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学園編
83. 特製ポーション
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悲鳴を聞いて駆けつけた先にいたのは、尻尾を丸めて足の間に隠しておびえている子犬、その前でロボを威嚇しているドーベルマン、そして、首筋をかまれて倒れているもう一頭のドーベルマンだ。さっきオレが聞いた犬の悲鳴は、かまれたドーベルマンがあげたのだろう。
それぞれの飼い主さんが、倒れたドーベルマンを気にしながら、子犬を狙っているロボを倒しているが、三人だけなので、少し苦戦している。
オレが現れたことによってロボの注意がこちらに向いた。
「狐くん! 逃げるんだ!」
『キャンキャン』
心配してくれてありがたいけど、大丈夫だよ。もうすぐウィオが到着するから、ロボをひきつけておこう。
鬼さんこちら、ふわふわの尻尾のほうへ、おいでー。
「ルジェ、いくぞ」
『キャン』
ウィオが走り込みながら、氷の矢を放ってきたので、お弁当に当たらないように気をつけながら、矢を避けて走り抜ける。ウィオの足元にたどり着くころには、ロボはすべて倒れた。
「何があった?」
「リュークがルジェくんを追いかけてしまって、それでキャンディーが」
「ジーロ、傷口にさわるな。瘴気がうつるぞ」
「ダメだ、ポーションが効かない。キャンディーちゃん! しっかりして!」
飼い主さんが上級ポーションをかけたものの、深い傷は治らない。魔物の瘴気に侵された傷には、ポーションが効きづらい。
子犬は、セントバーナードのような大型犬の子どもだから、足は太いしオレより身体も大きいけれど、まだ幼いのだ。待っていてと言われても、オレを助けようと追いかけてくれたのかもしれない。その子犬を守るために、ドーベルマンはやられてしまった。甘えん坊さんだけど、とても優しい子だ。
オレがもふもふ大集合に浮かれて注意を怠らなければ、こんなことは起きなかった。今のままではこの先飼い主さんと一緒に森をかけまわることができなくなる。
傷を浄化して治癒しよう。
「ルジェ」
『止めないで』
ドーベルマンに向かって歩きだしたオレに、ウィオが静止の声をかけてくるけれど、こればっかりはウィオの頼みでも聞けない。
「止めない。私に考えがある」
『ん?』
そう言うと、ウィオは初級ポーションを取り出して、倒れているドーベルマンに近づくと、傷口にかけた。
「初級ポーションか。ありがたいが、効かないぞ」
「私の学園に守護をくださった神獣は、動物たちの守護者だ」
「まさか! それは、神獣様のポーションなのか!?」
その言葉に驚き、それならば治るはずだと期待をこめて、傷口を見守っている。
だけどあれは、おじいちゃん先生がくれたポーションセットの中の一つで、なんの変哲もないただの初級ポーションだ。ウィオもそれは分かっているはずなのに、どういうこと?
しばらく待ってみたところで、当然ながら傷は治らない。
「兄さん、何も起きないぞ……?」
「動物には効果があると言われたのだが……」
ウィオの考えが分からなくて、戸惑いながら首をかしげていると、ウィオが何か言いたげな顔でオレを見た。
あ、もしかして、そのポーションが神獣印の特別製ってことにして、その裏でこっそり治せってことだったの?
もう、早く言ってよ。ウィオがそんなアドリブを入れてくるなんて思わないから、一緒に観客になっちゃったじゃないか。
ちょっと出遅れちゃったから、それっぽい演出をして治すか。光の精霊さん、傷の周りでいい感じに光って。
「あ! 光が!」
「本当に神獣様のポーションなのか!」
きらきらと傷口の周りが光っているので、その間に浄化と治癒をして、傷を消す。これで、あの光が治したと思ってくれるだろう。どう? いい感じにごまかせたんじゃない?
ウィオを見ると、小さくうなずいてくれたので、これで正解だったらしい。ふう、よかった。でも事前にプランは教えておいてよ。
倒れていたドーベルマンが、しっかりとした足取りで立ち上がる。傷口はきれいに塞がり、血もきれいにしておいたから、どこに傷があったのかもう分からない。
「キャンディーちゃん、よかった! よかったよ。本当に心配したんだよ」
『クーン』
感激している飼い主さんに頭をこすりつけると、飼い主さんから離れてオレのほうへと歩いてきた。オレが治したと分かっているようで、首筋に頭をよせて、感謝を伝えてくる。気にしないで。小さい子を守ってくれて、ありがとう。
「兄さん、あれは狐くんのためのものだったんじゃないのか?」
「ルジェがキャンディーを治してほしいと望んだ」
「狐くん、ありがとう。本当にありがとう」
『キャン』
どういたしまして。
くっついているオレたちのところに、子犬ともう一頭のドーベルマンも寄ってきたから、もふもふ団子ができあがっている。ドーベルマンのつるつるも、セントバーナードのもふもふも、どっちも堪能できていいねえ。治癒のごほうびは、これで十分。
それを見ている飼い主さんたちは笑顔だ。よかった。動物好きに悪い人はいないから、悲しい思いはしてほしくない。
「なあ兄さん、あのポーション、いくら払えばいい? ジーロにも、俺たちにも、あんな貴重なものを買える金はないんだが」
「このシャグで足りないのは分かっているが、今はこれしかない。この先何年かかっても払うから」
「私の分ももらってください。元はと言えば、リュークが飛び出してしまったからです」
「もらえない。そもそも、森のロボを集めたのは、ルジェだ」
『キューン』
はい、そうです。ごめんなさい。だから、お礼はいらないよ。それに、神獣印のポーションなんて最初からないからね。いくらでも作れるけれど、ウィオの許可が出ないんだもん。
