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学園編
129. お祭りはにぎやかに
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今回子どもたちは、模擬戦を見るだけで主役ではない。それだけではお祭りとしてさみしい気がする。せっかくだからもうちょっと盛り上げたい。となると、やっぱりあれかな。
『オレ、姿を見せようか? 開校式のときの大きい姿』
「やめろ」
『だけど、子どもたちが喜ぶよ?』
「だめだ。次は二十年後くらいにしてくれ」
『そんなの、みんなに忘れられちゃうじゃない』
かっこいいオレの姿が忘れられちゃうなんて、残念過ぎるよ。開校式のときにあれだけよろこんでくれたんだから、今回もよろこんでくれると思ったのに。
「神獣様の像が出来上がりましたので、子どもたちはよろこんでいますよ。見学会で多くの方にもご覧いただけます」
『おお、できたんだ。除幕式は、オレが布をひっぱるよ!』
かけてある白い布をひっぱる、お披露目式があるよね。オレの出番ができたよ。やるやる。張り切っちゃう。
と思ったのに、この世界には除幕式のようなものはないらしい。設置された時点で、すでにお披露目は終わっているそうだ。残念だなあ。どんな像になったのかは、後で見に行ってみよう。
『じゃあさ、前夜祭で、花火をパーッと上げようよ』
「それは、子どもたちがよろこびますね。ですが、学園からではなく、少し離れたところから上げたほうが、子どもたちもきれいに見えるでしょう」
「兄上にお願いして、領主の館からあげるか」
「あそこでしたら、学園の訓練場からでもきれいに見えそうですな」
マダム先生たちは、新年のお城での打ち上げを少し離れたところから見た経験から、学園から少し離れたところを提案してきた。確かに、真下で見る花火もいいけど、それは開校式の前夜祭でやったから、今回はお兄さんのお屋敷にしよう。岩山の上にあるから、自治領内のどこからでも見えそうだ。
子どもたちは、学園の訓練場に集めてみんなで見れば、きっと楽しい思い出になるよね。
「花火の魔法陣は、この機に公開することになっていますが、問題ありませんか?」
「王宮とも調整した。問題ない」
「販売すれば、かなりの売り上げになったでしょうに」
「ルジェの希望だ」
売ってもよかったんだけど、せっかくの夜空の祭典だから、できればいろんな国で多くの人に楽しんでほしい。
だから、一つだけ条件をつけさせてもらった。無料で公開する代わりに、花火の魔法陣でお金もうけをするのは禁止。もし、新しい花火を開発したら、それも無料でみんなに公開してもらう。
平和の象徴である花火を、お金もうけや戦闘に使用することは、絶対に許さない。それがオレの意向って言えば、きっとみんな聞いてくれる。
「神獣様からの贈りもの、ということを強調しましょう」
「それなら、悪用を抑えられるでしょうな」
『キャン』
美味しいものはみんなで食べればもっと美味しくなるように、花火だってみんなで見たほうが楽しいよ。
それに、花火の発展のためには、いろんな人のアイデアが必要だ。オレも想像しないような花火が新しく生まれるとうれしい。いつかこの世界でも、花火が季節の風物詩になるといいなあ。
そうだ、いいことを思いついた。
『街のお店には見学会のことは伝えてある?』
「正式には伝えていませんが、宿の予約が入るので、知っているはずです」
『夜に花火をあげるって伝えておいたら、屋台を出したりしてくれるんじゃないかな?』
花火大会と言えば、屋台でしょう。たこ焼きとか、焼き鳥とか、りんごあめがあるとうれしいよねえ。せっかくだから、街全体で盛り上がろうよ。ただし、学園の街だから、お酒はほどほどにしてね。
「ルジェが食べたいだけだろう」
『もちろん食べたいけど、こういうのは雰囲気を楽しむんだよ』
料理長さんやお兄さんのお屋敷の料理人さんの作ってくれたご飯のほうが、オレの舌に合って美味しいのは分かっている。だけど、やっぱり屋台で買って食べ歩きをする、そういう雰囲気って特別だよね。お祭りってそういうものでしょう。貴族だとそういう経験がないのかな。
「街の者には、私から伝えましょう。住民と上手くやっていくのは、学園にとっても、予科の子どもたちにとっても、重要でしょう」
「頼む」
町医者先生なら、いいように間を取り持ってくれそうだ。
公爵領から王領になったと思ったら自治領に変わり、学園ができて人が押し寄せてくる。昔からこの地に住んでいた人からすると、目まぐるしい変化に不満をためているかもしれない。
ウィオでは気づけない、そういうところをさり気なくフォローしてくれる町医者先生が学園に加わってくれたのは、幸運だ。
『今回は無理だけど、地元住民のためのイベントを開催したらどうかな?』
「住民のため?」
『そう。今回の花火だって、街の人たちはお仕事で見る暇なんてないでしょう? 何もないときにしないと、楽しめないよ』
「そうか。兄上に相談しておく」
ウィオは住民を喜ばせる必要性をあまり感じていないようだけど、学園を受け入れてもらうためには重要なことだと思う。そのあたりは、この街の責任者であるお兄さんのほうが考えていそうだ。
