測れるんだ。太陽側ってことは悲しいけど今は圧倒的に僕がソフィーを好きってこと」
「そ、それで……!」
この天秤と三ヶ月間の婚約となんの関係があるのか。
前のめりになるソフィーに、エルバートは天秤を指で傾けて太陽と月を平行にした。
「これが三ヶ月後、中立になったら僕の妻になって。もし、結果が今と同じだったら諦めて国へ返すよ。結果がどちらにせよ結界は修復する。どう?」
つまり、この国でエルバートの婚約者として三ヶ月間過ごせば結界は修復してもらえるし、国に帰ることもできる。
天秤がつり合えば妻にならなければいけないが、エルバートへの感情を今のまま保てばいいだけだという。
あまりに破格の条件だ。
「――お願いします!」
「これは契約だよ? 途中で条件は変えられないし、中立になると心臓のリンクがされて、死ぬ瞬間まで同じになる。人間のソフィーが魔法使いの僕と同じ時間を生きることになるから……二百歳くらいかな? 三十くらいから外見はほとんど変わらなくなっちゃうんだけど」
「構いません」
何百歳まで生きるとか、死ぬまで一緒だとか、前提であるエルバートはを好きになる事自体がありえないのだからどんな条件があろうと構わない。
「分かった。契約成立だね」
エルバートが目を細めると、天秤がぱあっと光を放った。そして、月に『ソフィー』太陽に『エルバート』の名が刻まれる。
――始まったのだ、と改めて覚悟する。ありえないと思っていても油断ならない。キッとエルバートを見上げると、なぜか彼は満面の笑みでソフィーを軽々と抱き上げた。
「さあ、可愛い婚約者様っ。なにする? とりあえずベッドにいこうか?」
「やっ、ベッドってなんですかっ、おろしてくださいっ!」
「ソフィーまさかここがいいの……? 意外と大胆だね僕は大歓迎だけど」
32
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の逆襲~バッドエンドからのスタート
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
重要ミッション!悪役令嬢になってバッドエンドを回避せよ!
バッドエンドを迎えれば、ゲームの世界に閉じ込められる?!その上攻略キャラの好感度はマイナス100!バーチャルゲームの悪役令嬢は色々辛いよ
<完結済みです>

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
腹黒宰相との白い結婚
黎
恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる