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学園編
32. 花火の開発
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部隊長さんのなでなでに目を細めながら、学園関係者の控室に入ると、先に出発していた二番目のお兄さんがいた。
『お兄さん、疲れてる?』
「あれは神獣様の御業か、学園に守護を与える神獣様に会うにはどうすればいいか、って同じ質問しかされなくて、逃げてきたんだよ」
『おごらず、謙虚に、善行を積むことだ。さすればいつか目にすることもかなうだろう。って言っておいて』
「おお、それっぽいねえ」
本物だからね。そのうちまたあの姿を披露することもあるだろうから、うそは言ってないよ。
今日の夜会で誰にあいさつしないといけないのか、どれくらいで退室するかという話が、お兄さんとウィオ、そして部隊長さんも参加して始まったので、聞くとはなしに聞いていると、学科長たちが入室してきた。
部隊長さんの肩に乗るオレを見つけて、あいさつしようとし、けれど見知らぬ人を発見して、マダム先生は言葉をのんだ。
『大丈夫だよ。ここにいる人はみんなオレの正体を知っているから』
「そうでしたか」
「紹介しよう。ネウラ特別部隊のカエルラ隊長と、スキャンダー副隊長だ」
副隊長はオレの正体をもともと知っていたんだろうけど、部隊長さんが正式に伝えたそうだ。部隊長さんがいないときは指揮をとるから、知らないと困ることもあるだろう。他の隊員たちに伝えるかどうかは、今後考える。オレへの反応から半分以上は知ってそうだったけど。
「マトゥオーソのゴベール殿のおうわさは、オルデキアにも聞こえていました。お会いできて光栄です」
「こちらこそ、水の騎士様にお会いできてうれしいです。ぜひ、水魔法のお話を聞かせてください」
マダム先生はマトゥオーソの宮廷魔術師だったから、部隊長さんと話すのは初めてで、ちょっとテンションが上がっている気がする。部隊長さんは魔法をすごく効率的に使うとマトゥオーソにも知られていたらしい。
『花火はどうだった?』
「とてもきれいでした。特に最後の、花がたれ下がる様は、大量の流れ星のようで、本当にすてきでした」
今回、マダム先生と一緒に、開いたあとに光がたれ下がる花火を開発したのだ。よく花火大会のフィナーレであげられる花火。開発したと言っても、オレはこういうのを作ってほしいな、と言っただけだけど。
マダム先生はその完成品が初めて打ち上げられるということで、王都の端から眺めていた。前回は上げる側だったから、遠目に見てみたかったらしい。
「学園長、下ではどうでしたか?」
「星が降り注ぐようだった」
この世界の花火はただの光だから降り注いできても問題ないけど、実はちょっとお城の人が火傷しないか不安になったのは内緒だ。昔、風に流された燃えかすが降ってきて、けむり臭かったことがあったんだよね。
学園の花火は、周辺国からも問い合わせが来ているらしいけど、まだ売るかどうかは決めていない。魔法陣は一度教えたら簡単に複製できるので、売るのか、使用料を取るようにするか、無料で公開するのか決まっていないからだ。
学園の研究成果は秘匿せず公開することになっているけど、これは商品なのか研究成果なのか、少し迷うところだ。
「あの光のカーテンは、神獣様がなされたことですか?」
『うん。きれいだったでしょう?』
「はい。とても美しく神秘的でした。まさに神の御業だと思いました。今後、光のカーテンは学園に加護をくださった神獣様の象徴となるでしょう」
まあね、もとは暁の女神の名を持つ自然現象だからね。オレは光の精霊にお願いしただけだけど。
今後もオレの威光が必要なときは、オーロラを光らせよう。
「みなさま、お時間です」という騎士の言葉で、みんなでまとまって王城内の夜会の会場に向かう。マダム先生はドレスの上に、ウィオやおじいちゃん先生たちはおしゃれな貴族っぽい服の上に、学園の教師を示すガウンを羽織っている。オレは、そのガウンと同じようなマントを首に巻いている。
会場に入ると、ガウンと白い騎士服に注目が集まる。そしてオレにも。おそらくオレの正体を知っている人たちの視線が、オレと、オレを肩に乗せている部隊長さんと、ウィオの間をうろうろしている。
「狐くん、やっぱりウィオラスの肩に移らない?」
『最初だけだから』
部隊長さんに文句を言う人に向けて、肩から威嚇しているのだ。ガオー。
「ルジェくん、あそこに食事が用意されているよ。セス、ルジェくんに食事を」
「畏まりました」
もうちょっと部隊長さんの肩から威嚇をしていたかったのに、オレは二番目のお兄さんの言葉で、お世話係さんに抱っこされて、会場すみの料理が置かれているところへと連れてこられた。ウィオもうなずいているし、参加者がオレに近づけないように白い騎士服の隊員たちが壁になってくれているし、無駄のないこの流れ、最初からオレをすみっこに追いやる計画を立てていたっぽいぞ。オレもせっかくだから上流階級の雰囲気を味わいたかったのに。ごきげんよう、とかってあいさつしてみたかったのに。
