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学園編
103. ひなの将来が心配。原因は主にオレ
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「ちびっ子、このひな、なんとかしてください!」
『副隊長さんの魔力が気に入ったみたいだよ』
頭から降ろそうとする副隊長さんの手から上手に逃げて、赤毛をくわえたり、つついたりしている。遊んでいるのではなく、身体から漏れ出る魔力を食べようとしているのだ。オレがご飯の代わりに魔力をあげていたから、魔力は食べものだと思っているらしい。
「まさか、人間を食べるようになりませんよね?」
『それはない、と思う。オレが魔力をあげていたから、魔力をご飯だと思ってるだけで』
「念のため聞きますが、ミディルの森の薬草のように、変質することもありませんね?」
変質した薬草とは、オレがうっかり神力をたくさんばらまいたために、神気を宿してしまった薬草のことだ。ちなみに、エリクサーの材料の一つだけど、人間には知られていない。
あの薬草のように、ひな鳥が神気を宿してしまうのではないかと、副隊長さんは心配しているのだ。
それはないよ。魔力だけで、神力はあげていないから。ちょっと自信がないけど。
神力を少し食べたからって、神鳥にはならないよね? ならないはず。ないといいなあ。キュウ。
「ウィオラス、飼い主の監督不行き届きですよ!」
「そうだな。その可能性は考えていなかった。すまない」
「どうするんですか!」
怒られてしまったウィオが、すまなそうな顔をしながら、副隊長さんの耳元でささやく。
「ヴィン、もう一つ伝えることがある。ルジェによると、そのひなは動物と魔物の交配種らしい」
「交配種というのは?」
「ドラゴンの住む山の周りで、神が実験したんじゃないかと」
これは秘密だが、とウィオが伝えた内容に、副隊長さんが絶句している。
交配種と言っても、瘴気は持ってないし、危険はない。神様が実験で混ぜてみただけだから、ちょっと珍しい動物ってだけだよ。どうしようもなく飢えていなければ、人間や動物を襲うこともないはず。たぶん、きっと。
「……ちびっ子、返してきなさい!」
『キャウン』
「ヴィンセント、使役獣を迎えると聞いてきたんだが、どうした?」
許可をもらいに行った隊員と一緒に、騎士団長さんがきてくれた。救世主だ。オレはウィオの肩から騎士団長さんの肩へと飛び移る。こういうときは、権力に守ってもらおう。
「団長、ちびっ子が後先考えず拾って育てたため、このひな鳥がどんな鳥になるのか分かりません。そんな危険な動物を、城に入れるわけには行きません。元いた場所に返させます」
「どういうことだ?」
まったく状況がつかめない騎士団長さんが、近くにいる騎士に説明を求めている。怒っている副隊長さんではなく、冷静な第三者に話を聞くことにしたらしい。副隊長さんは、隊員の説明に口を挟もうとして、けれど言葉が出ずに、黙ってしまった。交配種のことは、誰が聞いているか分からないここでは言えず、反対している理由をうまく説明できない。
一通り話を聞いた騎士団長さんは、オレを見て、ウィオを見て、ひなを見て、そして副隊長さんに向かい合う。
「ヴィンセント、面倒を見ろ」
「団長! 危険です!」
「だったらなおさら、そんな存在を野に放つわけにいかないだろう。命令だ」
騎士団長さんの命令で、ひなの飼い主が決まった。周りの騎士たちが拍手している。ここで育てるのは無理だ、なんて言ったら、暴動が起きそうだ。
隊員たちの意向をくんだのか、オレの希望をかなえてくれたのか、どっちか分からないけど、騎士団長さんありがとう。おそらく副隊長さんが言えないことがあるのも分かったうえで、決断してくれたのだろう。
だけど、危険って大げさだよ。少しだけ魔物の血をひいていて、ちょっとだけ神力を食べたかもしれないってだけで。普通の、たぶん普通の鳥として成長するから。大丈夫だって。
「ぴいちゃん、よかったな。俺たちが面倒見てやるからな」
「まずはパパに名前をつけてもらおうな」
「……ちびっ子が拾ったんだから、ちびっ子がつけてください」
副隊長さんが投げやりだ。命令に逆らえないから、あきらめて受け入れてはくれるようだけど。
名付けは初めてのプレゼントだよ。そこは副隊長さんがつけてあげるのがいいと思う。
あ、ごめん、分かりました。考えるから、にらまないで。
『うーん、フェニックス?』
「どういう意味です?」
『不死鳥。死なないの。あれ、死んでも炎の中からよみがえるんだけっけ?』
赤い鳥といえば、やっぱり不死鳥でしょう。たしか永遠の命の象徴だよね。不死鳥のごとく復活するって言うから、きっとよみがえるんだろう。第三部隊の使役獣として、ぴったり。
「却下。そんな、とんでもない存在になりそうな名前はやめてください」
「ヴィンセント、狐くんにつけてもらう時点で、とんでもない存在になるんじゃないか?」
「じゃあ、団長が決めてください」
「いや、飼い主はお前だろう」
名づけを押しつけ合っているけど、気持ちは分かるよ。そんな重要なこと、なるべくなら避けたいよね。大きくなって、「なんでもっといい名前つけてくれなかったの」なんて言われたら立ち直れない。