お兄さんと一緒に、住民がよろこんでくれるようなことをできるといいな。そのときはオレも協力するよ。
『オレ、姿を見せようか? 開校式のときの大きい姿』
「やめろ」
『だけど、子どもたちが喜ぶよ?』
「だめだ。次は二十年後くらいにしてくれ」
『そんなの、みんなに忘れられちゃうじゃない』
かっこいいオレの姿が忘れられちゃうなんて、残念過ぎるよ。開校式のときにあれだけよろこんでくれたんだから、今回もよろこんでくれると思ったのに。
「神獣様の像が出来上がりましたので、子どもたちはよろこんでいますよ。見学会で多くの方にもご覧いただけます」
『おお、できたんだ。除幕式は、オレが布をひっぱるよ!』
かけてある白い布をひっぱる、お披露目式があるよね。オレの出番ができたよ。やるやる。張り切っちゃう。
と思ったのに、この世界には除幕式のようなものはないらしい。設置された時点で、すでにお披露目は終わっているそうだ。残念だなあ。どんな像になったのかは、後で見に行ってみよう。
『じゃあさ、前夜祭で、花火をパーッと上げようよ』
「それは、子どもたちがよろこびますね。ですが、学園からではなく、少し離れたところから上げたほうが、子どもたちもきれいに見えるでしょう」
「兄上にお願いして、領主の館からあげるか」
「あそこでしたら、学園の訓練場からでもきれいに見えそうですな」
マダム先生たちは、新年のお城での打ち上げを少し離れたところから見た経験から、学園から少し離れたところを提案してきた。確かに、真下で見る花火もいいけど、それは開校式の前夜祭でやったから、今回はお兄さんのお屋敷にしよう。岩山の上にあるから、自治領内のどこからでも見えそうだ。
子どもたちは、学園の訓練場に集めてみんなで見れば、きっと楽しい思い出になるよね。
「花火の魔法陣は、この機に公開することになっていますが、問題ありませんか?」
「王宮とも調整した。問題ない」
「販売すれば、かなりの売り上げになったでしょうに」
「ルジェの希望だ」
売ってもよかったんだけど、せっかくの夜空の祭典だから、できればいろんな国で多くの人に楽しんでほしい。
だから、一つだけ条件をつけさせてもらった。無料で公開する代わりに、花火の魔法陣でお金もうけをするのは禁止。もし、新しい花火を開発したら、それも無料でみんなに公開してもらう。
平和の象徴である花火を、お金もうけや戦闘に使用することは、絶対に許さない。それがオレの意向って言えば、きっとみんな聞いてくれる。
「神獣様からの贈りもの、ということを強調しましょう」
「それなら、悪用を抑えられるでしょうな」
『キャン』
美味しいものはみんなで食べればもっと美味しくなるように、花火だってみんなで見たほうが楽しいよ。
それに、花火の発展のためには、いろんな人のアイデアが必要だ。オレも想像しないような花火が新しく生まれるとうれしい。いつかこの世界でも、花火が季節の風物詩になるといいなあ。
そうだ、いいことを思いついた。
『街のお店には見学会のことは伝えてある?』
「正式には伝えていませんが、宿の予約が入るので、知っているはずです」
『夜に花火をあげるって伝えておいたら、屋台を出したりしてくれるんじゃないかな?』
花火大会と言えば、屋台でしょう。たこ焼きとか、焼き鳥とか、りんごあめがあるとうれしいよねえ。せっかくだから、街全体で盛り上がろうよ。ただし、学園の街だから、お酒はほどほどにしてね。
「ルジェが食べたいだけだろう」
『もちろん食べたいけど、こういうのは雰囲気を楽しむんだよ』
料理長さんやお兄さんのお屋敷の料理人さんの作ってくれたご飯のほうが、オレの舌に合って美味しいのは分かっている。だけど、やっぱり屋台で買って食べ歩きをする、そういう雰囲気って特別だよね。お祭りってそういうものでしょう。貴族だとそういう経験がないのかな。
「街の者には、私から伝えましょう。住民と上手くやっていくのは、学園にとっても、予科の子どもたちにとっても、重要でしょう」
「頼む」
町医者先生なら、いいように間を取り持ってくれそうだ。
公爵領から王領になったと思ったら自治領に変わり、学園ができて人が押し寄せてくる。昔からこの地に住んでいた人からすると、目まぐるしい変化に不満をためているかもしれない。
ウィオでは気づけない、そういうところをさり気なくフォローしてくれる町医者先生が学園に加わってくれたのは、幸運だ。
『今回は無理だけど、地元住民のためのイベントを開催したらどうかな?』
「住民のため?」
『そう。今回の花火だって、街の人たちはお仕事で見る暇なんてないでしょう? 何もないときにしないと、楽しめないよ』
「そうか。兄上に相談しておく」
ウィオは住民を喜ばせる必要性をあまり感じていないようだけど、学園を受け入れてもらうためには重要なことだと思う。そのあたりは、この街の責任者であるお兄さんのほうが考えていそうだ。
お兄さんと一緒に、住民がよろこんでくれるようなことをできるといいな。そのときはオレも協力するよ。
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