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学園編
46. 雪をよける魔法
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「ここ一面の雪を掘るのか? 応援を呼んで全員でやるか」
「俺が風の魔法で雪を散らそう」
「やめろ、おまえの大雑把な魔法じゃ、キノコもバラバラになるだろう。氷の騎士様、なんとかできません?」
「ルジェ、雪を飛ばせるか?」
『キャン』
「おお、狐の魔法は初めてみるぞ。頑張れ」
ここは期待に応えないとね。見せてあげよう、オレの雪魔法を。
いざ、キノコよ、出てこい! 秘技、雪よけの術! フン!
『これでいい?』
「一個ずつ、キノコの周りの雪を鼻息で散らすのか……」
『キャン』
「この一面の雪を飛ばすのかと期待しちゃったよ」
「まあそうだよなあ。狐は戦えないんだもんな。できてそれくらいだよな。よく頑張ったぞ、狐」
違うよ! できるよ! この森の雪全部だって消せるよ。でもそれは、使役獣の魔法の範囲を超えているでしょう。だから、使役獣ができそうな魔法にしたんだよ。
え? 魔法じゃなくて、鼻息だろうって? そんなことないよ。ちょっとだけど、雪の魔法も使ってるから。
一面の雪をフンフンして、キノコの周りの雪をよけて回る。にょきにょきと雪を割ってキノコが生えたように見えて、なかなか面白い景色だ。
「おい、狐、まだあるのか?」
『キャン』
たくさん生えているから、収穫が追いついていないけど、見えているのはまだ半分くらいだよ。持ってきた袋に入りきらないくらいあるよ。
続けてフンフンして、辺り一帯のキノコを見えるようにしたら、オレの仕事は終わり。周りの魔物を警戒しているウィオの肩に乗って、甘える。
『オレ頑張ったでしょう。ごほうびに、これで料理長さんに美味しいパスタを作ってもらいたいな』
「そうだな」
『お肉のクリーム煮に入れても美味しそうだよね』
「ああ。崖から落ちたときの怪我はないのか?」
『ないよ』
「よかった。次は気をつけて、心配させないでくれ」
ウィオがツンデレだ。本当は心配してくれていたんだね。オレがうっかりして心配かけたことに、ちょっと不機嫌になっちゃったんだね。ごめんね。
この先は、心配をかけないためにも、ウィオの肩に乗っていよう。肉球が冷たいからじゃないよ。
崖の下のキノコを全部収穫してから崖の上に戻る。食パンくんたちのキノコ探しはどうかな?
「リンちゃん、また見つけて、偉いねえ。後で干し肉をあげるからね」
『ワン』
『きゃん』
「たぬたぬは仕事してないでしょう」
雪の上を走り回って、キノコを見つけてはほえている食パンくんのそばで、大福くんはギルド職員さんに抱っこされていた。キノコを食べちゃうから、自由にさせられないそうだ。
トリュフを探すブタを育てるのに一番大変なことは、食べないように訓練することだと聞いたことがある。美味しいものが目の前にあったら、仕方ないよねえ。
「お、そっちはどうだ? こっちはわんこがたくさん見つけてくれたぞ」
「こっちは狐が崖から落ちたところに、たまたまたくさん生えてた。もう袋がいっぱいで入りきらない」
『キャンキャン』
違うって。落ちたところにたまたまあったんじゃなくて、匂いを追いかけたら落ちちゃったんだよ。まるで運だけで見つけたような言い方、ひどいよ。
ぷりぷりしているオレをなだめるように、ウィオがなでてくれる。飼い主が分かってくれているなら、まあいいか。
『ワン』
「次も見つけたのか。ちょっと待ってくれ、こっちがまだ採れてない」
「狐が採りやすいように、雪をよけてくれるぞ」
ご使命とあらば、行きましょう。ウィオの肩から降りて、食パンくんの見つけたキノコに向かって、フン!
「おおー、狐、すごいじゃないか。応援以外もできたんだな」
「偉いぞ。よしよし」
いやいや、これくらいで褒められるって、ちょっと心外。オレ、薬草ハンターとして名高いのに、オルデキアではいまだに応援しかできないと思われているの?
