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学園編
131. 新衣装のお披露目
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バタバタと準備に走り回って、迎えた授業見学会当日。
今日は二番目のお兄さんとお姫様も、自治領の領主夫妻として見学会に参加する。オレは、学園長であるウィオの使役獣として、参加だ。
ってことで、今日のための特別な衣装で登場だ。じゃじゃーん。
「ルジェ、その背中はなんだ……」
『おしゃれでしょ?』
「羽をつけるとは、なかなか斬新だねえ」
オレとは似ても似つかないとはいえ、せっかく像もできたので、前世で見たハーネスを真似した羽つきのベストだ。お世話係さんにお願いして、特別なベストを作ってもらった。ウィオにもお兄さんにも秘密にしていたので、ここでお披露目。
最初にアイデアを伝えたら、白い鳥の羽根を集めて作ろうと計画し始めたので、あわてて止めたよ。リアルなものではなく、デフォルメした白いもこもこの羽のほうが可愛いと思う。厚手の布で作ってもらえば軽く、走ればパタパタして羽ばたいているように見える。
お世話係さんがオレのサイズを把握しているので、身体にピッタリのベストが出来上がった。急なお願いだったのに、仕上げてくれたお針子さん、ありがとう。
どうどう? 天使なオレ、可愛いでしょう? くるっと回って全身を見せるよ。
「自分で生やせるんじゃないのか?」
『それやっちゃったら、あの大きい羽つきがオレだってバレちゃうでしょ』
「可愛らしいですよ。ルジェ様は、発想がとても豊かでいらっしゃいますね」
自前ではないので、あの羽の生えた狐はオレじゃありませんよ、というアピールも兼ねている。ちゃんと、考えているのだ。
ウィオは何をやっているのだとあきれているし、お兄さんは苦笑しているけど、お姫様には好評でよかった。
「貴族たちに流行るのではありませんか?」
『ウィオ、使役獣グッズとして、学園で売り出したら?』
「使役獣に、装飾は必要ないだろう」
『街の中では、おしゃれしたっていいじゃない』
貴族が真似をするというのなら、いっそのこと売り出してしまうのはどうだろう。薬草の街のわんこ軍団がつけていると、きっと可愛いと思うんだよね。あのいかつい顔のドーベルマンが羽をパタパタさせていたら、似合わなさが逆にいいと思う。ただし、洋服をいやがる子もいるから、無理には着せないであげて。
授業見学会では、狐のぬいぐるみが売られるので、来年はその関連商品として販売するのはどうかな。オレが張り切ってモデルになるよ。絶対に似合う食パンくんも、モデルとして呼ぼうかな。食パンくんには、天使の羽よりも、ミツバチの羽をつけてほしい。そうしたら、ハニートースト美味しそうって思っちゃうよねえ。
ちなみに狐のぬいぐるみは、白銀ではなく、クリーム色だ。それは、学園のエンブレムに使われている、初代学園長の使役獣をモデルにしているから、らしい。神獣をグッズにするのは畏れ多いってことらしいけど、彫刻はいいのに、グッズがいけない理由がよく分からない。この世界の信仰心は、オレには難しい。もふもふ教は、ご神体であるもふもふのグッズ化も大歓迎だよ。
そこに、準備が終わった火の子が入ってきた。
「羽だ!」
『キャン』
「ルジェ、可愛いねえ」
えへへ。可愛いオレに、天使の羽。これ以上ない組み合わせでしょう。オレをなでている火の子を見守るお兄さんたちは笑顔だ。
今回の見学会のために、王都からネウラへ移動してくるときに、火の子も連れてきた。
以前はウィオから離れることが不安で、ウィオと一緒にいるためにネウラに来ていた火の子だけれど、いまはお姫様や、学園が休みの日に水の子に会うことを楽しみに移動している。馬車の中でも、会ったら話したいことをあれこれとあげていた。自信をつけて、交友関係が広がっていく火の子の成長を、ウィオもよろこんでいる。
今日は火の子も、授業見学会に参加するけれど、ウィオもお兄さんたちも忙しくて、火の子の相手をしていられない。お義姉さんは今日の夕方到着予定なので、火の子のことはトゥレボルから来ている神官にお願いしてある。
「リュカ、今日はトゥレボルの神官たちの言うことを、ちゃんと聞くように」
「はい」
トゥレボルを離れてからも、その後を気にしてくれていた人たちだから、成長したところを見せてあげてね。
一緒に馬車に乗り込んで、学園へと向かう。今日は授業見学会と夕方の花火。そして、明日が模擬戦だ。