頭に来たので、ここの料理を全部制覇してやる。
『お兄さん、疲れてる?』
「あれは神獣様の御業か、学園に守護を与える神獣様に会うにはどうすればいいか、って同じ質問しかされなくて、逃げてきたんだよ」
『おごらず、謙虚に、善行を積むことだ。さすればいつか目にすることもかなうだろう。って言っておいて』
「おお、それっぽいねえ」
本物だからね。そのうちまたあの姿を披露することもあるだろうから、うそは言ってないよ。
今日の夜会で誰にあいさつしないといけないのか、どれくらいで退室するかという話が、お兄さんとウィオ、そして部隊長さんも参加して始まったので、聞くとはなしに聞いていると、学科長たちが入室してきた。
部隊長さんの肩に乗るオレを見つけて、あいさつしようとし、けれど見知らぬ人を発見して、マダム先生は言葉をのんだ。
『大丈夫だよ。ここにいる人はみんなオレの正体を知っているから』
「そうでしたか」
「紹介しよう。ネウラ特別部隊のカエルラ隊長と、スキャンダー副隊長だ」
副隊長はオレの正体をもともと知っていたんだろうけど、部隊長さんが正式に伝えたそうだ。部隊長さんがいないときは指揮をとるから、知らないと困ることもあるだろう。他の隊員たちに伝えるかどうかは、今後考える。オレへの反応から半分以上は知ってそうだったけど。
「マトゥオーソのゴベール殿のおうわさは、オルデキアにも聞こえていました。お会いできて光栄です」
「こちらこそ、水の騎士様にお会いできてうれしいです。ぜひ、水魔法のお話を聞かせてください」
マダム先生はマトゥオーソの宮廷魔術師だったから、部隊長さんと話すのは初めてで、ちょっとテンションが上がっている気がする。部隊長さんは魔法をすごく効率的に使うとマトゥオーソにも知られていたらしい。
『花火はどうだった?』
「とてもきれいでした。特に最後の、花がたれ下がる様は、大量の流れ星のようで、本当にすてきでした」
今回、マダム先生と一緒に、開いたあとに光がたれ下がる花火を開発したのだ。よく花火大会のフィナーレであげられる花火。開発したと言っても、オレはこういうのを作ってほしいな、と言っただけだけど。
マダム先生はその完成品が初めて打ち上げられるということで、王都の端から眺めていた。前回は上げる側だったから、遠目に見てみたかったらしい。
「学園長、下ではどうでしたか?」
「星が降り注ぐようだった」
この世界の花火はただの光だから降り注いできても問題ないけど、実はちょっとお城の人が火傷しないか不安になったのは内緒だ。昔、風に流された燃えかすが降ってきて、けむり臭かったことがあったんだよね。
学園の花火は、周辺国からも問い合わせが来ているらしいけど、まだ売るかどうかは決めていない。魔法陣は一度教えたら簡単に複製できるので、売るのか、使用料を取るようにするか、無料で公開するのか決まっていないからだ。
学園の研究成果は秘匿せず公開することになっているけど、これは商品なのか研究成果なのか、少し迷うところだ。
「あの光のカーテンは、神獣様がなされたことですか?」
『うん。きれいだったでしょう?』
「はい。とても美しく神秘的でした。まさに神の御業だと思いました。今後、光のカーテンは学園に加護をくださった神獣様の象徴となるでしょう」
まあね、もとは暁の女神の名を持つ自然現象だからね。オレは光の精霊にお願いしただけだけど。
今後もオレの威光が必要なときは、オーロラを光らせよう。
「みなさま、お時間です」という騎士の言葉で、みんなでまとまって王城内の夜会の会場に向かう。マダム先生はドレスの上に、ウィオやおじいちゃん先生たちはおしゃれな貴族っぽい服の上に、学園の教師を示すガウンを羽織っている。オレは、そのガウンと同じようなマントを首に巻いている。
会場に入ると、ガウンと白い騎士服に注目が集まる。そしてオレにも。おそらくオレの正体を知っている人たちの視線が、オレと、オレを肩に乗せている部隊長さんと、ウィオの間をうろうろしている。
「狐くん、やっぱりウィオラスの肩に移らない?」
『最初だけだから』
部隊長さんに文句を言う人に向けて、肩から威嚇しているのだ。ガオー。
「ルジェくん、あそこに食事が用意されているよ。セス、ルジェくんに食事を」
「畏まりました」
もうちょっと部隊長さんの肩から威嚇をしていたかったのに、オレは二番目のお兄さんの言葉で、お世話係さんに抱っこされて、会場すみの料理が置かれているところへと連れてこられた。ウィオもうなずいているし、参加者がオレに近づけないように白い騎士服の隊員たちが壁になってくれているし、無駄のないこの流れ、最初からオレをすみっこに追いやる計画を立てていたっぽいぞ。オレもせっかくだから上流階級の雰囲気を味わいたかったのに。ごきげんよう、とかってあいさつしてみたかったのに。
頭に来たので、ここの料理を全部制覇してやる。
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