願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

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学園編

80. もふもふ採取隊

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 今日はもふもふ採取隊を結成して、薬草探しに行く。
 昨日は、美味しいご飯を食べたあとに、お店の外でドーベルマン二頭と遊んでいたら、オレがいるといううわさが広がり、最終的にこの街にいる薬草採取犬のほとんどが集まってくれた。それで、急きょこの合同採取が決まった。
 目指すのは、シャグというショウガのような根っこだ。地上に目印になるものが何も出ていないから、もふもふ隊の鼻を頼りに探すしかない。希少価値が高く、季節関係なく採取できるから、おじいちゃん先生へのお土産にぴったりだと思う。

「ルジェくん、ウィオラスさん、今日はお願いしますね」
『キャン』

 前回一緒に薬草を採取した、剣士と魔術師のかっこいいお姉さんたちも飼い犬を連れて参加だ。こちらはチワワみたいな子と、マルチーズみたいな子で、何かあったときに抱き上げて運べるように、小型犬にしたそうだ。戦闘目的ではなく、薬草を探すだけなら、身体が大きい必要はない。
 ここは、薬草採取獣のパイオニアとして、いいところを見せなきゃ。

 お姉さんたちの小型犬たちは、意気揚々と先頭をきって森の中を進んでいる。
 それについていく子犬は、たまにお姉さんたちとも一緒に依頼を受けているという冒険者が飼い始めた採取犬見習いだ。足が太いからたぶん大きくなるんだろうけど、無邪気に先輩を追いかけていて可愛いねえ。他にも、中型犬が周りを走り回っているけど、お姉さんたちの小型犬をリーダーとして認めているようだ。

 一方ドーベルマンたちは飼い主さんの周りをウロウロしている。ところどころで飼い主さんが巨体を抱き上げて運んでいるけど、どういうことよ。

「キャンディーちゃんは、段差が苦手なんだ」
『クーン』

 いやいや、段差って言っても、オレでも余裕で歩いて登れる高さだよ? オレより足が長いくせに、なにを甘えたことを言ってるんだ。

「まったく情けない。それに比べて、ミルちゃんは優秀ですねー」
「そっちだって、小さな水たまりでさえ飛び越えられないくせに」

 こっちのドーベルマンは、水が苦手なのか。お風呂は気持ちいいのになあ。まあどっちもどっちだね。飼い主さんが甘やかすから、嫌なことがあると、飼い主さんを見つめてなんとかしてもらうくせがついているらしい。
 この二頭は兄弟犬で、同じときに引き取ったから、飼い主さんたちは何かと張り合っているらしい。だけど、お互いの犬には優しいから、多分口げんかを楽しんでいるだけなんだろう。

「ルジェも子どものころは、よく段差で落ちていた」
「おおー、仲間だ」
「親近感がわくなあ」

 ちょっと待ってよ。オレが段差を苦手としていたのは、子どもで頭が重かったからだよ。大人になっても苦手なのと一緒にしないでよ。
 あ、先に進んでオレたちを待っている剣士のお姉さんが、冷たい目でこっちを見ている。オレもポンコツだと思われちゃうじゃないか。オレはこっち側じゃなくて、そっち側なのに。
 優秀な小型犬チームに入れてほしくて、とことこと軽く走って近づくと、魔術師のお姉さんが笑顔で迎えてくれる。

「前にルジェくんが見つけてくれたところのシャグは、採りすぎたのか、なくなってしまったの。だから、新しいところを見つけてくれるとうれしいな」
『キャン』

 今は採りすぎないように、買取制限がかかっているそうだ。けれど、まだ新しい群生地を見つけることができていないらしい。
 まかせて。オレの鼻で探して、みんなにお手本を見せてあげるよ。
 さあ、小型もふもふチームで、ショウガもどきを探そう。レッツゴー!

「ピコ、待て」
「ニリル、先に行ってはダメ。魔物が出たら危ないわ!」
『キャンキャン』

 大丈夫だよ。このあたりには強い魔物はいないし、いてもオレが守るから。
 お姉さんたちが、いつもと違って言うことを聞かないでオレについてくる犬たちにとまどっている。オレの近くにいたいと思うのは動物の本能だから、気にしないで。

「ルジェにまかせればいい」
「でも……」
「魔物の気配には敏感だ。心配ない」

 そうそう。だから、小型もふもふチームで周りを探してくるね。よーい、キャン!


 小型犬の特性を活かして、茂みや背の低い木の根元に入り込んで、ショウガもどきの匂いを探す。クンクン、フンフン、どこかなあ。
 あ、ちょっと、オレのリュックに入っている特製弁当をかぐのはやめてよ。これはオレのためのお昼ご飯なの。どんなに頼まれてもあげないから。それよりも、ショウガもどきがほのかに香っているよ。ほら、みんな、集中して。

『きゅう?』
『くーん』

 実物をかいだことがないから気づけないのか、お弁当に気を取られているのか、どっちだろう。これは、本物を掘って、見せてあげるしかないな。こっちかなー、そっちかなー、どっちかなー。
 見つけた! さあ、掘ろう。ほりほり、ほりほり。

『みんな、この匂いを覚えて、探して』
『わん!』
『きゃん!』

 ショウガもどきの表面が見えるくらいに地面を掘ったら、オレの周りをうろうろしている子たちに、この匂いを地面の下から探すようにお願いする。
 真面目にふんふんと探している子もいるけど、探索に飽きて地面を掘って遊んでいる子もいる。そのまま遊んで森の中を楽しんでいていいよ。こういうのは、遊びの延長じゃないと続かないからね。それで、薬草を見つける楽しみを知れば、飼い主さんも犬も、どちらも幸せになれる。
 見つけたら飼い主さんに報告して、いっぱいほめてもらおうね。
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