『ワンワン!』
「リンちゃん、また見つけたの。すごいねえ」
『ウー、フン!』
あ、食パンくんがオレの真似をして雪を鼻息でよけようとして、火の魔法も一緒に飛ばした。
「リンちゃん、すごいよ! ちゃんと雪がなくなったよ。リンちゃんは天才だねえ」
「あー、たしかに天才なんだが、ちょっとキノコが焦げてるぞ」
「それくらい大丈夫だろう。リンちゃん、今日はたくさん美味しいものを食べようねえ」
キノコがこんがり炭火焼きになって、あたりに美味しそうな香りが広がる。お肉の付け合わせに出てきたら、最高だなあ。
「あ、リンちゃん、食べちゃダメ!」
『キューン』
「美味しそうだけど、ダメだってば」
「こら、たぬたぬ、大人しくして!」
あーあ。美味しそうな香りに、食パンくんだけでなく大福くんまで興奮している。このままじゃ探索は続けられそうにない。
「休憩にするか。そのキノコは、二匹で食べるといい」
「たぬたぬは何もしていないので、もらうのは……」
「仲間はずれにしたらかわいそうだろう。わんこ、もう二個、キノコを焼いてくれ」
『ワン!』
冒険者がキノコを取り出して食パンくんの前に並べ、オレたちに一つずつ行き渡るように、三個のこんがりキノコを作ってくれた。お気づかいありがとう。干し肉と一緒に食べたいから、ウィオにみんなの分も出してもらう。
干し肉とキノコを並べて、いただきまーす。もぐもぐ。キノコの旨味が合わさって、料理長さん特製の美味しい干し肉が、さらに美味しい。うまうま。
食パンくんも大福くんも美味しそうに食べているのを、みんなが微笑ましそうに見守っている。ギルド職員さんだけ表情が険しいけど、大福くんの採取狸としての修行は始まったばっかりだから、仕方ないよ。
「わんこは、雪をよけるの禁止な。わんこが見つけて、狐が雪をよける。それでいこう」
「だな」
休憩が終わったら、食パンくんと協力して、キノコ探しを続けよう。大福くんは……、見学しててね。
「俺が風の魔法で雪を散らそう」
「やめろ、おまえの大雑把な魔法じゃ、キノコもバラバラになるだろう。氷の騎士様、なんとかできません?」
「ルジェ、雪を飛ばせるか?」
『キャン』
「おお、狐の魔法は初めてみるぞ。頑張れ」
ここは期待に応えないとね。見せてあげよう、オレの雪魔法を。
いざ、キノコよ、出てこい! 秘技、雪よけの術! フン!
『これでいい?』
「一個ずつ、キノコの周りの雪を鼻息で散らすのか……」
『キャン』
「この一面の雪を飛ばすのかと期待しちゃったよ」
「まあそうだよなあ。狐は戦えないんだもんな。できてそれくらいだよな。よく頑張ったぞ、狐」
違うよ! できるよ! この森の雪全部だって消せるよ。でもそれは、使役獣の魔法の範囲を超えているでしょう。だから、使役獣ができそうな魔法にしたんだよ。
え? 魔法じゃなくて、鼻息だろうって? そんなことないよ。ちょっとだけど、雪の魔法も使ってるから。
一面の雪をフンフンして、キノコの周りの雪をよけて回る。にょきにょきと雪を割ってキノコが生えたように見えて、なかなか面白い景色だ。
「おい、狐、まだあるのか?」
『キャン』
たくさん生えているから、収穫が追いついていないけど、見えているのはまだ半分くらいだよ。持ってきた袋に入りきらないくらいあるよ。
続けてフンフンして、辺り一帯のキノコを見えるようにしたら、オレの仕事は終わり。周りの魔物を警戒しているウィオの肩に乗って、甘える。
『オレ頑張ったでしょう。ごほうびに、これで料理長さんに美味しいパスタを作ってもらいたいな』
「そうだな」
『お肉のクリーム煮に入れても美味しそうだよね』
「ああ。崖から落ちたときの怪我はないのか?」
『ないよ』
「よかった。次は気をつけて、心配させないでくれ」
ウィオがツンデレだ。本当は心配してくれていたんだね。オレがうっかりして心配かけたことに、ちょっと不機嫌になっちゃったんだね。ごめんね。
この先は、心配をかけないためにも、ウィオの肩に乗っていよう。肉球が冷たいからじゃないよ。
崖の下のキノコを全部収穫してから崖の上に戻る。食パンくんたちのキノコ探しはどうかな?
