願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

文字の大きさ
上 下
248 / 282
学園編

134. 愛し子会議

しおりを挟む
 魔法の披露についての打ち合わせが終わったので、この後は目に属性が出ている精霊の愛し子たちの情報交換会だ。せっかく集まったので、各国での教育や仕事について聞くことになっている。
 付きそいの魔術師たちは、授業見学会の参加者へのあいさつが終わったお兄さんたちにお任せして、愛し子だけでの会議だ。そのほうが、いろいろ話しやすいだろう。

 付きそいの魔術師が退室して、すっきりした会議室には、部隊長さんも含めて水が三人、土が三人、風が二人、氷のウィオに、雪のオレ。半分が水関連属性だから、水の精霊が一番多く集まっている。

「これだけ集まると、壮観ですねえ」
「本当に」

 この中で一番年長のアチェーリの土の愛し子がもらした言葉に、ノダクムの土の愛し子が答えた。
 ノダクムは今回参加する予定はなかったのに、直前で駆け込み参加になった。商人さんによる魔眼の子の誘拐事件がノダクムに伝わって弁解に来たのではないかと、お兄さんたちはにらんでるらしい。政治に巻き込まれて、突然の国外出張で大変だろうから、楽しんでくれるといいな。

「フェゴの風の魔術師より、みなさまに会えなくて本当に残念だ、という手紙を受け取っています」
「私は隣国ですから、訪ねていくことができるか調整してみましょう」

 この機会なら、ふだんはなかなか許可が下りない国外へ行けるかもしれないと、マトゥオーソの若い水の愛し子が意気込んでいる。フェゴの王子様もきていることだし、マダム先生からも口添えしてもらおう。
 そのマダム先生によると、マトゥオーソにはあと二人精霊の愛し子がいるそうで、今回の訪問には若い水の愛し子が選ばれた。水の騎士としてマトゥオーソでも有名な部隊長さんのファンらしく、本人も熱望した結果だ。集まっている愛し子の中でも一番楽しそうにしている。部隊長さんに披露する魔法の打ち合わせを持ちかけていたのも、話すきっかけがほしかったのかもしれない。

 一方、参加者の中で一番若いトゥレボルの風の子は、会議には興味がないようで、つまらなさそうにしている。水の子と十歳差くらいだったはずだから、今は二十代前半か。性格が属性に引っ張られるという話があるけど、風は移り気な人が多いと聞く。となると、こういう会議は退屈だろうな。
 オレに用意されていた椅子から飛び降りて、風の子の足元に近づくと、抱き上げられる。

「ルジェくん、どうしたの?」
「会議に飽きたようだ。遊んでやってくれ」
『キャン』

 各国での精霊の愛し子の扱いについては知りたいけれど、じっとしていることに飽きたのも事実。遊んでもらおう。
 風の子の膝の上で、なでてもらいながら会議を聞いている。
 やはりトゥレボルをのぞけばどこの国も、精霊の愛し子が見つかれば、すぐに貴族の養子になる。

「アチェーリは、魔術師か騎士、どちらかを本人の希望で選びます」
「では、魔術師ではなく騎士になるのは、オルデキアとノダクムだけですか」

 面白いねえ。オルデキアの近くだけが騎士になるって、魔物の分布と関係あるのだろうか。
 ノダクムの土の愛し子は、騎士だけど後方支援で野営地の整備などを行っているらしい。

「トゥレボルが教会所属としていることに、周辺国が影響を受けているのではないでしょうか」
「それは、ありそうですね」

 なるほど。戦闘職である騎士より、研究職である魔術師のほうが、教会所属の神子に近い気がする。戦闘が好きな人ばかりじゃないし、女性の愛し子が前線に行くのはいろいろと大変だろう。

「ネウラ学園の卒業生は、どうする予定なのですか? たしか、トゥレボルの子も通っていますよね?」
「本人の希望に任せます。学園としては、何になれとも、なるなとも、言いません」

 それは、ウィオが学園を作ったそもそもの目的だ。将来をしばられることなく、自分の可能性を伸ばしてほしい。水の子がどうするかは、水の子が決めることだ。

「では、オルデキアの騎士になる可能性もあるのですか?」
「少なくとも今は、騎士団の試験を受ける資格はありません」

 騎士の試験を受けるには、オルデキアで生まれ育っている必要がある。例外はあるらしいけど、水の子はトゥレボルの所属と見なされているから、受験資格がない。本人が火の子と一緒に入りたいと言えば、王様が考えてくれるかもしれないけど、水の子の性格的に騎士はないと思う。

「私はトゥレボルの教会で育ちましたが、スフラル出身です。成人してからは、教会の所属としてスフラルでも活動しています。やはり教会所属というのが、トゥレボルに神子が集まる要員の一つでしょう」
「なぜスフラルではなく、トゥレボルに?」
「スフラルでは育て方が分からなかったからだと、物心がついてから聞きました」

 そういえば、火の子を預けるときに、成人している風の神子は隣の国の出身と聞いた気がする。おそらく魔力暴走で被害が出る前にと、トゥレボルに預けられたのだろう。そして成人してからは両方の国で活動している。教会なら国を越えての協力もしやすく、自分の国でも活動してくれると言うのが、他国に預けるハードルを下げているのだ。
 ネウラの学園を卒業すれば、他国出身でもオルデキアの騎士になれるとなれば、周りの国からも警戒される。いずれだれかがどうしても入りたいと言うまでは、今のまま騎士の受験資格なしでいいだろう。

「トゥレボルの施設は魔力が暴走しないと聞きましたが、どのようになっているのですか?」
「私もぜひお聞きしたい」

 きたきた。やっぱりみんな興味はトゥレボルだよね。どう答えるのかな?
しおりを挟む
感想 798

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

今度生まれ変わることがあれば・・・全て忘れて幸せになりたい。・・・なんて思うか!!

れもんぴーる
ファンタジー
冤罪をかけられ、家族にも婚約者にも裏切られたリュカ。 父に送り込まれた刺客に殺されてしまうが、なんと自分を陥れた兄と裏切った婚約者の一人息子として生まれ変わってしまう。5歳になり、前世の記憶を取り戻し自暴自棄になるノエルだったが、一人一人に復讐していくことを決めた。 メイドしてはまだまだなメイドちゃんがそんな悲しみを背負ったノエルの心を支えてくれます。 復讐物を書きたかったのですが、生ぬるかったかもしれません。色々突っ込みどころはありますが、おおらかな気持ちで読んでくださると嬉しいです(*´▽`*) *なろうにも投稿しています

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。