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学園編
31. ネタバラシ
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任命式の後、夜会の会場へと向かうと、入り口で部隊長さんたち新しい白色の騎士服に身を包んだ人たちに出迎えられた。事前に顔合わせは済ませていたから、軽く尻尾を振ってあいさつだ。
今日オレは、ウィオと一緒に夜会に参加するのだ。今回は、ネウラ特別部隊の任命式があったから、ウィオも学園長として参加するけど、次からは不参加ってことは決まっている。ウィオが参加するなら当然使役獣のオレも参加することになるから、王様も招待しづらいのだろう。
部隊長さんは、ネウラ特別部隊として、今日の目玉としての参加でもあるんだけど、ウィオの護衛でもある。オレ目当てにウィオに向かってくるだろう参加者たちの盾となるのだ。
オレは、部隊長さんの肩へ飛び乗ろうとしたところで、ウィオに捕まってしまった。
「ダメだ。制服を汚すな」
「構いませんよ」
「ルジェ様、足をお拭きしましょう」
オレが飛び移ろうとしてから、どこからともなく現れた執事さんの指示で、お世話係さんが足を拭き終わるまで、三秒。連携がすごい。
ぽかんと執事さんを見ていたら、後ろにお父さんとお母さんがいた。たまたま近くにいたから、あいさつに来てくれたらしい。
「ルジェくん、とってもすてきだったよ」
「本当に。ルジェちゃんは芸術のセンスもあるのねえ」
『えへへ。お母さんのドレスもすてきだよ』
わーい、ほめられた。誰が聞いているか分からないから、何がというのはぼかされたけど、うれしいな。
でも、センスがいいのはお母さんだ。お母さんのドレスは、社交界でも有名になっていると聞いた。デザインがおしゃれなだけでなく、オレたちが食い倒れツアー中に手に入れた貴重な素材を使っている。ウィオは貴族をやっていただけあって、そういう素材の知識が豊富で、旅先で出会ったら積極的に狩っていた。もっとも、それをどう使うのかというのは知らないようで、聞いても教えてくれなかった。だから今のドレスも、どこにどんな素材が使われているのか、よく分からない。すてきなものはすてきだから、それでいいじゃない。
執事さんのゴーが出たので、部隊長さんの肩に飛び乗ると、すぐ近くにいた騎士が一歩下がった。これは、オレの正体を知っていて、恐れられているっぽいぞ。さっきプレゼントをあげたのに、そういう態度を取られると、ちょっと傷つく。
「狐くん、ありがとう」
『気に入ってくれた?』
「もちろんです。私には過ぎたる栄誉ですが」
『ウィオが望んだんだよ』
小さくつぶやかれた感謝の言葉に、今回の発案はオレじゃないと、ネタバラシをする。ウィオに頼まれなければ、オレが勝手にやっただろうけどね。
ウィオが騎士団で楽しく過ごせたのは、師であり、目に属性の現れている先輩である部隊長さんがいたからだ。だからウィオは、いままでの恩を返したかったのだと思う。部隊長さんにとってはかなり風当たりの強い出だしとなってしまったネウラでのお仕事が上手くいくように、いつもなら避けるオレの力を当てにしてまで。
何をやったって、やらなくたって、きっと批判は消えない。これで事態が好転すると思えるほど、オレだって能天気じゃない。
だけど、部隊長さんはすべてを分かったうえで引き受けたんだと思う。それが贖罪だと思っているのかもしれない。
だから、ウィオだけじゃなく、オレも応援している、その気持ちは示しておきたかった。
それが神獣として正しいのかどうかはオレにも分からないけど、やりたいことをやりたいようにやる。オレはそれが許される神獣だ。
文句はちゃんと受け付けるよ。部隊長さんだけひいきしすぎだって言われても、仕方がない。実際そうだから、その批判は甘んじて受け入れよう。
でも本当は、もっと全力で演出したかった。部隊長さんを歓迎しているって、目に見えて示したかった。
最初の案では七色に光る狐になって登場しようと思ったんだけど、何度も姿を現すとありがたみが薄れるからという理由で却下された。レア度が高いほうが見たときのうれしさはひとしおだというのは分かる。今回はここぞってときだと思っただけど、姿を見せなくても十分だとお父さんに説得されたのだ。
だから同じ理由で、九尾にするのも、翼を六枚にするのも次の機会にお預けだ。いっそのこと次は頭を三つにしてみようか。
姿を見せないなら、それっぽい演出が必要だ。花火以外の夜空の演出で思い浮かんだのは、流れ星かオーロラ、月食だった。
あとレーザー光線とドローンとプロジェクションマッピングも考えたけど、神秘さが足りないのでやめた。地上から空に向かってレーザー光線を上げてフェス会場みたいなのとか、プロジェクションマッピングかドローンで、お城の壁か空中に「歓迎」って光で書くのはどうかなと思ったけど、神威みたいなものは感じられないよね。
月食は不吉だと思われていた歴史があったはずだから外して、じゃあ流れ星とオーロラどっちにしようかと考えて、流れ星よりオーロラのほうが神様の仕業っぽいかなと思ったので選んだ。大量の流星群を降らせて、攻撃と勘違いされても困るしね。それに、低い高度なら、流星群は魔法で再現できるかもしれないけど、オーロラは神様じゃなきゃ無理でしょう。
