願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉

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学園編

44. 依頼を受けよう

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 食パンくんと、お付きの冒険者たちと一緒に依頼を受けよう。まずはギルドだ。
 ギルドの混雑を避けるために少し遅めに来たけれど、相変わらず人が多い。

「たぬたぬ、待って!」
『きゅん』
『ワン』
『キャン』

 オレが食パンくんと一緒にいるのに気づいて、カウンターの奥からぽてぽてと走ってきた。ご飯中だったのか、口の周りに食べものがついてるよ。それをオレの毛につけないでね。
 受付のお姉さんが追いついて、大福くんを抱き上げてから、口の周りを拭いている。大福くん、王宮にいるのと変わらないくらい、大切にお世話されて、至れりつくせりだね。

 オレが大福くんに気を取られている間に、ウィオたちは受付カウンターに並んでいた。

「氷の騎士様、今日は依頼を受けられますか?」
「リンとルジェの鼻が活かせる依頼はあるか?」
「うーん、そうですねえ。キノコ狩りなんてどうですか? 雪の下にある高級キノコの依頼があります」
「ジーク、どうだ?」

 いつもなら流れるようにギルド長の部屋に案内されるけど、今日は食パンくんたちも一緒に依頼を受けるので、普通の冒険者としての対応のようだ。
 提案されたのは、オレたちの鼻頼りの依頼だ。いいんじゃない?

「そのキノコの匂いを覚えさせないと、リンちゃんは探せないんだが、現物はあるか?」
「乾燥させて使うそうなので、商会にはあると思います。それに、氷の騎士様のお家にもあるんじゃないですか?」

 なるほど。貴族が料理に使うようなキノコなのね。干しシイタケみたいなものかな。

 依頼を出した商会に行って、匂いを覚えさせてもらおうと話し合っていると、奥からギルド長が出てきた。なんだか表情が厳しいけど、どうしたの?

「学園長、ジーク、もし可能なら、ギルド職員とたぬたぬも連れていってもらえないだろうか。たぬたぬにも採取を覚えさせたい」
「私はかまいません」
「俺もいいですよ。リンちゃんはルジェくんに習ったので」

 その言葉に、ギルド長がオレを見る。なるほど、険しい顔になっているのは、オレに大福くんの指導をお願いするという状況にか。ギルド長はできれば食パンくんに教えてもらいたかったのだろう。けれど、この機会を逃すと、食パンくんはアチェーリに帰ってしまうかもしれない。それで、食パンくんがいる今、しぶしぶお願いしてきたようだ。

『キャン』
「ルジェもいいと言っています」

 採取獣が増えるのは大歓迎。使役獣になるからといって、戦いたい子ばかりじゃないだろう。
 ところで、大福くんの正式名はたぬたぬに決まったのね。新しい飼い主が決めるってことになってたけど。

「冒険者たちがたぬたぬと呼んでいるので、もう変えられないんですよ」
「まあ、合っているんじゃないか?」

 柔らかい響きが、冬毛でもっふもふの体型にも、のんびりな行動にも、合っている気がする。

 キノコの依頼には、世話をしている受付のお姉さんではなく、冒険者から転職したギルド職員のお兄さんと一緒に行くらしい。街中はお姉さん、外はお兄さんが同行すると決まっているそうだ。
 一度契約を解いて、再度契約し直しているのを、みんなで見守る。使役獣契約ってそういうものだっけ? まあ大福くんが嫌がっていないからいいんだけど。

「三匹もいたら、もっと護衛がいるだろう? 俺たちも行けるぞ。たぬたぬ、いっぱい人がいたほうがいいよな?」
「うるせえ。おこぼれに預かろうたって、そうはいかないんだよ」
「氷の騎士様がいるんだ。足りてるわ」
「だったらおまえらもいらないだろう」
「俺たちは荷物持ちだ」

 同行したい冒険者が、食パンくんと仲良しの冒険者たちと言い争いをしているけど、みんなもふもふが好きだねえ。もしかして、親衛隊の縄張り争いかな?
 ちょっと人気投票してみたいけど、ギルド所属の大福くんが圧勝しそうだから、やめておこう。オレのプライドが傷ついちゃう。


 一時的に冒険者に復帰したギルド職員のお兄さんも一緒に、まずは依頼を出した商会へ向かい、キノコの匂いを覚えよう。

「これが、探していただきたいキノコです。雪の下に生えるので、見つけづらいのです」

 袋から取り出して手のひらに置いたキノコから、とってもいい香りがしている。 このキノコは、乾燥させたほうが香りが高くなるから、こうして干したものが販売されているらしい。
 これはパスタにしたら美味しそうなキノコだ。たくさん見つけて、料理長さんに美味しいご飯を作ってもらおう。ふんふん。

「こら! たぬたぬ、やめなさい!」
「リンちゃんも、ダメ!」

 飼い主さんたちの止める声に隣を見ると、大福くんが乾燥キノコを食べている。食パンくんは今にも食べそうだけど、飼い主さんの制止に踏みとどまっている。でもよだれが出てるよ。美味しそうな匂いがしちゃったら、食べたいよねえ。

「狐はキノコに興味がないのか?」
「料理してあるものがいいんだろう」
『キャン』

 どうせなら、そのままじゃなくて、美味しい料理になったものが食べたいよ。

「悪いな。その袋は買い取ろう」
「いえいえ、その分採取していただければかまいませんので」

 幸い少ししか手のひらに出していなかったので、被害は少なく抑えられた。この失敗を取り返すくらい、見つけてこよう。
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