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なにそれ羨ましいんだけど?(1)

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「うんまーい! このサンドイッチ最高! 具はフレッシュだし、パンもっちもち!」

「ははっ、エマがおいしそうに食べてくれるから作り甲斐あるよ」

「だってほんとうにおいしいんだもん! ノエル天才すぎる~ おかわり!」

「エマのトマトがおいしいからだよ。ミネストローネもおかわりいる?」

「いるー! あっ、食いしん坊だからって引かないでね?」

「今更じゃない? 引くわけないよ。僕はたくさん食べてくれるエマが好きだよ」

「あたしもノエル大好き!」

 

 うまうまと口いっぱいにノエルの手料理を頬張るエマは、人懐っこい顔で蜂蜜色の髪をふわふわと揺らした。

 テーブルに並べられたノエルの手作りランチどれも最高で、何度食べても毎回天才だと思う。

 それにしても……とエマは部屋を見渡した。雨戸がしっかり閉じられていて、一筋の光ですら入ってこない。



「まだ昼間なのにこの部屋はいっつも暗いよねー。こんな中で小説書いてたら目悪くしちゃうんじゃないの?」

「ヴァンパイアにとっては陽の光を浴びるほうがよくないからなぁ……」

 はい、とノエルがテーブルに置いてくれたおかわりのサンドイッチとミネストローネ、それからデザートのトマトシャーベットに、わーいと両手を挙げて喜んでかぶりつく。

「んむっ……あれ? ノエルはそれだけ?」



 エマの目の前に座ったノエルは自身が作った数々の料理には一切手を付けず生のトマトを手に取った。

 ノエルはトマト農家であるエマの家の秘密の超お得意様だ。この屋敷への配達がてら一緒に食事をするのは互いにとって生活の一部になっていて、互いの好みも食べる量も知り尽くしている。そのためその日の食事の量や質で互いの体調を把握できるのも当然だ。

 口を開けたままそれ以上サンドイッチが進まなくなってしまったエマに、困ったように笑ったノエルがゆっくりと口を開く。



「エマに嘘はつけないなあ……」

「どこか悪いの……?」


 改めてよく見ると、血色感のない肌がさらに白くなった気がする。それに、なんとなく疲れているようにも。


「ううん。悪くはないんだ。ただ……エマにお願いがあって……その、嫌なら全然断ってくれていいんだけど、本当に無理しないでほしくて」

「ん?」


 話が見えないし、とにかく心配なエマはマスカット色の大きな瞳に涙をためてじっとノエルを見つめた。もしかして、なにか病気だったりしたらどうしよう。ノエルにもしものことがあったら、自分の心臓を二つに割って分けてあげたい。エマはノエルのことが大好きだ。まだ告白だってできていないのに、もしものことなんて考えたくない。


「あっ、あっ、泣かないでエマ……違うんだ、その、うさぎを……」

「うさぎ?」

「うん……大したことじゃないんだ。ただ、その、最近本当に体力がなくて……120歳を超えたからだとは思うんだけど。だから苦手意識を持たずに血液摂取にチャレンジすべきなんじゃないかって……思い始めて……僕は近づくと舌打ちされちゃうんだけど、エマは森のうさぎたちと仲がいいから……」


 うーん、なるほど? そのあとノエルを質問責めして、ようやくエマの中で要点がまとまった。
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