ちなみに、花火で狐をかたどるっていうのも、ダメだと言われてしまった。キャラクター花火って可愛いと思うんだけど、花火文化が始まったばかりだから仕方がないのかな。
今日オレは、ウィオと一緒に夜会に参加するのだ。今回は、ネウラ特別部隊の任命式があったから、ウィオも学園長として参加するけど、次からは不参加ってことは決まっている。ウィオが参加するなら当然使役獣のオレも参加することになるから、王様も招待しづらいのだろう。
部隊長さんは、ネウラ特別部隊として、今日の目玉としての参加でもあるんだけど、ウィオの護衛でもある。オレ目当てにウィオに向かってくるだろう参加者たちの盾となるのだ。
オレは、部隊長さんの肩へ飛び乗ろうとしたところで、ウィオに捕まってしまった。
「ダメだ。制服を汚すな」
「構いませんよ」
「ルジェ様、足をお拭きしましょう」
オレが飛び移ろうとしてから、どこからともなく現れた執事さんの指示で、お世話係さんが足を拭き終わるまで、三秒。連携がすごい。
ぽかんと執事さんを見ていたら、後ろにお父さんとお母さんがいた。たまたま近くにいたから、あいさつに来てくれたらしい。
「ルジェくん、とってもすてきだったよ」
「本当に。ルジェちゃんは芸術のセンスもあるのねえ」
『えへへ。お母さんのドレスもすてきだよ』
わーい、ほめられた。誰が聞いているか分からないから、何がというのはぼかされたけど、うれしいな。
でも、センスがいいのはお母さんだ。お母さんのドレスは、社交界でも有名になっていると聞いた。デザインがおしゃれなだけでなく、オレたちが食い倒れツアー中に手に入れた貴重な素材を使っている。ウィオは貴族をやっていただけあって、そういう素材の知識が豊富で、旅先で出会ったら積極的に狩っていた。もっとも、それをどう使うのかというのは知らないようで、聞いても教えてくれなかった。だから今のドレスも、どこにどんな素材が使われているのか、よく分からない。すてきなものはすてきだから、それでいいじゃない。
執事さんのゴーが出たので、部隊長さんの肩に飛び乗ると、すぐ近くにいた騎士が一歩下がった。これは、オレの正体を知っていて、恐れられているっぽいぞ。さっきプレゼントをあげたのに、そういう態度を取られると、ちょっと傷つく。
「狐くん、ありがとう」
『気に入ってくれた?』
「もちろんです。私には過ぎたる栄誉ですが」
『ウィオが望んだんだよ』
小さくつぶやかれた感謝の言葉に、今回の発案はオレじゃないと、ネタバラシをする。ウィオに頼まれなければ、オレが勝手にやっただろうけどね。
ウィオが騎士団で楽しく過ごせたのは、師であり、目に属性の現れている先輩である部隊長さんがいたからだ。だからウィオは、いままでの恩を返したかったのだと思う。部隊長さんにとってはかなり風当たりの強い出だしとなってしまったネウラでのお仕事が上手くいくように、いつもなら避けるオレの力を当てにしてまで。
何をやったって、やらなくたって、きっと批判は消えない。これで事態が好転すると思えるほど、オレだって能天気じゃない。
だけど、部隊長さんはすべてを分かったうえで引き受けたんだと思う。それが贖罪だと思っているのかもしれない。
だから、ウィオだけじゃなく、オレも応援している、その気持ちは示しておきたかった。
それが神獣として正しいのかどうかはオレにも分からないけど、やりたいことをやりたいようにやる。オレはそれが許される神獣だ。
文句はちゃんと受け付けるよ。部隊長さんだけひいきしすぎだって言われても、仕方がない。実際そうだから、その批判は甘んじて受け入れよう。
でも本当は、もっと全力で演出したかった。部隊長さんを歓迎しているって、目に見えて示したかった。
最初の案では七色に光る狐になって登場しようと思ったんだけど、何度も姿を現すとありがたみが薄れるからという理由で却下された。レア度が高いほうが見たときのうれしさはひとしおだというのは分かる。今回はここぞってときだと思っただけど、姿を見せなくても十分だとお父さんに説得されたのだ。
だから同じ理由で、九尾にするのも、翼を六枚にするのも次の機会にお預けだ。いっそのこと次は頭を三つにしてみようか。
姿を見せないなら、それっぽい演出が必要だ。花火以外の夜空の演出で思い浮かんだのは、流れ星かオーロラ、月食だった。
あとレーザー光線とドローンとプロジェクションマッピングも考えたけど、神秘さが足りないのでやめた。地上から空に向かってレーザー光線を上げてフェス会場みたいなのとか、プロジェクションマッピングかドローンで、お城の壁か空中に「歓迎」って光で書くのはどうかなと思ったけど、神威みたいなものは感じられないよね。
月食は不吉だと思われていた歴史があったはずだから外して、じゃあ流れ星とオーロラどっちにしようかと考えて、流れ星よりオーロラのほうが神様の仕業っぽいかなと思ったので選んだ。大量の流星群を降らせて、攻撃と勘違いされても困るしね。それに、低い高度なら、流星群は魔法で再現できるかもしれないけど、オーロラは神様じゃなきゃ無理でしょう。
ちなみに、花火で狐をかたどるっていうのも、ダメだと言われてしまった。キャラクター花火って可愛いと思うんだけど、花火文化が始まったばかりだから仕方がないのかな。
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