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学園編
88. お手
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森から帰った翌日、朝はのんびりと過ごして、お昼から薬師ギルドに顔を出している。今日は、魔女のギルド長さんが、この街に来てくれることになっているのだ。薬学科との連携のために、領都へ会いに行こうと計画して薬師ギルドに予定を聞いたところ、たまたま隣街を訪れているところだから会いに来てくれることになったのだ。
「もうすぐ着きますので、こちらでお待ちください」
「ありがとうございます」
「こちらこそ。昨日はシャグがたくさん採れて、本当に感謝しています」
この街の薬師ギルド長が、出迎えてくれたけど、昨日の収穫にご機嫌な様子だ。
薬草採取の街として有名になったので、冒険者ギルドの買い取りカウンターには薬師が常駐しているそうだ。鮮度が命のものもあるだろうから、そのほうが効率いいよね。
「きれいな毛並みですね。触ってもいいですか?」
『キャン』
「どうぞ」
オレは薬草採取の鼻も一級品だけど、毛並みも極上だからね。
薬師ギルド長はもふもふ好きのようで、この街で採取犬が増えていることをよろこんでいる。
「私も飼いたいんですが、薬師は危険なものも扱うので無理なんですよ」
『キューン』
薬は、量や使い方を間違えれば毒にもなるから、飼い犬が間違って口に入れると危ない。だから見るだけで我慢しているのだと教えてくれた。
飼えないさみしさを、オレをなでることで癒せるなら、いくらでもどうぞ。
しばらく二人と一匹で穏やかな時間を過ごしていると、そこに魔女さんが到着したと連絡があった。
「ギルド長、領都のギルド長が到着されました。ウィオラス様を訪ねていらしたというお客様もご一緒です」
「お通ししてください」
ウィオのお客さんも一緒らしいけど、だれだろう。薬師ギルド長と一緒に来ると言うことは、権力を持っている側の人間のはずだ。
警戒するウィオの膝に乗って、入り口を見つめていると、普通の格好をした魔女さんと一緒に、見知った顔が入ってきた。
「ウィオラスさん、お久しぶりです。オルデキアの方とご一緒になりましたので、お連れしました」
「お久しぶりです。ウィオラス殿」
『キャン!』
「ランシュ殿、お久しぶりです。今はタイロンに?」
ウィオのお客さんは、二番目のお兄さんのお友だちだ。外交官としてアチェーリに赴任していて、食パンくんが巻き込まれたオークション騒動のときに初めて会った。その後、オルデキアに一時帰国しているあいだにお兄さんを訪ねてきたときにも会っている。
アチェーリからここタイロンに赴任先が変わったのかと思ったら、わざわざオレたちに会うために来てくれたそうだ。それで、魔女さんと入り口で一緒になって、一緒に案内されてきていた。
兄の友人だというウィオの説明に、ギルド長たちがよければ一緒に話をしようと席を勧めてくれた。ウィオの用事は、学園の薬学科との共同研究をお願いしたいということだけで、詳しい話はおじいちゃん先生と後日してもらう予定だ。魔女さんのほうも近くにいるならあいさつしておこうというだけの訪問なので、聞かれて困ることは何もない。
「なにかお助けできることがあるかと思いまして、ツウォンに向かったのですが、入れ違いになったようです」
「お気遣いありがとうございます」
これは、タイロンの王族にからまれたことを聞いて、飛んできてくれたっぽいぞ。だけど、ドラゴンの街に着いたときには、オレたちはすでにこの街に向けて出発していたので、後を追いかけてきてくれたらしい。
はるばるここまで遠征してきてくれた労をねぎらおうと、ウィオの膝から飛び降りて、ソファに座ったお兄さんのお友だちの膝へと飛び移る。お座りをして、右の前足を持ち上げて待っていると、笑って手を出してくれる。
「お手ですね」
『キャン!』
最初のあいさつは、お手、おかわりでしょう。それが終わると首の周りを優しくなでてくれる。そこ、もうちょっとお願い。
なでられていて、気づいた。匂いがするぞ。くんくん、ふんふん。
「ルジェ、何をしている」
『動物の匂いがするよ。犬かな?』
「ランシュ殿、動物の匂いがするようですが、何か飼っていらっしゃいますか?」
「さすが、薬草を見つけ出す鼻は鋭いですね。毛の長い犬を飼い始めましたよ」
『ワン!』
知り合いの飼い犬が産んだ子犬をもらって、飼い始めたらしい。オレの毛をなでながら、もう少し長いんですよ、と言っている。貴族の飼い犬で長毛種だと、アフガンハウンドみたいな子かな? きっと高貴な感じのする子だよね。
「ウィオラス殿のそちらの鳥は、イリファスへの結婚祝いですか?」
「この街に来る途中に、魔物に襲われてひん死のところを助けました。魔法が使えるようなので、オルデキアに帰ってから契約主を探します」
今日はひなも一緒に連れてきて、机の上にかごを置いている。そのひなは、さっきまでは周りを一生懸命見まわしていたけど、飽きたのか今は眠ってしまった。