あ、オレはウィオが付けてくれた名前を気に入っているよ。いい名前だよねー。
『副隊長さんの魔力が気に入ったみたいだよ』
頭から降ろそうとする副隊長さんの手から上手に逃げて、赤毛をくわえたり、つついたりしている。遊んでいるのではなく、身体から漏れ出る魔力を食べようとしているのだ。オレがご飯の代わりに魔力をあげていたから、魔力は食べものだと思っているらしい。
「まさか、人間を食べるようになりませんよね?」
『それはない、と思う。オレが魔力をあげていたから、魔力をご飯だと思ってるだけで』
「念のため聞きますが、ミディルの森の薬草のように、変質することもありませんね?」
変質した薬草とは、オレがうっかり神力をたくさんばらまいたために、神気を宿してしまった薬草のことだ。ちなみに、エリクサーの材料の一つだけど、人間には知られていない。
あの薬草のように、ひな鳥が神気を宿してしまうのではないかと、副隊長さんは心配しているのだ。
それはないよ。魔力だけで、神力はあげていないから。ちょっと自信がないけど。
神力を少し食べたからって、神鳥にはならないよね? ならないはず。ないといいなあ。キュウ。
「ウィオラス、飼い主の監督不行き届きですよ!」
「そうだな。その可能性は考えていなかった。すまない」
「どうするんですか!」
怒られてしまったウィオが、すまなそうな顔をしながら、副隊長さんの耳元でささやく。
「ヴィン、もう一つ伝えることがある。ルジェによると、そのひなは動物と魔物の交配種らしい」
「交配種というのは?」
「ドラゴンの住む山の周りで、神が実験したんじゃないかと」
これは秘密だが、とウィオが伝えた内容に、副隊長さんが絶句している。
交配種と言っても、瘴気は持ってないし、危険はない。神様が実験で混ぜてみただけだから、ちょっと珍しい動物ってだけだよ。どうしようもなく飢えていなければ、人間や動物を襲うこともないはず。たぶん、きっと。
「……ちびっ子、返してきなさい!」
『キャウン』
「ヴィンセント、使役獣を迎えると聞いてきたんだが、どうした?」
許可をもらいに行った隊員と一緒に、騎士団長さんがきてくれた。救世主だ。オレはウィオの肩から騎士団長さんの肩へと飛び移る。こういうときは、権力に守ってもらおう。
「団長、ちびっ子が後先考えず拾って育てたため、このひな鳥がどんな鳥になるのか分かりません。そんな危険な動物を、城に入れるわけには行きません。元いた場所に返させます」
「どういうことだ?」
まったく状況がつかめない騎士団長さんが、近くにいる騎士に説明を求めている。怒っている副隊長さんではなく、冷静な第三者に話を聞くことにしたらしい。副隊長さんは、隊員の説明に口を挟もうとして、けれど言葉が出ずに、黙ってしまった。交配種のことは、誰が聞いているか分からないここでは言えず、反対している理由をうまく説明できない。
一通り話を聞いた騎士団長さんは、オレを見て、ウィオを見て、ひなを見て、そして副隊長さんに向かい合う。
「ヴィンセント、面倒を見ろ」
「団長! 危険です!」
「だったらなおさら、そんな存在を野に放つわけにいかないだろう。命令だ」
騎士団長さんの命令で、ひなの飼い主が決まった。周りの騎士たちが拍手している。ここで育てるのは無理だ、なんて言ったら、暴動が起きそうだ。
隊員たちの意向をくんだのか、オレの希望をかなえてくれたのか、どっちか分からないけど、騎士団長さんありがとう。おそらく副隊長さんが言えないことがあるのも分かったうえで、決断してくれたのだろう。
だけど、危険って大げさだよ。少しだけ魔物の血をひいていて、ちょっとだけ神力を食べたかもしれないってだけで。普通の、たぶん普通の鳥として成長するから。大丈夫だって。
「ぴいちゃん、よかったな。俺たちが面倒見てやるからな」
「まずはパパに名前をつけてもらおうな」
「……ちびっ子が拾ったんだから、ちびっ子がつけてください」
副隊長さんが投げやりだ。命令に逆らえないから、あきらめて受け入れてはくれるようだけど。
名付けは初めてのプレゼントだよ。そこは副隊長さんがつけてあげるのがいいと思う。
あ、ごめん、分かりました。考えるから、にらまないで。
『うーん、フェニックス?』
「どういう意味です?」
『不死鳥。死なないの。あれ、死んでも炎の中からよみがえるんだけっけ?』
赤い鳥といえば、やっぱり不死鳥でしょう。たしか永遠の命の象徴だよね。不死鳥のごとく復活するって言うから、きっとよみがえるんだろう。第三部隊の使役獣として、ぴったり。
「却下。そんな、とんでもない存在になりそうな名前はやめてください」
「ヴィンセント、狐くんにつけてもらう時点で、とんでもない存在になるんじゃないか?」
「じゃあ、団長が決めてください」
「いや、飼い主はお前だろう」
名づけを押しつけ合っているけど、気持ちは分かるよ。そんな重要なこと、なるべくなら避けたいよね。大きくなって、「なんでもっといい名前つけてくれなかったの」なんて言われたら立ち直れない。
あ、オレはウィオが付けてくれた名前を気に入っているよ。いい名前だよねー。
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