「その代わりに、誰にも言わないでほしい」
「それは、もちろんだ」
三人とも決意をこめてうなずいてくれたので、大丈夫だろう。
それぞれの飼い主さんが、倒れたドーベルマンを気にしながら、子犬を狙っているロボを倒しているが、三人だけなので、少し苦戦している。
オレが現れたことによってロボの注意がこちらに向いた。
「狐くん! 逃げるんだ!」
『キャンキャン』
心配してくれてありがたいけど、大丈夫だよ。もうすぐウィオが到着するから、ロボをひきつけておこう。
鬼さんこちら、ふわふわの尻尾のほうへ、おいでー。
「ルジェ、いくぞ」
『キャン』
ウィオが走り込みながら、氷の矢を放ってきたので、お弁当に当たらないように気をつけながら、矢を避けて走り抜ける。ウィオの足元にたどり着くころには、ロボはすべて倒れた。
「何があった?」
「リュークがルジェくんを追いかけてしまって、それでキャンディーが」
「ジーロ、傷口にさわるな。瘴気がうつるぞ」
「ダメだ、ポーションが効かない。キャンディーちゃん! しっかりして!」
飼い主さんが上級ポーションをかけたものの、深い傷は治らない。魔物の瘴気に侵された傷には、ポーションが効きづらい。
子犬は、セントバーナードのような大型犬の子どもだから、足は太いしオレより身体も大きいけれど、まだ幼いのだ。待っていてと言われても、オレを助けようと追いかけてくれたのかもしれない。その子犬を守るために、ドーベルマンはやられてしまった。甘えん坊さんだけど、とても優しい子だ。
オレがもふもふ大集合に浮かれて注意を怠らなければ、こんなことは起きなかった。今のままではこの先飼い主さんと一緒に森をかけまわることができなくなる。
傷を浄化して治癒しよう。
「ルジェ」
『止めないで』
ドーベルマンに向かって歩きだしたオレに、ウィオが静止の声をかけてくるけれど、こればっかりはウィオの頼みでも聞けない。
「止めない。私に考えがある」
『ん?』
そう言うと、ウィオは初級ポーションを取り出して、倒れているドーベルマンに近づくと、傷口にかけた。
「初級ポーションか。ありがたいが、効かないぞ」
「私の学園に守護をくださった神獣は、動物たちの守護者だ」
「まさか! それは、神獣様のポーションなのか!?」
その言葉に驚き、それならば治るはずだと期待をこめて、傷口を見守っている。
だけどあれは、おじいちゃん先生がくれたポーションセットの中の一つで、なんの変哲もないただの初級ポーションだ。ウィオもそれは分かっているはずなのに、どういうこと?
しばらく待ってみたところで、当然ながら傷は治らない。
「兄さん、何も起きないぞ……?」
「動物には効果があると言われたのだが……」
ウィオの考えが分からなくて、戸惑いながら首をかしげていると、ウィオが何か言いたげな顔でオレを見た。
あ、もしかして、そのポーションが神獣印の特別製ってことにして、その裏でこっそり治せってことだったの?
もう、早く言ってよ。ウィオがそんなアドリブを入れてくるなんて思わないから、一緒に観客になっちゃったじゃないか。
ちょっと出遅れちゃったから、それっぽい演出をして治すか。光の精霊さん、傷の周りでいい感じに光って。
「あ! 光が!」
「本当に神獣様のポーションなのか!」
きらきらと傷口の周りが光っているので、その間に浄化と治癒をして、傷を消す。これで、あの光が治したと思ってくれるだろう。どう? いい感じにごまかせたんじゃない?
ウィオを見ると、小さくうなずいてくれたので、これで正解だったらしい。ふう、よかった。でも事前にプランは教えておいてよ。
倒れていたドーベルマンが、しっかりとした足取りで立ち上がる。傷口はきれいに塞がり、血もきれいにしておいたから、どこに傷があったのかもう分からない。
「キャンディーちゃん、よかった! よかったよ。本当に心配したんだよ」
『クーン』
感激している飼い主さんに頭をこすりつけると、飼い主さんから離れてオレのほうへと歩いてきた。オレが治したと分かっているようで、首筋に頭をよせて、感謝を伝えてくる。気にしないで。小さい子を守ってくれて、ありがとう。
「兄さん、あれは狐くんのためのものだったんじゃないのか?」
「ルジェがキャンディーを治してほしいと望んだ」
「狐くん、ありがとう。本当にありがとう」
『キャン』
どういたしまして。
くっついているオレたちのところに、子犬ともう一頭のドーベルマンも寄ってきたから、もふもふ団子ができあがっている。ドーベルマンのつるつるも、セントバーナードのもふもふも、どっちも堪能できていいねえ。治癒のごほうびは、これで十分。
それを見ている飼い主さんたちは笑顔だ。よかった。動物好きに悪い人はいないから、悲しい思いはしてほしくない。
「なあ兄さん、あのポーション、いくら払えばいい? ジーロにも、俺たちにも、あんな貴重なものを買える金はないんだが」
「このシャグで足りないのは分かっているが、今はこれしかない。この先何年かかっても払うから」
「私の分ももらってください。元はと言えば、リュークが飛び出してしまったからです」
「もらえない。そもそも、森のロボを集めたのは、ルジェだ」
『キューン』
はい、そうです。ごめんなさい。だから、お礼はいらないよ。それに、神獣印のポーションなんて最初からないからね。いくらでも作れるけれど、ウィオの許可が出ないんだもん。
「その代わりに、誰にも言わないでほしい」
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三人とも決意をこめてうなずいてくれたので、大丈夫だろう。
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