「リンちゃん、また見つけて、偉いねえ。後で干し肉をあげるからね」
『ワン』
『きゃん』
「たぬたぬは仕事してないでしょう」
雪の上を走り回って、キノコを見つけてはほえている食パンくんのそばで、大福くんはギルド職員さんに抱っこされていた。キノコを食べちゃうから、自由にさせられないそうだ。
トリュフを探すブタを育てるのに一番大変なことは、食べないように訓練することだと聞いたことがある。美味しいものが目の前にあったら、仕方ないよねえ。
「お、そっちはどうだ? こっちはわんこがたくさん見つけてくれたぞ」
「こっちは狐が崖から落ちたところに、たまたまたくさん生えてた。もう袋がいっぱいで入りきらない」
『キャンキャン』
違うって。落ちたところにたまたまあったんじゃなくて、匂いを追いかけたら落ちちゃったんだよ。まるで運だけで見つけたような言い方、ひどいよ。
ぷりぷりしているオレをなだめるように、ウィオがなでてくれる。飼い主が分かってくれているなら、まあいいか。
『ワン』
「次も見つけたのか。ちょっと待ってくれ、こっちがまだ採れてない」
「狐が採りやすいように、雪をよけてくれるぞ」
ご使命とあらば、行きましょう。ウィオの肩から降りて、食パンくんの見つけたキノコに向かって、フン!
「おおー、狐、すごいじゃないか。応援以外もできたんだな」
「偉いぞ。よしよし」
いやいや、これくらいで褒められるって、ちょっと心外。オレ、薬草ハンターとして名高いのに、オルデキアではいまだに応援しかできないと思われているの?
『ワンワン!』
「リンちゃん、また見つけたの。すごいねえ」
『ウー、フン!』
あ、食パンくんがオレの真似をして雪を鼻息でよけようとして、火の魔法も一緒に飛ばした。
「リンちゃん、すごいよ! ちゃんと雪がなくなったよ。リンちゃんは天才だねえ」
「あー、たしかに天才なんだが、ちょっとキノコが焦げてるぞ」
「それくらい大丈夫だろう。リンちゃん、今日はたくさん美味しいものを食べようねえ」
キノコがこんがり炭火焼きになって、あたりに美味しそうな香りが広がる。お肉の付け合わせに出てきたら、最高だなあ。
「あ、リンちゃん、食べちゃダメ!」
『キューン』
「美味しそうだけど、ダメだってば」
「こら、たぬたぬ、大人しくして!」
あーあ。美味しそうな香りに、食パンくんだけでなく大福くんまで興奮している。このままじゃ探索は続けられそうにない。
「休憩にするか。そのキノコは、二匹で食べるといい」
「たぬたぬは何もしていないので、もらうのは……」
「仲間はずれにしたらかわいそうだろう。わんこ、もう二個、キノコを焼いてくれ」
『ワン!』
冒険者がキノコを取り出して食パンくんの前に並べ、オレたちに一つずつ行き渡るように、三個のこんがりキノコを作ってくれた。お気づかいありがとう。干し肉と一緒に食べたいから、ウィオにみんなの分も出してもらう。
干し肉とキノコを並べて、いただきまーす。もぐもぐ。キノコの旨味が合わさって、料理長さん特製の美味しい干し肉が、さらに美味しい。うまうま。
食パンくんも大福くんも美味しそうに食べているのを、みんなが微笑ましそうに見守っている。ギルド職員さんだけ表情が険しいけど、大福くんの採取狸としての修行は始まったばっかりだから、仕方ないよ。
「わんこは、雪をよけるの禁止な。わんこが見つけて、狐が雪をよける。それでいこう」
「だな」
休憩が終わったら、食パンくんと協力して、キノコ探しを続けよう。大福くんは……、見学しててね。
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