そのひなを見て、あまり見かけない赤い鳥ということで、結婚祝いだと思ったそうだ。
結婚祝いに贈るなら青い鳥、という思い込みがあったから考えていなかったけど、お兄さんが使役獣を持ちたいなら任せてもいいな。
「もうすぐ着きますので、こちらでお待ちください」
「ありがとうございます」
「こちらこそ。昨日はシャグがたくさん採れて、本当に感謝しています」
この街の薬師ギルド長が、出迎えてくれたけど、昨日の収穫にご機嫌な様子だ。
薬草採取の街として有名になったので、冒険者ギルドの買い取りカウンターには薬師が常駐しているそうだ。鮮度が命のものもあるだろうから、そのほうが効率いいよね。
「きれいな毛並みですね。触ってもいいですか?」
『キャン』
「どうぞ」
オレは薬草採取の鼻も一級品だけど、毛並みも極上だからね。
薬師ギルド長はもふもふ好きのようで、この街で採取犬が増えていることをよろこんでいる。
「私も飼いたいんですが、薬師は危険なものも扱うので無理なんですよ」
『キューン』
薬は、量や使い方を間違えれば毒にもなるから、飼い犬が間違って口に入れると危ない。だから見るだけで我慢しているのだと教えてくれた。
飼えないさみしさを、オレをなでることで癒せるなら、いくらでもどうぞ。
しばらく二人と一匹で穏やかな時間を過ごしていると、そこに魔女さんが到着したと連絡があった。
「ギルド長、領都のギルド長が到着されました。ウィオラス様を訪ねていらしたというお客様もご一緒です」
「お通ししてください」
ウィオのお客さんも一緒らしいけど、だれだろう。薬師ギルド長と一緒に来ると言うことは、権力を持っている側の人間のはずだ。
警戒するウィオの膝に乗って、入り口を見つめていると、普通の格好をした魔女さんと一緒に、見知った顔が入ってきた。
「ウィオラスさん、お久しぶりです。オルデキアの方とご一緒になりましたので、お連れしました」
「お久しぶりです。ウィオラス殿」
『キャン!』
「ランシュ殿、お久しぶりです。今はタイロンに?」
ウィオのお客さんは、二番目のお兄さんのお友だちだ。外交官としてアチェーリに赴任していて、食パンくんが巻き込まれたオークション騒動のときに初めて会った。その後、オルデキアに一時帰国しているあいだにお兄さんを訪ねてきたときにも会っている。
アチェーリからここタイロンに赴任先が変わったのかと思ったら、わざわざオレたちに会うために来てくれたそうだ。それで、魔女さんと入り口で一緒になって、一緒に案内されてきていた。
兄の友人だというウィオの説明に、ギルド長たちがよければ一緒に話をしようと席を勧めてくれた。ウィオの用事は、学園の薬学科との共同研究をお願いしたいということだけで、詳しい話はおじいちゃん先生と後日してもらう予定だ。魔女さんのほうも近くにいるならあいさつしておこうというだけの訪問なので、聞かれて困ることは何もない。
「なにかお助けできることがあるかと思いまして、ツウォンに向かったのですが、入れ違いになったようです」
「お気遣いありがとうございます」
これは、タイロンの王族にからまれたことを聞いて、飛んできてくれたっぽいぞ。だけど、ドラゴンの街に着いたときには、オレたちはすでにこの街に向けて出発していたので、後を追いかけてきてくれたらしい。
はるばるここまで遠征してきてくれた労をねぎらおうと、ウィオの膝から飛び降りて、ソファに座ったお兄さんのお友だちの膝へと飛び移る。お座りをして、右の前足を持ち上げて待っていると、笑って手を出してくれる。
「お手ですね」
『キャン!』
最初のあいさつは、お手、おかわりでしょう。それが終わると首の周りを優しくなでてくれる。そこ、もうちょっとお願い。
なでられていて、気づいた。匂いがするぞ。くんくん、ふんふん。
「ルジェ、何をしている」
『動物の匂いがするよ。犬かな?』
「ランシュ殿、動物の匂いがするようですが、何か飼っていらっしゃいますか?」
「さすが、薬草を見つけ出す鼻は鋭いですね。毛の長い犬を飼い始めましたよ」
『ワン!』
知り合いの飼い犬が産んだ子犬をもらって、飼い始めたらしい。オレの毛をなでながら、もう少し長いんですよ、と言っている。貴族の飼い犬で長毛種だと、アフガンハウンドみたいな子かな? きっと高貴な感じのする子だよね。
「ウィオラス殿のそちらの鳥は、イリファスへの結婚祝いですか?」
「この街に来る途中に、魔物に襲われてひん死のところを助けました。魔法が使えるようなので、オルデキアに帰ってから契約主を探します」
今日はひなも一緒に連れてきて、机の上にかごを置いている。そのひなは、さっきまでは周りを一生懸命見まわしていたけど、飽きたのか今は眠ってしまった。
そのひなを見て、あまり見かけない赤い鳥ということで、結婚祝いだと思ったそうだ。
結婚祝いに贈るなら青い鳥、という思い込みがあったから考えていなかったけど、お兄さんが使役獣を持ちたいなら任せてもいいな。
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