願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

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学園編

132. 会場がカラフル

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 魔術師たちが集められた学園の会議室は、カラフルな髪色の人が集まっている。目まで色が出ている精霊の愛し子だけでなく、つきそい魔術師たちも、髪色に属性の色が出ている人が多く、視界が派手だ。

「お招きいただきありがとうございます」
「明日は魔法の披露をお願いいたします」

 お兄さんたちは授業見学会に来た貴族のあいさつに行っているので、ウィオだけで大丈夫かと心配したけれど、そつなくこなしている。いろいろアドバイスしないと黙ったままなんじゃないかと思っていたけど、そうでもなかった。なんだかんだ言っても、貴族として教育を受けてきたから、ベースはあるのだろう。あとは本人のやる気の問題だ。いつもは面倒だと努力することを放棄しているけれど、今日はがんばっている。そういう意味では、学園長としての自覚が出てきたようだ。よしよし。

 ウィオにあいさつする人は、肩に乗るオレを凝視してくる。ここにいるのは国の魔術師の中でもトップに近い人たちのはずだ。だから当然オレの正体も知っている。
 凝視したあとに取る行動は、それぞれでおもしろい。小さく目をふせてあいさつする人、あからさまに目をそらす人、オレに話しかけようとする人。ちなみに、話しかけられてもオレは返事をしない。しばらく無視していても諦めない人は、部隊長さんによって、「次の方がお待ちですので」という言葉で強制排除される。

「氷の神子様、お久しぶりです」
「施設長、わざわざいらしていただいて、ありがとうございます」
「水の神子様がおせわになっております」
「カイは友人と楽しく過ごしているようで、私も安心しています」

 トゥレボルからは、本当に今いる神子が全員が参加していて、その付き添いで施設長である神官までも来た。こういうときじゃないと長期間国を離れられないからと言っているので、たぶん半分はただの旅行目的だろうな。
 会場では、トゥレボルの神子が人気で、ずっといろんな人から話しかけられている。やっぱりトゥレボルの神子システムはみんな気になるよね。
 このあとは、明日の魔術の披露の打ち合わせだけでなく、各国の精霊の愛し子の置かれた状況の報告会がある。そこでも、トゥレボルに質問が集中しそうだ。

「氷の神子様、こんにちは。ルジェくん、羽が可愛いねえ」
『キャン』

 風の子が、オレの羽に目を留めてにこにこしながら首元をなでてくれる。ウィオにあこがれて一時期は冒険者になろうとしていたけれど、今はトゥレボル国内で教会の所属として活動していると聞いている。火の子を訪ねて施設に通っていたころと、同じ距離感なので、まだオレの正体は知らされていないらしい。

 そこに、遅れていたフェゴからのお客さんが到着した。

「クォルカ様、ようこそお越しくださいました」
「突然の変更を受け入れていただき感謝します、学園長」
「風の魔術師殿のご容体はどうですか?」
「風邪をこじらせましたが、私が出発するときにはほぼ快癒していました。ご心配をおかけしました。手紙を預かってきています」

 フェゴには現在、王宮所属の成人した精霊の愛し子は風属性の一人しかいないそうで、その人は高齢だ。出発前に体調を崩して、長旅には耐えられないだろうと、参加がキャンセルされた。けれど、国としてはどうしても誰か参加させたかったようで、魔術師の親戚が代理で来たのだ。
 ウィオの肩から手紙をのぞき込むと、なんとしても参加したかったが行けなくて無念だ、ということが書きつづられていて、ウィオがその熱量にじゃっかん引いている。結果的に精霊の愛し子大集合になったけれど、そんな大した集まりではなかったはずなんだけどな。

 それよりも、代理の人の付き人として後ろに控えている人が気になる。

「こちらは私の友人で護衛の上級冒険者のライです」
『キュウ?』
「……遠くからネウラへようこそ」

 オレのその視線に気づいたのか、代理人が付き人を紹介してくれたけど、ちょっと無理がない? どう見ても貴方たち、王子様とおさななじみでしょう。

 今回、王族の訪問は断っている。警備が手配できないというのもあるけれど、まず何よりも、王族が泊まれるような宿がないからだ。周りの街が開発されているので、そのうちそういう宿もできるだろうけど、今は対応できない。正直ずっとできないほうが面倒がなくていいのだけれど、王族を断り続けることもまた、学園の方針に反する。
 そんな中での王子様の参加だから、表向きは上級冒険者ということにするのだろう。

 まあいいよ。こっちは特に困らないからね。
 だけど、王子様が来たのなら、ぜひともやってもらいたいことがある。

『ねえウィオ、王子様と冒険者対決しようよ。きっと子どもたちがよろこぶよ』
「ルジェが見たいだけだろう」
『もちろん!』
「無理だな。それこそフェゴ王国の許可がいる」

 そうか。冒険者とはいっても王子様だから、どれくらい強いのかを気軽に見せてしまうのは、問題がある。残念だなあ。せっかく手に汗にぎる戦いが見られると思ったのに。

「狐くんがなにか見たいと言っているのかな?」
「冒険者としての対戦が見たいそうです」
「私はかまわないですよ。陛下にも許可はもらっています」
『キャン』

 やったー。これは子どもたちもよろこぶでしょう。
 俺たちの会話が聞こえていた風の神子が、目を輝かせてこちらを見ている。やっぱりそういう反応になるよね。

「ウィオラス、気にすることはない。どうせ本気を出したお前には勝てないんだ。手の内をすべてさらすようなことにはならない」
「だが」
「私の立場に気を使ってくれてありがたいが、ここにいるのは上級冒険者のライだ。せいぜい名を売るさ」

 周りに聞こえないように、冒険者同士の会話として小さな声で伝えてくれた。
 めったに国外で活動しないので、上級冒険者としての知名度はない。だから、周辺国の魔術師の前でアピールする機会だと張り切っている。そう言ってくれると、オレも気兼ねなく楽しめる。

 こんなことができますよという発表会になるだろう魔術師の魔法披露も楽しみだけど、やっぱり模擬戦の盛り上がりは別格だ。いまからわくわくしちゃう。
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