願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

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学園編

128. 学園長の職務

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 誘拐の黒幕探しは宰相さんたちに任せて、ネウラに来ている。ウィオの本来の仕事である学園長として、授業見学会と入学試験の打ち合わせのためだ。

 商人さんの家族は無事に救出されたらしい。何も言わなければオレが乗りこんでいくと思ったのか、「これから救出に向かう」、「救出部隊が現地についた」、「救出が成功した」という簡単な報告はもらえた。他国でオルデキアの人間が表立っては活動できないから、おそらくはスパイ的な人たちがひっそりと活躍したのだと思う。今は、商人さんに誘拐を指示した人の特定を行っているところらしい。
 ひとまず、商人さんの家族が無事でホッとした。とはいえ、お姉ちゃんたちが怖い思いをしたのも事実だから、毎日足の小指を角にぶつけるのは、商人さんは特別に七日間で許してあげよう。お金をもらってお嬢様の馬車を襲った実行犯は一年間ね。

 話を学園に戻すと、入学試験が目の前に迫っている。入学試験自体は、内容は去年と大きく変わらないので準備は済んでいるが、その前の行事のために、話し合いが必要なのだ。

 遠くから来る入学希望者のために、学園祭と授業見学会のすぐ後に、入学試験を行う。けれど、最初に入学した子どもたちが最終学年になるまでは、見せるものもあまりないので学園祭は行わない、と学科長たちと決めた。
 そのときに、学園祭の代わりに、ウィオと部隊長さんの模擬戦を子どもたちに見せるのはどうかという案が出た。というか、オレが出した。だって見たいでしょ。それに、水の子に部隊長さんの水魔法を見せてあげたい。
 部隊長さんは国に所属する騎士だから、王様の許可が必要をもらう必要があって、相談事項となっていた。けれど、部隊長さんがオレをトップとする特別部隊の所属になったことで、オレが希望するなら王様の許可はいらなくなったので、模擬戦の開催が決定した。
 と、ここまでは、順調に決まった。

 問題は、マダム先生からその模擬戦のことを聞いたマトゥオーソの宮廷魔術師から、自分たちも見学したいと申し入れを受けたことだ。それに対して、子どもたちのために、目まで属性が出ている精霊の愛し子が魔法を見せるのと引き換えならば、と条件を出したところ、近隣の国がこぞって手を上げたのだ。見たいのが模擬戦なのか、オレの加護を持つウィオの魔法なのか、それともオレ自身なのかはよく分からないけど、まあとにかく大注目のイベントとなってしまった。
 いろいろな魔法を見せてあげるのは、子どもたちのためになるだろうということで、その希望を受け入れる。授業見学会よりも、模擬戦のほうが盛り上がりそうだけど、そういうお祭りに学友と参加するのも、青春って感じがしていいよね。

「授業見学の申し込みですが、想定よりは少なかったので、なんとかなりそうです」
「やはり有料にしたのがよかったか」
「そのようですね」

 授業見学の申し込みは子ども一人につき保護者一人まで付き添い可能で、有料とした。受験する場合は、その料金がそのまま受験料となり、そして合格したあかつきには、授業料の一部となる。ちょっとお高めに設定したので、物見遊山で参加する人はだいぶ排除できたようだ。
 ただし、入学をこの国の庶民に限定している予科の授業見学は、無料にしている。どんな授業をしているのか見てから入学を考えようと思っている庶民に、見学料を払えと言っても難しい。

「模擬戦は、見学希望者が多すぎるので、どうしましょうか」
『今年は子どもたちだけにしたら?』
「すでにうわさが広がりすぎているので、それは無理です」

 国内外の貴族から希望が寄せられているらしい。もともと観客として想定している相手ではないから断ってもいいけど、初年度からよくないうわさが広がるのは避けたい。

「入れ替えて二回にするか。部隊長と私の模擬戦は両方、周辺国からの魔術師はどちらか、ならなんとかなるだろう」
「それでも入りきるでしょうか」

 お客さんに二回やってとは言えないので、魔術師を二グループに分ける。三グループに分けては内容が薄くなってしまうので、二回までしかできない。

『授業見学会の人以外は、抽選にしたら?』
「なるほど。それはよさそうですね」

 困ったときは抽選だよね。人気イベントの抽選に外れたって、同僚がよくなげいていたよなあ。
 抽選のためにはネウラまで来てもらわないといけないけれど、そもそも宿が予約できなければ、抽選に来ることもできないし、地元以外の人は、宿争奪戦が実質の抽選かもねえ。

「観客席は、貴族と庶民で分けますか?」
「できれば分けたくないが……」
「トラブル回避のためには分けたほうがいいでしょう」

 平等をうたう学園としては分けたくない。けれど、分けないとトラブルが起きる。そのときに、辛い思いをするのは庶民だ。分けるのが無難だろう。

 それよりも、気になることがある。模擬戦を披露する訓練場は、広いスペースは取られているものの、観覧席はない。まだそこまで工事が進んでいない。学園祭が開かれないからと、後回しになっている。

『観客席は作らないの? 後ろのほうの人は見にくいよね』
「今から間に合うでしょうか」
『今回は、オレが』
「やめろ。雪の席など、冷たくて座っていられない」

 急いで足場を組んで、事故があったら目も当てられない。安全第一。だから、オレが雪で作ろうと思ったのに、ウィオだって氷なんだから大差ないのに、ひどいよ。

「土の魔術師に協力を要請するのはどうでしょうか。それが魔法の披露ということで」
「お願いしてみよう」

 アチェーリからは、土の精霊の愛し子が、参加してくれることになっている。お願いすれば、簡単な段差を作ってもらえそうだ。
 トゥレボルからは、水の子の授業参観のノリで、そのとき動ける神子が全員来ると聞いているので、土の神子も来るかもしれない。勢ぞろいすれば、会場がカラフルになりそうだな。
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