ウィオとお兄さんたちはこれから、周辺の国から到着した魔術師たちの接待だ。マダム先生は授業見学会の責任者なので、手助けは期待できない。ウィオのフォローはオレにかかっているのだ。がんばるぞー。
今日は二番目のお兄さんとお姫様も、自治領の領主夫妻として見学会に参加する。オレは、学園長であるウィオの使役獣として、参加だ。
ってことで、今日のための特別な衣装で登場だ。じゃじゃーん。
「ルジェ、その背中はなんだ……」
『おしゃれでしょ?』
「羽をつけるとは、なかなか斬新だねえ」
オレとは似ても似つかないとはいえ、せっかく像もできたので、前世で見たハーネスを真似した羽つきのベストだ。お世話係さんにお願いして、特別なベストを作ってもらった。ウィオにもお兄さんにも秘密にしていたので、ここでお披露目。
最初にアイデアを伝えたら、白い鳥の羽根を集めて作ろうと計画し始めたので、あわてて止めたよ。リアルなものではなく、デフォルメした白いもこもこの羽のほうが可愛いと思う。厚手の布で作ってもらえば軽く、走ればパタパタして羽ばたいているように見える。
お世話係さんがオレのサイズを把握しているので、身体にピッタリのベストが出来上がった。急なお願いだったのに、仕上げてくれたお針子さん、ありがとう。
どうどう? 天使なオレ、可愛いでしょう? くるっと回って全身を見せるよ。
「自分で生やせるんじゃないのか?」
『それやっちゃったら、あの大きい羽つきがオレだってバレちゃうでしょ』
「可愛らしいですよ。ルジェ様は、発想がとても豊かでいらっしゃいますね」
自前ではないので、あの羽の生えた狐はオレじゃありませんよ、というアピールも兼ねている。ちゃんと、考えているのだ。
ウィオは何をやっているのだとあきれているし、お兄さんは苦笑しているけど、お姫様には好評でよかった。
「貴族たちに流行るのではありませんか?」
『ウィオ、使役獣グッズとして、学園で売り出したら?』
「使役獣に、装飾は必要ないだろう」
『街の中では、おしゃれしたっていいじゃない』
貴族が真似をするというのなら、いっそのこと売り出してしまうのはどうだろう。薬草の街のわんこ軍団がつけていると、きっと可愛いと思うんだよね。あのいかつい顔のドーベルマンが羽をパタパタさせていたら、似合わなさが逆にいいと思う。ただし、洋服をいやがる子もいるから、無理には着せないであげて。
授業見学会では、狐のぬいぐるみが売られるので、来年はその関連商品として販売するのはどうかな。オレが張り切ってモデルになるよ。絶対に似合う食パンくんも、モデルとして呼ぼうかな。食パンくんには、天使の羽よりも、ミツバチの羽をつけてほしい。そうしたら、ハニートースト美味しそうって思っちゃうよねえ。
ちなみに狐のぬいぐるみは、白銀ではなく、クリーム色だ。それは、学園のエンブレムに使われている、初代学園長の使役獣をモデルにしているから、らしい。神獣をグッズにするのは畏れ多いってことらしいけど、彫刻はいいのに、グッズがいけない理由がよく分からない。この世界の信仰心は、オレには難しい。もふもふ教は、ご神体であるもふもふのグッズ化も大歓迎だよ。
そこに、準備が終わった火の子が入ってきた。
「羽だ!」
『キャン』
「ルジェ、可愛いねえ」
えへへ。可愛いオレに、天使の羽。これ以上ない組み合わせでしょう。オレをなでている火の子を見守るお兄さんたちは笑顔だ。
今回の見学会のために、王都からネウラへ移動してくるときに、火の子も連れてきた。
以前はウィオから離れることが不安で、ウィオと一緒にいるためにネウラに来ていた火の子だけれど、いまはお姫様や、学園が休みの日に水の子に会うことを楽しみに移動している。馬車の中でも、会ったら話したいことをあれこれとあげていた。自信をつけて、交友関係が広がっていく火の子の成長を、ウィオもよろこんでいる。
今日は火の子も、授業見学会に参加するけれど、ウィオもお兄さんたちも忙しくて、火の子の相手をしていられない。お義姉さんは今日の夕方到着予定なので、火の子のことはトゥレボルから来ている神官にお願いしてある。
「リュカ、今日はトゥレボルの神官たちの言うことを、ちゃんと聞くように」
「はい」
トゥレボルを離れてからも、その後を気にしてくれていた人たちだから、成長したところを見せてあげてね。
一緒に馬車に乗り込んで、学園へと向かう。今日は授業見学会と夕方の花火。そして、明日が模擬戦だ。
ウィオとお兄さんたちはこれから、周辺の国から到着した魔術師たちの接待だ。マダム先生は授業見学会の責任者なので、手助けは期待できない。ウィオのフォローはオレにかかっているのだ。がんばるぞー。
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